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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1247077
審判番号 不服2010-13756  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-23 
確定日 2011-11-17 
事件の表示 特願2003-348112「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 4月28日出願公開、特開2005-110904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年10月7日に特許出願されたものであって、
平成21年7月16日付けで拒絶理由が通知され、これに応答して同年9月17日付けで手続補正書が提出され、
平成21年10月15日付けで最後の拒絶理由通知が通知され、これに応答して同年12月10日付けで手続補正書が提出されたが、
平成22年3月16日付けで、上記平成21年12月10日付け手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶査定がされたため、
これを不服として平成22年6月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、
平成23年5月18日付けで、上記平成22年6月23日付け手続補正を却下するとともに、同日付けで最後の拒絶理由通知が通知され、これに応答して同年7月19日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


2.平成23年7月19日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成23年7月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1) 本件補正
平成23年7月19日付け手続補正により、特許請求の範囲は、
「 【請求項1】
貸し出された遊技球を遊技盤上へ送り出すことで遊技の進行が可能となり、遊技の進行に応じて当該遊技球が遊技盤面上の始動口に入賞することで抽選がなされ、当該抽選の結果に応じて遊技状態が変化する遊技機であって、
主として前記抽選を含む遊技の進行を司る第1の制御機器と、
前記遊技の進行に付随して前記抽選結果を含む遊技状態を遊技者へ報知するための演出制御を司る第2の制御機器と、
前記第1の制御機器に設けられ、前記抽選の契機となる始動口への入賞によって発生する、抽選結果、当該抽選結果に基づく図柄変動パターン、及び当該抽選結果が当たりの場合に当該当たりに基づく処理後の前記抽選の当選確率を通常時の当選確率よりも高くするという遊技者への特典内容、を少なくとも含む複数の遊技情報を演算処理によって始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に1つのコマンドを生成する場合に、まず基準コマンドを生成し、遊技情報に応じて書換処理を行って、当該遊技情報に即したコマンドに集約する演算処理手段と、
前記演算処理手段によって生成されたコマンドを、始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に前記第2の制御機器へ送信する送信手段と、
前記第2の制御機器に設けられ、前記送信手段で送信された始動入賞単位かつ始動入賞時毎のコマンドから、それぞれの前記遊技状態に必要な遊技情報を抽出する遊技情報抽出手段と、
前記第2の制御機器に設けられ、前記遊技情報抽出手段で抽出された前記遊技情報を、複数回分記憶する記憶手段と、を有し、
前記第2の制御機器は、現在複数回の図柄変動パターンに跨った連続予告演出が実行中か否かを判定し、連続予告演出実行中でないと判定した場合には、前記抽出した遊技情報の組み合わせ毎に予告発生抽選確率が定められた連続予告演出種類選択テーブルに基づいて予告発生抽選を実行し、前記予告発生抽選の結果に応じて、連続予告演出を行わないという結果を含む複数の連続予告演出種類のいずれかを設定し、前記記憶手段に記憶した遊技情報のうちの図柄変動パターンに対して変更制御を実行することを特徴とする遊技機。」
に補正された。(以下、この補正を「本件補正」という。)


(2) 補正の目的
本件補正は、以下の点を補正した。

・補正前の請求項1における「抽選結果が当たりの場合のその後の遊技者への特典内容」を、「抽選結果が当たりの場合に当該当たりに基づく処理後の前記抽選の当選確率を通常時の当選確率よりも高くするという遊技者への特典内容」に補正した。(以下「補正事項1」という)

・補正前の請求項1における「複数の遊技情報を演算処理によって始動入賞単位で1つのコマンドに集約する演算処理手段」を、「複数の遊技情報を演算処理によって始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に1つのコマンドを生成する場合に、まず基準コマンドを生成し、遊技情報に応じて書換処理を行って、当該遊技情報に即したコマンドに集約する演算処理手段」(以下「補正事項2」という)

・補正前の請求項1における「前記演算処理手段によって生成された始動入賞単位で1つのコマンドを、前記第2の制御機器へ送信する送信手段」を「前記演算処理手段によって生成されたコマンドを、始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に前記第2の制御機器へ送信する送信手段」に補正した。(以下「補正事項3」という)

・補正前の請求項1における「前記送信手段で送信された始動入賞単位で1つのコマンド」を、「前記送信手段で送信された始動入賞単位かつ始動入賞時毎のコマンド」に補正した。(以下「補正事項4」という)

・補正前の請求項1における「前記抽出した遊技情報に基づいて予告発生抽選を実行し」を、「前記抽出した遊技情報の組み合わせ毎に予告発生抽選確率が定められた連続予告演出種類選択テーブルに基づいて予告発生抽選を実行し」に補正した。(以下「補正事項5」という)

・補正前の請求項1における「前記予告発生抽選の結果に応じた前記連続予告演出種類を設定し」を、「前記予告発生抽選の結果に応じて、連続予告演出を行わないという結果を含む複数の連続予告演出種類のいずれかを設定し」に補正した。(以下「補正事項6」という)

・補正前の請求項1の末尾である「変更制御を実行する。」を、「変更制御を実行することを特徴とする遊技機。」に補正した。(以下「補正事項7」という)

・請求項2を削除した。(以下「補正事項8」という)


補正事項1について
遊技者への特典内容の具体的な内容を技術事項として限定したものである。

補正事項2について
補正事項2のうち、「始動入賞単位で」を「始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に」に補正する点は、コマンドを生成する具体的なタイミングを技術事項として限定したものである。
その他の点は、演算処理手段が実行する処理の具体的な内容を技術事項として限定したものである。

補正事項3について
コマンドを送信する具体的なタイミングを技術事項として限定したものであるとともに、補正事項2に整合させるため、表現の補正を行ったものである。

補正事項4について
補正事項2及び3に整合させるため、表現の補正を行ったものであり、実際上の意味内容を変更するものではない。

補正事項5について
予告発生抽選の具体的な内容を技術事項として限定したものである。

補正事項6について
連続予告演出を設定する点について、その具体的な内容を技術事項として限定したものである。

補正事項7について
請求項1に係る発明が遊技機に係る発明であることを明らかにしたものであるから、明りようでない記載の釈明に該当する。

補正事項8について
請求項1とは独立した請求項2を削除するものであるから、請求項の削除に該当する。


以上により、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除、同第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮、又は同第17条の2第4項第4号の明りようでない記載の釈明、を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。


(3) 特許性についての検討
補正後の請求項1には明確でない記載が認められるので、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、次のように解する。

・補正後の請求項1には「複数の遊技情報を演算処理によって始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に1つのコマンドを生成する場合に」と記載されており、
当該記載からは、「複数の遊技情報を」生成するのか、「1つのコマンドを」生成するのか、明確でないので、
当該「複数の遊技情報を?1つのコマンドを生成する場合に」を、「複数の遊技情報から?1つのコマンドを生成する場合に」と解する。

・補正後の請求項1に記載された「まず基準コマンドを生成し」について、基準コマンドの「生成」を、基準コマンドを「セット」することと解する。

・補正後の請求項1に記載された「始動入賞時毎」については、発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌しても、どのようなタイミングを特定する記載か明確でない。(例えば、明細書【0107】?【0134】及び図6?7には、一般的に考えて「始動入賞時」とはいえないような場合(ステップ400でNのとき)にもコマンドを送信する点が記載されている。)
よって、当該「始動入賞時毎」については、文言どおりに解する。

(3-1) 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された特開2003-275421号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、識別情報を可変表示可能な可変表示装置を備え、あらかじめ定められている可変表示の実行条件が成立した後、可変表示の開始条件の成立にもとづいて識別情報の可変表示を開始し、当該識別情報の可変表示の表示結果が特定の表示結果となった場合に遊技者にとって有利な特定遊技状態に制御可能となるパチンコ機等の遊技機に関する。」

(イ)「【0010】
【課題を解決するための手段】本発明による遊技機は、識別情報を可変表示可能な可変表示装置(例えば可変表示装置9)を備え、あらかじめ定められている可変表示の実行条件(例えば、遊技領域に設けられた始動入賞領域への入賞)が成立した後、可変表示の開始条件(例えば、前回の特別図柄の可変表示および大当り遊技状態の終了)の成立にもとづいて識別情報の可変表示を開始し、当該識別情報の表示結果が特定表示結果(例えば左中右図柄が同一の図柄)となったときに遊技者にとって有利な特定遊技状態(例えば、大当り遊技状態)に制御可能となる遊技機であって、遊技制御プログラムにもとづいて遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えばCPU56等)と、識別情報の可変表示に関わる演出(変動パターンに対応した可変表示装置9、ランプ・LED、スピーカ27による演出)を実行するための演出手段(例えば可変表示装置9、ランプ・LED、スピーカ27)とを備え、遊技制御手段が、特定表示結果とするか否かを決定するために用いられる特定表示結果決定用数値データ(例えば大当り判定用の乱数を発生するためのカウンタのカウント値)を更新するとともに、可変表示の種類を決定するために用いられる表示用数値データ(例えばリーチ判定用の乱数や変動パターン決定用の乱数を発生するためのカウンタのカウント値)を更新する数値データ更新手段(例えば遊技制御手段のうちステップS17,S22,S24を実行する部分)と、可変表示の実行条件の成立時に、特定表示結果決定用数値データにもとづいて特定表示結果が表示されることとなるか否かを判定するとともに、表示用数値データにもとづいて可変表示の種類を判定するための処理を行う実行条件成立時判定手段(例えば遊技制御手段におけるステップS122?S133,ステップS175を実行する部分)と、可変表示の実行条件の成立時に特定表示結果決定用数値データおよび表示用数値データを抽出して所定の記憶領域(例えば始動入賞記憶数に応じて設けられているRAM55の保存領域)に格納し(例えばステップS113の処理を実行し)、可変表示の開始条件の成立時に記憶領域に格納した特定表示結果決定用数値データおよび表示用数値データを読み出し(例えばステップS53の処理を実行し)、読み出した特定表示結果決定用数値データにもとづいて特定表示結果を表示するか否かを決定するための処理(例えばステップS56の処理)と、読み出した表示用数値データにもとづいて可変表示の種類を決定するための処理(例えばステップS65やステップS181の処理)とを行う遊技状態決定手段とを含み、実行条件成立時判定手段によって特定表示結果が表示されることが判定されたときに(例えばステップS124でY)、その旨を特定表示結果が表示される以前の段階で報知するための事前演出(例えば大当りが発生する可能性を報知する連続予告)を、演出手段を用いて実行することが可能であるとともに、実行条件成立時判定手段によって特定表示結果が表示されないと判定されたときであっても(例えばステップS124でN)、特定表示結果が表示されるときにも用いられる特定の種類の可変表示(例えば大当り時にも用いられるノーマルリーチ、リーチA,B,C)を実行することが判定されたときには事前演出と同様の演出を実行可能であり、遊技制御プログラムにて、遊技状態決定手段が可変表示の種類を決定するために用いるプログラムモジュールと実行条件成立時判定手段が可変表示の種類を判定するために用いるプログラムモジュールとが共通モジュール(例えばリーチ判定サブルーチンや変動パターンの判定/決定サブルーチン)として構成されていることを特徴とする。」

(ウ)「【0013】遊技制御手段が、可変表示の実行条件が成立したが可変表示の開始条件が成立していない可変表示の回数である保留記憶数(例えば始動入賞記憶数)を特定可能な保留記憶数コマンド(例えば始動入賞記憶数指定の表示制御コマンド)を演出制御手段(例えば表示制御手段)に送信可能であり、演出制御手段が、保留記憶数コマンドの受信にもとづいて保留記憶数を表示する保留記憶数表示手段(例えば可変表示装置9)の制御を行う保留記憶数表示制御手段(例えば表示制御手段におけるステップS633を実行する部分)を含み、保留記憶数コマンドは実行条件成立時判定手段による判定結果を特定可能な情報を含む(始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドと、はずれ入賞指定の表示制御コマンド、リーチ入賞指定の表示制御コマンドおよび大当り入賞指定の表示制御コマンドとを兼用)ように構成されていてもよい。」

(エ)「【0018】図1に示すように、パチンコ遊技機1は、額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。ガラス扉枠2の下部表面には打球供給皿(上皿)3がある。打球供給皿3の下部には、打球供給皿3に収容しきれない遊技球を貯留する余剰球受皿4と打球を発射する打球操作ハンドル(操作ノブ)5が設けられている。ガラス扉枠2の背面には、遊技盤6が着脱可能に取り付けられている。なお、遊技盤6は、それを構成する板状体と、その板状体に取り付けられた種々の部品とを含む構造体である。また、遊技盤6の前面には遊技領域7が形成されている。
【0019】遊技領域7の中央付近には、それぞれが識別情報としての図柄を可変表示する複数の可変表示部を含む可変表示装置(特別可変表示部)9が設けられている。可変表示装置9には、例えば「左」、「中」、「右」の3つの可変表示部(図柄表示エリア)がある。なお、可変表示部は固定的な領域であってもよいが、遊技進行中に、可変表示装置9の表示領域において移動したり大きさが変化してもよい。また、可変表示装置9には、始動入賞口14に入った有効入賞球数すなわち始動入賞記憶数を表示する4つの特別図柄始動記憶表示エリア(始動記憶表示エリア)18が設けられている。有効始動入賞(始動入賞記憶数が4未満のときの始動入賞)がある毎に、表示色を変化させる(例えば青色表示から赤色表示に変化させる)始動記憶表示エリア18を1増やす。そして、可変表示装置9の可変表示が開始される毎に、表示色が変化している始動記憶表示エリア18を1減らす。すなわち表示色をもとの状態に戻す。」

(オ)「【0027】そして、この例では、左枠ランプ28bの近傍に、賞球残数があるときに点灯する賞球ランプ51が設けられ、天枠ランプ28aの近傍に、補給球が切れたときに点灯する球切れランプ52が設けられている。さらに、図1には、パチンコ遊技機1に隣接して設置され、プリペイドカードが挿入されることによって球貸しを可能にするカードユニット50も示されている。
【0028】カードユニット50には、使用可能状態であるか否かを示す使用可表示ランプ151、カードユニット50がいずれの側のパチンコ遊技機1に対応しているのかを示す連結台方向表示器153、カードユニット50内にカードが投入されていることを示すカード投入表示ランプ154、記録媒体としてのカードが挿入されるカード挿入口155、およびカード挿入口155の裏面に設けられているカードリーダライタの機構を点検する場合にカードユニット50を解放するためのカードユニット錠156が設けられている。
【0029】打球発射装置から発射された遊技球は、打球レールを通って遊技領域7に入り、その後、遊技領域7を下りてくる。打球が始動入賞口14に入り始動口スイッチ14aで検出されると、図柄の可変表示を開始できる状態であれば、可変表示装置9において特別図柄が可変表示(変動)を始める。図柄の可変表示を開始できる状態でなければ、始動入賞記憶数を1増やす。
【0030】可変表示装置9における特別図柄の可変表示は、一定時間が経過したときに停止する。停止時の特別図柄の組み合わせが大当り図柄(特定表示態様)であると、大当り遊技状態に移行する。すなわち、開閉板20が、一定時間経過するまで、または、所定個数(例えば10個)の打球が入賞するまで開放する。そして、開閉板20の開放中に打球がV入賞領域に入賞しV入賞スイッチ22で検出されると、継続権が発生し開閉板20の開放が再度行われる。継続権の発生は、所定回数(例えば15ラウンド)許容される。
【0031】停止時の可変表示装置9における特別図柄の組み合わせが確率変動を伴う大当り図柄(確変図柄)の組み合わせである場合には、次に大当りとなる確率が高くなる。すなわち、確変状態という遊技者にとってさらに有利な状態(特別遊技状態)となる。
【0032】図3は、主基板31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図3には、払出制御基板37、ランプ制御基板35、音制御基板70、発射制御基板91および図柄制御基板80も示されている。主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路53と、ゲートスイッチ32a、始動口スイッチ14a、V入賞スイッチ22、カウントスイッチ23、入賞口スイッチ29a,30a,33a,39a、満タンスイッチ48、球切れスイッチ187、賞球カウントスイッチ301Aおよびクリアスイッチ921からの信号を基本回路53に与えるスイッチ回路58と、可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16、開閉板20を開閉するソレノイド21および大入賞口内の経路を切り換えるためのソレノイド21Aを基本回路53からの指令に従って駆動するソレノイド回路59とが搭載されている。
【0033】なお、図3には示されていないが、カウントスイッチ短絡信号もスイッチ回路58を介して基本回路53に伝達される。また、ゲートスイッチ32a、始動口スイッチ14a、V入賞スイッチ22、カウントスイッチ23、入賞口スイッチ29a,30a,33a,39a、満タンスイッチ48、球切れスイッチ187、賞球カウントスイッチ301A等のスイッチは、センサと称されているものでもよい。すなわち、遊技球を検出できる遊技媒体検出手段(この例では遊技球検出手段)であれば、その名称を問わない。スイッチと称されているものがセンサと称されているもの等でもよいこと、すなわち、スイッチが遊技媒体検出手段の一例であることは、他の実施の形態でも同様である。
【0034】また、基本回路53から与えられるデータに従って、大当りの発生を示す大当り情報、可変表示装置9における図柄の可変表示開始に利用された始動入賞球の個数を示す有効始動情報、確率変動が生じたことを示す確変情報等の情報出力信号をホールコンピュータ等の外部装置に対して出力する情報出力回路64が搭載されている。
【0035】基本回路53は、ゲーム制御用のプログラム等を記憶するROM54、ワークメモリとして使用される記憶手段(変動データを記憶する手段)としてのRAM55、プログラムに従って制御動作を行うCPU56およびI/Oポート部57を含む。この実施の形態では、ROM54,RAM55はCPU56に内蔵されている。すなわち、CPU56は、1チップマイクロコンピュータである。なお、1チップマイクロコンピュータは、少なくともRAM55が内蔵されていればよく、ROM54およびI/Oポート部57は外付けであっても内蔵されていてもよい。なお、CPU56はROM54に格納されているプログラムに従って制御を実行するので、以下、CPU56が実行する(または、処理を行う)ということは、具体的には、CPU56がプログラムに従って制御を実行することである。このことは、主基板31以外の他の基板に搭載されているCPUについても同様である。」

(カ)「【0038】この実施の形態では、ランプ制御基板35に搭載されているランプ制御手段が、遊技盤に設けられている普通図柄始動記憶表示器41および装飾ランプ25の表示制御を行うとともに、枠側に設けられている天枠ランプ28a、左枠ランプ28b、右枠ランプ28c、賞球ランプ51および球切れランプ52の表示制御を行う。なお、各ランプはLEDその他の種類の発光体でもよく、この実施の形態および他の実施の形態で用いられているLEDも他の種類の発光体でもよい。すなわち、ランプやLEDは発光体の一例である。また、特別図柄を可変表示する可変表示装置9および普通図柄を可変表示する普通図柄表示器10の表示制御は、図柄制御基板80に搭載されている表示制御手段によって行われる。」

(キ)「【0040】図4は、図柄制御基板80内の回路構成を、可変表示装置9の一実現例であるLCD(液晶表示装置)82、普通図柄表示器10、主基板31の出力ポート(ポート0,2)570,572および出力バッファ回路620,62Aとともに示すブロック図である。出力ポート(出力ポート2)572からは8ビットのデータが出力され、出力ポート570からは1ビットのストローブ信号(INT信号)が出力される。また、この実施の形態では、コマンドデータをパラレル通信(この例では8ビットパラレル)によって送信する構成としているが、シリアル通信によってやりとりされるようにしてもよい。」

(ク)「【0083】大当り終了処理(ステップS308):大当り遊技状態が終了したことを遊技者に報知する表示制御を表示制御手段に行わせるための制御を行う。そして、内部状態をステップS300に移行するように更新する。」

(ケ)「【0089】図10は、始動入賞が生じたときに実行される始動口スイッチ通過処理(ステップS312)を示すフローチャートである。始動口スイッチ通過処理において、CPU56は、始動入賞記憶数が最大値である4に達しているかどうか確認する(ステップS111)。始動入賞記憶数が4に達していなければ、始動入賞記憶数を1増やし(ステップS112)、大当り判定用乱数等の各乱数の値を抽出し、それらを始動入賞記憶数の値に対応した保存領域(特別図柄判定用バッファ)に格納する(ステップS113)。なお、乱数を抽出するとは、乱数を生成させるためのカウンタからカウント値を読み出して、読み出したカウント値を乱数値とすることである。ステップS114では、図7に示された乱数のうち、ランダム1?ランダム5が抽出される。そして、入賞時演出設定処理を実行する(ステップS115)。
【0090】図11は、入賞時演出設定処理を示すフローチャートである。入賞時演出処理において、CPU56は、まず、始動入賞があったことを示す入賞ありフラグをセットする(ステップS121)。入賞ありフラグは、特別図柄プロセス処理の終了後に実行される記憶処理(ステップS31)で参照される。次いで、CPU56は、ランダム1(大当り判定用乱数)を生成するためのカウンタからランダム1を抽出し(ステップS122)、大当り判定モジュールを実行する。すなわち、大当り判定サブルーチンをコールする(ステップS123)。大当り判定モジュールにおいてランダム1の値にもとづいて大当りとなると判定された場合には(ステップS124)、確変大当りとなるか否か判定する(ステップS125)。
【0091】この実施の形態では、左中右の特別図柄は、それぞれ、「0」?「11」の12通りあって、可変表示装置9において「0」から順に特別図柄の表示が変化することによって特別図柄の変動が実現される。なお、特別図柄の変動中において、表示図柄の表示は非連続的に変化してもよい。また、特別図柄の最終停止図柄(確定図柄)が左中右揃った場合に大当りとなり、左右が揃った場合にリーチとなる。そして、大当りとなる場合において、奇数図柄で揃ったときには、大当り遊技終了後に高確率状態に移行する。また、高確率状態において、大当りが発生すると、または、所定回の特別図柄の変動が行われると高確率状態は終了し低確率状態に戻る。
【0092】従って、ステップS124では、CPU56は、ランダム3(大当り図柄決定用乱数)を抽出し、抽出した乱数にもとづいて大当り図柄を判定し、判定結果が異数図柄であれば確変大当りとなると判定する。確変大当りとならないと判定した場合には、非特定大当り入賞指定コマンドを示すデータを入賞コマンドとしてRAM55にセットする(ステップS126)。確変大当りとなると判定した場合には、特定大当り入賞指定コマンドを示すデータを入賞コマンドとしてRAM55にセットする(ステップS127)。
【0093】ステップS124において大当りとしないと判定された場合には、ランダム5(リーチ判定用乱数)を生成するためのカウンタからランダム5を抽出し(ステップS131)、リーチ判定モジュールを実行する。すなわち、リーチ判定サブルーチンをコールする(ステップS132)。リーチ判定モジュールにおいてランダム5の値にもとづいてリーチとなると判定された場合には(ステップS133)、リーチ入賞指定コマンドを示すデータを入賞コマンドとしてRAM55にセットする(ステップS134)。リーチとならないと判定された場合には、はずれ入賞指定コマンドを示すデータを入賞コマンドとしてRAM55にセットする(ステップS135)。
【0094】そして、RAM55に入賞コマンドとしてセットされたデータを、RAM55の入賞時演出用バッファとして定められている領域に格納する(ステップS136)。なお、入賞時演出用バッファに格納されたデータは、特別図柄プロセス処理の終了後に実行される記憶処理(ステップS31)で参照される。」

(コ)「【0106】図17は、2msタイマ割込処理における記憶処理(ステップ31)を示すフローチャートである。記憶処理において、CPU56は、始動入賞記憶カウンタのカウント値が前回始動入賞記憶カウンタのカウント値と同じであるか否か確認する(ステップS161)。同じでなければ、すなわち始動入賞記憶数に変化が生じていれば、始動入賞記憶数に応じた始動入賞記憶指定のコマンド送信テーブルのアドレスをポインタにセットし(ステップS162)、サブルーチンであるコマンドセット処理を実行する(ステップS163)。そして、始動入賞記憶カウンタのカウント値を、前回始動入賞記憶カウンタに設定しておく(ステップS164)。
【0107】コマンドセット処理を実行することによって表示制御コマンドが図柄制御基板80に送信される。この実施の形態では、表示制御手段に送信されうる各表示制御コマンドはROMのコマンド送信テーブルに格納されている。また、コマンドセット処理では、CPU56は、ポインタが示すROM54のアドレスに格納されている表示制御コマンドデータを、表示制御コマンドデータを出力するための出力ポートに設定するとともに、コマンドを送信することを示す表示制御INT信号を出力する。
【0108】また、入賞ありフラグがセットされている場合には(ステップS165)、入賞時演出用バッファに格納されている入賞コマンドに応じたデータに対応した入賞コマンド送信テーブルのアドレスをポインタにセットし(ステップS166)、サブルーチンであるコマンドセット処理を実行する(ステップS167)。
【0109】以上の処理によって、始動入賞記憶数が変化したときには、図柄制御基板80に搭載されている表示制御手段に対して、始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドが送信される(ステップS161?S163)。また、始動入賞記憶数が増加したときには、特定大当り入賞指定、非特定大当り入賞指定、リーチ入賞指定またははずれ入賞指定の表示制御コマンドが送信される(図10に示されたステップS112,S115、図11、および図17に示されたステップS166,S167参照)。なお、この実施の形態では、大当りではない場合には、リーチ入賞指定またははずれ入賞指定の表示制御コマンドが送信されるが、大当りではない場合には常にはずれ入賞指定の表示制御コマンドが送信されるようにしてもよい。以下、特定大当り入賞指定、非特定大当り入賞指定、リーチ入賞指定およびはずれ入賞指定の表示制御コマンドを、入賞時判定結果コマンドまたは判定結果コマンドということがある。」

(サ)「【0117】図20は、図柄制御基板80に送出される表示制御コマンドの内容の一例を示す説明図である。図20に示す例において、コマンド8000(H)?800E(H)は、特別図柄を可変表示する可変表示装置9における特別図柄の変動パターンを指定する表示制御コマンドである。なお、変動パターンを指定するコマンド(変動パターンコマンド)は変動開始指示も兼ねている。また、コマンド800E(H)は、短縮表示パターンを指定するコマンドである。
【0118】コマンド88XX(H)(X=4ビットの任意の値)は、普通図柄の変動パターンに関する表示制御コマンドである。コマンド89XX(H)は、普通図柄の停止図柄を指定する表示制御コマンドである。コマンド8A00(H)は、普通図柄の可変表示の停止を指示する表示制御コマンドである。
【0119】コマンド91XX(H)、92XX(H)および93XX(H)は、特別図柄の左中右の停止図柄を指定する表示制御コマンドである。「XX」には図柄番号が設定される。また、コマンドA000(H)は、特別図柄の可変表示の停止を指示する表示制御コマンドである。コマンドBXXX(H)は、大当り遊技開始から大当り遊技終了までの間に送出される表示制御コマンドである。そして、コマンドC000(H)?EXXX(H)は、特別図柄の変動および大当り遊技に関わらない可変表示装置9の表示状態に関する表示制御コマンドである。
【0120】コマンドC3XX(H)は、始動入賞が生じたときに送信される判定結果コマンドである。C300(H)ははずれ入賞指定の表示制御コマンド(はずれ入賞指定コマンド)であり、C301(H)はリーチ入賞指定の表示制御コマンド(リーチ入賞指定コマンド)であり、C302(H)は非特定大当り入賞指定の表示制御コマンド(非特定大当り入賞指定コマンド)であり、C303(H)は特定大当り入賞指定の表示制御コマンド(特定大当り入賞指定コマンド)である。また、コマンドD000(H)は、客待ちデモンストレーションを指定する表示制御コマンドである。
【0121】コマンドE0XX(H)は、可変表示装置9における始動入賞記憶数を表示する表示エリアにおいて、表示色を変化させる始動記憶表示エリア18の個数を示す表示制御コマンドである。例えば、表示制御手段は、各始動記憶表示エリア18のうち「XX(H)」で指定される個数の始動記憶表示エリア18の表示色を変化させる。すなわち、コマンドE0XX(H)は、保留個数という情報を報知するために設けられている表示エリアの制御を指示するコマンドである。なお、表示色を変化させる始動記憶表示エリア18の個数に関するコマンドが、表示色を変化させるエリアの個数の増減を示すように構成されていてもよい。また、この実施の形態では、始動入賞記憶の上限値は4であるから、「XX」は0?4のいずれかである。
【0122】また、コマンドE400(H)は、高確率状態から低確率状態になったときに送信されるコマンドであり、コマンドE401(H)は、低確率状態から高確率状態になったときに送信されるコマンドである。
【0123】図柄制御基板80の表示制御手段は、主基板31の遊技制御手段から上述した表示制御コマンドを受信すると図20に示された内容に応じて可変表示装置9および普通図柄表示器10の表示状態を変更する。
【0124】なお、ランプ制御手段および音制御手段にも、表示制御コマンドと同じ形態のランプ制御コマンドおよび音制御コマンドが送信される。ランプ制御手段は、ランプ制御コマンドを受信するとランプ・LEDの表示状態を変更し、音制御手段は、音制御コマンドを受信するとスピーカ27からの音出力態様を変更する制御を行う。
【0125】また、可変表示の開始を示す可変表示開始指定コマンドおよび可変表示態様を特定可能な可変表示態様指定コマンドは、変動パターン指定の表示制御コマンドで実現され、識別情報の表示結果を特定可能な識別情報指定コマンドは、左図柄指定、中図柄指定、右図柄指定の表示制御コマンドで実現され、可変表示の終了を示す可変表示終了指定コマンドは、特別図柄停止の表示制御コマンドで実現されている。また、この実施の形態では、変動パターン指定の表示制御コマンドが可変表示の開始を示す可変表示開始指定コマンドおよび可変表示態様を特定可能な可変表示態様指定コマンドとして兼用されているが、可変表示開始指定コマンドと可変表示態様を特定可能な可変表示態様指定コマンドとを別にしてもよい。
【0126】図21は、遊技の制御を行う主基板31からランプ制御基板35に送出されるランプ制御コマンドの内容の一例を示す説明図である。ランプ制御コマンドもMODEとEXTの2バイト構成である。図21に示す例において、コマンド80XX(H)(X=4ビットの任意の値)は、可変表示装置9における特別図柄の変動パターンすなわち可変表示装置9における表示結果導出動作に関わる演出内容に対応したランプ・LED(遊技機に設けられている演出用のランプやLED等の発光手段)表示制御パターンを指定する変動中ランプ指定のランプ制御コマンドである。また、コマンドA000(H)は、特別図柄の可変表示の停止時のランプ・LED表示制御パターンを指示するランプ制御コマンドであり、コマンドBXXX(H)は、大当り遊技開始から大当り遊技終了までの間のランプ・LED表示制御パターンを指示するランプ制御コマンドである。
【0127】コマンドC3XX(H)は、始動入賞が生じたときに送信される判定結果コマンドである。C300(H)ははずれ入賞指定のランプ制御コマンド(はずれ入賞指定コマンド)であり、C301(H)はリーチ入賞指定のランプ制御コマンド(リーチ入賞指定コマンド)であり、C302(H)は非特定大当り入賞指定のランプ制御コマンド(非特定大当り入賞指定コマンド)であり、C303(H)は特定大当り入賞指定のランプ制御コマンド(特定大当り入賞指定コマンド)である。また、コマンドD000(H)は、客待ちデモンストレーション時のランプ・LED表示制御パターンを指示するランプ制御コマンドである。」

(シ)「【0135】図23は、可変表示装置9、遊技状態報知用のランプ・LED(この実施の形態では天枠ランプ28a、左枠ランプ28bおよび右枠ランプ28c)およびスピーカ27を用いて実行される予告演出(大当りとなること、またはリーチとなる可能性があることを報知するための演出)の例を示す説明図である。図23(A)?(B)に例示するように、この実施の形態では、可変表示装置9において、背景(図柄表示エリア以外の部分)に現れるキャラクタ等の表示による2種類の予告演出を行うことが可能である。図23(A)に示す予告Aおよび図23(B)に示す予告Bは、連続予告(保留予告:始動入賞発生時に実行される大当りとするか否かの抽選の結果にもとづいて、以後の複数回の特別図柄の可変表示において始動入賞記憶数を上限として連続して実行される予告演出)以外の予告演出である。」

(ス)「【0140】表示制御処理において、表示制御用CPU101は、まず、受信した表示制御コマンドを解析する(コマンド解析実行処理:ステップS704)。次いで表示制御用CPU101は、表示制御プロセス処理を行う(ステップS705)。表示制御プロセス処理では、制御状態に応じた各プロセスのうち、現在の制御状態に対応したプロセスを選択して実行する。そして、予告乱数カウンタを更新する処理を実行する(ステップS706)。その後、ステップS702のタイマ割込フラグの確認を行う処理に戻る。
【0141】次に、主基板31からの表示制御コマンド受信処理について説明する。図26は、主基板31から受信した表示制御コマンドを格納するためのコマンド受信バッファの一構成例を示す説明図である。この例では、2バイト構成の表示制御コマンドを6個格納可能なリングバッファ形式のコマンド受信バッファが用いられる。従って、コマンド受信バッファは、受信コマンドバッファ1?12の12バイトの領域で構成される。そして、受信したコマンドをどの領域に格納するのかを示すコマンド受信個数カウンタが用いられる。コマンド受信個数カウンタは、0?11の値をとる。なお、必ずしもリングバッファ形式でなくてもよく、例えば、図柄指定コマンド格納領域を3個(2×3=6バイトのコマンド受信バッファ)、それ以外の変動パターン指定などのコマンド格納領域を1個(2×1=2バイトのコマンド受信バッファ)のようなバッファ構成としてもよい。音制御手段や、ランプ制御手段においても同様に、リングバッファ形式でないバッファ形式としてもよい。この場合、表示制御手段、音制御手段、ランプ制御手段は、変動パターンなどの格納領域に格納される最新のコマンドにもとづき制御される。これにより、主基板31からの指示に迅速に対応することができる。
【0142】図27および図28は、コマンド解析処理(ステップS704)の具体例を示すフローチャートである。主基板31から受信された表示制御コマンドは受信コマンドバッファに格納されるが、コマンド解析処理では、表示制御用CPU101は、コマンド受信バッファに格納されているコマンドの内容を確認する。
【0143】コマンド解析処理において、表示制御用CPU101は、まず、コマンド受信バッファに受信コマンドが格納されているか否か確認する(ステップS611)。格納されているか否かは、コマンド受信個数カウンタの値と読出ポインタとを比較することによって判定される。両者が一致している場合が、受信コマンドが格納されていない場合である。コマンド受信バッファに受信コマンドが格納されている場合には、表示制御用CPU101は、コマンド受信バッファから受信コマンドを読み出す(ステップS612)。なお、読み出したら読出ポインタの値を+1しておく。」

(セ)「【0146】受信した表示制御コマンドが始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドであれば(ステップS631)、表示制御用CPU101は、RAMにおける始動入賞数記憶領域の始動入賞記憶数を表示制御コマンドで指定された数に更新する(ステップS632)。また、可変表示装置9において表示色が変化する始動記憶表示エリア18の数を更新する(ステップS633)。さらに、乱数カウンタの値を+1する(ステップS634)。乱数カウンタとは、連続予告を実行するか否か決定するための乱数を生成するためのカウンタである。なお、この実施の形態では、乱数カウンタのカウント値は0?126の範囲の値をとり、カウント値が127になったら、その値を0に戻す。」

(ソ)「【0153】この実施の形態では、可変表示装置における特別図柄の可変表示の結果(停止図柄)がはずれになる場合には、連続予告演出は出現しない。すなわち、遊技制御手段は、始動入賞が生じたときに変動パターンに関わる判定を行っているので、可変表示の結果がはずれとなる場合に用いられる図柄の変動パターンを、実際に図柄の変動が開始される前に判定でき、表示制御手段は、遊技制御手段の判定結果に応じて、可変表示の結果がはずれになる場合には、連続予告演出を選択しないようにする。すなわち、連続予告演出は、可変表示装置における特別図柄の可変表示の結果が大当りまたはリーチ(大当りとはならないリーチ)となることが始動入賞時に判定された場合に出現する。また、図9に例示されたように、この実施の形態では、大当りとなる場合に用いられる変動パターンは、リーチ(大当りとはならないリーチ)となる場合にも用いられる。すなわち、始動入賞発生時に、大当りとしないことが判定された場合に、大当り時にも発生する特定の変動パターン(図9に示された例では、ノーマルリーチ、リーチA、リーチB、リーチC)が判定されたときに、連続予告演出を実行することが可能である。
【0154】図31は、ステップS638,S642,S654,S658で実行される連続予告の判定処理例を示すフローチャートである。連続予告の判定処理において、表示制御用CPU101は、まず、連続予告を実行中であるか否か判定する(ステップS661)。実行中であるか否かは、実行中にセットされている内部フラグである連続予告実行中フラグによって判定できる。連続予告の実行中でなければ、連続予告判定テーブルを選択する(ステップS662)。連続予告判定テーブルとは、図29および図30に示された情報が設定されているテーブルであり、はずれ入賞指定の表示制御コマンドを受信した場合には図29(A)に示す情報に対応したテーブルが選択され、リーチ入賞指定の表示制御コマンドを受信した場合には図29(B)に示す情報に対応したテーブルが選択され、非特定大当り入賞指定の表示制御コマンドを受信した場合には図30(C)に示す情報に対応したテーブルが選択され、特定大当り入賞指定の表示制御コマンドを受信した場合には図30(D)に示す情報に対応したテーブルが選択される。
【0155】なお、短縮変動による特別図柄の可変表示が実行される場合には、表示制御手段は、予告演出を行わないようにする。
【0156】そして、表示制御用CPU101は、抽出されている乱数の値と同じ連続予告判定値が連続予告判定テーブルに設定されているか否か確認し(ステップS663)、一致しているものがあれば、連続予告判定テーブルから対応する連続予告の種類と実行回数とを抽出する。実行回数が0でなければ(ステップS664)、連続予告の種類をRAMにおける予告種類バッファに格納するとともに、実行回数をRAMにおける実行回数バッファに格納し(ステップS665)、連続予告抽選済フラグセットする(ステップS666)。
【0157】以上の処理によって、乱数カウンタは、始動入賞記憶数指定、はずれ入賞指定、リーチ入賞指定、非特定大当り入賞指定、特定大当り入賞指定の表示制御コマンドを受信する度に歩進し、はずれ入賞指定、リーチ入賞指定、非特定大当り入賞指定、特定大当り入賞指定の表示制御コマンドを受信すると連続予告を行うか否かの抽選が実行される。そして、連続予告を行うことに決定された場合には、連続予告の種類が決定されるとともに、そのときの始動入賞記憶数に応じてあらかじめ決められた実行回数が決定される。そして、いずれの演出手段を用いて連続予告を行うのかと、いずれの演出態様によって連続予告を行うのかとは、表示制御手段が、判定結果コマンドと始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドの受信にもとづいて独自に決定することになる。」

(タ)「【0187】実施の形態2.上記の実施の形態では、リーチにもならない外れとする場合に用いられる変動パターン、リーチとする場合に用いられる変動パターン、大当りとする場合に用いられる変動パターンは、それぞれ決まっている。すなわち、リーチとする場合には、変動パターン番号2?10の変動パターンが用いられ、大当りとする場合には、変動パターン番号11?14の変動パターンが用いられる(図9参照)。従って、リーチとするか大当りとするかの判定または決定は、変動パターンの種類の判定または決定に対応している。
【0188】そして、始動入賞時には、具体的にいずれの変動パターン(変動パターン番号1?15の変動パターンのうちのいずれか)にするのかの判定までは行われていない。しかし、始動入賞時に、変動パターン番号1?15の変動パターンのうちのいずれにするのかまで判定するようにしてもよい。」

(チ)「【0200】実施の形態1では、表示制御手段は、始動入賞が生じたときに送信されるはずれ入賞指定、リーチ入賞指定、大当り入賞指定(非特定大当り入賞指定および特定大当り入賞指定)の判定結果コマンドおよび始動入賞記憶数に応じて予告の態様を決定したが、この実施の形態では、表示制御手段は、始動入賞が生じたときに送信される変動パターン演出指定の表示制御コマンドおよび始動入賞記憶数に応じて予告の態様を決定する。」

(ツ)「【0213】図45は、本発明の概要を示す概念図である。図45に示すように、遊技制御手段31Aにおいて、数値データ更新手段31dは、判定用データと表示用データの更新を行う。また、実行条件成立時判定手段31aは、可変表示の実行条件の成立時(始動入賞発生時)に、可変表示の開始条件の成立時に決定される可変表示に関わる決定結果と可変表示装置9における特別図柄の変動パターンとを判定する。また、遊技状態決定手段31bは、可変表示の開始条件の成立時に、少なくとも特定遊技状態に制御するか否かと可変表示装置9における特別図柄の変動パターンとを決定する。そして、判定結果コマンド送信手段31cは、実行条件成立時判定手段による判定結果を特定可能な判定結果コマンドを、可変表示の実行条件の成立にもとづく可変表示の開始条件が成立する以前に演出制御手段80Bに送信する。演出制御手段80Bは、演出手段としての可変表示装置9、ランプ・LEDおよびスピーカ27の制御を行う。また、実行条件成立時判定手段31aと遊技状態決定手段31bは、変動パターンの判定または決定の処理において、共通モジュール31eを使用する。」

(テ)「【0215】例えば、可変表示装置9において図柄の変動が行われている場合に、始動入賞記憶数が「4」であることを示す表示制御コマンドと、大当り入賞指定の表示制御コマンドとを受信した場合を想定する。そして、連続予告を行うか否かの判定において、連続予告することに決定され、実行回数が4であったとする。また、始動入賞記憶が1,2,3に対応する判定結果は大当りでなかったする。その場合、現在行われている図柄の変動が終了した後、第4回目の図柄の変動の結果大当りが発生する。また、現在行われている図柄の変動が終了した後、第1回目?第4回目の図柄の変動が行われているときに連続予告演出が実行される。そして、第4回目の図柄の変動の結果大当りが発生する。すなわち、第4回目の図柄の変動の結果大当りが発生することを、それ以前の回の図柄の変動中において、遊技者に所定の報知(すなわち予告演出)することができる。」

(ト)「【0217】なお、実施の形態1では、表示制御手段は始動入賞記憶数の表示制御も行い、遊技制御手段は、はずれ入賞指定の表示制御コマンド、リーチ入賞指定の表示制御コマンドおよび大当り入賞指定の表示制御コマンドとは別個に、それらの表示制御コマンドを送信する前に始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドを送信するように構成されていた。また、実施の形態2では、変動パターン演出指定の表示制御コマンドとは別個に、始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドを送信するように構成されていた。しかし、始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドと、はずれ入賞指定の表示制御コマンド、リーチ入賞指定の表示制御コマンドおよび大当り入賞指定の表示制御コマンドとを兼用するようにしてもよい。また、始動入賞記憶数指定の表示制御コマンドと変動パターン演出指定の表示制御コマンドとを兼用するようにしてもよい。すなわち、保留記憶数コマンドが実行条件成立時判定手段による判定結果や変動パターン演出指定を特定可能な情報を含むように構成してもよい。例えば、E5XX(H)の表示制御コマンドにおける8ビットのEXTデータのうち4ビットをはずれ入賞指定、リーチ入賞指定および大当り入賞指定に割り当て、他の4ビットを始動入賞記憶数指定に割り当てる。」

(ナ)「【0220】また、上記の各実施の形態では、連続予告および予告A,Bの表示演出をキャラクタによって行ったが、予告演出はどのような形態のものであってもよく、例えば、すべり演出(低速変動状態において数図柄分高速変動させる演出)や、もどり演出(図柄の停止位置を通り過ぎたあと逆向きに変動させる演出)などのような特別図柄の変動態様を変化させることで予告演出を行うようにしてもよい。また、背景を変化させることによって予告演出を行うようにしてもよい。」

以上、(ア)ないし(ナ)の記載、および図面(特に、図1?2,4,9,29?30参照)を総合すると、引用文献1には、以下の発明が開示されていると認めることができる。

「遊技球を遊技盤に形成された遊技領域へ発射し、当該遊技球が始動入賞口に入賞することで大当り判定用乱数に基づいて判定がなされ、当該判定の結果に応じて、大当り遊技状態に移行する遊技機である。

前記判定を含む遊技の進行を制御する遊技制御手段(例えばCPU56等)と、前記判定の結果を含む事項を遊技者へ報知するための演出の制御を行う演出制御手段(例えば表示制御手段)を有している。

前記遊技制御手段は、前記判定の契機となる始動入賞口への入賞によって発生する、前記判定の結果に基づく変動パターン又は前記判定の結果を少なくとも含む複数の情報を有する1つの表示制御コマンドである保留記憶数コマンドを生成する。

前記CPU56及びポートは、生成した表示制御コマンドを、始動入賞が生じたときに前記表示制御手段へ送信する。

前記表示制御手段に設けられ、前記CPU56で送信された表示制御コマンドを記憶するコマンド受信バッファを有する。

前記表示制御手段は、現在複数回の特別図柄の可変表示において連続して実行される連続予告演出が実行中か否かを判定し、連続予告演出実行中でないと判定した場合には、前記表示制御コマンド及び連続予告判定テーブルに基づいて抽選を実行し、前記抽選の結果に応じて、連続予告演出を行わないという結果を含む複数の連続予告演出のいずれかを設定し、特別図柄の変動様態を変化させている。」
(以下、この発明を「引用発明1」という。)


(3-2) 対比
引用発明と本件補正発明とを対比する。

引用文献1の(オ)(【0027】)における「球貸しを可能にするカードユニット50」、及び遊技機の技術常識を考慮すれば、
引用発明における「遊技球」は、本件補正発明における「貸し出された遊技球」に相当する。

遊技機の技術常識を考慮すれば、引用発明における、遊技球を「遊技盤」に形成された「遊技領域」へ「発射」する点は、本件補正発明における、貸し出された遊技球を「遊技盤上へ送り出すことで遊技の進行が可能となる」点に相当する。

引用文献1の図1?2には、前記「始動入賞口」が、前記「遊技盤」に形成された「遊技領域」上に設けられている点が、開示されている。
したがって、引用発明における「始動入賞口」は、本件補正発明における「遊技盤面上の始動口」に相当する。

引用文献1の(シ)における「始動入賞発生時に実行される大当たりか否かの抽選の結果」、及び遊技機の技術常識を考慮すれば、
引用発明における、「大当り判定用乱数」に基づいてなされる「判定」、及び当該「判定」の結果に基づいて「大当り遊技状態に移行する」点は、本件補正発明における「抽選」、及び「遊技球が遊技盤面上の始動口に入賞することで抽選がなされ、当該抽選の結果に応じて遊技状態が変化する」点に相当する。

引用発明における、前記「判定」を含む「遊技の進行」を制御する「遊技制御手段(例えばCPU56等)」、又は「CPU56」を含む「基本回路53」若しくは「主基板31」は、本件補正発明における「主として前記抽選を含む遊技の進行を司る第1の制御機器」に相当する。

引用発明における、前記「判定」の結果を含む事項を「遊技者」へ「報知」するための「演出」の制御を行う「演出制御手段(例えば表示制御手段)」は、本件補正発明における「前記遊技の進行に付随して前記抽選結果を含む遊技状態を遊技者へ報知するための演出制御を司る第2の制御機器」に相当する。

引用文献1の(ケ)(【0092】)には、「従って、ステップS124では、CPU56は、ランダム3(大当り図柄決定用乱数)を抽出し、抽出した乱数にもとづいて大当り図柄を判定し、判定結果が異数図柄であれば確変大当りとなると判定する。確変大当りとならないと判定した場合には、非特定大当り入賞指定コマンドを示すデータを入賞コマンドとしてRAM55にセットする(ステップS126)。確変大当りとなると判定した場合には、特定大当り入賞指定コマンドを示すデータを入賞コマンドとしてRAM55にセットする(ステップS127)。」と、開示されており、
同(オ)(【0031】)には、前記「確変」について、「停止時の可変表示装置9における特別図柄の組み合わせが確率変動を伴う大当り図柄(確変図柄)の組み合わせである場合には、次に大当りとなる確率が高くなる。すなわち、確変状態という遊技者にとってさらに有利な状態(特別遊技状態)となる。」と開示されているので、
引用発明における前記「判定結果」は、本件補正発明における「抽選結果」及び「当該抽選結果が当たりの場合に?特典内容」に相当する。

引用文献1の(チ)、図9には、前記「判定」の結果に基づく「変動パターン」であって、「リーチ」と、結果が「当り」か「はずれ」かを特定するものが開示されているので、
引用発明における「変動パターン」は、本件補正発明における「抽選結果」及び「抽選結果に基づく図柄変動パターン」に相当する。

引用発明における、「保留記憶数」、「判定結果」及び「変動パターン」は、本件補正発明における「遊技情報」に相当する。
また、引用発明における、「表示制御コマンド」である「保留記憶数コマンド」は、前記「保留記憶数」及び「判定結果」、又は「保留記憶数」及び「変動パターン」を含むので、本件補正発明における「複数の遊技情報」を有する「1つのコマンド」に相当する。

引用文献1の(チ)には、「保留記憶数」、「判定結果」及び「変動パターン」が「始動入賞が生じたときに送信される」と開示されているので、前記「CPU56」がこれらを有する「保留記憶数コマンド」を生成するタイミングも、当該「始動入賞が生じたとき」であることは、自明である。
引用発明は、同じ始動入賞についての「保留記憶数」及び「判定結果」、又は「保留記憶数」及び「変動パターン」を用いて、連続予告の様態を決定しているので、
前記「保留記憶数コマンド」が「始動入賞単位で」生成されていることは、自明である。
したがって、引用発明における「遊技制御手段(例えばCPU56等)」は、本件補正発明における「演算処理手段」に相当する。

前述のとおり、「表示制御コマンド」である「保留記憶数コマンド」は、「始動入賞単位で」生成されており、
引用発明における「CPU56」及び「ポート」は、「CPU56」が生成した「表示制御コマンド」を、「始動入賞が生じたときに送信」しているので、
引用発明における「CPU56」及び「ポート」は、本件補正発明における「前記演算処理手段によって生成されたコマンドを、始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に前記第2の制御機器へ送信する送信手段」に相当する。

引用発明における「保留記憶数コマンド」は複数の情報を含むが、当該「保留記憶数コマンド」を受信した「表示制御手段」において、これに含まれる各情報を何らかの形で抽出する点は、開示されていない。
しかしながら、前記複数の情報が元々は異なる情報である点を考慮すれば、何らかの様態で各情報を抽出することは、当然行われることである。
よって、引用発明が、本件補正発明における「前記第2の制御機器に設けられ、前記送信手段で送信された始動入賞単位かつ始動入賞時毎のコマンドから、それぞれの前記遊技状態に必要な遊技情報を抽出する遊技情報抽出手段」に相当する手段を有することは、自明である。

引用文献1の(ツ)には、「始動入賞発生時」に「特別図柄の変動パターン」を「判定」し、「可変表示条件の成立時に」は「特別図柄の変動パターン」を「決定」する点が開示され、
同(テ)には、「連続予告」を行う上で「始動入賞記憶が1,2,3に対応する判定結果は大当りでなかった」ことを判断する点が開示されている。
引用発明における前記「コマンド受信バッファ」又はその他の何らかの記憶手段が、「始動入賞記憶が1,2,3に対応する判定結果」を記憶していることは、自明である。
よって、引用発明が、本件補正発明における「記憶手段」に相当する手段を有することは、自明である。

引用文献1の(ソ)(【0154】)に開示された「連続予告の判定処理において、表示制御用CPU101は、まず、連続予告を実行中であるか否か判定する」点は、本件補正発明における「現在複数回の図柄変動パターンに跨った連続予告演出が実行中か否かを判定し」に相当する。

引用文献1の図29?30には、具体的な「連続予告判定テーブル」として、「乱数値」、各「入賞指定」及び「始動入賞記憶数」の組み合わせ毎に、「連続予告」を行わないことを含む複数の連続予告の何れかが選択されるものが開示されている。
当該「連続予告判定テーブル」によれば、
例えば「特定大当り入賞指定」かつ「始動入賞記憶数=2」の組み合わせの時には、「乱数値」が「3?37」(すなわち確率35/127)、「38?67」(同30/127)、「85?105」(同21/127)、「106?126」(同21/127)の時に、それぞれ異なる「連続予告」が選択され、「乱数値」がその他の値の場合(同20/126)には「連続予告」を行わないものであり、
同様に、その他の「入賞指定」と「始動入賞記憶数」の組み合わせでは、この例とは異なる確率でいずれかの「連続予告」が選択されるので、
前記「テーブル」によって、「入賞指定」及び「始動入賞記憶数」の組み合わせ毎に「連続予告」を行う確率が定められている。
よって、引用発明における前記「連続予告判定テーブル」は、本件補正発明における「遊技情報の組み合わせ毎に予告発生抽選確率が定められた連続予告演出種類選択テーブル」に相当し、
引用発明において、当該「連続予告判定テーブル」を用いた抽選の結果に応じて、連続予告演出を行わないという結果を含む複数の連続予告演出のいずれかを設定することは、本件補正発明における「前記予告発生抽選の結果に応じて、連続予告演出を行わないという結果を含む複数の連続予告演出種類のいずれかを設定し」に相当する。

引用発明における、「特別図柄の変動態様を変化させる」ことで予告演出を行う点は、
本件補正発明における「図柄変動パターンに対して変更制御を実行する」点に相当する。

以上のことから、両者は、
<一致点>
「貸し出された遊技球を遊技盤上へ送り出すことで遊技の進行が可能となり、遊技の進行に応じて当該遊技球が遊技盤面上の始動口に入賞することで抽選がなされ、当該抽選の結果に応じて遊技状態が変化する遊技機であって、
主として前記抽選を含む遊技の進行を司る第1の制御機器と、
前記遊技の進行に付随して前記抽選結果を含む遊技状態を遊技者へ報知するための演出制御を司る第2の制御機器と、
前記第1の制御機器に設けられ、前記抽選の契機となる始動口への入賞によって発生する、抽選結果、当該抽選結果に基づく図柄変動パターン、又は当該抽選結果が当たりの場合に当該当たりに基づく処理後の前記抽選の当選確率を通常時の当選確率よりも高くするという遊技者への特典内容、を含む複数の遊技情報から、演算処理によって始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に1つのコマンドを生成する演算処理手段と、
前記演算処理手段によって生成されたコマンドを、始動入賞単位でかつ始動入賞時毎に前記第2の制御機器へ送信する送信手段と、
前記第2の制御機器に設けられ、前記送信手段で送信された始動入賞単位かつ始動入賞時毎のコマンドから、それぞれの前記遊技状態に必要な遊技情報を抽出する遊技情報抽出手段と、
前記第2の制御機器に設けられ、第1の制御機器から受信した情報を複数回分記憶する記憶手段と、を有し、
前記第2の制御機器は、現在複数回の図柄変動パターンに跨った連続予告演出が実行中か否かを判定し、連続予告演出実行中でないと判定した場合には、前記抽出した遊技情報の組み合わせ毎に予告発生抽選確率が定められた連続予告演出種類選択テーブルに基づいて予告発生抽選を実行し、前記予告発生抽選の結果に応じて、連続予告演出を行わないという結果を含む複数の連続予告演出種類のいずれかを設定し、前記記憶手段に記憶した遊技情報のうちの図柄変動パターンに対して変更制御を実行することを特徴とする遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件補正発明における1つのコマンドは、「前記抽選の契機となる始動口への入賞によって発生する、抽選結果、当該抽選結果に基づく図柄変動パターン、及び当該抽選結果が当たりの場合に当該当たりに基づく処理後の前記抽選の当選確率を通常時の当選確率よりも高くするという遊技者への特典内容」の3つを少なくとも有するのに対し、
引用発明における「保留記憶数コマンド」は、複数の情報を含む1つのコマンドであるものの、前記3つの情報を有しない点。

<相違点2>
本件補正発明における演算処理手段は、複数の遊技情報を含む1つのコマンドを生成するために、「まず基準コマンドを生成し、遊技情報に応じて書換処理を行って」いるのに対し、
引用発明は、複数の遊技情報を含む1つのコマンドを生成するものの、「まず基準コマンドを生成し、遊技情報に応じて書換処理を行って」いるか否かは不明である点。

<相違点3>
本件補正発明における演算処理手段は、複数の遊技情報を含む1つのコマンドを生成するために、「当該遊技情報に即したコマンドに集約する」のに対し、
引用発明は、複数の遊技情報を含む1つのコマンドを生成するものの、本件補正発明のように「集約する」か否かは不明である点。

<相違点4>
本件補正発明における「記憶手段」は、「前記遊技情報抽出手段で抽出された前記遊技情報を」記憶するのに対し、
引用発明が記憶する具体的なものは、不明である点。


(3-3) 判断
<相違点1>について
引用文献1には、前記「判定結果」(前記(3-2) で検討したとおり、本願発明における「抽選結果」及び「抽選結果に基づく図柄変動パターン」に相当する)並びに前記「特別図柄の変動パターン」の両方に基づいて連続予告の様態を決定する点、すなわち、本願発明における「抽選結果」及び「抽選結果に基づく図柄変動パターン」、並びに「当該抽選結果が?特典内容」の全てに基づいて連続予告の様態を決定する点は、開示されていない。
しかしながら、
引用文献1の(タ)に開示された、「実施の形態2.上記の実施の形態では、?始動入賞時には、具体的にいずれの変動パターン(変動パターン番号1?15の変動パターンのうちのいずれか)にするのかの判定までは行われていない。しかし、始動入賞時に、変動パターン番号1?15の変動パターンのうちのいずれにするのかまで判定するようにしてもよい。」という点、
並びに前記「判定結果」及び「特別図柄の変動パターン」はいずれも連続予告の様態を決定するためのものである点、とを考慮すれば、
引用発明において、前記「判定結果」を特定できる情報並びに「特別図柄の変動パターン」を特定できる情報の両方を、1つの「保留記憶数コマンド」に含ませ、この両方を用いて連続予告の様態を決定することは、当業者が容易に想到しうるものである。

<相違点2>について
下記(A)又は(B)。
(A) 引用発明において、複数の情報を含む1つのコマンドである「保留記憶数コマンド」を生成する際に、「保留記憶数コマンド」を格納するためのメモリ、レジスタ等の手段が用意されることは、自明である。
いわゆる変数の初期化にみられるように、各種情報処理において、データを格納するための手段に任意のデータをセットして初期化し、その後実際のデータの内容で書き換えることは、周知である。(以下、「周知技術1」という。)
よって、引用発明に周知技術1を適用して、<相違点2>に係る構成とすることは、当業者が適宜なしうるものである。

(B) 本願の発明の詳細な説明【0082】?【0084】の記載を参酌すると、本件補正発明における「書換処理」は、「基準コマンド」の一部のみを書き換えることと解される。
そして、まず基準となるデータを用意し、当該基準となるデータの一部を書き換えて最終的なデータを生成することは、いわゆるテンプレートを用いた各種データの生成や、特開2002-355407号公報の【0069】、図6に開示された発明にみられるように、周知な事項である。(以下、「周知技術2」という。)
よって、引用発明に周知技術2を適用して、<相違点2>に係る構成とすることは、当業者が適宜なしうるものである。

<相違点3>について
本願明細書には、別個に用意された複数の遊技情報をそれぞれ用意して1のコマンドに「集約する」具体的な処理は、記載されていない点、
本願明細書【0082】?【0084】、【0120】?【0131】、図7の記載からは、既に「集約」された状態にある複数のコマンドの中から条件に合うものを選択しているのであって実際に「集約する」処理は行っていない、とも解される点、
とを考慮すると、本件補正発明における「集約する」とは、一般的な意味での「集約する」には含まれないような処理を含む、と解される。
また、複数の情報を有する一の情報を生成する際に、複数の情報を「集約する」ことに、特段の困難性は認められない。
よって、複数の情報を含む1つの「保留記憶数コマンド」を生成している引用発明は、複数の情報を1つの「保留記憶数コマンド」に「集約」しているといえるか、
又は、引用発明を、複数の情報を1つの「保留記憶数コマンド」に「集約」しているといえる程度に構成することは、当業者が適宜なしうるものである。

<相違点4>について
引用発明は、複数の情報を含んでいるコマンドである「保留数記憶コマンド」を受信したときに、当該コマンドをそのまま記憶しているのか、当該コマンドから各情報を抽出してからこれを記憶しているのかは、不明であるが、
前記のどちらを格納するかは、受信したものを記憶する上で、当業者が適宜決定しうる事項である。
よって、本件補正発明における記憶手段が「遊技情報抽出手段で抽出された前記遊技情報」を複数回分記憶する点は、引用発明から、当業者が容易に想到しうるものである。


(3-4) 特許性についての検討のまとめ
したがって、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1若しくは2から、当業者が容易に想到しうるものであるから、
本件補正発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。


(4) むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
(1) 本願発明
平成23年7月19日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成21年9月17日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲により特定されるとおりのものである。
そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「 【請求項1】
貸し出された遊技球を遊技盤上へ送り出すことで遊技の進行が可能となり、遊技の進行に応じて当該遊技球が遊技盤面上の始動口に入賞することで抽選がなされ、当該抽選の結果に応じて遊技状態が変化する遊技機であって、
主として前記抽選を含む遊技の進行を司る第1の制御機器と、
前記遊技の進行に付随して前記抽選結果を含む遊技状態を遊技者へ報知するための演出制御を司る第2の制御機器と、
前記第1の制御機器に設けられ、前記抽選の契機となる始動口への入賞によって発生する、抽選結果、当該抽選結果に基づく図柄変動パターン、及び当該抽選結果が当たりの場合のその後の遊技者への特典内容を少なくとも含む複数の遊技情報を演算処理によって始動入賞単位で1つのコマンドに集約する演算処理手段と、
前記演算処理手段によって生成された始動入賞単位で1つのコマンドを前記第2の制御機器へ送信する送信手段と、
前記第2の制御機器に設けられ、前記送信手段で送信された始動入賞単位で1つのコマンドから、それぞれの前記遊技状態に必要な遊技情報を抽出する遊技情報抽出手段と、
前記第2の制御機器に設けられ、前記遊技情報抽出手段で抽出された前記遊技情報を、複数回分記憶する記憶手段と、を有し、
前記第2の制御機器は、現在複数回の図柄変動パターンに跨った連続予告演出が実行中か否かを判定し、連続予告演出実行中でないと判定した場合には、前記抽出した遊技情報に基づいて予告発生抽選を実行し、前記予告発生抽選の結果に応じた前記連続予告演出種類を設定し、前記記憶手段に記憶した遊技情報のうちの図柄変動パターンに対して変更制御を実行する。」

(2) 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された特開2003-275421号公報(引用文献1)に開示された発明(引用発明)は、前記2.(3) に記載したとおりである。

(3) 対比・判断
本願発明は、前記2.(2) で検討したように、本件補正発明から、
補正事項1?3、5?6で指摘した技術事項を除き、
補正事項3?4で指摘した表現を変更し、
補正事項7で指摘した、請求項1の末尾である「変更制御を実行することを特徴とする遊技機。」を、「変更制御を実行する。」にするものである。
前記「変更制御を実行することを特徴とする遊技機。」を、「変更制御を実行する。」にする点は、請求項1に記載された「?遊技機であって、」という前提を考慮すれば、実際上の意味内容を変更するものではない。
したがって、本願発明は、本件補正発明から技術事項を削除し、実際上の意味内容を変更しない程度に表現を変更したものである。
そうすると、前記2.で述べたとおり、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1若しくは2から、当業者が容易に想到しうるものであるから、
本願発明も、本件補正発明についての理由と同様の理由により、引用発明並びに周知技術1若しくは2から、当業者が容易に想到しうるものである。

(4) むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明並びに周知技術1若しくは2から、当業者が容易に想到しうるものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-15 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-05 
出願番号 特願2003-348112(P2003-348112)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治河本 明彦  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 秋山 斉昭
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 加藤 和詳  
代理人 中島 淳  
代理人 福田 浩志  

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