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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03B
管理番号 1247033
審判番号 不服2009-12356  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-07 
確定日 2011-11-18 
事件の表示 特願2003-395474「金型装置、プレス装置、ハンドリング装置及び方法、並びに、位置決め方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日出願公開、特開2005-154201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年11月26日の出願であって、平成20年11月11日付けで拒絶理由が起案され(発送日は同年同月18日)、平成21年1月19日付けで意見書並びに特許請求の範囲及び明細書の記載に係る手続補正書が提出され、同年3月30日付けで拒絶査定がなされ(発送日は同年4月7日)、これに対して、同年7月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年同月22日付けで審判請求書の請求の理由に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1?11に記載される発明は、平成21年1月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
(a)一方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられた発光装置と、
(b)他方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられた受光装置と、
(c)前記発光装置から受光装置までの光路の途中に配設された絞りとを有する金型装置であって、
(d)前記絞りは複数であり、前記絞りの少なくとも1つが前記金型の軸心に垂直なX軸上に配設され、他の絞りの少なくとも1つが前記金型の軸心及び前記X軸に垂直なY軸上に配設されることを特徴とする金型装置。」

3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶理由は、「この出願は、平成20年11月11日付け拒絶理由通知書に記載した理由2によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。」とするものであり、平成20年11月11日付け拒絶理由通知書に記載の理由2は、この出願の請求項1?11に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
そこで、上記理由2について、本願発明がなお特許を受けることができないものかどうかを以下で検討する。

4.刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願日前である平成8年1月16日に頒布された刊行物である特開平8-12357号公報(以下「刊行物1」という。)には次の事項が記載されている。
(刊1-ア)「【産業上の利用分野】本発明は、光学素子の製造に用いる成形型の位置合わせ方法に関する。」(【0001】)
(刊1-イ)「【実施例】
[実施例1]本実施例では、図2に示したような不連続なプリズムを成形する場合を例にとる。
(構成)図3は本実施例の位置合わせ方法を示す成形装置の要部斜視図であり、図4は本実施例を説明するための成形装置の縦断正面図である。3aは、図3に示す成形型3と同形状の略円柱状の上型であり、上型3aはWC素材にて形成され、成形面であるAとBとはそれぞれ最大粗さ0.03μm以下に鏡面加工されている。また、鏡面加工後は、酸化防止のため窒化クロムにて被覆されている。上型3aの側面には、上型3の中心軸に直角で稜線部2a、2bの稜線と平行な同一方向に上型3を貫通して開けられた貫通孔7aと、貫通孔7aと直角方向に開けられた貫通孔7dとが設けられている。3bは、上記上型3aと同一構造の下型である。」(【0008】)
(刊1-ウ)「[実施例2]図6および図7に基づき本実施例を説明する。
(構成)図6は本実施例で用いた成形型を示す斜視図である。段部(フランジ部)Dには少なくとも2以上、本実施例では2個の鉛直な(型中心軸に平行な)貫通孔7e、貫通孔7fが穿設されている。この構成と水平方向の貫通孔を除いた以外の成形型の構成は同じなのでその説明は省略する。図7は本実施例を説明するための成形装置の要部縦断正面図であり、実施例1と同じ構成は省略してある。3cは図6に示したものと同じ構造の上型で、貫通孔7eと貫通孔7fとが稜線部2aと稜線部2bとからなる稜線方向と直角方向で、かつ段部Dの中心からそれぞれ10mmの位置に穿設されている。3dは下型で、貫通孔7gと貫通孔7hとが稜線部2aと稜線部2bとからなる稜線と平行な同一方向で、かつ段部Dの中心から10mmの位置に穿設されている。その他の構造は図6に示したものと同じ構造の下型である。
上型支持部材15aには、貫通孔7eと同軸的に一致する貫通孔23と貫通孔7fと同軸的に一致する貫通孔24とが開けられており、上型3cの段部Dと嵌合する段部28と、上型上部固定部材17と嵌合する段部29とが設けられている。上型上部固定部材17には、発信器4eおよび発信器4fを装着できるように貫通孔7eおよび貫通孔7fと一致する部分が2箇所穿設されており、上型支持部材15aと嵌合するように段部30が形成されている。下型支持部材15bには、貫通孔7gと同軸的に一致する貫通孔25と貫通孔7hと同軸的に一致する貫通孔26とが穿設されている。27は上型上部固定部材17と上型支持部材15aおよび下型固定部材14と下型支持部材15bとを固定するための固定部材であり、ネジ部を有している。また、上型支持部材15aと、上型上部固定部材17と、下型支持部材15bと、下型固定部材14とには、上記固定部材27と螺合するための孔が設けられている。
4eと4fは信号であるHe-Neレーザー光線を発するための発信器であり、上型上部固定部材17に装着されている。5eと5fは光線を受信するための受信器であり、下型支持部材15bの中に装着されている。この構成と水平方向の発信器と水平方向の受信器を除いたその他の構成は実施例1と同一なのでその説明は省略する。
(作用)上型3cを上型支持部材15aの中に装着する。次に、発信器4eと発信器4fが装着された上型上部固定部材17を上型支持部材15aに装着する。そして、発信器4eと発信器4fから光線を発信する。次に、貫通孔23と貫通孔24の真下に位置出しされた図示していない受信器である検出装置を用意し、発信器4eと発信器4fとから発信された信号の強度が最大になるように、上型3cを手または図示していない上型3cを挟持できる部材にて挟持し、上型3cの中心軸を回転軸とし回動させ、検出された信号の強度が最大になった位置にて、固定部材27を螺動させ、上型3cと上型上部固定部材17と上型支持部材15aとを固定する。
貫通孔23と貫通孔24との真下から検出装置を取り除いた後、実施例1と同様に図示を省略した固定ベースを摺動させることにより、受信器5eと受信器5fとが検出する信号が最大強度になる位置に下型支持部材15bを動かす。この時、固定ベースの摺動範囲を越えてしまう場合は、上型移動ネジ部を使用して上型支持部材15aをxy軸方向に動かし、上型支持部材15aと下型支持部材15bとの相対作動にて検出する信号の最大強度位置に位置合わせを行う。受信器5eと受信器5fとが検出した信号が最大強度になった位置で図示を省略した固定ベースを固定することによって下型支持部材15bを固定し、各4本の上型移動ネジ部を螺動させ、上型支持部材15aを固定する。
次に、下型3dを下型支持部材15bの中に装着する。そして、受信器5eと受信器5fとが検出した信号が最大強度になるように下型3dをその中心軸を回転軸とし回動する。受信器5eと受信器5fとが検出した信号が最大強度になった位置にて、下型固定部材14を装着し、固定部材27によって、下型3dと下型支持部材15bと下型固定部材14とを固定する。
(効果)本実施例によると、実施例1と同様の効果に加え、鉛直方向に発信器と受信器とを配置したため実施例1の場合よりも装置を簡略化できる。」(【0019】-【0025】)
(刊1-エ)「実施例2で用いた成形型を示す斜視図」と題された第6図(6頁)には、上記摘示事項(刊1-ウ)で摘示されることを窺うことができ、さらに、符号「3」で示される「成形型」が、符号「D」で示される「段部(フランジ部)」を有し、符号「2a」「2b」で示される「稜線部」が「成形型」上に見てとれる。
そして、(刊1-イ)の「【実施例】[実施例1]本実施例では、図2に示したような不連続なプリズムを成形する場合を例にとる」、(刊1-ウ)の「[実施例2]図6および図7に基づき本実施例を説明する。・・・この構成と水平方向の発信器と水平方向の受信器を除いたその他の構成は実施例1と同一なのでその説明は省略する」の記載から、図6および図7の「成形型」は、「成形型」の「稜線部」に対応する「稜線部」を備えるプリズムを成形するものだから、「成形型」の「稜線部」は「成形型」の「型の中心軸」を通ることは技術常識に照らして明らかである。
また、「型の中心軸に平行」に符号「7e」「7f」で示される2個の「貫通孔」が「段部(フランジ部)」に穿設されていることが見てとれる。
(刊1-オ)「実施例2で用いた成形装置を示す要部縦断正面図」と題された第7図(7頁)には、上記摘示事項(刊1-ウ)で摘示されることを窺うことができ、さらに、符号「23」で示される「貫通孔」と、符号「25」で示される「貫通孔」とが略同軸上に対向し、符号「24」で示される「貫通孔」と、符号「26」で示される「貫通孔」とが略同軸上に対向することが見てとれる。

5.当審の判断
5-1.引用発明の認定
刊行物1の記載事項について検討する。
(1)(刊1-ア)の摘示から、刊行物1には、光学素子の製造に用いる成形型の位置合わせに関する発明が記載されているといえる。
(2)また、(刊1-ウ)には「図6は本実施例で用いた成形型を示す斜視図である。段部(フランジ部)Dには少なくとも2以上、本実施例では2個の鉛直な(型中心軸に平行な)貫通孔7e、貫通孔7fが穿設されている。この構成と水平方向の貫通孔を除いた以外の成形型の構成は同じなのでその説明は省略する。図7は本実施例を説明するための成形装置の要部縦断正面図であり、実施例1と同じ構成は省略してある。3cは図6に示したものと同じ構造の上型で・・・3dは下型で・・・その他の構造は図6に示したものと同じ構造の下型である。」と記載され、「図7」に示される「上型3c」「下型3d」は「図6」に示されるものであり、「図6」に示されるものは「実施例1」の成形型と貫通孔の構造以外は同じであることがわかる。
そして「実施例1で用いた成形型を示す斜視図」である「図3」には「実施例1」の成形型として「上型3a」「下型3b」が示されているから、「上型3c」「下型3d」は貫通孔の構造以外は「上型3a」「下型3b」と同じものということができる。
また、(刊1-イ)には「3aは、図3に示す成形型3と同形状の略円柱状の上型であり、上型3aはWC素材にて形成され、成形面であるAとBとはそれぞれ最大粗さ0.03μm以下に鏡面加工されている。また、鏡面加工後は、酸化防止のため窒化クロムにて被覆され」、「3bは、上記上型3aと同一構造の下型である」と摘示される。
ここで、光学素子の成形に用いられるWC素材から成形された成形型を「金型」と言い得る(要すれば、特開2003-63836号公報【0034】、特開平11-221830号公報【0037】、特開平11-180721号公報【0025】を参照)ことから、刊行物1に記載の光学素子の製造に用いる「WC素材にて形成」される「上型3a」は「金型」ということができ、また、上下の成形型は同一材質であることが通常だから「下型3b」も「金型」ということができるので、「上型3c」「下型3d」も「金型」ということができる。
(3)(刊1-ウ)には「3cは図6に示したものと同じ構造の上型で、貫通孔7eと貫通孔7fとが稜線部2aと稜線部2bとからなる稜線方向と直角方向で、かつ段部Dの中心からそれぞれ10mmの位置に穿設されている。3dは下型で、貫通孔7gと貫通孔7hとが稜線部2aと稜線部2bとからなる稜線と平行な同一方向で、かつ段部Dの中心から10mmの位置に穿設されている」と記載されており、(刊1-エ)からは「稜線部2a、2b」は「型の中心軸」を通る直線であることがわかるので、
「上型3c」は「段部D」の中心すなわち「型の中心軸」を通る直線上で「型の中心軸に平行」な「貫通孔7e」と「貫通孔7f」を「段部D」に有し、「下型3d」は「段部D」の中心すなわち「型の中心軸」を通る直線上で「型の中心軸に平行」な「貫通孔7g」と「貫通孔7h」を「段部D」に有するものであるということができる。
すると、「上型3c」の「貫通孔7e」、「貫通孔7f」は、「上型3c」の「型の中心軸」に垂直な同一の直線上に配設され、「下型3d」の「貫通孔7g」、「貫通孔7h」は、「下型3d」の「型の中心軸」に垂直な同一の直線上に配設されているということができる。
(4)(刊1-ウ)には「上型支持部材15aには、貫通孔7eと同軸的に一致する貫通孔23と貫通孔7fと同軸的に一致する貫通孔24とが開けられており、上型3cの段部Dと嵌合する段部28と、上型上部固定部材17と嵌合する段部29とが設けられている。上型上部固定部材17には、発信器4eおよび発信器4fを装着できるように貫通孔7eおよび貫通孔7fと一致する部分が2箇所穿設されており、上型支持部材15aと嵌合するように段部30が形成されている」と記載されており、「貫通孔7e」「貫通孔7f」は「上型3c」に設けられているから、
「上型3c」の「貫通孔7e」と「上型支持部材15a」の「貫通孔23」は同軸的に一致し、「発信器4e」は「貫通孔7e」と一致するように「上型上部固定部材17」に穿設された箇所に装着されるということができ、「発信器4e」「貫通孔7e」「貫通孔23」は同軸上にあると言い得る。
また、同様に「発信器4f」「貫通孔7f」「貫通孔24」は同軸上にあると言い得る。
さらに(刊1-ウ)には「27は上型上部固定部材17と上型支持部材15a・・・とを固定するための固定部材」とも記載されることから、「上型3c」と「上型支持部材15a」と「上型上部固定部材17」とは相互に固定されるものであるといえる。
すると、「上型3c」に固定された「上型上部固定部材17」に取り付けられた「発信器4e」からの信号が「貫通孔7e」、「貫通孔23」を通って発信され、同じく「発信器4f」からの信号が「貫通孔7f」、「貫通孔24」を通って発信されるものといえる。
(5)(刊1-ウ)には「下型支持部材15bには、貫通孔7gと同軸的に一致する貫通孔25と貫通孔7hと同軸的に一致する貫通孔26とが穿設されている。27は・・・下型固定部材14と下型支持部材15bとを固定するための固定部材であり」と記載されており、また「5eと5fは光線を受信するための受信器であり、下型支持部材15bの中に装着されている」とも記載され、「貫通孔7g」「貫通孔7h」は「下型3d」に設けられていることから、上記(4)の検討を踏まえると、
「下型3d」に固定された「下型支持部材15b」に取り付けられた「受信器5e」、「受信機5f」は、「発信器4e」、「発信器4f」からの信号を、「貫通孔7e」、「貫通孔23」、「貫通孔25」、「貫通孔7g」を経由して受信し得るものであり、「貫通孔7f」、「貫通孔24」、「貫通孔26」、「貫通孔7h」を経由して受信し得るものであるということができる。
(6)また、(刊1-ウ)には「4eと4fは信号であるHe-Neレーザー光線を発するための発信器であり、上型上部固定部材17に装着されている。5eと5fは光線を受信するための受信器であり、下型支持部材15bの中に装着されている。この構成と水平方向の発信器と水平方向の受信器を除いたその他の構成は実施例1と同一なのでその説明は省略する」と記載されていることから、信号の検出は、「He-Neレーザー光線」が、「発信器4e」から発信されて「貫通孔7e」(「上型3c」)、「貫通孔23」(「上型支持部材15a」)を経て、略同軸上に対向する「貫通孔25」(「下型固定部材14」)、「貫通孔7g」(「下型3d」)、「受信器5e」へ受信され、「He-Neレーザー光線」が、「発信器4f」から発信されて「貫通孔7f」(「上型3c」)、「貫通孔24」(「上型支持部材15a」)を経て、略同軸上に対向する「貫通孔26」(「下型固定部材14」)、「貫通孔7h」(「下型3d」)、「受信器5f」へ受信されることで行われるものということができ、上記「貫通孔7e」、「貫通孔7g」、「貫通孔7f」、「貫通孔7h」は「He-Neレーザー光線」の「光路の途中に配設」されたものということができる。
(7)以上から、上記(刊1-ア)?(刊1-オ)を、上記の検討にしたがって、本願発明の記載ぶりに則して表現すると、刊行物1には、
「 (a)上型3cに固定された上型上部固定部材17に取り付けられた発信器4e、発信器4fと、
(b)下型3dに固定された下型支持部材15bに取り付けられた受信器5e、受信機5fと、
(c)前記発信器4eから受信器5eまでの光路の途中に配設された貫通孔7e、貫通孔7g、
前記発信器4fから受信器5fまでの光路の途中に配設された貫通孔7f、貫通孔7hとを有する金型装置であって、
(d)上型3cの貫通孔7e、貫通孔7fは、上型3cの型中心軸に垂直な同一の直線上に配設され、下型3dの貫通孔7g、貫通孔7hは、下型3dの型中心軸に垂直な同一の直線上に配設されている金型装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

5-2.本願発明と引用発明との対比
i)引用発明の「上型3c」、「下型3d」は、上記「5-1.(2)」の検討から、本願発明の「一方の金型」、「他方の金型」にそれぞれ相当するということができる。
ii)引用発明の「上型上部固定部材17」、「下型支持部材15b」は、上記「5-1.(4)、(5)」の検討から、本願発明の「一方の金型」に「連結された部材」、「他方の金型」に「連結された部材」にそれぞれ相当するということができる。
iii)引用発明の「発信器4e、発信器4f」は、本願発明の「発光装置」にあたり、引用発明の「受信器5e、受信機5f」は、本願発明の「受光装置」にあたることは明らかである。
iv)本願発明では「上金型22と下金型21との位置にズレが生じた場合、すなわち、軸心ズレが生じた場合には、下側光路変換部材33の上端面の絞り孔33aを通って上方向に射出されたレーザ光が、上側光路変換部材34の下端面の絞り孔を通過する際に減少することになり、上側光路変換部材34内に入射する光量も減少することになる」(【0042】)ものだから、本願発明の「発光装置から受光装置までの光路の途中に配設された絞り」は「軸心ズレが生じた場合」に「光量」の減少、すなわち信号強度を弱めさせるものである。
この点に関して、引用発明の「金型装置」について以下に検討する。
a)(刊1-ウ)に「(作用)上型3cを上型支持部材15aの中に装着する。次に、発信器4eと発信器4fが装着された上型上部固定部材17を上型支持部材15aに装着する。そして、発信器4eと発信器4fから光線を発信する。次に、貫通孔23と貫通孔24の真下に位置出しされた図示していない受信器である検出装置を用意し、発信器4eと発信器4fとから発信された信号の強度が最大になるように、上型3cを手または図示していない上型3cを挟持できる部材にて挟持し、上型3cの中心軸を回転軸とし回動させ、検出された信号の強度が最大になった位置にて、固定部材27を螺動させ、上型3cと上型上部固定部材17と上型支持部材15aとを固定する」とあることから、
引用発明の「金型装置」では、はじめに、「上型3c」、「発信器4e」、「発信器4f」を装着した「上型支持部材15a」を、「図示していない受信器である検出装置」を用いて「発信器4e」と「発信器4f」とから発信された「信号であるHe-Neレーザー光線」の信号の強度が最大になるように「上型3c」と「上型上部固定部材17」と「上型支持部材15a」とを移動させて固定し、「上型3c」の位置を固定しているということができる。
b)(刊1-ウ)に「貫通孔23と貫通孔24との真下から検出装置を取り除いた後、実施例1と同様に図示を省略した固定ベースを摺動させることにより、受信器5eと受信器5fとが検出する信号が最大強度になる位置に下型支持部材15bを動かす。この時、固定ベースの摺動範囲を越えてしまう場合は、上型移動ネジ部を使用して上型支持部材15aをxy軸方向に動かし、上型支持部材15aと下型支持部材15bとの相対作動にて検出する信号の最大強度位置に位置合わせを行う。受信器5eと受信器5fとが検出した信号が最大強度になった位置で図示を省略した固定ベースを固定することによって下型支持部材15bを固定し、各4本の上型移動ネジ部を螺動させ、上型支持部材15aを固定する」とあることから、
引用発明の「金型装置」では、次に、「図示していない受信器である検出装置」を取り除いた後に、「上型3c」の「発信器4e」「発信器4f」からの「信号であるHe-Neレーザー光線」を「下型支持部材15b」に設置される「受信器5e」と「受信器5f」が検出し、その信号が最大強度になる位置に「下型支持部材15b」をxy軸方向に動かして固定しているということができる。
c)(刊1-ウ)に「次に、下型3dを下型支持部材15bの中に装着する。そして、受信器5eと受信器5fとが検出した信号が最大強度になるように下型3dをその中心軸を回転軸とし回動する。受信器5eと受信器5fとが検出した信号が最大強度になった位置にて、下型固定部材14を装着し、固定部材27によって、下型3dと下型支持部材15bと下型固定部材14とを固定する」とあることから、
引用発明の「金型装置」では、おわりに、上記b)で位置を固定された「下型支持部材15b」の中に「下型3d」を装着し、「上型3c」の「発信器4e」、「発信器4f」からの「信号であるHe-Neレーザー光線」を、それぞれ「受信器5e」、「受信器5f」で検出し、検出した信号が最大強度になるように「下型3d」をその中心軸を回転軸とし回動し、検出した信号が最大強度になった位置にて、「下型3d」と「下型支持部材15b」と「下型固定部材14」とを固定しているということができる。
d)以上から、引用発明では、位置決め固定された「上型3c」(上記a)を参照)に対して、「下型支持部材15b」を、検出した信号が最大強度になる位置へxy軸方向に移動させて位置決め固定(上記b)を参照)し、「下型支持部材15b」内に「下型3d」を装着し、検出した信号が最大強度になる位置へ「下型3d」を回動(上記c)を参照)し、「上型3c」と「下型3d」との位置合わせを行うものということができる。
すると、引用発明では、「発信器4e、発信器4f」から発信した信号が、「受信器5e、受信機5f」で検出されて、その信号が最大強度になった位置へ「上型3c」、「下型3d」を位置合わせするが、その際に「発信器4eから受信器5eまでの光路の途中に配設された貫通孔7e、貫通孔7g」、「発信器4fから受信器5fまでの光路の途中に配設された貫通孔7f、貫通孔7h」は、それらの光軸からの位置がずれれば受信器に到達する光量が減少するから、それは信号強度を弱くするものといえる。
そうであれば、本願発明と引用発明とは、発光側と受光側とでレーザー光の光軸がずれれば光量の減少により信号強度が減少するので、光軸がずれないように上下型の位置を調整して信号強度が最大になるようにして上下型の位置を調整するという機能が共通することから、引用発明の「貫通孔7e、貫通孔7g」、「貫通孔7f、貫通孔7h」は本願発明の「複数」の「絞り」に相当すると云うことができる。
v)そして、引用発明では「上型3cの貫通孔7e、貫通孔7fは、上型3cの型中心軸に垂直な同一の直線上に配設され、下型3dの貫通孔7g、貫通孔7hは、下型3dの型中心軸に垂直な同一の直線上に配設されている」ことから、「上型3c」でも「下型3d」でも、それぞれの「貫通孔7e、貫通孔7f」、「貫通孔7g、貫通孔7h」は「型中心軸に垂直な同一の直線上に配設され」ているのに対し、本願発明では「絞りの少なくとも1つが前記金型の軸心に垂直なX軸上に配設され、他の絞りの少なくとも1つが前記金型の軸心及び前記X軸に垂直なY軸上に配設される」ものであるから、引用発明と本願発明とは、「金型の軸心に垂直な直線上に二つの絞りが配設される」ものである点で共通する。
vi)以上から本願発明と引用発明とは、
「(a)一方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられた発光装置と、
(b)他方の金型又は該金型に連結された部材に取り付けられた受光装置と、
(c)前記発光装置から受光装置までの光路の途中に配設された絞りとを有する金型装置であって、
(d)前記絞りは複数であり、金型の軸心に垂直な直線上に絞りが配設される金型装置。」
である点(一致点)で一致し、次の点で両者は相違する。

(相違点)本願発明では「絞りの少なくとも1つが前記金型の軸心に垂直なX軸上に配設され、他の絞りの少なくとも1つが前記金型の軸心及び前記X軸に垂直なY軸上に配設される」ものであるのに対し、引用発明では、金型の軸心に垂直な同一の直線上に二つの絞りが配設される点

5-3.相違点の検討
上記相違点について検討するに、キャビティを形成するために互いに位置合わせされる二つの金型の位置ズレ防止のために、金型の軸心に垂直な一つの軸(以下、「A軸」という。)上と、金型の軸心及び前記軸に垂直な軸(以下、「B軸」という。)上とに、位置ズレ防止のための機構を設けることは、例えば特開平10-113951号公報(【図4】、【図6】、【0027】)(以下、「周知例1」という。)や、実願昭61-69103号(実開昭62-180515号)のマイクロフィルム(第1図、第2図)(以下、「周知例2」という。)に記載されるように周知技術ということができ、当該機構であれば、金型の上記A軸上の位置ズレも、該A軸と直交する上記B軸上の位置ズレも共に調整ができるから、金型面がどの方向に傾いていても、その傾きを把握することのできることは、当該機構の配置位置から自明ということができる。
すると、引用発明においても、「貫通孔」すなわち「絞り」の機能は「上型3c」「下型3d」の位置ズレ防止にあるから、これに上記周知技術を適用して、「貫通孔」すなわち「絞り」の配置位置を、「金型の軸心に垂直な一つの軸上と、金型の軸心及び前記軸に垂直な軸上」すなわち「金型の軸心に垂直なX軸上に配設され、他の絞りが前記金型の軸心及び前記X軸に垂直なY軸上に配設」されるようになし、上記相違点の構造に想到することに格別の困難性は見いだせない。

6.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知例1,2に代表される周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、その余の請求項に記載された発明に言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-08 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-09-27 
出願番号 特願2003-395474(P2003-395474)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増山 淳子  
特許庁審判長 木村 孔一
特許庁審判官 目代 博茂
中澤 登
発明の名称 金型装置、プレス装置、ハンドリング装置及び方法、並びに、位置決め方法  
代理人 小島 誠  

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