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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G10L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10L
管理番号 1246774
審判番号 不服2010-16250  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-20 
確定日 2011-11-07 
事件の表示 特願2000-137181「信号処理装置および信号処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-318694〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年5月10日の出願であって、平成21年12月10日付けの拒絶理由の通知に対し、平成22年2月15日付けで手続補正がなされ、平成22年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年7月20日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成22年7月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容・適否
上記手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項のうち、請求項1の補正は、補正前の請求項1で「雑音抑圧を行う」とあったのを「少なくとも前記符号化手段にて符号化する周波数帯域の信号に対して雑音抑圧を行う」と限定する補正を行うものであるから、この補正は、補正前の請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という)第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するか否か)について以下に検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「音声信号に含まれる雑音成分を適応的に抑圧する雑音抑圧手段と、この雑音抑圧手段にて雑音成分が抑圧された音声信号に符号化処理を施して、圧縮された符号化音声データを生成する符号化手段とを備える信号処理装置であって、
前記符号化手段は、複数の異なる符号化処理が可能であり、
前記雑音抑圧手段は、前記符号化手段にて実施される符号化処理に応じて異なる雑音抑圧方式を用いて、少なくとも前記符号化手段にて符号化する周波数帯域の信号に対して雑音抑圧を行うことを特徴とする信号処理装置。」

(2)刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平8-166800号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面(特に、図1、図5、図7、図9、図28)とともに、次のア?クの事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディジタル方式の自動車電話用音声符号化/復号化方法に係り、特に、フルレートVSELP(Vector-Sum Excited Linear Predictive Coding)音声符号化/復号化方法およびハーフレートPSI-CELP(Pitch Synchronous Innovation CELP)音声符号化/復号化方法の双方を有する音声CODECに関する。」

イ.「【0007】また、伝送周波数帯域の有効利用を行うためVSELP方法の半分である5.6kbpsの伝送速度を実現するピッチ同期型符号励起線形予測符号化方法(以下PSI-CELP方法とする)が、「Pitch Synchronous Innovation CELP(PSI-CELP) 」(電子情報通信学会無線通信システム研究会 信学技報RCS93-78)において提案されている。このPSI-CELP方法は、音声符号化処理と伝送路符号化処理とに先立ち、入力音声に対しノイズキャンセラおよび低音量抑圧の処理を行ない、実使用環境下での特性向上を図っている。」

ウ.「【0013】本発明の目的は、複数種の符号化方法が混在するネットワークにおいて、各々の符号化方法に対応した復号が行なえるような音声符号器および/または音声復号器を提供することを目的とする。
【0014】また、複数種の符号化・復号化方法を備える音声符号および/または復号器を提供し、さらに、その小型化、軽量化、低消費電力化を図ることを目的とする。」

エ.「【0032】図1において、フルレート音声CODEC20は、VSELPによる音声符号化/復号化を行ない、ハーフレート音声CODEC21は、PSI-CELPによる音声符号化/復号化を行なう。制御部22は、通信呼の設定時に指定される符号化方法の種類(これについては、後述する)を検出し、符号化方法の種類にしたがってスイッチ26を切り替えることにより、指定された符号化方法の種類を選択する。」

オ.「【0040】図5において、端子2010は音声入力端子、端子2020はフルレート符号出力端子である。図5において、音声入力端子2010より入力された音声信号は、HPF(高域通過型フィルタ)ブロック102で高域通過型フィルタの処理を施された後、反射係数計算量子化ブロック201にてフレームごとに反射係数が計算される。」

カ.「【0054】つぎに、ハーフレートにおける符号化について説明する。ハーフレート音声CODECの符号器の詳細ブロック構成図を図7に示す。ハーフレートにおける音声符号化処理では、励振源が2つの部分から構成され、一方は、適応コードブックと固定コードブックとを切替えて利用する部分、他方は2チャネル構造を持つ雑音コードブック(以下、統計コードブックという)の部分から構成されている。主な特徴としては、それぞれの統計コードブックの出力を適応コードブックの出力に対応する周期に同期させて周期化し、符号を加算することである。また、それぞれの励振源は利得を乗じた後、合成フィルタを駆動し、合成音声を生成する。音声符号化処理は、この合成音声と、ノイズキャンセラおよび低音量抑圧を通った入力音声とを比較し、誤差が最小となる各コードブックの符号を選択する。また、それらの符号、合成フィルタのフィルタ係数を量子化した符号と電力値とを量子化した符号を伝送する仕組みとなっている。」

キ.「【0077】図9において、ハーフレート前処理ブロック101は、図7に示すノイズキャンセラブロック401における音声信号のノイズキャンセラと、低音量抑圧ブロック402における低音量抑圧処理とを行う。HPFブロック102は、図5に示す高域通過フィルタ(HPF)の機能を備える。線形予測係数計算ブロック105は、フルレートにおける線形予測係数とハーフレートにおける線形予測係数とを計算する。」

ク.「【0153】つぎに、前述した第2の実施例におけるフルレート/ハーフレート共用音声符号器において、線形予測係数計算の処理のみを共用化して、他の処理はフルレートとハーフレートとで別々のブロックで処理する場合について第5の実施例として説明する。
【0154】図28に、第5の実施例における線形予測係数の算出部分を共用化した場合のフルレート/ハーフレート共用音声符号器のブロック構成図を示す。端子21010は音声入力端子、端子21020は符号出力端子、端子21030はフル/ハーフ切替情報入力端子である。
【0155】フル/ハーフ共用として使用される線形予測係数算出処理は、前述した第2の実施例における図9に示す線形予測係数計算ブロック105と同様に、ハーフレートにおける自己相関(DIL)法を用いて、分析回数や分析区間長などのパラメータをそれぞれ指定してフルレートとハーフレートとの線形予測係数の計算を行なう。また、フルレートの場合には、反射係数量子化符号を生成しなければならないので、反射係数量子化・ソフト補間ブロック107において求めた線形予測係数から一意に対応する反射係数を求めて量子化し、符号化している。他の共用化しないブロックにおいては、第1の実施例における各ブロックの処理を行なう。すなわち、ハーフレート選択時には、SW2101?SW2104により端子21040側が全て選択され、図7に示す各ブロックと同様の処理を行ない、フルレート選択時には、SW2101?SW2104により端子21050側が全て選択され、図5に示す各ブロックと同様の処理を行なう。」

以上の記載から、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

「フルレートVSELP音声符号化方法およびハーフレートPSI-CELP音声符号化方法の双方を有する音声符号化器であって、スイッチを切り替えることにより、指定された符号化方法の種類を選択するものであり、フルレートVSELP音声符号化方法が選択されると、音声入力端子より入力された音声信号は、HPF(高域通過型フィルタ)ブロックで高域通過型フィルタの処理を施され、ハーフレートPSI-CELP音声符号化方法が選択されると、ノイズキャンセラブロックにより前記音声信号のノイズキャンセルが行われる音声符号化器。」

また、原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願の日前に頒布された刊行物である特表平11-514453号公報(以下、「刊行物2」という)には、図1とともに、次のケ、コの事項が記載されている。

ケ.「音声及び背景雑音の双方を含むデジタル化された音声信号のフレーム中の雑音を適応的に低減する方法及びシステムを提供する。デジタル化された音声信号のフレームは調整可能な高域通過フィルタ回路を通って、デジタル化された信号の低周波数領域にあたる背景雑音の一部分をろ過するようになっている。」(第1頁【要約】欄)

コ.「図1の本発明による適応雑音低減システム100の一般的ブロック図である。適応雑音低減システム100は、フィルタ回路115に接続されたフィルタ制御回路105を備えている。フィルタ制御回路105はデジタル化された音声信号の現在のフレームに対するフィルタ制御信号を発生する。フィルタ制御信号はフィルタ回路115に出力され、フィルタ回路115はフィルタ制御信号に応じて、フィルタ制御信号に基づいて選択された高域周波数応答曲線を示すように順応する。調整されたフィルタ回路115はデジタル化された音声信号の現在のフレームを濾波する。濾波信号はボイスコーダ120によって処理されて、デジタル化音声信号を表すコード化信号を生成する。」(第15頁第3行-第11行)

(3)刊行物1との対比・判断
本願補正発明と刊行物1発明とを対比する。

ア.刊行物1発明の「音声符号化器」は、音声信号を処理する装置であるから、「信号処理装置」といえるものである。
刊行物1発明の「ノイズキャンセラブロック」は、音声入力端子より入力された音声信号のノイズ(雑音)をキャンセル(抑圧)するものである。また、刊行物1発明の「HPF(高域通過型フィルタ)ブロック」は、音声入力端子より入力された音声信号に、高域通過型フィルタの処理を施すものであり、高域通過型フィルタの処理とは、入力信号のうち周波数の低い部分を低減して高い部分のみを通過させるものであって、低減される周波数の低い部分は、後段で必要のない「雑音成分」といえるものであるから、雑音成分を抑圧するものといえる。このことは、本願補正発明の「雑音抑圧手段」に対応するものとして、明細書の発明の実施形態に「Z方式ノイズサプレス部113には、比較的簡単な構成の時間領域での適応フィルタリングによるものを用いる。」(【0060】)と記載されていることからも明らかである。
よって、刊行物1発明の「ノイズキャンセラブロック」、「HPF(高域通過型フィルタ)ブロック」と、本願発明の「音声信号に含まれる雑音成分を適応的に抑圧する雑音抑圧手段」とは、雑音成分を‘適応的に’抑圧する点を除いて、「音声信号に含まれる雑音成分を抑圧する雑音抑圧手段」といえる点で共通するものである。
刊行物1発明の音声符号化器において、「フルレートVSELP音声符号化方法」および「ハーフレートPSI-CELP音声符号化方法」を行う符号化部は、入力されノイズがキャンセルされた、あるいは、高域通過型フィルタの処理を施された、音声信号に対して音声符号化を施すものであるから、本願補正発明における、「この雑音抑圧手段にて雑音成分が抑圧された音声信号に符号化処理を施して、圧縮された符号化音声データを生成する符号化手段」に相当するものである。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明は、「音声信号に含まれる雑音成分を抑圧する雑音抑圧手段と、この雑音抑圧手段にて雑音成分が抑圧された音声信号に符号化処理を施して、圧縮された符号化音声データを生成する符号化手段とを備える信号処理装置」である点で共通する。

イ.刊行物1発明の「フルレートVSELP音声符号化方法」および「ハーフレートPSI-CELP音声符号化方法」による符号化は、「複数の異なる符号化処理」といえるから、本願補正発明と刊行物1発明は、「前記符号化手段は、複数の異なる符号化処理が可能」である点で一致する。

ウ.刊行物1発明は、「フルレートVSELP音声符号化方法が選択されると、音声入力端子より入力された音声信号は、HPF(高域通過型フィルタ)ブロックで高域通過型フィルタの処理を施され、ハーフレートPSI-CELP音声符号化方法が選択されると、ノイズキャンセラブロックにより前記音声信号のノイズキャンセルが行われる」のであるから、刊行物1発明は、符号化手段にて実施される符号化処理に応じた異なる雑音抑圧方式を用いて雑音抑圧を行うものであるといえる。
したがって、本願補正発明と刊行物1発明とは、「前記雑音抑圧手段は、前記符号化手段にて実施される符号化処理に応じて異なる雑音抑圧方式を用いて、雑音抑圧を行う」ものである点で共通している。

以上をまとめると、本願補正発明と刊行物1発明の一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
音声信号に含まれる雑音成分を抑圧する雑音抑圧手段と、この雑音抑圧手段にて雑音成分が抑圧された音声信号に符号化処理を施して、圧縮された符号化音声データを生成する符号化手段とを備える信号処理装置であって、
前記符号化手段は、複数の異なる符号化処理が可能であり、
前記雑音抑圧手段は、前記符号化手段にて実施される符号化処理に応じて異なる雑音抑圧方式を用いて、雑音抑圧を行うことを特徴とする信号処理装置。

[相違点1]
雑音抑圧手段の雑音成分の抑圧が、本願補正発明は、適応的に抑圧するものであるのに対し、刊行物1発明は、適応的であるか否か明らかではない点。

[相違点2]
雑音抑圧手段で行う雑音抑圧が、本願補正発明では、少なくとも前記符号化手段にて符号化する周波数帯域の信号に対して行うものであるのに対し、刊行物1発明では、どのような周波数帯域の信号に対して行うのかは明確には特定されていない点。

これらの相違点について検討する。

[相違点1]について
刊行物2には、デジタル化された音声信号をボイスコーダで処理(本願補正発明の「符号化処理」に相当)する前に、該音声信号に含まれる雑音を適応的に低減する(本願補正発明の「雑音成分を適応的に抑圧する」ことに相当)適応雑音低減システムが記載されている。
刊行物1発明において、雑音抑圧手段による雑音成分の抑圧を、刊行物2に記載の技術を適用して適応的に抑圧するものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2]について
本願補正発明の「雑音抑圧手段」に相当するものは、刊行物1発明においては、上述したように、「ノイズキャンセラブロック」、及び、「HPF(高域通過型フィルタ)ブロック」である。よって、それぞれについて順次検討する。
刊行物1発明の「ノイズキャンセラブロック」は、入力音声に含まれるノイズをキャンセルして符号化された音声信号の特性を向上させるためのものであり、該ノイズが、少なくとも符号化手段にて符号化する周波数帯域を含んでいること、すなわち、少なくとも符号化手段にて符号化する周波数帯域の信号に対して雑音抑圧を行うことは、当業者に明らかなことである。符号化手段にて符号化する周波数帯域を含んでいなければ、例えノイズが存在したとしても符号化されないので、ノイズをキャンセルする意味がないからである。
次に、刊行物1発明の「HPF(高域通過型フィルタ)ブロック」についても同様に、符号化手段による符号化に必要でない低周波数成分を低減するためのものであり、該低周波数成分が、少なくとも符号化手段にて符号化する周波数帯域を含んでいることも当業者に明らかなことである。
したがって、刊行物1発明では、雑音抑圧手段の雑音成分の抑圧がどのような周波数帯域の信号に対して行うのかは文言上は明確には特定されていないが、実質的には、少なくとも前記符号化手段にて符号化する周波数帯域の信号に対して雑音抑圧を行うことは、刊行物1には記載されているに等しい事項であるということができる。

以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1発明及び刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成22年7月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成22年2月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「音声信号に含まれる雑音成分を適応的に抑圧する雑音抑圧手段と、この雑音抑圧手段にて雑音成分が抑圧された音声信号に符号化処理を施して、圧縮された符号化音声データを生成する符号化手段とを備える信号処理装置であって、
前記符号化手段は、複数の異なる符号化処理が可能であり、
前記雑音抑圧手段は、前記符号化手段にて実施される符号化処理に応じて、異なる雑音抑圧方式を用いて雑音抑圧を行うことを特徴とする信号処理装置。」

2.刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、及び、その記載事項は、前記第2.1.(2)に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記第2.1.で検討した本願補正発明における「雑音抑圧を行うこと」について「少なくとも前記符号化手段にて符号化する周波数帯域の信号に対して」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記第2.1.に記載したとおり、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.まとめ
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

第5.付記
平成21年12月10日付けの拒絶理由通知書で通知した理由2(本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないというもの)について簡単に検討しておく。
この理由2に対して、平成22年2月15日付け意見書では、次のように主張している。
「(4)理由2について
引用文献4には、複数の符号化レートまたは複数の符号化方式に応じて、聴覚重み制御により雑音を抑圧する雑音抑圧装置が開示されています。
しかしながら、請求項1,8に係わる本願発明は、複数の異なる符号化処理に応じて、異なる雑音抑圧方式を用いて雑音抑圧を行う構成となっており、聴覚重み制御、すなわち1つの雑音抑圧方式のパラメータ制御で行う構成の引用文献4とは異なるものであります。」
しかしながら、本願発明の異なる雑音抑圧方式とは、明細書の発明の実施形態に「X方式ノイズサプレス部111には、少し複雑な処理になるがノイズサプレス性能が高い周波数領域でのスペクトラル・サブトラクション法(SS法)を用いたものを、Y方式ノイズサプレス部112には、同様にSS法であるが、X方式ノイズサプレス部111より処理を簡略化したものを」と記載されているように、同じSS法であって処理の複雑さが異なるものが含まれている。
したがって、引用文献4(特願平11-162240号(特開2000-347688号))に記載された発明における、雑音抑圧装置の聴覚重みαω(f)を複数とおりに変化させたものそれぞれも本願発明の「異なる雑音抑圧方式」に含まれると考えられるから、上記拒絶理由2は妥当なものである。
 
審理終結日 2011-09-07 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2000-137181(P2000-137181)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G10L)
P 1 8・ 121- Z (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田部井 和彦清水 正一  
特許庁審判長 吉村 博之
特許庁審判官 板橋 通孝
千葉 輝久
発明の名称 信号処理装置および信号処理方法  
代理人 堀口 浩  

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