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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F01N |
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管理番号 | 1247072 |
審判番号 | 不服2010-12194 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-06-07 |
確定日 | 2011-11-17 |
事件の表示 | 特願2000-180782「触媒コンバータの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月26日出願公開、特開2001-355438〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年6月16日の出願であって、平成21年11月10日付けで拒絶理由が通知され、平成22年1月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成22年3月3日付けで拒絶査定がなされ、平成22年6月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成23年6月22日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、平成23年8月29日付けで意見書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明は、上記平成22年1月15日付けの手続補正書によって補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「 【請求項1】 外周に保持材が装着された触媒担体を保持筒に圧入するに際し、上記触媒担体の外周に装着された保持材の外径を、当該触媒担体及び保持材を上記保持筒に圧入したときに上記保持材に加わる圧力と同等の圧力を上記保持材に作用させた状態で計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒に上記保持材が装着された上記触媒担体を圧入することを特徴とする触媒コンバータの製造方法。」 第3 引用発明 (1)引用文献の記載 本件出願前に頒布され、当審拒絶理由に引用された米国特許第5755025号明細書(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次のような記載がある。 ア.「DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENT The parts shown in the drawing pertain to a body 1 of a motor vehicle catalytic converter of modular design. ‥‥(中略)‥‥ The individual code 5 includes the dimensions of the monolith 2, data on the shape of the monolith, deviations in the shape of the monolith, or other characteristic variables, which are peculiar exclusively to this monolith 2. The individual code 5, i.e., a bar code, is arranged visibly or at least in such a manner that it is able to be recorded or scanned by an automatic reading means. ‥‥(中略)‥‥ The individual code 5 is determined already at the time of the prefabrication within the framework of the final inspection for quality assurance of the semifinished parts, and it is unmistakably associated with same. Not only the monolith 2, but also the housing of tubular shape is prefabricated, namely, in the form of a tube 4 with a dimension smaller than specified, as can be determined from FIG. 5. Consequently, in the prefabicated state of the semifinished part, the tube 4 has a diameter which is smaller than the diameter of the monolith plus an additional portion for a swelling mat 3, which is laid around the circumference of the monolith 5 according to FIG. 4 and is secured, e.g., with an adhesive tape. For the final assembly of a tubular module according to FIG. 8, the individual code 5 is read by an automatic reader 7 according to FIG. 3, and it is entered into a sizing press, or the sizing press is set by an operator corresponding to the data of the monolith. The operator selects, e.g., the fixed calibrating mandrels 6 which correspond to the data of the monolith (with additional portion provided for) and makes it possible to size to fit (calibrate) a prefabricated tube 4 according to FIG. 6, so that a constant distance or gap, which will be occupied by the swelling mat 3, is formed on the entire surface of the finished module according to FIG. 8. As noted above, the precalibrated tubes, or tube s in their initial state, have an initial dimension which is initially smaller than the monolith size plus the gap size. Accordingly, as shown in FIG. 6, the prefabricated tubes 4 are sized during a calibration step wherein the calibrating mandril 6 expands the internal dimension (between internal surfaces) of the prefabricated tubes 4 to form the calibrated tubes. Consequently, the prefabricated tubes 4 are sized to fit (calibrated) corresponding to the dimension of the monolith read and the specified gap using a sizing press, according to FIG. 6. The monolith 2 according to FIG. 7, wrapped with the swelling mat 3, is then pushed into the calibrated tube in the sizing press. Thus, tubular modules according to FIG. 8, which have exactly the desired gap s, are formed according to the manufacturing process described.」(第4欄第15行ないし第5欄第15行) (当審における仮訳) 「好ましい実施態様の詳細な説明 図に示されたパーツは、自動車のモジュール式の触媒コンバータのボディ1に関係する。 ‥‥(中略)‥‥ 個別コード5は、モノリス2の寸法、形状のデータ、形の偏差、その他、当該モノリス特有の特徴のデータを含んでいる。個別コード5、例えばバーコードは、見えるように、又は少なくとも自動読み取り機で記録、読み取りができるような形式で構成されている。 ‥‥(中略)‥‥ 個別コードは、準完了部品の品質保証と、取り違え防止のために、予備製造の段階の最終検査のフレームワークの段階で既に決まっている。 モノリス2だけでなく、管状のハウジング、図5に示すチューブ4は、規格より小さめに予め作られている。すなわち、チューブ4は、モノリスに膨張マット3のための付加分を加えた直径よりも小さめの直径を有する。膨張マット3は、図4に示すように、粘着性テープでモノリスの周りに巻かれる。 図8に示すように、管状モジュールの最終組立で、図3に示す自動読み取り機7によって、個別コード5が読まれて、サイジングプレスに送られるか、オペレータによってモノリスのデータがサイジングプレスに入力される。オペレータは、モノリスのデータ(と与えられた付加分)に応じてマンドレル6を選択し、図6のように予め作られたチューブ4のサイズを調整することができる。そして、一定の距離又はギャップが膨張マット3により埋められ、図8に示す最終モジュールが形成される。 上記のように、予め作られたチューブ、又は最初の状態のチューブは、モノリスのサイズにギャップのサイズを加えたものより小さい。それで、図6に示すように、予め作られたチューブ4は、マンドレル6が内径を拡げるキャリブレーションステップにおいて、サイズ調整される。 最終的に、予め作られたチューブ4は、図6に示されるように、読み出されたモノリスの寸法と、サイジングプレスを用いて形成されたギャップにフィットするようにサイズ調整される。その後、図7に示すように膨張マット3によって巻かれたモノリス2は、サイジングプレスにおいて、調整後のチューブに圧入される。 だから、まさに要求されるギャップsを有するものとして、図8に示された管入りモジュールが、この製造方法によって形成される。」 イ.「1. A process for manufacturing catalytic converters, particularly motor vehicle catalytic converters of modular design, comprising the steps of: providing a monolith; determining dimensions of said monolith to provide a monolith of determined dimensions; providing prefabricated tubes having a cross section which is smaller than a cross-sectional dimension of said monolith plus a constant gap; sizing the prefabricated tubes by expanding an internal dimension of a tube to calibrate said tube to provide a calibrated tube with cross-sectional dimension equal to said monolith of determined dimensions plus and constant gap; subsequent to said step of sizing, pushing said monolith of determined dimensions and a surrounding support jacket into said calibrated tube.」(第5欄の特許請求の範囲の請求項1) (当審における仮訳) 「1.特に自動車用のモジュール式の触媒コンバータの製造方法において、 モノリスを提供し; 上記のモノリスの寸法を決定して、その寸法を提供し; 上記モノリスと一定のギャップを加えた寸法よりも小さい横断面の、予め作られたチューブを提供し; 上記モノリスと一定のギャップを加えた寸法に横断面の寸法を調整するため、該予め作られたチューブを内径を拡張して、サイズ調整し; その後、上記モノリスと保持部材とを、サイズ調整後のチューブに圧入するステップからなる触媒コンバータの製造方法。」 (2)引用文献記載の事項 上記1-1.(1)ア.及びイ.並びに図面の記載から、以下の事項がわかる。 ウ.外周に膨張マット3が装着されたモノリス2を、サイジングプレスを用いて、チューブ4に圧入するものであること。 エ.モノリス2の寸法として、外径を計測するものであること。 オ.モノリスの外径に一定のギャップを加えた寸法にチューブを4の内径をサイズ調整し、膨張マット3が装着された該モノリス2を圧入すること。 カ.膨張マット3により、一定のギャップが埋められること。 (3)引用文献記載の発明 上記(1)ア.及びイ.、(2)ウ.ないしカ.並びに図面の記載から、引用文献には以下の発明が記載されているといえる。 「外周に膨張マット3が装着されたモノリス2をチューブ4に圧入するに際し、上記モノリス2の外径を計測し、この計測値に膨張マット3により埋められる一定のギャップを加えた寸法に、チューブ4の内径をサイズ調整し、該サイズ調整したチューブ4に上記膨張マット3が装着された上記モノリス2を圧入する触媒コンバータの製造方法。」(以下、「引用文献記載の発明」という。) 第4 対比 本願発明と引用文献記載の発明とを比較すると、引用文献記載の発明における「膨張マット3」は、その目的及び機能からみて、本願発明における「保持材」に相当し、以下同様に「モノリス2」は「触媒担体」に、「チューブ4」は「保持筒」に、それぞれ相当する。 そして、引用文献記載の発明において「モノリス2の外径を計測し、この計測値に膨張マット3により埋められる一定のギャップを加えた寸法に、チューブ4の内径をサイズ調整」することと、本願発明において「触媒担体の外周に装着された保持材の外径を、当該触媒担体及び保持材を上記保持筒に圧入したときに上記保持材に加わる圧力と同等の圧力を上記保持材に作用させた状態で計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒」を用いることは、「保持筒に圧入する部材の外径を計測し、この計測値に適合する内径の保持筒」を用いるという限りにおいて相当する。 したがって、両者は、 「外周に保持材が装着された触媒担体を保持筒に圧入するに際し、保持筒に圧入する部材の外径を計測し、この計測値に適合する内径の保持筒に上記保持材が装着された上記触媒担体を圧入する触媒コンバータの製造方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 「保持筒に圧入する部材の外径を計測し、この計測値に適合する内径の保持筒」を用いるに際し、本願発明においては、「触媒担体の外周に装着された保持材の外径を、当該触媒担体及び保持材を上記保持筒に圧入したときに上記保持材に加わる圧力と同等の圧力を上記保持材に作用させた状態で計測し、この計測値に適合する内径を有する保持筒」を用いるのに対し、引用文献記載の発明においては、「モノリス2の外径を計測し、この計測値に膨張マット3により埋められる一定のギャップを加えた寸法に、チューブ4の内径をサイズ調整」する点(以下、「相違点」という。)。 第5 当審の判断 上記相違点について検討する。 本願の明細書の段落【0010】には、「触媒コンバータAを製造する場合には、まず図4に示すように、触媒担体2の外周に装着された保持材3の外径を計測する。この場合、触媒担体2を保持筒1に圧入したときに保持材3に加わる圧力(以下、保持圧という。)と同等の圧力を保持材3に作用させた状態で保持材3の外径を計測するのが望ましい。保持材3に保持圧を作用させたときの厚さが分かっているならば、触媒担体2に装着された保持材3の外径を測定する代わりに、図5に示すように、触媒担体2の外径を測定してもよい。その測定値に保持圧が作用したときの保持材3の厚さの2倍を加えることにより、保持材3の外径が分かるからである。」と記載されている。 一方、引用文献記載の発明において、外周に膨張マット3が装着されたモノリスをチューブ4に圧入することにより、モノリス2の外径とチューブ4の内径とのギャップが膨張マット3により埋められるものであるところ、そのギャップの値としては、モノリス2をチューブ4に圧入したときに膨張マット3に加わる圧力と同等の圧力を作用させたときの厚さを予め計測し、その2倍の値を用いることは、引用文献記載の発明を実施する際に、当然に行われることである。 この点について、審判請求人は平成23年8月29日付けの意見書において、 「しかしながら、「モノリスの外径とチューブの内径との間のギャップが膨張マットによって埋められる」という事実と、「モノリス2をチューブ4に圧入したときに膨張マット3に加わる圧力と同等の圧力を作用させたときの厚さ(膨張マット3の厚さと推定)を予め計測し、」という審判官殿の認定との間には何等の因果関係を見出すことができません。何故、「ギャップが膨張マットによって埋められる」ならば、「膨張マットの厚さを圧力作用状態下で計測することになる」のかが理解不能であり、審判官殿の認定は、論理の飛躍であるといわざるを得ません。」 と主張している。 しかし、例えば特開平11-280459号公報の段落【0008】に、 「‥‥(前略)‥‥該ハニカム構造体を保持部材で包んだ状態で金属製缶体に収納するときに、該保持部材には、実装中に該ハニカム構造体が位置ずれなどを起こさないように、該金属製缶体との間で適度な圧力が加えられた状態に置かれていなければならない。その為には、金属製缶体とハニカム構造体とのクリアランスは、通常の保持部材の厚さの30%から85%の範囲内にあることが好ましい。勿論、上記の数値は、一つの目安で、セラミック繊維マットの材質や、最終製品の部材の用途等により上記のクリアランスと保持部材の厚さの関係は、定まるので、該マットに使用する材質や、最終製品としての部材の用途によりこの関係は適宜試験の上適切な選択をすることが好ましいことは言うまでもない。」と記載されているように、圧入後のモノリスに適性な圧力が作用するように、ギャップ即ち保持圧が作用した状態における膨張マットの厚さを試験によって定めることは、当然に行われることである。 そして、引用文献記載の発明においてモノリス2の外径を計測し、予め計測した保持圧下の膨張マット3の厚さの2倍を加えた寸法にチューブ4の内径をサイズ調整することに代えて、上記相違点における本願発明の発明特定事項のようにすることは、当業者が容易に推考し得るものである。 したがって、本願発明は、引用文献記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-15 |
結審通知日 | 2011-09-20 |
審決日 | 2011-10-03 |
出願番号 | 特願2000-180782(P2000-180782) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 赤間 充 |
特許庁審判長 |
中村 達之 |
特許庁審判官 |
安井 寿儀 柳田 利夫 |
発明の名称 | 触媒コンバータの製造方法 |
代理人 | 渡辺 昇 |
代理人 | 原田 三十義 |