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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F23D
管理番号 1246814
審判番号 不服2008-23163  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-10 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 平成10年特許願第303862号「予混合バーナ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月 5日出願公開、特開平11-304111号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年10月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年10月27日、スイス国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月9日付けで手続補正がなされたが、これは当審において平成22年11月8日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して平成23年5月10日付けで手続補正がなされたものであって、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。

「流れ方向で内外に嵌合して1つの部体を構成する少なくとも2つの中空の部分円錐体(5,6)から成る予混合バーナ(4)であって、中空の部分円錐体(5,6)により形成された内室(9)の横断面が流れ方向で増大しており、部分円錐体(5,6)の各中央軸線(10,11)が互いにシフトされて延び、前記部分円錐体(5,6)の隣合う壁が、該部分円錐体(5,6)の長手方向で、該部分円錐体(5,6)により形成された前記内室(9)へ燃焼空気流(14)を流入させるための接線方向の空気入口スリット(12,13)を形成しており、前記内室(9)に流入する燃焼空気流(14)に少なくとも1つの燃料が混合され、前記内室(9)に液状の燃料(2)でヘッド側で稼働させることのできるノズル(17)が配置されている予混合バーナ(4)において、前記内室(9)内へ燃料(2)を噴射する噴射流が10°よりも小さい噴射角αを有するコーン形状の均一な噴射流を形成し、前記ノズル(17)が端部経過にて同じ形状の円形の案内長さ区分(1)を有し、該案内長さ区分(1)が噴射開口(19)を有しており、前記案内長さ区分(1)の上流側で、燃料を案内する供給通路の本来の横断面が、噴射ノズル(17)の端部横断面に向かって連続的に先細に形成されていることを特徴とする、予混合バーナ。」

第2.引用例
(1)当審における、平成22年11月8日付けで通知した拒絶の理由に引用した、特開平1-203809号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「1.予備混合区間を有しないバーナー中で液体燃料を予備混合形式で燃焼する方法において、バーナーの内部空間(14)内に流動方向に拡がる、内部空間(14)の壁を濡らさない円錐形の液体燃料カラム(5)を形成させ、該液体燃料カラムを接線方向にバーナー中へ流入する燃焼用空気回転流(15)によつて取り囲み、その際混合物の点火はバーナーの出口から行なわれ、かつバーナー口の範囲内に逆流帯域(6)によつて炎安定化が形成されるようにすることを特徴とする液体燃料の予備混合方式の燃焼方法。」(特許請求の範囲、下線は当審にて付与。以下同様。)

b)「3.接線方向の空気入口スリツトおよびガス状および液体燃料用供給装置を有する、1つの物体に補完する中空の部分円錐体からなる熱ガス発生用バーナーにおいて、バーナーが少なくとも2つの重なり合つて位置定めされた流動方向に末広がりに延びる中空の部分円錐体(1,2)からなり、その中心軸(1b,2b)は部分円錐体(1,2)の長手方向に互いにずらされて延びており、その際部分円錐体(1,2)により形成される円錐空洞状の内部空間(14)の内部でバーナーヘツドに燃料ノズル(3)が配置されていて、該ノズルの燃料噴射口(4)が、互いにずらされた部分円錐体(1,2)の中心軸(1b,2b)の真中にあることを特徴とする熱ガス発生用バーナー。」(特許請求の範囲)

c)「第1図によるバーナーは、2つの中空部分円錐体を互いにずらして重ねて構成されている。部分円錐体1,2のそれぞれの中心軸1b,2bを互いにずらすことにより、鏡像配置の双方の側でそれぞれ接線方向の空気入口スリツト19,20があき(第2図?第4図)、該スリツトにより燃焼用空気15がバーナーの内部空間、つまり円錐形空所14中へ流入する。双方の部分円錐体1,2は、それぞれ1つの円筒形始端部1a,2aを有し、該始端部もまた部分円錐体1,2と同様に互いにずらされて延びているので、接線方向の空気入口スリツト19,20ははじめから存在する。この円筒形始端部1a,2aにはノズル3が収納されていて、その燃料噴射口4は2つの部分円錐体1,2により形成される円錐形空所14の最狭断面と一致する。もちろん、バーナーは純円錐形、つまり円筒形始端部1a,2aなしに構成されていてもよい。双方の部分円錐体1,2は、孔17を備えているそれぞれ1つの燃料通路8,9を有し、該孔によつてガス状燃料が接線方向の空気入口スリツト19,20を通つて流入する燃焼用空気15に混入される。これらの燃料通路8,9の位置は第2図?第4図から明らかである。燃料通路8,9は接線方向の空気入口スリツト19,20の末端に取付けられているので、ここでもガス状燃料13と流入する燃焼用空気15との混合16が行なわれる。バーナーは燃焼室側22に、部分円錐体1,2用の固定部材として使用される、多数の孔11を有するフランジ状の端板10を有し、この孔により必要な場合に希釈空気ないしは冷却空気18を燃焼室22の前方部分ないしはその壁に供給することができる。ノズル3を流れる液体燃料12は、鋭角で円錐形空所14中へ、バーナー出口面にできるだけ均質な円錐形の燃料スプレーが生じるように噴射され、その際部分円錐体1,2の内壁が噴霧される液体燃料12によつて濡れないように厳密に注意しなければならない。」(公報第3頁右上欄第16行?右下欄第14行)

d)FIG.1から、2つの中空の「部分円錐体1,2」は、流れ方向で内外に嵌合して1つの部体を構成していると認められる。

上記a)?c)の記載事項、上記d)の認定事項および図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が開示されていると認められる。
「流れ方向で内外に嵌合して1つの部体を構成する2つの中空の部分円錐体1,2から成る予備混合方式のバーナーであって、中空の部分円錐体1,2により形成された円錐形空所14(内部空間)の横断面が流れ方向で増大しており、部分円錐体1,2の各中心軸1b,2bが互いにシフトされて延び、前記部分円錐体1,2の隣合う壁が、該部分円錐体1,2の長手方向で、該部分円錐体1,2により形成された前記円錐形空所14(内部空間)へ燃焼用空気15を流入させるための接線方向の空気入口スリット19,20を形成しており、前記円錐形空所14(内部空間)に流入する燃焼用空気15にガス状燃料が混入され、前記円錐形空所14(内部空間)に液体燃料12でバーナーヘッド側で稼働させることのできるノズル3が配置されている予備混合方式のバーナーにおいて、前記円錐形空所14(内部空間)内へ液体燃料12を噴射する噴射流が均質な円錐形の燃料スプレーを形成している予備混合方式のバーナー。」

(2)当審における、平成22年11月8日付けで通知した拒絶の理由に引用した、特開昭62-245011号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

a)「本例の噴霧式燃焼装置は、第1図に示すように、燃焼用空気流の旋回流を形成する旋回器(1)の中心部に設けた円筒形状の旋回室(2)の一端側に、旋回室(2)より小径の円筒形状の噴霧室(7)を同芯状に連設し、噴霧室(7)の一端側に、他端側の旋回室(2)側へ液体燃料を微粒化用空気流によつて微粒化して噴射する2流体噴射装置(8)を同芯状に設け、旋回室(2)内に点火装置(16)の先端の点火部を突出し、点火装置(16)の基端の端子に点火源(17)を接続し、旋回室(2)の他端側に、旋回室(2)より大径の円筒形状の燃焼室(18)を同芯状に連設し、燃焼室(18)の途中に絞り(19)を設けている。
旋回器(1)は、第1図と第2図に示すように、旋回室(2)の外回り位置に円環状の空気旋回路(3)を同芯状に形成し、空気旋回路(3)の外周壁の1個所にその個所の接線方向に沿つて空気導入管(4)を接続して、空気旋回路(3)に接続した空気導入路(4)を形成し、空気導入路(4)に空気供給源(5)を接続し、空気旋回路(3)と旋回室(2)の間の周壁の4個所にそれぞれその個所の内周面の接線方向に沿つて空気導入孔(6)を貫設して、空気旋回路(3)を旋回室(2)に接続し、旋回室(2)に、その軸芯の回りに旋回する燃焼用空気流を導入する構成にしている。
2流体噴射装置(8)は、第1図に示すように、噴射端を噴霧室(7)の一端に同芯状に貫着し、軸芯位置に燃料供給路(9)を形成し、燃料供給路(9)の外回り位置に空気供給路(10)を形成し、燃料供給路(9)と空気供給路(10)をそれぞれ燃料供給源(11)、空気供給源(5)に接続している。燃料供給路(9)の先端には、第3図と第4図に示すように、燃料噴出ニードル(12)を同芯状に接続し、燃料噴出ニードル(12)の外回り位置に円筒形状の旋回室(13)を同芯状に形成し、旋回室(13)と空気供給路(10)の間の周壁の4個所に、それぞれ、その個所の内周面の接線方向に沿つて空気導入孔(14)を、燃焼用空気流の旋回室(2)の空気導入孔(6)と同方向に貫設して、各空気導入孔(14)をそれぞれ燃料噴出ニードル(12)と60度の角度で斜行させ、4本の空気導入孔(14)によつて旋回室(13)に空気供給路(10)を接続し、旋回室(13)に、燃料噴出ニードル(12)の外回りに燃焼用空気流と同方向に旋回しつつ燃料噴出ニードル(12)の燃料噴出方向に流れる微粒化用空気流を導入する構成にしている。旋回室(13)の先端には、第3図に示すように、オリフイス(15)を同芯状に設け、オリフイス(15)の先細状の開口に燃料噴出ニードル(12)の噴出端を挿入して、燃料噴出ニードル(12)の噴出端から噴出する液体燃料を、燃料噴出ニードル(12)の外回りを旋回しつつオリフイス(15)の開口から噴出する微粒化用空気流によつて微粒化する構成にしている。」(公報第2頁左下欄第3行?第3頁左上欄第11行)

b)第3図から、「燃料噴出ニードル12」が「噴射開口」を有していることは明らかである。

c)第3図から、「燃料噴出ニードル12」の上流側で、燃料を案内する「燃料供給路9」の本来の横断面は、「燃料噴出ニードル12」に向かって、言い換えると、「2流体噴射装置8」の端部横断面に向かって、連続的に先細に形成されているといえる。

上記a)の記載事項、上記b)?c)の認定事項および図面の図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が開示されていると認められる。
「旋回室2へ燃焼用空気流を流入させるための接線方向の空気導入孔6を形成しており、前記旋回室2に隣接する噴霧室7に液体燃料でヘッド側で稼働させることのできる2流体噴射装置8が配置されている噴霧式燃焼装置において、前記2流体噴射装置8が端部経過にて同じ形状の円形の燃料噴出ニードル12を有し、該燃料噴出ニードル12が噴射開口を有しており、前記燃料噴出ニードル12の上流側で、燃料を案内する燃料供給路9の本来の横断面が、2流体噴射装置8の端部横断面に向かって連続的に先細に形成されている噴霧式燃焼装置。」

第3.対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「部分円錐体1,2」は、本願発明の「部分円錐体」に相当し、以下同様に、
「予備混合方式のバーナー」は「予混合バーナ」に、
「円錐形空所14(内部空間)」は「内室」に、
「中心軸1b,2b」は「中央軸線」に、
「燃焼用空気15」は「燃焼空気流」に、
「空気入口スリット19,20」は「空気入口スリット」に、
「液体燃料12」は「(液状の)燃料」に、
「バーナーヘッド側」は「ヘッド側」に、
「ノズル3」は「ノズル」に、
「均質な円錐形の燃料スプレー」は「コーン形状の均一な噴射流」に、
「燃焼用空気15にガス状燃料が混入され」ることは、「燃焼空気流に少なくとも1つの燃料が混合され」ることに、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「流れ方向で内外に嵌合して1つの部体を構成する2つの中空の部分円錐体から成る予混合バーナであって、中空の部分円錐体により形成された内室の横断面が流れ方向で増大しており、部分円錐体の各中央軸線が互いにシフトされて延び、前記部分円錐体の隣合う壁が、該部分円錐体の長手方向で、該部分円錐体により形成された前記内室へ燃焼空気流を流入させるための接線方向の空気入口スリットを形成しており、前記内室に流入する燃焼空気流に少なくとも1つの燃料が混合され、前記内室に液状の燃料でヘッド側で稼働させることのできるノズルが配置されている予混合バーナにおいて、前記内室内へ燃料を噴射する噴射流がコーン形状の均一な噴射流を形成している予混合バーナ。」の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明は、噴射流が「10°よりも小さい噴射角αを有する」のに対し、引用発明1は、「燃料スプレー」の噴射角の大きさが不明な点。

[相違点2]
本願発明は、「ノズルが端部経過にて同じ形状の円形の案内長さ区分を有し、該案内長さ区分が噴射開口を有しており、前記案内長さ区分の上流側で、燃料を案内する供給通路の本来の横断面が、噴射ノズルの端部横断面に向かって連続的に先細に形成されている」のに対し、引用発明1は、当該構成を有しているか不明な点。

第4.判断
[相違点1]について
引用例1の前記c)には、「ノズル3を流れる液体燃料12は、鋭角で円錐形空所14中へ、バーナー出口面にできるだけ均質な円錐形の燃料スプレーが生じるように噴射され、その際部分円錐体1,2の内壁が噴霧される液体燃料12によって濡れないように厳密に注意しなければならない。」と記載されていることから、部分円錐体の内壁が濡れないようになるべく小さい噴射角で燃料を噴射すべきことが示唆されていると言える。
そして、内壁が濡れない燃料の噴射角を実験等により求めることは、当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎないものであるから、相違点1に係る本願発明の構成は、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2]について
本願発明と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「燃焼用空気流」は、本願発明の「燃焼空気流」に相当し、以下同様に、
「空気導入孔6」は「空気入口スリット」に、
「液体燃料」は「液状の燃料」に、
「2流体噴射装置8」は「(噴射)ノズル」に、
「燃料噴出ニードル12」は「案内長さ区分」に、
「燃料供給路9」は「供給通路」に、それぞれ相当する。
また、引用発明2の「旋回室2」及び「旋回室2に隣接する噴霧室7」は、本願発明の「内室」の一部である。
さらに、引用発明2の「噴霧式燃焼装置」と本願発明の「予混合バーナ」とは、「バーナ」という点で共通している。

よって、引用発明2は、
「内室へ燃焼空気流を流入させるための接線方向の空気入口スリットを形成しており、前記内室に液状の燃料でヘッド側で稼働させることのできるノズルが配置されているバーナにおいて、前記ノズルが端部経過にて同じ形状の円形の案内長さ区分を有し、該案内長さ区分が噴射開口を有しており、前記案内長さ区分の上流側で、燃料を案内する供給通路の本来の横断面が、噴射ノズルの端部横断面に向かって連続的に先細に形成されているバーナ。」
と言い換えることができる。

そして、引用発明1の「予備混合方式のバーナー」と引用発明2の「噴霧式燃焼装置」は、ノズルから液体燃料を噴射し、旋回する燃焼空気流と混合させて燃焼させる「燃焼装置」という同一の技術分野に属する発明である。
そうすると、引用発明1の「予備混合方式のバーナー」に、引用発明2の「噴霧式燃焼装置」の「2流体噴射装置8」の構成を適用して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

なお、請求人は、「意見書」において「しかしながら、燃料供給路9のほとんどは一定の内径を備えており、燃料供給路9の内径の横断面が連続的に先細に形成される構成を採っていません。また、本願発明の噴射開口(19)に相当するものは、むしろ引用文献2においては燃料噴出ニードル12の方であって、その開口の横断面も連続的に先細に形成されておりません。」旨主張しているが、液体流路において、流路の断面積が小さく変化する場合に、流路の横断面を連続的に先細に形成することは、引用発明2のほか、従来から一般的に行われていることであるから、上記主張は採用できない。

そして、本願発明の奏する作用効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測できる範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-15 
結審通知日 2011-06-16 
審決日 2011-06-28 
出願番号 特願平10-303862
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 木村 麻乃佐藤 正浩  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 青木 良憲
松下 聡
発明の名称 予混合バーナ  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  

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