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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G12B
管理番号 1247128
審判番号 不服2009-22867  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2011-11-16 
事件の表示 特願2005- 5983「フィードバック制御可能な位置決め台」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 7月27日出願公開、特開2006-194714〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・原査定の拒絶の理由
本願は、平成17年1月13日の出願であって、特許請求の範囲及び明細書について平成20年11月20日付けで補正がなされ(以下、「補正1」という。)、平成21年7月15日付け(送達:同年同月21日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
そして、原査定の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲に記載の各発明は、本願出願前に国内又は外国において頒布された刊行物である特開平5-333930号公報(発明の名称:微動機構、出願人:日立建機株式会社、公開日:平成5年12月17日、以下、「引用例」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた、というものである。

2.本願発明
そして、本願の請求項1ないし7に係る発明は、補正1によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「フィードバック制御可能な位置決め台において、
ベースと、
該ベース内に設けられた少なくとも一つの位置決め台と、
該位置決め台を接続架設する複数組の連結機構と、
該位置決め台に接続され、並びに位置決め台を軸方向に駆動して移動させる少なくとも一つのアクチュエータと、
該連結機構に設けられて連結機構の変形量を測定するひずみゲージと、
を具え、
該ひずみゲージの出力信号がコントローラに接続され、コントローラの演算により、制御信号がアクチュエータに出力されてアクチュエータの作動信号が修正され、
該ひずみゲージがアクチュエータの反対側の連結機構に設けられたことを特徴とする、フィードバック制御可能な位置決め台。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例記載の事項・引用発明
これに対して、引用例である特開平5-333930号公報には、微動機構(発明の名称)に関し、次の事項(a)ないし(c)が図面とともに記載されている。
(a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ナノメートルのオーダーの微小な変位を発生させる微動機構に関する。」
(b)「【0005】図5は従来の微動機構の側面図である。図で、1aは固定側剛体、1bは移動側剛体、2は両剛体1a、1b間に装架された圧電素子である。S_(1)?S_(4)は圧電素子2に装着されたひずみゲージであり、ひずみゲージS_(1)、S_(3)は圧電素子2の伸長方向(長手方向)のひずみを検出し、ひずみゲージS_(2) 、S_(4)は圧電素子2の伸長方向と直交する方向(横方向)のひずみを検出する。
【0006】圧電素子2に任意の電圧が印加されると、これに応じて圧電素子2が伸長し、移動側剛体1bが点線で示すように変位する。図ではこの変位を極端に誇張して描いてある。図中、δは変位量、即ち圧電素子の伸び量を示す。伸び量δは各ひずみゲージS_(1)?S_(4)を構成要素とする検出回路により検出される。
【0007】図6は当該検出回路の回路図である。図で、r_(1) 、r_(2) 、r_(3) 、r_(4 )はそれぞれひずみゲージS_(1) 、S_(2) 、S_(3) 、S_(4)の抵抗値を示す。Eは直流電源、4は増幅器である。圧電素子2に電圧が印加されると、圧電素子2は伸びてひずみを生じ、このひずみは各ひずみゲージS_(1)?S_(4) により検出され、この結果、図6に示す回路により圧電素子2の伸び量δに比例した信号Vを得ることができる。この信号Vを用いて正確な位置決めを行い、微動機構を当該位置に静止させる。」
(c)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ひずみゲージによる変位検出の分解能は、単位変位量当りのひずみ量が大きいほど向上する。しかし、上記ひずみゲージS_(1)?S_(4)による伸び量δの検出は、圧電素子2の伸びに伴うひずみの計測であるため単位変位量当りのひずみ量が小さく、満足する分解能を得ることはできない。」
(d)「【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、圧電素子と、この圧電素子の一端に固定された第1の剛体と、前記圧電素子の他端に固定された第2の剛体とで構成された微動機構において、前記第1の剛体と前記第2の剛体との間に配置され、前記圧電素子の伸長方向に平行で、かつ、当該圧電素子の長さより短い弾性部材と、この弾性部材に生じるひずみを検出する検出手段とを設けたことを特徴とする。
【0012】
【作用】圧電素子に電圧が印加されると圧電素子が伸び、これとともに弾性部材も伸びる。このとき、弾性部材には圧電素子に生じるひずみより大きなひずみが生じ、検出手段から出力される検出信号も大きくなる。この結果、変位検出の分解能は向上し、高い変位検出精度を得ることができる。」
(e)「【0013】
【実施例】以下、本発明を図示の実施例に基づいて説明する。図1は本発明の実施例に係る微動機構の側面図である。図で、図5に示す部分と同一又は等価な部分には同一符号が付してある。5aは凹字形状の固定側剛体、5bは凹字形状の移動側剛体であり、両者の凹部間に圧電素子2が装架される。6は固定側剛体5aにおける凹字形状の端部および移動側剛体5bにおける凹字形状の2つの端部相互間に連結された平板状の弾性部材である。ひずみゲージS_(1)?S_(4) がそれぞれ弾性部材6の表面の所定個所に設けられる。圧電素子2、固定側剛体5a、移動側剛体5b、弾性部材6、およびひずみゲージS_(1)?S_(4)により微動機構Aが構成される。なお、固定側剛体5a、移動側剛体5bおよび弾性部材6は1つの剛体部材から成形加工により一体に形成される。又、ひずみゲージS_(1)?S_(4) には金属ゲージ、半導体ゲージ等が用いられる。」
(f)「【0020】図2は図1に示す微動機構を用いた2軸微動機構の側面図である。図で、X、Yは座標軸を示す。A_(X)はX軸方向の変位を発生する第1の微動機構、A_(Y)はY軸方向の変位を発生させる第2の微動機構であり、これら微動機構の構成は、図1に示す微動機構Aと同一である。11は移動部、12は各軸方向に3つずつ平行に配置された弾性平板である。この2軸微動機構は、圧電素子およびひずみゲージを除き1つの剛体部材10から成形加工により一体に形成される。この場合、各弾性平板12は各貫通孔Hにより形成される。
【0021】第1の微動機構A_(X)の圧電素子に電圧が印加されると、Y軸方向に伸びる各弾性平板12にたわみ変形(曲げ変形)が生じ、これにより、移動部11がX軸方向に変位する。同様に、第2の微動機構A_(Y)の圧電素子に電圧が印加されると、X軸方向に伸びる各弾性平板12に曲げ変形が生じ、移動部11がY軸方向に変位する。この2軸微動機構は、図1に示す微動機構と同一の効果を有するとともに、簡素な構成でX軸およびY軸の位置決めを行うことができる。」

まず、上記記載(f)及び図2に記載された2軸微動機構は、記載(d)、(e)及び図1に記載された微動機構を基本構成(微動機構A_(X)、微動機構A_(Y))としてX-Yの2軸の微動機構としたものである。
そして、微動機構は、記載(b)によれば、「伸び量δは各ひずみゲージS_(1)?S_(4) を構成要素とする検出回路により検出される。図6は当該検出回路の回路図である。図で、r_(1)、r_(2)、r_(3)、r_(4)はそれぞれひずみゲージS_(1)、S_(2)、S_(3)、S_(4)の抵抗値を示す。Eは直流電源、4は増幅器である。圧電素子2に電圧が印加されると、圧電素子2は伸びてひずみを生じ、このひずみは各ひずみゲージS_(1)?S_(4)により検出され、この結果、図6に示す回路により圧電素子2の伸び量δに比例した信号Vを得ることができる。この信号Vを用いて正確な位置決めを行い、微動機構を当該位置に静止させる。」というものであるから、微動機構は、検出回路とは別に何らかの制御装置を備え、検出回路から得られた信号Vが、該制御装置に接続され、該制御装置における何らかの演算により、何らかの制御信号が圧電素子2に出力されて圧電素子2の作動信号が修正され、いわゆるフィードバック制御がなされるものと認められる。

以上の技術事項を踏まえると、上記記載(a)ないし(f)及び図1,2,5,6の記載から、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「フィードバック制御可能な2軸微動機構において、
微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の固定側剛体5aと、
該各々の固定側剛体5aにそれぞれ弾性平板12を介して設けられた移動部11と、
該移動部11を各々の固定側剛体5aとそれぞれ連結する微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の弾性部材6であって、圧電素子2の長さよりも短い平板状の弾性部材6と、
該移動部11に接続され、該移動部11をX軸方向及びY軸方向に駆動して移動させる微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の圧電素子2と、
該弾性部材6にそれぞれ設けられて該弾性部材6のひずみを検出するひずみゲージS_(1)?S_(4)と、
を具え、
該ひずみゲージS_(1)?S_(4)が検出回路に接続され、検出回路から得られた信号Vが、何らかの制御装置に接続され、制御装置における何らかの演算により、何らかの制御信号が圧電素子2に出力されて圧電素子2の作動信号が修正され、
該ひずみゲージS_(1)?S_(4)が移動部11から見て圧電素子2と同じ側の弾性部材6に設けられた、フィードバック制御可能な2軸微動機構。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願発明と引用発明とを、発明特定事項の記載の順に対比する。
(1)引用発明における「フィードバック制御可能な2軸微動機構」は、本願発明における「フィードバック制御可能な位置決め台」に相当し、引用発明における「微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の固定側剛体5a」は、本願発明における「ベース」に相当し、以下、同様に、引用発明における「移動部11」、「各々の固定側剛体5aとそれぞれ連結する」、「微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の」、「圧電素子2の長さよりも短い平板状の弾性部材6」、「微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の圧電素子2」、「ひずみを検出する」、「ひずみゲージS_(1)?S_(4)」、及び「何らかの制御装置」は、本願発明における「位置決め台」、「接続架設する」、「複数組の」、「連結機構」、「アクチュエータ」、「変形量を測定する」、「ひずみゲージ」及び「コントローラ」にそれぞれ相当する。
(2)上記相当関係(1)を踏まえると、引用発明における「該各々の固定側剛体5aにそれぞれ弾性平板12を介して設けられた移動部11」も、本願発明における「該ベース内に設けられた少なくとも一つの位置決め台」も、共に、「該ベースに設けられた少なくとも一つの位置決め台」である点で共通する。
(3)また、引用発明における「該ひずみゲージS_(1)?S_(4)が移動部11から見て圧電素子2と同じ側の弾性部材6に設けられた」も、本願発明における「該ひずみゲージがアクチュエータの反対側の連結機構に設けられた」も、共に、「該ひずみゲージが連結機構に設けられた」点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「フィードバック制御可能な位置決め台において、
ベースと、
該ベースに設けられた少なくとも一つの位置決め台と、
該位置決め台を接続架設する複数組の連結機構と、
該位置決め台に接続され、並びに位置決め台を軸方向に駆動して移動させる少なくとも一つのアクチュエータと、
該連結機構に設けられて連結機構の変形量を測定するひずみゲージと、
を具え、
該ひずみゲージの出力信号がコントローラに接続され、コントローラの演算により、制御信号がアクチュエータに出力されてアクチュエータの作動信号が修正され、
該ひずみゲージが連結機構に設けられた、フィードバック制御可能な位置決め台。」

(相違点)
・相違点1:位置決め台とベースとの位置関係について、
本願発明では、「ベース内に設けられた少なくとも一つの位置決め台」とあるように、位置決め台は、ベースの内側に設けられているのに対し、引用発明では、移動部11(本願発明の「位置決め台」に相当する。以下、同様。)は、微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の固定側剛体5a(ベース)にそれぞれ弾性平板12を介して設けられている点。
・相違点2:連結機構とアクチュエータとの位置関係について、
本願発明では、「該ひずみゲージがアクチュエータの反対側の連結機構に設けられた」とあるように、連結機構は、位置決め台から見てアクチュエータの反対側に設けられているのに対し、引用発明では、「該ひずみゲージS_(1)?S_(4)が移動部11から見て圧電素子2と同じ側の弾性部材6に設けられた」とあるように、弾性部材6(連結機構)は、移動部11(位置決め台)から見て圧電素子2(アクチュエータ)と同じ側に設けられている点。

4.判断
相違点1と相違点2とを併せて検討する。
この種の位置決め装置において、位置決め台をベースの内側に設けること、しかもこの場合に、位置決め台の移動距離を測定するセンサを、位置決め台から見てアクチュエータの反対側に設けることは、周知技術である。この点については、例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-94849号公報(発明の名称:テーブル装置、公開日:平成11年4月9日)の図1,3に示されたテーブル1、固定台2、アクチュエータ14,15及びセンサー21,22の配置関係や、本願明細書で先行技術として引用されている米国特許第6555829号明細書(発明の名称:HIGH PRECISION FLEXURE STAGE(高精度たわみ台(当審訳)、公開日:平成15年4月29日)のFIG.4に示されたブロック150、ブロック150を囲む部分、アクチュエータ310,320及びトランスジューサ410,420を参照のこと。
してみると、移動部11(位置決め台)が微動機構A_(X)及び微動機構A_(Y)の固定側剛体5a(ベース)にそれぞれ弾性平板12を介して設けられている引用発明において、まず、位置決め台とベースとの位置関係に係る上記周知技術を適用して、位置決め台をベースの内側に設けるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。そして、上記周知技術の位置関係を適用するに際し、位置決め台の移動距離を測定するセンサは、上記周知技術の如く位置決め台から見てアクチュエータの反対側に設けることとなり、上記センサに相当するひずみゲージS_(1)?S_(4)は該弾性部材6(連結機構)に設けられるから、引用発明の弾性部材6(連結機構)も、必然的に、該ゲージS_(1)?S_(4)とともに、アクチュエータの反対側に設けられることとなるものである。
したがって、引用発明に上記周知技術を適用することにより、本願発明のように、位置決め台をベース内に設けるとともに、連結機構をアクチュエータの反対側に設けるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。

5.請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、特段の根拠を示すことなく、引用発明ではX-Y軸方向の移動量を同時に正確に測定できないのに対し、本願発明ではX-Y軸方向の移動量を同時に正確に測定できる旨主張している。
しかしながら、引用発明においても、移動部11を弾性平板12を介して設けることにより、X軸方向とY軸方向の移動が互いに干渉しないようにしているものと認められ、よって引用発明もX-Y軸方向の移動量を同時に正確に測定できるものと解するのが妥当である。
すなわち、X-Y軸方向の移動量を同時に正確に測定できるとの作用効果は、本願発明のように、連結機構を、位置決め台から見てアクチュエータの反対側に設けることで初めて奏する効果とは認められないから、請求人の主張は採用できない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-17 
結審通知日 2011-06-21 
審決日 2011-07-05 
出願番号 特願2005-5983(P2005-5983)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G12B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榮永 雅夫  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 森 雅之
松浦 久夫
発明の名称 フィードバック制御可能な位置決め台  
代理人 魚住 高博  
代理人 竹本 松司  
代理人 白石 光男  
代理人 手島 直彦  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 湯田 浩一  

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