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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1247064
審判番号 不服2009-22281  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-16 
確定日 2011-11-17 
事件の表示 特願2005-281144「リソグラフィ方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 4月12日出願公開、特開2007- 95859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年(2005年)9月28日に出願された特願2005-281144号であって、平成21年8月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年11月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当該請求と同時に手続補正がなされた。
その後、当審において、平成23年6月1日付けで平成21年11月16日付けの手続補正に対する補正の却下の決定を行い、当該補正の却下の決定と同時に拒絶の理由の通知をしたところ、これに対して同年8月8日付けで手続補正がなされた。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成23年8月8日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「フォトマスクに描かれた微細パターンを転写するリソグラフィ方法において、
上記フォトマスクにおける上記微細パターンが予め形成されたパターニング面に、光に対して感光しない電子線レジスト膜を表面に形成させた基板を近接配置し、
上記電子線レジスト膜に感光しない波長の光を上記フォトマスクへ照射し、
上記照射された光に基づき上記パターニング面に形成された微細パターンのエッジのみに近接場光を発生させ、
その発生させた近接場光により発現した非断熱近接場光化学反応に基づいて当該パターニング面に近接された上記レジスト膜を上記波長の光に基づき発生する近接場光により上記エッジのみ感光させること
を特徴とするリソグラフィ方法。」

第3 引用例
1 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-235574号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトマスクに描かれた回路パターンを、試料の表面に塗布されたレジスト膜上に転写するレジストパターン形成方法、かかる工程を有するデバイスの作製方法につき、特にナノメータサイズのパターニングを実現することに好適なレジストパターン形成方法、デバイスの作製方法に関する。」

「【0019】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明に係るレジストパターン形成方法を実現するための露光システム1につき、図1を参照して詳細に説明する。
【0020】
露光システム1は、光を出射するための光源11と、光源11から出射された光を集光する照明光学系12と、集積回路パターンが描かれたフォトマスク13とを備えている。また、この露光システム1には、例えばシリコン酸化膜等で構成され、表面にレジスト膜22が形成された基板21が、フォトマスク13に接触するように配設される。
【0021】
光源11は、図示しない駆動電源による制御に基づき、約684nmの波長の光を出射するパルス光源である。ちなみに、この光の波長は、レジスト膜22を構成する分子が感光する波長より長ければ、換言すれば、レジスト膜を構成する分子間の共鳴エネルギーに相当する光の波長より長い、いわゆる非共鳴光であればよい。ちなみにこの光源11の周囲には、図示しない冷却装置から送出される冷却媒体を循環させてもよい。
【0022】
照明光学系12は、偏光レンズを有し、光源11から出射された光の偏光方向を、集積回路パターンの座標や方向に基づき制御する。また、この照明光学系12は、焦束レンズを有し、フォトマスク13上に照射するビーム径やビーム形状を制御する。また照明光学系12は、光源11と相俟って、フォトマスク13に対する光の入射角度を制御する。
【0023】
フォトマスク13は、光を遮蔽するCr薄膜を集積回路パターンに応じて形成した石英ガラス板からなり、上述した照明光学系12によりビーム径等が制御された光が照射される。このフォトマスク13において、Cr薄膜が形成されている領域に照射される光は遮蔽され、またCr薄膜が形成されていない領域を透過した光は、そのままレジスト膜22を照明することになる。すなわち、この集積回路パターンを予め描いたフォトマスク13に、上述の如く光を照射することにより、当該パターンをレジスト膜2へ転写することができる。
【0024】
なお、この露光システム1では、フォトマスク13と、前工程のおける集積回路パターンとの間で容易にマスク合わせを行うために、高精度ステージや干渉系による位置決め機構、さらにはアライメントマーク読み取り光学系等を備えるようにしてもよい。
【0025】
レジスト膜22は、光に感応して化学反応を起こす有機感光樹脂である。このレジスト膜22として、光の照射された領域につき、重合,架橋して現像液に不溶になるネガ型、又は、光の照射された領域につき分解して現像液に対して可溶になるポジ型のいずれを適用してもよい。
【0026】
次に本発明を適用したレジストパターン形成方法を含む光リソグラフィ工程につき図2を用いて詳細に説明をする。
【0027】
先ずステップS11において、基板21上にレジスト膜22を形成する。このレジスト膜22の形成には、例えばスピンナー法を採用してもよい。このスピンナー法では、レジストの粘度、固形分含有量及び溶剤の蒸発速度を参照しつつ、スピンナーの回転数を制御することにより、所望の膜厚を得ることができる。ちなみに、レジスト膜22の形成後、膜中に含まれている溶剤を除去すべくプリベークを行う。
【0028】
次にステップS12に移行し、基板21に対するフォトマスク13の重ね合わせを実行する。このステップS12において、レジスト膜22が塗布された基板21とフォトマスク13とが密着させるようにすることで、発生させた近接場光がレジスト膜22に到達するようになる。なお、このステップS12において、レジスト膜22が塗布された基板21とフォトマスク13との間隔につき、照射する光の波長に基づき決定してもよい。
【0029】
次にステップS13へ移行し、照明光学系12からフォトマスク13へ光を照射する。ちなみに、このレジストパターン形成方法において照射する光は、いわゆる非共鳴光であるため、レジスト膜22は、フォトマスク13を透過した光により直接的に感応せず、化学変化することない。
【0030】
しかしながら、後述するメカニズムにより、集積回路パターンのエッジ部分において、非共鳴の近接場光が発生する。そして、この近接場光にレジスト膜22が感応する結果、当該集積回路パターンに応じた局所領域において化学反応が進行することになる。
【0031】
次にステップS14へ移行し、レジスト膜22を現像液を用いて現像することにより、レジストパターンを形成する。レジスト膜22が、仮にポジ型である場合には、かかる近接場光に感応した領域につき現像液を用いて取り除くことができる。ちなみに、現像を終了させた後に、レジスト膜22と基板21との密着性を向上させるべく、ポストべークを行うようにしてもよい。
【0032】
このようにして形成したレジストパターンを、次のステップS15において、いわゆるエッチングマスクとして基板21をエッチングし、さらにステップS16においてレジスト膜22を剥離することにより、一連の光リソグラフィ工程が終了することになる。
【0033】
図3は、レジスト膜22を構成する各分子における原子核間距離に対するポテンシャルエネルギーの関係を示している。通常の露光では、ポジ型のレジスト膜22を構成する分子に対して、基底準位と励起準位とのエネルギー差Eaに相当する帯域の光(以下、この光を共鳴光という。)を照射することにより、励起準位へ励起させる。この励起準位は、解離エネルギーEbを越えているため、点線矢印で示される方向へ分子を光解離させることができる。
【0034】
ちなみに本発明において、レジスト膜22を構成する分子は、上述の如く非共鳴の近接場光を受け、複数回の光吸収による励起(多段階遷移過程)を経て解離する。例えば図3に示すように、レジスト膜22を構成する分子は、Eaに相当する光の波長より長い非共鳴光を受光して分子軌道準位へ一度励起し、次にこの分子軌道準位より高準位の分子軌道準位へ励起して、3回目の光吸収による励起により励起準位へ、若しくは分子解離軌道準位へ励起させることができる。
【0035】
このように、分子振動を励起させることができる理由は、近接場光が照射されることにより、ボルン・オッペンハイマー近似が破れ、分子の振動レベルへの直接的な励起が生じているためである。
【0036】
図4はかかる励起について調和振動子モデルを用いて説明するための図である。この図4において分子B1、B2は、レジスト膜22を構成する分子であり、また電子A1、A2は、各分子B1、B2と互いに対になる電子である。
【0037】
レジスト膜22に照射する近接場光の振幅分布は空間的に異なるため、原子A1、A2の振動状態も互いに異なる。例えば、互いに近接場光を受けた電子A1の振幅が電子A2の振幅よりも長い場合には、図4に示す各タイミングt1?t3のうち、特にタイミングt1,t3において、電子間の距離が長くなる。かか
るタイミングにおいて、電子A1と電子A2との引力が大きくなるため、各電子
A1,A2と対になる分子B1,B2の距離も接近することになる。
【0038】
すなわち、このような空間的に振幅の異なる非共鳴の近接場光をレジスト膜22へ照射することにより、電子A1,A2のみならず、分子B1,B2の距離も周期的に変化させることにより、図中矢印方向へ振動させることができる。これにより、分子B1、B2を分解させて、これらを励起準位へ、若しくは分子解離軌道準位へ励起させることができる。」

「【図2】



2 引用例1に記載された発明の認定
上記記載(図面の記載も含む)を総合すれば、引用例1には、
「フォトマスク13に描かれた集積回路パターンを、試料の表面に塗布されたレジスト膜22上に転写する光リソグラフィの方法において、
フォトマスク13における集積回路パターンに応じてCr薄膜が形成された面と基板におけるレジスト膜22が塗布された面が対向するように、照射する光の波長に基づいて決定された間隔で基板21とフォトマスク13を密着させ、
フォトマスク13へ、レジスト膜22が直接的に感応しない波長の光を照射し、
上記の照射した光により、集積回路パターンのエッジ部分のみにおいて、非共鳴の近接場光が発生し、
近接場光が照射されることにより、ボルン・オッペンハイマー近似が破れ、分子の振動レベルへの直接的な励起が生じ、この近接場光にレジスト膜22が感応する結果、当該集積回路パターンに応じた局所領域において化学反応が進行する光リソグラフィの方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

3 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-332196号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はエバネッセント光露光装置及び露光方法に関する。本発明は特に100nm以下の大きさの微細加工に用いられるエバネッセント光露光装置に良好に適用できる。」

「【0018】また、レジスト・基板116に密着する側の金属薄膜321の表面が平坦でないと、マスクとレジスト・基板116がうまく密着せず、結果として露光むらを生じてしまう。このため、金属薄膜321の表面の凹凸の大きさは、少なくとも100nm以下、望ましくは10nm以下という極めて平坦なものである必要がある。ここで、開口パタンの形状(幅・長さ)や大きさに関しては制限がなく、所望の形状を選択することができる。例えば、図3(a)に示したようなカギ型パタンでも良いし、S字パタンでも良い。上述のように、光の波長よりも小さい開口パタン323(図2では、第1の開口パタン218)であってもエバネッセント光は惨み出しているので、エバネッセント光マスク上の開口パタンとして用いることができる。光の波長より大きい開口パタン324(図2では、第2の開口パタン219)においても、エバネッセント光マスク表面とレジスト表面との間の全反射界面からエバネッセント光が惨み出しており、エバネッセント光マスク上の開口パタンとして用いることができる。しかも、開口パタンの大きさに関わらず、エバネッセント光で露光を行なうので、開口の大きさによって露光むらを生じることもない。したがって、エバネッセント光マスク上の開口パタンとしては、光の波長よりも小さい開口パタンのみで構成しても良いし、あるいは、これらに加えて光の波長よりも大きい開口パタンを混在させて構成しても良い。これらのことも本発明のエバネッセント光マスクに対しても言えることである。
【0019】なお、エバネッセント光露光装置に適用する被加工用の基板102として、Si、GaAs、InP等の半導体基板や、ガラス、石英、BN等絶縁性基板、それらの基板上に金属や酸化物、窒化物等を成膜したものなど広く用いることができる。基板102としては、なるべく平坦なものを選択する必要がある。同様に、エバネッセント光露光で用いるレジスト109は、表面の凹凸が小さく平坦である必要がある。また、エバネッセント光マスク101から惨み出た光は、マスクから距離が遠ざかるにつれて指数関数的に減衰するため、レジスト109に対して100nm以上の深いところまで露光しにくいこと、及び、散乱されるようにレジスト中に広がり、露光パタン幅を広げることになることを考慮すると、レジスト109の厚さは、少なくとも100nm以下で、さらにできるだけ薄い必要がある。
【0020】以上から、レジスト材料・コーティング方法として、少なくとも100nm以下、望ましくは10nm以下の膜厚であって、かつ、レジスト表面の凹凸の大きさが少なくとも100nm以下、望ましくは10nm以下という極めて平坦なものであるような材料・コーティング方法を用いる必要がある。このような条件をみたすものとして、普通用いられるような光レジスト材料をなるべく粘性が低くなるように溶媒に溶かし、スピンコートで極めて薄くかつ均一厚さになるようコーティングしてもよい。また、他の光レジスト材料コーティング方法として、一分子中に疎水基、親水基官能基を有する両親媒性光レジスト材料分子を水面上に並ベた単分子膜を所定の回数、基板上にすくい取ることにより、基板上に単分子膜の累積膜を形成するラングミュアー・ブロジェット(LB)法を用いても良い。また、溶液中や気相中で、基板に対して、一分子層だけ物理吸着あるいは化学結合することにより基板上に光レジスト材料の単分子膜を形成する自己配向単分子膜形成法(SAM法)を用いても良い。これらのコーティング方法のうち、後者のLB法やSAM法は極めて薄いレジスト膜を均一な厚さで、しかも表面の平坦性よく形成することができるため、本発明のエバネッセント光露光装置にきわめて適した光レジスト材料のコーティング方法である。
【0021】上記に説明したとおり、エバネッセント光露光においては、露光領域全面にわたりエバネッセント光マスク101とレジスト・基板116の間隔は100nm以下でしかもばらつきなく一定に保たれている必要がある。このため、エバネッセント光露光に用いる基板としては、他のリソグラフイープロセスを経て、すでに凹凸を有するパタンが形成され、基板表面に100nm以上の凹凸があるものは好ましくなく、他のプロセスをあまり経ていないプロセスの初期の段階のできるだけ平坦な基板が望ましい。したがって、エバネッセント光露光プロセスと他のリソグラフイープロセスを組み合わせる場合も、エバネッセント光露光プロセスをできるだけ、初めに行なうようにするのが望ましい。以上の説明では、基板全面に対応するエバネッセント光マスクを用い、基板全面に一括でエバネッセント光露光を行なう装置について説明を行った。本発明の概念はこれに限定されるものでなく、基板より小さなエバネッセント光マスクを用い、基板の一部分に対するエバネッセント光露光を行なうことを基板上の露光位置を変えて繰り返し行なうステツプ・アンド・リピート方式の装置としても良い。」

4 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-109545号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な開環メタセシス重合体水素添加物に関し、更には、耐熱性、耐熱分解性、光透過性等に優れた紫外線や遠紫外線(エキシマーレーザー等を含む)を用いた半導体微細加工用フォトレジストに用いられるポリマーに適した開環メタセシス重合体の水素添加物を提供し、かつそのような重合体の水素添加物の製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体集積回路は集積化が進んで大規模集積回路(LSI)や超大規模集積回路(VLSI)が実用化されており、また、これとともに、集積回路の最少パターンはサブミクロン領域におよび、今後更に微細化される傾向にある。微細パターンの形成には、薄膜を形成した被処理基板上をレジストで被覆し、選択露光を行って所望パターンの潜像を形成した後に、現像してレジストパターンを作り、これをマスクとしてドライエッチングを行い、その後にレジストを除去することにより所望のパターンを得るリソグラフィ技術の使用が必須である。
【0003】このリソグラフィ技術において使用される露光光源としてg線(波長436nm)、i線(波長365nm)の紫外線光が使用されているが、パターンの微細化に伴い、より波長の短い遠紫外線光、真空紫外線光、電子線(EB)、X線などが光源として使用されるようになってきている。特に最近では、エキシマレーザ(波長248nmのKrFレーザー、波長193nmのArFレーザー)が露光光源として注目されており、微細パターンの形成に有効であると期待されている。
【0004】より短波長である真空紫外領域の露光光を用いてサブミクロンパターンを形成するためのレジスト材料に用いられる重合体又は共重合体としては、例えば、エステル部にアダマンタン骨格及び酸により脱離する保護基を有するアクリル酸エステル又はα置換アクリル酸エステルの重合体又は共重合体(特開平4-39665号公報参照)、エステル部にノルボルナン骨格及び酸により脱離する保護基を有するアクリル酸エステル又はα置換アクリル酸エステルの重合体又は共重合体(特開平5-257281号公報参照)、シクロヘキシルマレイミドの重合体又は共重合体(特開平5-257285号公報参照)、セルロース骨格を主鎖に含み該主鎖が酸により開裂を起こす高分子化合物(特開平6-342212号公報参照)、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールの誘導体(特開平7-333850号公報参照)等数多くの重合体及び共重合体が提案されている。
【0005】しかしながら、耐ドライエッチング性、遠紫外線に対する透明性、レジスト溶剤に対する溶解性、現像液に対する濡れ性、シリコン等の基板への密着性及び剥離剤に対する溶解性等レジスト材として用いられるのに必要な諸性質全てを満足し、しかも合成容易な重合体及び共重合体は未だなく、更なる開発が求められている。
【0006】一方、脂肪族環状炭化水素を主鎖とし、酸により分解する官能基を有する環状骨格を有する高分子化合物からなるフォトレジスト組成物(WO97/33198号)に見られる様な環状高分子は、耐ドライエッチング性が優れ、遠紫外線に対する透明性に優れているが、高濃度でのレジスト溶剤に対する溶解性、現像液に対する濡れ性、シリコン基板への密着性が悪いと言う課題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、レジスト材用のポリマーとして用いられるのに必要な上記の諸性能全てを満足し、しかも狭い分子量分布を有する開環メタセシス重合体の水素添加物を提供し、かつそのような重合体の水素添加物の製造方法を提供することを目的とするものである。
【0008】又、本発明はそのような重合体の水素添加物を用いた、耐ドライエッチング性、遠紫外線に対する透明性、レジスト溶剤に対する溶解性、現像液に対する濡れ性、シリコン等の基板への密着性及び剥離剤に対する溶解性等の諸特性に優れたレジスト材料を提供することを目的とする。」

「【0072】本発明において、リビング開環メタセシス重合によって得られる重合体は、開環メタセシス重合がリビング重合反応であるため、単量体と触媒のモル比を制御することによって、所望の分子量の重合体を得ることができる。また、連鎖移動剤としてオレフィンまたはジエンの存在下でリビング開環メタセシス重合を行うことでリビング重合反応を保ちながら、単量体と連鎖移動剤と触媒のモル比を制御することによっても、所望の分子量の重合体を得ることができる。このリビング重合で得られた分子量は、ポリスチレン換算での数平均分子量Mnが500?100,000である。好ましくは、1,000?50,000であり、特に、好ましくは3,000?20,000である。また、単量体及び連鎖移動剤の性質によって多少の差異はあるものの重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.0?2.0の狭い分子量分布の範囲に制御され、この開環メタセシス重合体を水素添加触媒の存在下で水素添加した後でも、あるいは加水分解した後でもこの分子量分布の範囲は変わらない。この範囲の分子量と狭い分子量分布は、レジスト材を溶媒に溶解させ、シリコンウェハーに回転塗布機で塗布する工程において、均一な平滑コーティング膜を形成する上で極めて重要なことである。したがって、レジスト材として分子量及び分子量分布を決める重合をリビング重合で行うことは、その後に重合体の主鎖部分のオレフィンを水素添加し、官能基を加水分解して製造したポリマーが、極性溶媒に対する溶解度、シリコンウェハー表面との密着性または、その表面への塗布性を高めたレジスト材の機能を発現するために極めて重要である。」

5 当審において通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2004-354130号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。

「【0016】
[実施例4]
図4に、本発明の実施例4における誘電率センサへッドの構成を示す。図4において、401は金属基板、402は金属基板上に形成した誘電体薄膜、403は誘電体薄膜上に形成した金属細線アレイである。ここでアレイ状の金属細線403は、該金属細線の前記基板上の配列方向と直交する該基板と平行な方向の長さが、照射光波長よりも長く、細線の断面サイズは照射光波長よりも小さくなっている。また、実施例1と異なり、細線の断面サイズは、全て同じになっている。一方、細線どうしの間隔が5nmから200nmまで少しずつ異なっている。
【0017】
石英基板上にスパッタ法を用いて、膜厚500nmの金属薄膜401を成膜する。その上に50nm厚のSiO2402、50nm厚の金属薄膜を成膜した。電子線レジストをスピンコートで成膜し、近接場露光装置で露光した。現像後、パタン間の距離100nm、パタンの横幅が20nmから500nmのレジストパターンを得た。レジストパタンをエッチングマスクとして、金属薄膜をエッチングした。レジストを除去して、金属細線アレイ403を形成した。金属細線アレイ403に表面処理を行ったのち、センサ材料を結合させる。
【0018】
金属細線の局在プラズモン共鳴は、細線間の距離が100nm以下のときに細線間の距離に依存した共鳴スペクトルを有する。また、この共鳴スペクトルは周辺媒質の誘電率にも依存するので、403のような構成の金属細線アレイによって、実施例1と同様の検出原理によって、誘電率の変化を検出することが可能であり、これを用いた化学センサを構成できる。」

第3 対比・判断
1 本願発明と引用発明を対比する。

(1)引用発明の「集積回路パターン」が本願発明の「微細パターン」に相当するから、引用発明の「フォトマスク13に描かれた集積回路パターンを、試料の表面に塗布されたレジスト膜22上に転写する光リソグラフィの方法」が、本願発明の「フォトマスクに描かれた微細パターンを転写するリソグラフィ方法」に相当する。

(2)ア 引用発明の「フォトマスク13における集積回路パターンに応じてCr薄膜が形成された面」が本願発明の「上記フォトマスクにおける上記微細パターンが予め形成されたパターニング面」に相当する。

イ 本願発明の「光に対して感光しない電子線レジスト膜」に関しては、「電子線レジスト膜」について、平成23年8月8日付けの手続補正により「光に対して感光しない」と特定して補正されたものである。そして、この点について、請求人は同日付けで提出された意見書において「「光に対して感光しない」でいうところの「光」とは、可視光、紫外光、赤外光等、一般的に光と解される全てのものをいう。」という見解を示している。しかしながら、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面においては、「可視光、紫外光、赤外光等、一般的に光と解される全てのもの」に感光しない「電子線レジスト膜」についてはどこにも記載されていない。詳述すれば、「電子線レジスト膜」については、本願の明細書の【0024】において「このレジスト膜22は、光源11からの光に対して感光しないことが条件となる。このため、レジスト膜22としては、例えばZEP-520(日本ゼオン社製)等を適用するようにしてもよい。」と記載されていることから、【0024】においては「光源11からの光」に対しては感光しないことが記載され、また、一例として「ZEP-520(日本ゼオン社製)」が挙げられているだけである。よって、「可視光、紫外光、赤外光等、一般的に光と解される全てのもの」に感光しない電子線レジスト膜については、上記【0024】に記載されているということはできない。また、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の他の箇所においても記載されていない。
なお、上記「ZEP-520(日本ゼオン社製)」が、紫外線等に感応することについて、特開2004-133975号公報(【0019】)、特開2003-142399号公報(【0033】)、特開2001-201871号公報(【0032】?【0035】)参照。
したがって、「光に対して感光しない電子線レジスト膜」の解釈として上記の意見書において述べられた見解を採ると、上記の手続補正が新規事項を追加した補正を含むことになり、当該手続補正自体が却下されるべきものとなることになってしまうから、上記手続補正が願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである限り、上記の請求人が述べた解釈を採用することできない。そして、以上を前提として、上記【0024】の記載も参酌すれば、本願発明の「光に対して感光しない電子線レジスト膜」については、「光源からの光に対して感光しない電子線レジスト膜」と解釈せざるを得ない。
そうすると、引用発明の「基板におけるレジスト膜22」であって、「照射」する「波長の光」には「直接的に感応しない」「レジスト膜22」と、本願発明の「光に対して感光しない電子線レジスト膜」とは、「光源からの光に対して感光しないレジスト膜」である点で一致する。

ウ また、引用発明の「照射する光の波長に基づいて決定された間隔で」「密着させ」ることが本願発明の「近接配置」することに相当する。

エ 上記アないしウから、引用発明の「フォトマスク13における集積回路パターンに応じてCr薄膜が形成された面と基板におけるレジスト膜22が塗布された面が対向するように、照射する光の波長に基づいて決定された間隔で基板21とフォトマスク13を密着させ」ることと、本願発明の「上記フォトマスクにおける上記微細パターンが予め形成されたパターニング面に、光に対して感光しない電子線レジスト膜を表面に形成させた基板を近接配置」することとは、「上記フォトマスクにおける上記微細パターンが予め形成されたパターニング面に、光源からの光に対して感光しないレジスト膜を表面に形成させた基板を近接配置」する点で一致する。

(3)引用発明の「フォトマスク13へ、レジスト膜22が直接的に感応しない波長の光を照射」することと、本願発明の「上記電子線レジスト膜に感光しない波長の光を上記フォトマスクへ照射」こととは、「上記レジスト膜に感光しない波長の光を上記フォトマスクへ照射」する点で一致する。

(4)引用発明の「上記の照射した光により、集積回路パターンのエッジ部分のみにおいて、非共鳴の近接場光が発生」することが、本願発明の「上記照射された光に基づき上記パターニング面に形成された微細パターンのエッジのみに近接場光を発生させ」ることに相当する。
また、引用発明の「ボルン・オッペンハイマー近似が破れ、分子の振動レベルへの直接的な励起が生じ、この近接場光にレジスト膜22が感応する結果、当該集積回路パターンに応じた局所領域において化学反応が進行する」ことは、断熱近似であるボルン・オッペンハイマー近似が破れて、ボルン・オッペンハイマー近似においては無視された非断熱項の影響が無視できなくなり、分子の振動レベルへの直接的な励起が生じ、近似場光による上記の非断熱項の影響が無視できない化学反応をすること意味し、近接場光による感光が非断熱近接場光化学反応に基づくものであることを示唆するものである。
そして、引用発明においては、「集積回路パターンのエッジ部分のみにおいて、非共鳴の近接場光が発生」するものであるから、引用発明の上記の「当該集積回路パターンに応じた」「化学反応が進行する」「局所領域」は、「集積回路パターン」の「エッジ部分のみ」であるといえることから、引用発明の「上記の照射した光により、集積回路パターンのエッジ部分のみにおいて、非共鳴の近接場光が発生し、近接場光が照射されることにより、ボルン・オッペンハイマー近似が破れ、分子の振動レベルへの直接的な励起が生じ、この近接場光にレジスト膜22が感応する結果、当該集積回路パターンに応じた局所領域において化学反応が進行する」ことが、本願発明の「上記照射された光に基づき上記パターニング面に形成された微細パターンのエッジのみに近接場光を発生させ、その発生させた近接場光により発現した非断熱近接場光化学反応に基づいて当該パターニング面に近接された上記レジスト膜を上記波長の光に基づき発生する近接場光により上記エッジのみ感光させる」ことに相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明とは、
「フォトマスクに描かれた微細パターンを転写するリソグラフィ方法において、
上記フォトマスクにおける上記微細パターンが予め形成されたパターニング面に、光源からの光に対して感光しないレジスト膜を表面に形成させた基板を近接配置し、
上記レジスト膜に感光しない波長の光を上記フォトマスクへ照射し、
上記照射された光に基づき上記パターニング面に形成された微細パターンのエッジのみに近接場光を発生させ、
その発生させた近接場光により発現した非断熱近接場光化学反応に基づいて当該パターニング面に近接された上記レジスト膜を上記波長の光に基づき発生する近接場光により上記エッジのみ感光させるリソグラフィ方法。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

3 相違点
「レジスト膜」及び(フォトマスクを照射するための)「レジスト膜に感光しない波長の光」に関して、本願発明は、それぞれ、「電子線レジスト膜」及び「電子線レジスト膜に感光しない波長の光」であるのに対して、引用発明においてはその点の限定がない点。

4 判断
(1)上記相違点について検討する。
マスクで発生する近接場光を用いてレジストを露光するリソグラフィにおいては、近接場光は発生後急激に減衰し微小な空間にしか広がらないものであることから、マスクとレジストを極めて接近させて配置する必要がある。このため、近接場光を用いた露光装置のレジスト膜には、表面の凹凸が小さく平滑であることが要請される。(この点、例えば、引用例2の【0018】?【0021】の記載参照。)マスクで発生する近接場光を用いてレジストを露光するリソグラフィである引用発明においても、レジスト膜には、表面の凹凸が小さく平滑であることが要請されるといえる。
一方で、レジスト膜に関しては、引用例3において記載されている電子線レジスト、X線レジスト、真空紫外線用レジストなどの短波長の露光光用のレジスト膜は、引用例3の【0072】にも示唆されているように、均一で平滑なコーティング表面が得られるものである。
そして、引用例4の【0017】にも記載されているように、電子線レジストを近接場露光装置で露光することも公知の技術であることを踏まえれば、表面の凹凸が小さく平滑であることが要請される引用発明のレジスト膜として、均一で平滑なコーティング表面が得られる電子線レジストを選択し、また、それに伴って、「レジスト膜に感光しない波長の光」を「電子線レジスト膜に感光しない波長の光」として、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)本願発明の奏する作用効果
そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、及び、引用例2?4に記載された発明から当業者が予測し得る程度のものである。

第4 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、及び、引用例2?4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-14 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-03 
出願番号 特願2005-281144(P2005-281144)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 森林 克郎
吉川 陽吾
発明の名称 リソグラフィ方法  
代理人 林 信之  
代理人 安彦 元  
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