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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1247083
審判番号 不服2010-17941  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-09 
確定日 2011-11-17 
事件の表示 特願2004-366559「継手」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-170379〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成16年12月17日の出願であって,平成22年5月7日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年8月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2003-28373号公報
2.特開2000-201423号公報」

第3.平成22年8月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成22年8月9日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概要
本件補正は,平成22年3月29日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正するもので,請求項1については,補正前に
「管材の端部を差し込んで接続可能な継手本体に内筒を設けて前記継手本体に差し込まれる管材の端部に前記内筒が内嵌されるように構成するとともに,前記内筒の外周面に環状溝を形成してその環状溝に前記内筒と前記管材との間をシールするためのシールリングを装着した継手において,
前記シールリングには内筒の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を形成するとともに,内筒の環状溝には先端が尖った尖鋭部を有し,シールリングに食い込む食い込み用突起を備え,前記食い込み用突起は,管材の差し込み方向の前面と後面との2つの面で構成され,それらの面の結合部により尖鋭部が形成されるとともに,前記後面が環状溝の内底面に対してなす内角が,前面が環状溝の内底面に対してなす内角より大きくなるように設定されていることを特徴とする継手。」
とあるのを,次のとおりに補正するものである。

「管材の端部を差し込んで接続可能な継手本体に内筒を設けて前記継手本体に差し込まれる管材の端部に前記内筒が内嵌されるように構成するとともに,前記内筒の外周面に環状溝を形成してその環状溝に前記内筒と前記管材との間をシールするためのシールリングを装着した継手において,
前記シールリングには内筒の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を形成するとともに,内筒の環状溝には先端が尖った尖鋭部を有し,シールリングに食い込む食い込み用突起を備え,前記食い込み用突起は,前記継手本体に差し込まれる管材の端部側であって管材の差し込み方向の前面と,前記継手本体に差し込まれる管材の端部とは反対側であって該管材の差し込み方向の後面との2つの面で構成され,それらの面の結合部により尖鋭部が形成されるとともに,前記後面が環状溝の内底面に対してなす内角が,前面が環状溝の内底面に対してなす内角より大きくなるように設定されていることを特徴とする継手。」

上記補正は,補正前の発明を特定する事項である「食い込み用突起」の「前面」及び「後面」について,それぞれ下線のように限定するものであり,上記補正が産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。
したがって,上記補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-28373号公報(以下「引用例1」という。)には,「管差し込み継手」に関し,図面とともに次の事項が記載されている。
1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,パイプを差し込むだけで接続できる工具不要なワンプッシュ式の管差し込み継手に関する。詳しくは,円筒状のニップル部1と,これに対向して周設された保持リング2との間にパイプPを挿入し,このパイプPの軸方向への移動に伴ってその外周面P2に上記保持リング2内周の係止爪2aが噛み込むことにより,パイプPを引き抜き不能に接続する管差し込み継手に関する。」
1b)「【0007】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施例を図面に基づいて説明する。この実施例は,図1?図4に示す如く,継手本体Aが左右対称な一対のニップル部1,1を一直線状に設け,これらニップル部1,1にパイプP,Pを夫々逆方向へ挿入して装着することにより,これら2本のパイプP,Pが一直線に接続される中間継手である場合を示すものである。
【0008】上記ニップル部1は,図1に示す如く,例えば硬質合成樹脂や金属などの硬質材料で形成した継手本体Aに対して円筒状に一体成型され,そのパイプ挿入方向奥側には,後述する外筒3を取り付けるための環状凸部1aが外方へ突出して周設される。このニップル部1の外周面には,本実施例の場合,そのパイプ挿入方向入口側に,後述するパッキン4を取り付けるための凹溝部1bが環状に凹設される。
【0009】この外筒3は,上記ニップル部1と同様に例えば硬質合成樹脂や金属などの硬質材料で円筒状に形成され,そのパイプ挿入方向奥側の内周面には,該ニップル部1の環状凸部1aと対向して環状凹部3aを凹設し,これら環状凸部1a及び環状凹部3aを遊嵌状に嵌合させることにより,ニップル部1に対して外筒3が回転自在に支持されると共に,該外筒3の内周面とニップル部1の外周面との間には,後述する保持リング2及びパイプPを収容するための環状空間部Sが区画形成される。
【0010】更に,上記外筒3の内周面には,パイプPの軸方向への移動に伴って後述する保持リング2を縮径させるための傾斜面3bが凹設される。この傾斜面3bは,本実施例の場合,その内径をパイプ挿入方向と逆方向へ向うのに従って徐々に小さくなるように傾斜させ,挿入されたパイプPを挿入方向と逆方向へ引き戻すことにより,これに伴って保持リング2が該傾斜面3b沿いに移動して縮径されるようになっている。
【0011】また,上記外筒3の軸方向中間部には,パイプ透視用の窓孔3cが一つ又は周方向へ複数開穿され,本実施例の場合には,この窓孔3cが傾斜面3bの一部を貫通することにより,該窓孔3cを透して,後述する保持リング2の一部と,前記ニップル部1に沿って挿入されたパイプPが目視可能にしている。
【0012】上記保持リング2は,例えばステンレスなどの弾性変形可能な金属で円筒状に形成され,図2に示す如く,その周方向の一部を切り離して略C形にすることにより,径方向へ変形し易くすると共に,その内周面には,係止爪2aを周方向へ突設する。この係止爪2aは,その内径をパイプ挿入方向奥側へ向かうのに従って徐々に小径となるように傾斜させて,前記ニップル部1に沿ってパイプPを挿入した時に抵抗となり難い形状にする。
【0013】更に必要に応じて,パイプPを挿入し易くすると共に上記外筒3の傾斜面3bに沿って変形し易くするために,保持リング2の肉厚寸法を,そのパイプ挿入方向入口側へ向かうのに従って徐々に薄くすることが好ましい。
また図示例の如く,保持リング2のパイプ挿入方向入口端に突起2bを外方へ環状に突設して,上記外筒3の傾斜面3bに係止させることにより,縮径した保持リング2がパイプ挿入方向へ位置ズレしないようにしても良い。
【0014】そして,前記ニップル部1の凹溝部1bに取り付けられるパッキン4は,図3に示す如く,例えばゴムなどの摩擦抵抗が大きい材質で円筒状に一体成型され,必要に応じて凹溝部1bの内部に対して回転自在に装着する。このパッキン4の外周面には,パイプ挿入方向入口側から奥側へ向かうのに従って外径が徐々に大きくなるように傾斜するテーパー部4aを環状に突設し,その奥側には,断面略V字形に突出して該テーパー部4aより大径な山形突起部4bを環状に突設する。
【0015】更に,上記パッキン4の内周面には,前記ニップル部1の凹溝部1bの底面に周設された断面V形の凸部1cと対向する断面V形の凹部4cを周設して,これら凸部1cと凹部4cを係合させることにより,凹溝部1bに対してパッキン4がパイプ挿入方向へ位置ズレしないようにすると共に,パイプPの回転に伴ってパッキン4が回転する場合には,流体の漏れを防止しながら凹溝部1bに対するパッキン4の回転抵抗が小さくなるようにしている。」
1c)「【0021】それにより,保持リング2の係止爪2aがパイプPの外周面P2が噛み込まれ,この保持リング2を介してパイプPと外筒3が一体化して装着される。この状態で,パイプPの内周面P1とパッキン4の圧縮変形したテーパー部4a及び山形突起部4bとの間が摺接するか,又はニップル部1の凹溝部1bとパイプPの内周面P1との間が摺接することにより,パイプPがパッキン4を介してニップル部1に対し回転可能となる。その結果,装着されたパイプPを回転できる。」
1d)図1を参照すると,パッキン4に形成された山形突起部4bは,パイプPが差し込まれる前は,ニップル部1の外周面よりも径方向外側に突出していることが看取できる。
1e)図4を参照すると,断面V形の凸部1cは,2つの面によって構成されていることが看取できる。そして,その一方の面を「継手本体Aに差し込まれるパイプPの端部側であってパイプPの差し込み方向の前面」と称し,他方の面を「継手本体Aに差し込まれるパイプPの端部とは反対側であって該パイプPの差し込み方向の後面」と称することができる。

上記記載事項1a?1e及び図面の記載によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「パイプPの端部を差し込んで接続可能な継手本体Aにニップル部1を設けて継手本体Aに差し込まれるパイプPの端部にニップル部1が内嵌されるように構成するとともに,ニップル部1の外周面に凹溝部1bを形成してその凹溝部1bにニップル部1とパイプPとの間をシールするためのパッキン4を装着した管差し込み継手において,パッキン4にはニップル部1の外周面よりも径方向外側に突出する山形突起部4bを形成するとともに,ニップル部1の凹溝部1bにはパッキン4の断面V形の凹部4cに係合する断面V形の凸部1cを備え,凸部1cは,継手本体Aに差し込まれるパイプPの端部側であってパイプPの差し込み方向の前面と,継手本体Aに差し込まれるパイプPの端部とは反対側であってパイプPの差し込み方向の後面との2つの面で構成される管差し込み継手。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-201423号公報(以下「引用例2」という。)には,「管継ぎ手及びケーブルの布設方法」に関し,図面とともに次の事項が記載されている。
2a)「【0032】管継ぎ手10は,図2に示すように,二つ割り体10A,Bを合わせ面12で相互に合わせ,合わせ面12を貫いて設けられたボルト孔14にボルト13を貫通させ,ボルト13の両端をナット15で緊結することにより,二つ割り体10A,Bを一体化することができる。一体化された二つ割り体10A,Bからなる管継ぎ手10は,図2に示すように,電線管Pの外径Dより僅かに小さい径の円筒状中空部16を形成する。円筒状中空部16は,継ぎ手ブロックを貫通し,かつ,図1から図4に示すように,内周面18から半径方向に突出した,電線管Pの外径Dより小さい内径の環状突起部20を長手方向に離隔して有する。」
2b)「【0033】本実施形態例では,環状突起部20は,図1及び図3に示すように,一方の電線管Pと他方の電線管(図示せず)との突き合わせ接続位置22から両端部に向かってそれぞれ2個の環状突起部20が設けてある。環状突起部20は,図4(a)及び(b)に示すように,保持力を高めて電線管の脱着を防止するために,電線管の抜ける方向(管継ぎ手10の端部方向)に歯止めする形状となっており,かつ,先端を尖らせて電線管の管壁に喰い込ませ,抜け防止効果を高めている。
【0034】突き合わせ接続位置22から左側の環状突起部20Aは,図4(a)に示すように,環状突起部20Aの高さ方向断面で見て,直角三角形の断面を有し,突き合わせ接続位置22に近い側に内周面18に直交する直交面24を,遠い側に円筒状中空部16の内方に傾斜した傾斜面26とを有して,先端に鋭利な凸部28を備えた形状を備えている。また,管継ぎ手10の右側の環状突起部20Bは,図4(b)に示すように,突き合わせ接続位置22を通る横断中心線に関し,環状突起部20Aと対称な形状を備えている。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「管差し込み継手」,「パイプP」,「ニップル部1」,「凹溝部1b」,「パッキン4」,「山形突起部4b」は,それぞれ本願補正発明の「継手」,「管材」,「内筒」,「環状溝」,「シールリング」,「突出部」に相当する。
引用発明の「凸部1c」は,断面V字形であるから,先端が尖った尖鋭部を有することは明らかである。
引用発明の「凸部1c」と,本願補正発明の「食い込み用突起」は,シールリングに係合する突起である点で概念上共通する。
したがって,本願補正発明と引用発明は,本願発明の表記にできるだけしたがえば,
「管材の端部を差し込んで接続可能な継手本体に内筒を設けて前記継手本体に差し込まれる管材の端部に前記内筒が内嵌されるように構成するとともに,前記内筒の外周面に環状溝を形成してその環状溝に前記内筒と前記管材との間をシールするためのシールリングを装着した継手において,前記シールリングには内筒の外周面よりも径方向外側に突出する突出部を形成するとともに,内筒の環状溝には先端が尖った尖鋭部を有し,シールリングに係合する突起を備え,前記突起は,前記継手本体に差し込まれる管材の端部側であって管材の差し込み方向の前面と,前記継手本体に差し込まれる管材の端部とは反対側であって該管材の差し込み方向の後面との2つの面で構成され,それらの面の結合部により尖鋭部が形成される継手。」の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明の突起(食い込み用突起)は,シールリングに食い込むものであって,後面が環状溝の内底面に対してなす内角が前面が環状溝の内底面に対してなす内角より大きくなるように設定されているのに対して,引用発明の突起(凸部1c)は,パッキンのパイプ挿入方向への位置ズレを防止するものであるが,前面と後面がそれぞれ凹溝部の内底面に対してなす角度の大小関係については明らかでない点。

上記相違点について検討する。
引用例2には,直交面と傾斜面とを有して電線管の抜ける方向に歯止めする形状とし,かつ,先端を尖らせて電線管の管壁に喰い込ませ,抜け防止効果を高めるようにした環状突起部を設けた管継ぎ手が記載されている(記載事項2a及び2b参照)。また,引用例1の保持リング2の係止爪2aも,パイプPの引き抜きを不能にするため,引用例2の環状突起部と同様の形状となっている(図4,記載事項1a等を参照)。このように,管状部材(筒状部材)が軸方向の一方側へ移動することを阻止するため,管状部材の表面に係合する突起を,管状部材の軸方向に直交する面と傾斜する面との組合せによって先端を尖らせた形状とすることは,従来からよく知られているところである。
引用発明の突起は,パイプの挿入時に,筒状部材であるパッキンがパイプ挿入方向へ位置ズレするのを防止する作用を奏するものであるが,その作用・効果をさらに高めるために,後面を凹溝部の内底面に直交させ,前面を凹溝部の内底面に対して緩やかに傾斜する角度とすること,すなわち上記相違点は,上記周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.請求人の主張に対して
請求人は,審判請求書において,「引用文献1に記載された発明の突部とは,パッキンの位置ズレを防止するという作用機能を奏しつつも,パッキンの回転抵抗を小さくするという作用機能を奏する構成でなければならない。仮に,本願発明の食い込み用突起のように,管材の差し込み方向の後面が底面に対してなす内角を管材の差し込み方向の前面が底面に対してなす内角よりも大きくなるように設定したのでは,管材の差し込み時に突部の後面とパッキンとの間で摩擦力が大きくなる。したがって,パッキンの位置ズレを防止するという作用機能の点では問題ないが,パッキンの回転抵抗を小さくするという作用機能点では問題である。」とした上で「引用文献1に記載された発明の突部は,本願発明の食い込み用突起のような形状の採用を阻害する要因がある」と主張する。
しかし,引用例1の段落【0021】には,「パイプPの内周面P1とパッキン4の圧縮変形したテーパー部4a及び山形突起部4bとの間が摺接するか,又はニップル部1の凹溝部1bとパイプPの内周面P1との間が摺接することにより,パイプPがパッキン4を介してニップル部1に対し回転可能となる。」と記載されており,「摺接」とは摺動しながら接するとの意味であるから,パイプPが回転したとき,必ずしもパッキン4が回転しなくともよいことが窺える。引用例1の段落【0014】に「前記ニップル部1の凹溝部1bに取り付けられるパッキン4は,図3に示す如く,例えばゴムなどの摩擦抵抗が大きい材質で円筒状に一体成型され,必要に応じて凹溝部1bの内部に対して回転自在に装着する。」とある記載ぶりからみても,同じことがいえる。
また,本願明細書の段落【0020】には,「このように構成することで,シールリング30の内周面に食い込み用突起31が食い込むようになっている。また,その状態において,シールリング30は環状溝29内で回転可能に構成され,管挿入空間20に挿入された管材21が回転したときシールリング30に損傷を与えないようになっている。」と記載されているから,本願補正発明の食い込み用突起は,シールリングの回転を許容し得るものというべきである。引用発明の突起の形状を本願補正発明の突起の形状に変更しても,ニップル部に対するパッキンの回転が阻止されるものではないといえる。
以上のことから,引用発明の突起の形状を本願補正発明の突起の形状に変更することに阻害要因があるとまではいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成22年3月29日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)。

第5.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」に記載したとおりである。

第6.対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載した限定を外したものである。
してみると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-08 
結審通知日 2011-09-13 
審決日 2011-10-03 
出願番号 特願2004-366559(P2004-366559)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 継手  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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