• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1246836
審判番号 不服2009-19154  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-07 
確定日 2011-11-10 
事件の表示 特願2006-246875「表示装置および表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月24日出願公開、特開2007-128497〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成18年9月12日(優先権主張 平成17年10月5日)の出願であって、平成21年3月17日付けで拒絶理由通知がなされ、同年5月18日付けで手続補正がなされたが、同年7月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされ、当審において、平成23年6月6日付けで拒絶理由通知がなされ、同年8月1日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成23年8月1日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「画像の表示と受光とを同時又は交互に行う表示装置において、
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、
前記複数の表示素子に隣接して配置されて、表示面に入射した光の受光を行う複数の受光素子と、
前記受光素子で受光した受光信号に基づいて、表示面に接触又は近接する物体の状態を画像データとして生成する受光画像生成部と、
前記受光画像生成部で生成した画像データを基に、表示面に接触又は近接する物体が3点であるか否かを判定する画像処理演算部と、
前記画像処理演算部で、3点の接触又は近接する物体の接触部を検出した場合、各接触部の位置に応じて、操作者の指示を判定する指示判定部とを備え、
判定した指示に応じた所定の処理を実行することを特徴とする表示装置。」

第3 引用例

1.特開平7-261932号公報

当審における平成23年6月6日付け拒絶理由通知において引用された特開平7-261932号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図1?図20を用いて説明する。本発明の一実施例では、液晶表示装置(LCD)として、反射型カラーアクティブマトリックス液晶表示装置を、センサ素子として光センサ素子を対象に説明する。」

イ.「【0013】図1は、本発明の一実施例の情報処理システムの全体構成を示したものである。100は机全体の筐体(電子机)で、水平に設置したセンサ内蔵型LCD101と垂直に設置した前面ディスプレイ102が一体化されている。・・・(中略)・・・センサ内蔵型LCD101は手等の接触部分の検知とライトペン105の座標位置を感知出来るようになっている。・・・(中略)・・・
【0014】ブロック400は機能を実現する処理装置(コンピュータ)である。さて、センサ内蔵型LCD101からはカメラで取り込んだ動画像と同じように、逐次、画像(2値)が出力される。この画像を画像取込500により取り込み、動作理解600により画像処理し、手の移動や、回転,指の動きを判断したり、ペンの座標を判断したりする。その結果はオブジェクトハンドリング処理700により処理し、表示されているオブジェクト(文書等)の移動や回転、さらにページめくり等のハンドリング処理とペン入力処理を実施する。なお、オブジェクトハンドリング処理700の処理結果はセンサ内蔵型LCD101にフェードバック表示される。」

ウ.「【0018】図3は、ライトペン操作が無いときの手の接触位置検出の概念を説明する図である。センサ内蔵型LCD101は、前述のように、表示機能は勿論のこと、手の接触位置検出機能がある。従って、図3(a)に示すように、表示物104と左手200-1と右手200-2がある場合、図3(b)200-1-S,200-2-Sのように、手が接触している部分のみを検出できる。すなわち、手が接触している部分の外部照明が各画素に対応する光センサに入射しないため、影となる。この影を取り込み処理することで、手の操作を理解することが出来る。」

エ.「【0019】次に、本発明の一実施例の特徴である、センサ内蔵型LCD101と画像入力/表示I/F 408 の具体的なブロック構成を図4で説明する。図4の101はセンサ内蔵型LCDで液晶基板SUB1,SUB2と垂直走査回路VSC、映像信号駆動回路ISCで構成される。一方、画像入力/表示I/F 408 はCPU I/F 回路,タイミング回路で構成される。・・・(中略)・・・映像信号駆動回路ISCは画像表示と画像入力の2つの機能ブロックに別れる。映像信号駆動回路ISCの左側ブロックのデータレジスタ回路,D/A回路1は画像表示ブロック,右側ブロックのシフトレジスタ回路,比較&転送回路,D/A回路2は画像入力ブロックである。そして、2つのブロック切り換えをタイミング回路の指令により行う。なお、モード切り換えは、垂直表示帰線期間になると、表示処理を休むため、この期間に画像入力モードとし、センサで検出した画像を読みだす。・・・(中略)・・・なお、水平表示帰線期間に画像読みだしを行ってもよい。」

オ.「【0022】反射型カラー液晶基板の詳細な構造を図5を用いて説明する。光センサとしては、一般的にCCDセンサとMOSセンサが多く用いられている。本発明の一実施例では、MOSセンサをLCDの各画素に対応して、設置した場合の例で示す。」

カ.「【0026】図7は、MOS型センサ内蔵型液晶基板の1画素の等価回路を示したものである。・・・(中略)・・・このように、1つの画素内に液晶素子とセンサ素子を内蔵し、信号線(ゲートバスライン,ドレインバスライン)を共用することにより、安価にMOS型センサ内蔵型液晶基板を構成することが出来る。」

キ.「【0061】図19は、動作理解処理600のフローである。本処理は、手やペンの動作から判断し、処理モードやパラメータを求めるものである。・・・(中略)・・・ペン入力モードでないとき、手による操作と判断し、一旦画像を反転させ後、手の画像の輪郭を抽出する(ステップ615)。これは、机上には手以外のものが置かれていた場合に、これを除去する(手の形を認識し、この形以外を除去))こと、手の位置,手の移動方向や傾き等を検知することのためである。・・・(中略)・・・
【0062】次に、手の位置(センサ内蔵型LCD101に対する)が表示対象物の上に重なっているかどうか判断する(ステップ620)。もし重なっていなければ、オブジェクトを離していると判断し、“オブジェクトリリース”モードを設定する(ステップ655)。一方、重なっていれば、オブジェクトを押さえていると判断し“オブジェクトホールド”モードに設定する(ステップ625)。
【0063】“オブジェクトホールド”モードになっているとき、次に、両手ともが表示対象物の画像の上にあるかどうか判定する(ステップ630)。この判定で片手のみのとき、“レイアウト/ファイル”モードに設定し(ステップ635)、両手ともあるとき、“ページハンドリング”モードに設定する(ステップ645)。」

ク.「【0065】次に、処理モード判定とパラメータ演算が出来たことにより、このデータをもとに表示対象物のハンドリング処理を行う。図20はこの処理フローを示したものである。最初に、処理モードを判定し、“レイアウト/ファイル”,“ページハンドリング”,“リリース”,“ペン処理”のいずれかを判定する(ステップ705)。
【0066】“レイアウト/ファイル”モードのとき、まず、レイアウト処理を行う(ステップ710)。そして、オブジェクトの移動先がファイルオブジェクトの座標位置に重なったとき、ファイル処理を行う(ステップ715,720)。
・・・(中略)・・・
【0069】ステップ705の判定において、“ページハンドリング”モードのとき、まず、ページめくりかどうか判定する(ステップ725)。なお、ページめくり動作中かどうかは親指の振りが有るかどうかで判定できる。もし、ページめくりであれば、“ページめくり/ページ出し入れ”処理を行う(ステップ730)。ページめくりでなければ、“ページバラシ/ページ集め”処理を行う(ステップ735)。“ページバラシ/ページ集め”処理では図15?図16のように、一方の手の移動座標ともう一方の手の固定座標との関係からページバラシかページ集めかを処理する。ページめくりのとき、レイアウト処理と同様にめくり音(パラパラ等)を疑似発生させる。
【0070】次に、ステップ705の判定で、“リリース”モードのとき、“リリース”処理される(ステップ740)。“リリース”処理740は、表示対象物から手を離した場合の処理で、その例としてレイアウト処理中にリリースする場合、ページハンドリング中に一方の手をリリースして、その手でペン入力する場合等が考えられる。」

上記ア.?ク.及び関連する図の記載によれば、次のことがいえる。

A.上記イ.の「【0013】図1は、本発明の一実施例の情報処理システムの全体構成を示したものである。100は机全体の筐体(電子机)で、水平に設置したセンサ内蔵型LCD101と垂直に設置した前面ディスプレイ102が一体化されている。・・・(中略)・・・
【0014】ブロック400は機能を実現する処理装置(コンピュータ)である。」の記載によれば、
情報処理システムは、センサ内蔵型LCDを有する電子机と、処理装置とを備える。

B.上記エ.の「【0019】次に、本発明の一実施例の特徴である、センサ内蔵型LCD101と画像入力/表示I/F 408 の具体的なブロック構成を図4で説明する。図4の101はセンサ内蔵型LCDで液晶基板SUB1,SUB2と垂直走査回路VSC、映像信号駆動回路ISCで構成される。一方、画像入力/表示I/F 408 はCPU I/F 回路,タイミング回路で構成される。・・・(中略)・・・映像信号駆動回路ISCは画像表示と画像入力の2つの機能ブロックに別れる。映像信号駆動回路ISCの左側ブロックのデータレジスタ回路,D/A回路1は画像表示ブロック,右側ブロックのシフトレジスタ回路,比較&転送回路,D/A回路2は画像入力ブロックである。そして、2つのブロック切り換えをタイミング回路の指令により行う。なお、モード切り換えは、垂直表示帰線期間になると、表示処理を休むため、この期間に画像入力モードとし、センサで検出した画像を読みだす。・・・(中略)・・・なお、水平表示帰線期間に画像読みだしを行ってもよい。」の記載、
上記ア.の「液晶表示装置(LCD)として、反射型カラーアクティブマトリックス液晶表示装置を、センサ素子として光センサ素子を対象に説明する。」の記載、
上記イ.の「【0013】・・・(中略)・・・センサ内蔵型LCD101は手等の接触部分の検知とライトペン105の座標位置を感知出来るようになっている。・・・(中略)・・・
【0014】ブロック400は機能を実現する処理装置(コンピュータ)である。さて、センサ内蔵型LCD101からはカメラで取り込んだ動画像と同じように、逐次、画像(2値)が出力される。」の記載、
上記ウ.の「すなわち、手が接触している部分の外部照明が各画素に対応する光センサに入射しないため、影となる。この影を取り込み処理することで、手の操作を理解することが出来る。」の記載、
上記カ.の「図7は、MOS型センサ内蔵型液晶基板の1画素の等価回路を示したものである。・・・(中略)・・・このように、1つの画素内に液晶素子とセンサ素子を内蔵し、信号線(ゲートバスライン,ドレインバスライン)を共用することにより、安価にMOS型センサ内蔵型液晶基板を構成することが出来る。」の記載によれば、
センサ内蔵型LCDは、反射型カラーアクティブマトリックス液晶表示装置であり、液晶基板と垂直走査回路、映像信号駆動回路で構成され、
前記液晶基板は、1つの画素内に液晶素子とセンサ素子を内蔵し、
手が前記センサ内蔵型LCDに接触すると、接触部分に対応する前記センサ素子に外部照明が入射せず、前記センサ内蔵型LCDは、この影を取り込んで手の接触部分を検知し、
前記映像信号駆動回路は、画像表示と画像入力の2つの機能ブロックに別れ、2つのブロック切り換えを行って、垂直表示帰線期間になると表示処理を休み、この期間に前記センサ素子で検出した画像を読み出し、その画像を動画像と同じように逐次出力するものである。

C.上記イ.の「【0014】ブロック400は機能を実現する処理装置(コンピュータ)である。さて、センサ内蔵型LCD101からはカメラで取り込んだ動画像と同じように、逐次、画像(2値)が出力される。この画像を画像取込500により取り込み、動作理解600により画像処理し、手の移動や、回転,指の動きを判断したり、ペンの座標を判断したりする。その結果はオブジェクトハンドリング処理700により処理し、表示されているオブジェクト(文書等)の移動や回転、さらにページめくり等のハンドリング処理とペン入力処理を実施する。」の記載、
上記キ.の「【0061】図19は、動作理解処理600のフローである。本処理は、手やペンの動作から判断し、処理モードやパラメータを求めるものである。・・・(中略)・・・ペン入力モードでないとき、手による操作と判断し、一旦画像を反転させ後、手の画像の輪郭を抽出する(ステップ615)。これは、机上には手以外のものが置かれていた場合に、これを除去する(手の形を認識し、この形以外を除去))こと、手の位置,手の移動方向や傾き等を検知することのためである。・・・(中略)・・・
【0062】次に、手の位置(センサ内蔵型LCD101に対する)が表示対象物の上に重なっているかどうか判断する(ステップ620)。もし重なっていなければ、オブジェクトを離していると判断し、“オブジェクトリリース”モードを設定する(ステップ655)。一方、重なっていれば、オブジェクトを押さえていると判断し“オブジェクトホールド”モードに設定する(ステップ625)。
【0063】“オブジェクトホールド”モードになっているとき、次に、両手ともが表示対象物の画像の上にあるかどうか判定する(ステップ630)。この判定で片手のみのとき、“レイアウト/ファイル”モードに設定し(ステップ635)、両手ともあるとき、“ページハンドリング”モードに設定する(ステップ645)。」の記載によれば、
処理装置は、動作理解処理において、センサ内蔵型LCDから取り込んだ画像を処理し、手の位置が表示対象物の上に重なっていなければ、オブジェクトリリースモードを設定し、重なっていれば、オブジェクトホールドモードを設定し、次に、オブジェクトホールドモードになっているとき、両手ともが表示対象物の画像の上にあるかどうか判定し、片手のみのとき、レイアウト/ファイルモードに設定し、両手ともあるとき、ページハンドリングモードに設定する。

D.上記イ.の「【0014】ブロック400は機能を実現する処理装置(コンピュータ)である。さて、センサ内蔵型LCD101からはカメラで取り込んだ動画像と同じように、逐次、画像(2値)が出力される。この画像を画像取込500により取り込み、動作理解600により画像処理し、手の移動や、回転,指の動きを判断したり、ペンの座標を判断したりする。その結果はオブジェクトハンドリング処理700により処理し、表示されているオブジェクト(文書等)の移動や回転、さらにページめくり等のハンドリング処理とペン入力処理を実施する。」の記載、
上記ケ.の「【0065】次に、処理モード判定とパラメータ演算が出来たことにより、このデータをもとに表示対象物のハンドリング処理を行う。図20はこの処理フローを示したものである。最初に、処理モードを判定し、“レイアウト/ファイル”,“ページハンドリング”,“リリース”,“ペン処理”のいずれかを判定する(ステップ705)。
【0066】“レイアウト/ファイル”モードのとき、まず、レイアウト処理を行う(ステップ710)。そして、オブジェクトの移動先がファイルオブジェクトの座標位置に重なったとき、ファイル処理を行う(ステップ715,720)。
・・・(中略)・・・
【0069】ステップ705の判定において、“ページハンドリング”モードのとき、まず、ページめくりかどうか判定する(ステップ725)。なお、ページめくり動作中かどうかは親指の振りが有るかどうかで判定できる。もし、ページめくりであれば、“ページめくり/ページ出し入れ”処理を行う(ステップ730)。ページめくりでなければ、“ページバラシ/ページ集め”処理を行う(ステップ735)。“ページバラシ/ページ集め”処理では図15?図16のように、一方の手の移動座標ともう一方の手の固定座標との関係からページバラシかページ集めかを処理する。ページめくりのとき、レイアウト処理と同様にめくり音(パラパラ等)を疑似発生させる。
【0070】次に、ステップ705の判定で、“リリース”モードのとき、“リリース”処理される(ステップ740)。“リリース”処理740は、表示対象物から手を離した場合の処理で、その例としてレイアウト処理中にリリースする場合、ページハンドリング中に一方の手をリリースして、その手でペン入力する場合等が考えられる。」の記載によれば、
処理装置は、オブジェクトハンドリング処理において処理モードを判定し、処理モードがレイアウト/ファイルモードのとき、レイアウト処理を行い、処理モードがページハンドリングモードのとき、ページめくりであれば、ページめくり/ページ出し入れ処理を行い、ページめくりでなければ、ページバラシ/ページ集め処理を行い、処理モードがリリースモードのとき、リリース処理を行う。

上記A.?D.によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

<引用発明>
「センサ内蔵型LCDを有する電子机と、処理装置とを備えた情報処理システムにおいて、
センサ内蔵型LCDは、反射型カラーアクティブマトリックス液晶表示装置であり、液晶基板と垂直走査回路、映像信号駆動回路で構成され、
前記液晶基板は、1つの画素内に液晶素子とセンサ素子を内蔵し、
手が前記センサ内蔵型LCDに接触すると、接触部分に対応する前記センサ素子に外部照明が入射せず、前記センサ内蔵型LCDは、この影を取り込んで手の接触部分を検知し、
前記映像信号駆動回路は、画像表示と画像入力の2つの機能ブロックに別れ、2つのブロック切り換えを行って、垂直表示帰線期間になると表示処理を休み、この期間に前記センサ素子で検出した画像を読み出し、その画像を動画像と同じように逐次出力し、
前記処理装置は、動作理解処理において、センサ内蔵型LCDから取り込んだ画像を処理し、手の位置が表示対象物の上に重なっていなければ、オブジェクトリリースモードを設定し、重なっていれば、オブジェクトホールドモードを設定し、次に、オブジェクトホールドモードになっているとき、両手ともが表示対象物の画像の上にあるかどうか判定し、片手のみのとき、レイアウト/ファイルモードに設定し、両手ともあるとき、ページハンドリングモードに設定し、
前記処理装置は、オブジェクトハンドリング処理において処理モードを判定し、処理モードがレイアウト/ファイルモードのとき、レイアウト処理を行い、処理モードがページハンドリングモードのとき、ページめくりであれば、ページめくり/ページ出し入れ処理を行い、ページめくりでなければ、ページバラシ/ページ集め処理を行い、処理モードがリリースモードのとき、リリース処理を行う、情報処理システム。」

2.特開2000-163443号公報

当審における平成23年6月6日付け拒絶理由通知において引用された特開2000-163443号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

ケ.「【0029】図1は、本発明の特徴的機能を有する形態情報機器や電子ブックの機能ブロック図である。
【0030】指位置検出部10は、ユーザーが表示部上に接触した指の位置を検出するためのものである。指位置検出部10は、表示部60に透明なタッチパネル等を重ねて構成されている。指位置検出部10で得られた検出データは処理部20へ入力される。」

コ.「【0088】また、図42(C)に示すように、画面上の3点P3、P4、P5を指で指定して、当該3点をその円周上に有する円領域856(斜線領域)をフローティング化するようにしてもよい。」

上記ケ.コ.によれば、引用例2には、次の事項が記載されている(なお、上記ケ.の「形態」は、「携帯」の誤記である。)。
「表示部に透明なタッチパネル等を重ねて構成された指位置検出部を備えた携帯情報機器において、画面上の3点を指で指定して、当該3点をその円周上に有する円領域をフローティング化すること。」

第4 対比

次に、本願発明と引用発明とを対比する。

・引用発明の情報処理システムは、センサ内蔵型LCDを備えているから、表示装置といえる。
また、引用発明のセンサ内蔵型LCDは、垂直表示帰線期間になると表示処理を休み、この期間にセンサ素子で検出した画像を読み出すが、垂直表示帰線期間と表示処理期間とが交互に生じることは技術常識であるから、画像の表示と受光とを交互に行うといえる。
したがって、引用発明の上記情報処理システムと、本願発明の「画像の表示と受光とを同時又は交互に行う表示装置」は、「画像の表示と受光とを交互に行う表示装置」の点で共通する。

・引用発明の液晶素子は、反射型カラーアクティブマトリックス液晶表示装置の画素内に内蔵されたものであるから、本願発明の「マトリクス状に配置された複数の表示素子」に相当する。

・引用発明の液晶基板は、1つの画素内に液晶素子とセンサ素子を内蔵するから、センサ素子は、複数の表示素子に隣接して配置されているといえる。
また、センサ素子は、手がセンサ内蔵型LCDに接触すると、接触部分の外部照明が入射しないから、手が接触する表示面から入射する外部照明を受光するものであり、表示面に入射した光の受光を行う受光素子といえる。
したがって、引用発明のセンサ素子は、本願発明の「前記複数の表示素子に隣接して配置されて、表示面に入射した光の受光を行う複数の受光素子」に相当する。

・引用発明のセンサ内蔵型LCDは、センサ素子で検出した画像を読み出し、その画像を動画像と同じように逐次出力するから、受光素子で受光した受光信号に基づいて画像データを生成するといえる。
また、センサ素子には、手がセンサ内蔵型LCDに接触している部分の外部照明が入射しないから、センサ内蔵型LCDから出力される画像は、センサ内蔵型LCDの表示面に接触する手の状態を示す画像データである。
したがって、引用発明のセンサ内蔵型LCDにおいて、センサ素子で検出した画像を読み出し、その画像を動画像と同じように逐次出力する構成部分と、本願発明の「前記受光素子で受光した受光信号に基づいて、表示面に接触又は近接する物体の状態を画像データとして生成する受光画像生成部」は、共に「前記受光素子で受光した受光信号に基づいて、表示面に接触する物体の状態を画像データとして生成する受光画像生成部」の点で共通する。

・引用発明の処理装置は、動作理解処理において、センサ内蔵型LCDから取り込んだ画像を処理し、手の位置が表示対象物の上に重なっていなければ、オブジェクトリリースモードを設定し、重なっていれば、オブジェクトホールドモードに設定し、次に、オブジェクトホールドモードになっているとき、両手ともが表示対象物の画像の上にあるかどうか判定し、片手のみのとき、レイアウト/ファイルモードに設定し、両手ともあるとき、ページハンドリングモードに設定する。
ここで、センサ内蔵型LCDから取り込んだ画像を処理し、両手ともが表示対象物の画像の上にあるかどうか、及び、片手のみが表示対象物の画像の上にあるかどうかを判定することは、受光画像生成部で生成した画像データを基に、表示面に接触する物体が所定数であるか否かを判定する画像処理演算といえる。
したがって、引用発明の処理装置において動作理解処理を行う構成部分と、本願発明の「前記受光画像生成部で生成した画像データを基に、表示面に接触又は近接する物体が3点であるか否かを判定する画像処理演算部」は、共に「前記受光画像生成部で生成した画像データを基に、表示面に接触する物体が所定数であるか否かを判定する画像処理演算部」である点で共通する。

・引用発明の処理装置は、オブジェクトハンドリング処理において処理モードを判定し、処理モードがレイアウト/ファイルモードのとき、レイアウト処理を行い、処理モードがページハンドリングモードのとき、ページめくりであれば、ページめくり/ページ出し入れ処理を行い、ページめくりでなければ、ページバラシ/ページ集め処理を行い、処理モードがリリースモードのとき、リリース処理を行うから、手の位置が両手とも表示対象物の上にあってページハンドリングモードが設定されると、その表示対象物に対するページめくり/ページ出し入れ処理あるいはページバラシ/ページ集め処理を行い、手の位置が片手のみ表示対象物の上にあってレイアウト/ファイルモードが設定されると、その表示対象物に対してレイアウト処理を行う。
ここで、手の位置が両手とも表示対象物の上にあると、その表示対象物に対してページめくり/ページ出し入れ処理あるいはページバラシ/ページ集め処理を行い、手の位置が片手のみ表示対象物の上にあると、その表示対象物に対してレイアウト処理を行うことは、所定数の接触する物体の接触部を検出した場合、各接触部の位置に応じて、操作者の指示を判定することといえる。
したがって、引用発明の処理装置においてオブジェクトハンドリング処理を行う構成部分と、本願発明の「前記画像処理演算部で、3点の接触又は近接する物体の接触部を検出した場合、各接触部の位置に応じて、操作者の指示を判定する指示判定部」は、共に「前記画像処理演算部で、所定数の接触する物体の接触部を検出した場合、各接触部の位置に応じて、操作者の指示を判定する指示判定部」の点で共通する。

・前記のとおり、引用発明の処理装置は、オブジェクトハンドリング処理において、手の位置が両手とも表示対象物の上にあれば、ページめくり/ページ出し入れ処理あるいはページバラシ/ページ集め処理を行い、手の位置が片手のみ表示対象物の上にあればレイアウト処理を行うから、判定した指示に応じた所定の処理を実行するといえる。
したがって、引用発明と本願発明は、共に「判定した指示に応じた所定の処理を実行する」点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明は以下の点で一致する。
<一致点>
「画像の表示と受光とを交互に行う表示装置において、
マトリクス状に配置された複数の表示素子と、
前記複数の表示素子に隣接して配置されて、表示面に入射した光の受光を行う複数の受光素子と、
前記受光素子で受光した受光信号に基づいて、表示面に接触する物体の状態を画像データとして生成する受光画像生成部と、
前記受光画像生成部で生成した画像データを基に、表示面に接触する物体が所定数であるか否かを判定する画像処理演算部と、
前記画像処理演算部で、所定数の接触する物体の接触部を検出した場合、各接触部の位置に応じて、操作者の指示を判定する指示判定部とを備え、
判定した指示に応じた所定の処理を実行することを特徴とする表示装置。」

そして、本願発明と引用発明は以下の点で相違する。

<相違点>
画像処理演算部が、本願発明では「物体が3点であるか否かを判定する」のに対し、引用発明は、手が片手か両手かを判定する点。
また、指示判定部が、本願発明では、「3点の接触又は近接する物体の接触部を検出した場合」に、操作者の指示を判定するのに対し、引用発明では、センサ内蔵型LCDに接触した手が、両手であればページめくり/ページ出し入れ処理あるいはページバラシ/ページ集め処理を行い、片手のみであればレイアウト処理を行う点。

第5 判断

物体を表示面に接触させて所定の処理を指示する表示装置の技術分野において、接触する物体の数と、その位置に応じて操作者の指示を判断することは周知である。また、表示面に接触する物体として指を用いることは周知であるから、接触する物体の数を、指の本数以下の3点とすることも、普通に想到されることである。
引用例2には、表示面に接触する指の数と、その位置に応じて操作者の指示を判断する種々の実施態様が記載されている。その1つとして「表示部に透明なタッチパネル等を重ねて構成された指位置検出部を備えた携帯情報機器において、画面上の3点を指で指定して、当該3点をその円周上に有する円領域をフローティング化すること。」が記載されている。この場合、携帯情報機器は、表示面に接触する物体が3点であるか否かを判定し、3点の接触する物体の接触部を検出した場合に、各接触部の位置に応じて、操作者の指示、すなわち、「3点の位置をその円周上に有する円領域をフローティング化する」という指示を判定しているといえる。
してみると、引用発明において、表示面に接触する物体を3点として、その物体が3点であるか否かを判定し、3点の接触する物体の接触部を検出した場合に、各接触部の位置に応じて、操作者の指示を判定し、上記相違点に係る構成とすることは容易に想到し得ることである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、及び、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-09 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-28 
出願番号 特願2006-246875(P2006-246875)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 松尾 俊介
須田 勝巳
発明の名称 表示装置および表示方法  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ