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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A47B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A47B 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A47B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47B 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A47B |
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管理番号 | 1247144 |
審判番号 | 不服2010-16504 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-07-22 |
確定日 | 2011-11-16 |
事件の表示 | 特願2007-223229「収納装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 1月24日出願公開,特開2008- 12327〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成17年2月16日に出願した特願2005-39285号の一部を平成19年8月29日に新たな特許出願としたものであって,平成22年3月25日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同時に手続補正がなされたものである。 その後,平成22年10月28日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,請求人から応答はなかった。 第2 平成22年7月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成22年7月22日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正には,特許請求の範囲を,次のとおりに補正しようとする補正事項が含まれている(補正箇所に下線を付した。)。 (補正前:平成22年3月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲) 「【請求項1】 左右両側板の上面に天板が結合されてなる横勝ち納めの枠体と、 その枠体の背面側に設けられた取付板と、 前記枠体内に設けられ、枠体内空間を左右に分割する一又は二以上の仕切板と、 その仕切板と前記側板の間、又は/及び、隣接する仕切板間に設けられた一又は二以上の棚板と、からなり、しかも地板のない収納装置であって、 前記仕切板は、前記天板の下面と取付板の前面にそれぞれ着脱可能な結合部材によって固定されるとともに、床面に固定部材を使用しての固定はされていないもので、前記仕切板の取付位置を、前記枠体内の左右方向の所定位置に変更可能にし、しかも、前記仕切板は、少なくとも一枚の、着脱可能な結合部材によって固定される固定用の棚板によって、前記隣接する仕切板又は前記側板に必ず固定されるようにし、さらに前記側板と前記仕切板の間の幅一杯、又は/及び、前記仕切板が二以上の場合における隣接する前記二つの仕切板間の幅一杯まで収納ボックスを出し入れできるような空間を形成したことを特徴とする収納装置。 【請求項2】 左右両側板の上部側面に天板の側面が結合されてなる縦勝ち納めの枠体と、 その枠体の背面側に設けられた取付板と、 前記枠体内に設けられ、枠体内空間を左右に分割する一又は二以上の仕切板と、 その仕切板と前記側板の間、又は/及び、隣接する仕切板間に設けられた一又は二以上の棚板と、からなり、しかも地板のない収納装置であって、 前記仕切板は、前記天板の下面と取付板の前面にそれぞれ着脱可能な結合部材によって固定されるとともに、床面に固定部材を使用しての固定はされていないもので、前記仕切板の取付位置を、前記枠体内の左右方向の所定位置に変更可能にし、しかも、前記仕切板は、少なくとも一枚の、着脱可能な結合部材によって固定される固定用の棚板によって、 前記隣接する仕切板又は前記側板に必ず固定されるようにし、さらに前記側板と前記仕切板の間の幅一杯、又は/及び、前記仕切板が二以上の場合における隣接する前記二つの仕切板間の幅一杯まで収納ボックスを出し入れできるような空間を形成したことを特徴とする収納装置。 【請求項3】 前記取付板は、前記枠体の背面側の下部に設けられた水平に延びる板材であることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納装置。 【請求項4】 前記取付板は、水平に延びる上下2本の板材であり、壁面に固定可能であることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の収納装置。」を (補正後) 「【請求項1】 左右両側板の上面に天板が結合されてなる横勝ち納め又は左右両側板の上部側面に天板の側面が結合されてなる縦勝ち納めの枠体と、 その枠体の背面側に設けられた取付板と、 前記枠体内に設けられ、枠体内空間を左右に分割する一又は二以上の仕切板と、 その仕切板と前記側板の間、又は/及び、隣接する仕切板間に設けられた一又は二以上の棚板と、からなり、しかも地板のない収納装置であって、 前記仕切板は、前記天板の下面と取付板の前面にそれぞれ着脱可能な結合部材によって固定されるとともに、床面に固定部材を使用しての固定はされていないもので、前記仕切板の取付位置を、前記枠体内の左右方向の所定位置に変更可能にし、しかも、前記仕切板は、少なくとも一枚の、着脱可能な結合部材によって固定される固定用の棚板によって、前記隣接する仕切板又は前記側板に必ず固定されるようにし、さらに前記仕切板の下面には前記仕切板の厚さよりはみ出す固定部材を設けることなく、前記側板と前記仕切板の間の幅一杯、又は/及び、前記仕切板が二以上の場合における隣接する前記二つの仕切板間の幅一杯まで収納ボックスを出し入れできるような空間を形成したことを特徴とする収納装置。 【請求項2】 前記取付板は、前記枠体の背面側の下部に設けられた水平に延びる板材であることを特徴とする請求項1に記載の収納装置。 【請求項3】 前記取付板は、水平に延びる上下2本の板材であり、壁面に固定可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の収納装置。」と補正する。 2 補正の適否の判断(補正の目的) 上記本件補正後の請求項1に係る補正は,補正前の請求項1に係る発明である「左右両側板の上部側面に天板の側面が結合されてなる横勝ち納めの枠体」を有する収納装置に,補正前の請求項2の「左右両側板の上部側面に天板の側面が結合されてなる縦勝ち納めの枠体」を有する収納装置を付加するものであり,この補正事項により,補正後の請求項1に係る発明は,補正前の請求項1に係る発明である「横勝ち納めの枠体」を有する収納装置だけでなく,「縦勝ち納めの枠体」を有する収納装置も含むものとなった。 したがって,上記補正事項は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項に掲げる何れの事項(請求項の削除,特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明)を目的とするものにも該当しない。 3 むすび したがって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成22年7月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし4に係る発明は,平成22年3月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される,上記「第2 1(補正前)」に記載したとおりのものと認める。 以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。 2 刊行物及びその記載内容 (1)原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された特開2003-169723号公報(以下,「刊行物1」という。)には,次のことが記載されている(下線は当審付与。)。 (1a)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、側板と天板とを連結した家具本体を備える家具に関する」、 (1b)「【0014】・・・図1、図2には第一実施形態の家具である食器棚の分解斜視図および正面図が示されている。図1、図2において、食器棚10は家具本体11、背板21、仕切板22および家具ユニットである引出ユニット23から構成されている。」 (1c)「【0016】家具本体11は、2枚の側板12が略鉛直に延びて互いに対向して配置され、これら側板12の上端同士を天板13が連結することで、開口部を下に向けたコ字形の骨組みが構成される。したがって、天板13の上に載置される積載荷重を支持し、側板12の側から加わる横方向の荷重や地震時に作用する衝撃力に対抗するのに、十分な強度を有した家具本体11が形成されている。家具本体11を構成する側板12と天板13とは、それぞれ同厚、同幅の板材で、側板12の上端部および天板13の両端部には、留め加工が施され、それぞれの板面に対して45度の角度を有する接合面12A,13Aが設けられている。」、 (1d)「【0018】背板21は、家具本体11の背面を覆う大きさを有する木質の板材で形成され、側板12および天板13にねじ止め等により固定されている。仕切板22は、側板12とほぼ同じ大きさを有する木質の板材で形成され、天板13および背板21にねじ止め等により固定されている。引出ユニット23は、木質の板材を組み合わせて箱状に形成した箱体23Aと、この箱体23Aに挿入される引出23Bとから形成される。引出ユニット23は、側板12と仕切板22との間に取り付けられて、家具本体11の内部に組み込まれ一体とされる。」、 (1e)「【0020】図2に示すように、食器棚10は、側板12と仕切板22とに棚板24が架け渡されて、食器類を収納する棚として使用される。あるいは、側板12と仕切板22との間に、冷蔵庫25等を組み入れて利用される。・・・」、 (1f)「【0021】食器棚10の製造方法は、先ず、所定の長さ寸法に切断された側板12および天板13の接合面12Aおよび13Aの留め加工を行う。2枚の側板12を所定の間隔をあけて対向配置し、それらの上部に天板13をそれぞれの接合面同士を密接させて組み合わせ、内側から連結金物14を当接し、ねじ15により固定する。以上で、コ字形の骨組みを備える家具本体11が形成される。 【0022】次に、この家具本体11の背面に、背板21を側板12および天板13に取り付ける。更に、仕切板22を天板13および背板21に取り付ける。最後に、家具ユニットである引出ユニット23を、側板12および仕切板22の間に挟み入れ、それらの側板12および仕切板22と背板21とに固定する。以上で、食器棚10の組み立ては完成する。なお、家具本体11に組み込む家具ユニットとしては、引出ユニット23以外に開放ユニットや収納ユニットとすることもある。」、 (1g)「【0031】次に、第三実施形態について図4に基づき説明する。図4(A)において、第三実施形態の家具は、家具本体41および家具ユニットである引出ユニット45、46で形成される机部47と、別置きの鏡48とで構成されるドレッサー40である。家具本体41に使用される板材およびその加工方法と連結方法とは、第一実施形態の家具本体11の場合と同様である。 【0032】家具本体41は、2枚の側板42とそれらの上部を連結する天板43とで、開口部を下にしたコ字形に形成される。家具本体41の内部には、天板43の下面に引出ユニット45が取り付けられ、一方の側板42の内側に引出ユニット46が設置されている。 【0033】引出ユニット45は、木質の板材を組み合わせて箱状に形成した箱体(図示しない)と、この箱体の前面から挿入される引出45Bとから形成される。引出ユニット46も同様に、箱体(図示しない)と引出46Bとから形成される。引出ユニット46Bの下面には、引出ユニット46を移動可能にするキャスター46Cが取り付けられている。・・・」。 上記記載事項(1a)?(1g)及び図面の記載からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。 「2枚の側板の上端同士を天板で連結してなる,開口部を下に向けたコ字形の骨組みと, 側板12および天板13に固定されている背板21と, 天板13および背板21にねじ止め等により固定され,上記骨組み内を左右に分割する仕切板22と, その仕切板22と前記側板12の間に架け渡された棚板24とを備える家具であって, 一方の側板12および仕切板22との間に引出ユニット,開放ユニット又は収納ユニットを固定し,他方の側板12および仕切板22との間を冷蔵庫等が出し入れ可能な収納部とした家具。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。) (2)原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された実公昭62-28194号公報(以下,「刊行物2」という。)には,次のことが記載されている。 (2a)「<産業上の利用分野> 本考案はコンピユータ用テーブルの脇棚に関するものであつて、脇棚の横幅を使用する機種によつて任意に変更できるように、脇棚の側板に対向して可動板を設け、この可動板を長穴の任意位置へ螺着可能とした点に特徴を有している。」(1欄13?18行), (2b)「<従来の技術及び問題点> コンピユータ用機器は製造メーカー、機種等によつて大きさが異なる。従つて、これを収容するテーブル脇棚もその横幅が任意に変えられると好都合である。従来のように脇棚の横幅が一定の場合には、幅が広すぎると見苦しいし、逆に狭い場合には機器を収容することができない。 <問題点を解決するための手段> そこで本考案においては、脇棚の横幅が簡単に調節できるものとし、しかも強固な構造のものとしたのである。その構造は天板1の下面に装着された両側板2、2’のうち一方の側板2’と前面板3及び前記側板2’に対向する可動板4とによつて天板下部に脇棚を形成し、前記可動板4は前記天板1と前面板3又は足置桟5に設けた長穴調節部A,B,Cの表面長穴6と長穴調節部A,B,C内部に平行に設けられた間隙内を摺動可能なねじ受8へ可動板4の縁部12に設けられたねじ挿通穴10からねじ9を挿通して螺着したことを特徴とするものである。」(1欄19行?2欄10行), (2c)「このことを更に脇棚内に収容する機種に合わせて可動板4を最適な位置に固定する場合を例にして詳細に説明する。まず最初に可動板4を両側板2,2’間の最適な位置へ左右いずれかへ移動させ、同時に可動板4の縁部12に設けられたねじ挿通穴10と長穴調節部A,B,Cの長穴6を合わせ、この時、その内部のねじ受8がその位置にない場合には摺動させて、前記ねじ挿通穴10の位置へ移動させる。このように長穴6を挟んで可動板4のねじ挿通穴10と、足置桟5、前面板3、天板1のそれぞれに設けられた長穴調節部A,B,Cのねじ受8が同位置になった時、ねじ9を螺入して固着するのである。ねじ受を長穴調節部内へ多数個用意しておかなくても、また、長穴調節部のどのような位置でも固定できる作用がある。可動板4の取付位置を微調整する場合でも、ねじ9を緩めるだけで左右に可動板4を移動させればねじ受8が追従して移動するので、最適な位置でねじ9を締付けさえすれば、調整作業を終えることができる。」(3欄26行?4欄13行)。 上記記載事項(2a)?(2c)の記載,及び,図面の記載からみて,刊行物2には以下の発明が記載されているものと認められる。 「天板の下面に装着された両側板のうち一方の側板と前面板及び側板に対向する可動板とによつて天板下部に脇棚を形成したコンピュータ用テーブルにおいて,脇棚の横幅を変更するために,前面板及び足置桟に設けた摺動可能なねじ受に対して,可動板をそのねじ挿通孔からねじ9を挿通して螺着することによって,位置変更可能に固定できるようにしたコンピュータ用テーブル。」(以下,「刊行物2記載の発明」という。) (3)原審の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された登録実用新案第3011056号公報(以下,「刊行物3」という。)には,次のことが記載されている。 (3a)「【請求項1】左右両側端に直立させる側板と、これらの左右側板の間を仕切る中仕切板と、前記左右側板及び中仕切板上に固定させる天板と、前記左右側板と中仕切板とを適宜高さ位置で固定させる固定棚と、前記左右側板と中仕切板との間に配置させる可動棚、引出し、バスケット及びハンガーパイプとからなり、 さらに、前記左右側板及び中仕切板の所定個所に固定棚及び可動棚を支持させるダボ孔と、引出し用スライドレール、バスケットレール、ハンガーパイプ等の取付用下孔を設けて構成される組立式収納セット。」, (3b)「【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は、建て付けのクローゼットや押入れのように決まったスペースを有効にしかも使い勝手よく使うための組立式収納セットに関するものである。」, (3c)「【0005】 【作用】 クローゼットや押入れのスペースに合わせて左右両側端に側板を立設し、さらにこれらの左右側板の間を適宜の間隔で仕切板で仕切り、仕切られた空間に収納目的に合わせて固定棚や可動棚を配し、引出しやバスケットを装着し、さらにハンガーパイプを取り付けて使用することで収納効率を上げると共に、使い勝手をよくする。」, (3d)「【0006】 【実施例】 以下に本考案の一実施例を図面と共に説明する。図において1,1は左右の両側端に直立させる側板であり、2はこれらの左右側板1,1の中間を仕切って区画する中仕切板である。これらの各側板1,1及び仕切板2は例えば、奥行きを432m/mとし、高さを700,1500,1800m/mとして定尺に形成される。 これらの左右側板1,1及び中仕切板2には所定位置に固定棚9及び可動棚11の両端を支持させるダボ孔3と、引出し用スライドシール23,バスケットレール29,ハンガーパイプ14を取り付けるための下孔4を複数設けている。 【0007】 5は前記左右側板1,1及び中仕切板2の上端に被せて固定させる天板である。この天板5は例えば奥行きを590m/m,横巾を830,1370,1910m/mとして定尺に形成され、これを使用するスペースに合わせてカットして使用するが、横巾が1800m/m以上の場合は端面に設けたダボ孔6,6にダボ7,7を打ち込んで接続する。また、側面に所定間隔にて前後2列にダボ孔8を設けている。 【0008】 9は前記左右側板1,1及び中仕切板2とを所定の高さ位置で連結する固定棚であり、例えば奥行きを430m/m,横巾を250,520,790,1060m/mとして定尺に形成され、左右の両側端に前記ダボ10,10を打ち込んでいる。 11は前記左右側板1,1と中仕切板2との間に高さ位置変更自在に配置させる可動棚であり、その寸法は前記固定棚9と同寸に形成される。 【0009】 12は前記左右側板1,1と中仕切板2との間で引き出し自由に使用される引出しである。この引出し12は例えば高さを135m/mと195m/mの2種類,前板の横巾を266,536,816,1076m/mとして定寸に形成される。」, (3e)「【0014】 図6ないし図9に本考案に係わる組立式収納セットの収納目的に合わせた組み付けの実際が例示されている。図6ないし図8はそれぞれクローゼットでの使用であり、図9は押入れでの使用例である。 図6において37はクローゼットの枠体であり、該枠体37の前面に取り付けられる観音開き等の扉は図示を省略している。そして、左右の側板1,1の間を3枚の中仕切板2で仕切って4区画とし、左端の区画では横巾の広い引出し12を高さの低いもの4個、高さの高いもの2個装着し、左から2番目の区画では上部に直杆状のハンガーパイプ14を取り付けて洋服を吊り下げるスペースとしている。そして、左から3番目の区画では横巾の狭い引出し12を高さの低いものを4個、高さの高いものを2個装着し、右側の区画では中央に固定棚9を、そしてこの固定棚9の上下に可動棚11,11を1枚ずつ配置している。」。 上記記載事項(3a)?(3e)の記載,及び,図面の記載からみて,刊行物3には以下の発明が記載されているものと認められる。 「左右両側端に直立させる側板と,左右側板の間を仕切る中仕切板と,前記左右側板及び中仕切板上に固定させる天板と,前記左右側板と中仕切板との間,及び,仕切板が二以上の場合における隣接する前記二つの仕切板間に配置させる固定棚,可動棚,引出し,バスケット及びハンガーパイプとからなる組立式収納セットにおいて,固定棚,引出しは,長さの異なるものを用意し,中仕切板を左右側板の間が適宜の間隔となるように取り付けるとともに,中仕切板と左右側板との間、及び,二つの仕切板間を,適宜の長さの固定棚によって固定する組立式収納セット。」(以下,「刊行物3記載の発明」という。) 3 対比 本願発明と上記刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明の「2枚の側板12」が本願発明の「左右両側板」に相当し,以下同様に,「骨組み」が「枠体」に,「背板21」が「取付板」に,「家具」が「収納装置」に,それぞれ相当している。 また,刊行物1記載の発明の「仕切板」は,天板13および背板21にねじ止め等により固定されるものであるから,「着脱可能な結合部材によって固定される」ものといえる。 そして,刊行物1記載の発明の「家具」は,組み立て家具であって,任意の位置に設置されるものであり,刊行物1には該「家具」を床面に固定することを示唆する記載もないから,刊行物1記載の発明の「家具」の「2枚の側板」,「背板21」及び「仕切板22」は,いずれも床面に固定部材を使用して固定されていないものと解するのが自然である。 また,刊行物1記載の発明と,本願発明とは,いずれも「枠体と取付板と仕切板と棚板とを「備えている」点において共通する。 したがって,両者は, 「左右両側板の上面に天板が結合されてなる枠体と, その枠体の背面側に設けられた取付板と, 前記枠体内に設けられ,枠体内空間を左右に分割する一の仕切板と, その仕切板と前記側板の間に設けられた一の棚板と,を備え,しかも地板のない収納装置であって, 前記仕切板は,前記天板の下面と取付板の前面にそれぞれ着脱可能な結合部材によって固定されるとともに,床面に固定部材を使用しての固定はされていない収納装置。」である点で一致し,次の点で相違する。 (相違点1) 枠体が,本願発明では「横勝ち納め」であるのに対し,刊行物1記載の発明では,このようなものに限定されておらず,実施例では,側板の上端部および天板の両端部には、それぞれの板面に対して45度の角度を有する接合面が形成され,この接合面を密接させる例が示されているにすぎない点。 (相違点2) 仕切板の取付けに関して,本願発明は,仕切板の取付位置を,枠体内の左右方向の所定位置に変更可能にしたものであり,少なくとも一枚の,着脱可能な結合部材によって固定される固定用の棚板によって,隣接する仕切板又は側板に必ず固定されるのに対し, 刊行物1記載の発明は,天板と取付板とに対して取付位置が変更可能か否か不明であり,また,仕切板と隣接する側板とは,引き出し等のユニットによって固定されるものであって,着脱可能な結合部材によって固定される固定用の棚板によって側板に固定されるようになっていない点。 (相違点3) 本願発明は,側板と仕切板の間の幅一杯,又は/及び,仕切板が二以上の場合における隣接する二つの仕切板間の幅一杯まで収納ボックスを出し入れできるような空間を形成したのに対し,刊行物1記載の発明は,一方の側板と仕切板の間は冷蔵庫等が出し入れ可能であるが,他方の側板と仕切板の間は引出ユニットが固定されており,収納ボックスを出し入れできる空間を形成したものでない点。 4 判断 (1)相違点1について 上記相違点1について検討すると,収納家具において,横勝ち納めの枠体は,例示するまでもなく広く一般に知られている構成であって,かかる構成とすることは,当業者が適宜選択できる単なる設計事項にすぎない。 (2)相違点2について 上記相違点2について検討すると,刊行物2及び刊行物3に記載されているように,収納装置において,その仕切板(「可動板4」,「中仕切板2」)の位置を変更可能として種々の幅の収納物に対応できるようにすることは,周知であり,刊行物1記載の発明において,仕切板を枠体内の左右方向の所定位置に変更可能に取り付けることは当業者が容易に想到しうることである。 ここで,刊行物1記載の発明は,引出ユニット23を、側板12および仕切板22の間に挟み入れ,側板12および仕切板22と背板21とに固定するものであるが,記載事項(1c)には,家具は,収納目的に応じて固定棚や引出し等を適宜取り付けて使用されることが示されており,刊行物1記載の発明において,仕切板22と引出ユニット23とを固定することが家具の強度を保持するために必須の構成とは認められない。 そして,刊行物3には,側板と仕切板の間に,側板と仕切板を連結する長さの異なる固定棚を用意し,仕切板と側板を任意の固定棚で連結することが記載されており,刊行物1記載の発明において,仕切板を左右方向に変更可能に取り付けるようにするのに対応して,仕切板と側板とを,引出ユニット23等に代えて,仕切板の位置に応じた棚板で固定するようにすることは,刊行物3記載の発明に基いて当業者が容易になしうることである。 (3)相違点3について 上記相違点3について検討すると,刊行物1記載の発明は,一方の側板と仕切板の間に冷蔵庫等を出し入れ可能なものであり,また,刊行物1の記載事項(1g)にみられるように,収納家具の一部を,出し入れできる収納ボックスで構成することは周知の技術であるから,一方の側板と仕切板の間に,引出ユニット23等収納ボックスを出し入れ自在とすることは当業者が容易になしうることである。 さらに,上記(2)で述べたように,他方の側板と仕切板とを収納ユニットに代えて,棚板で固定することは当業者が容易になしうることであり,この様なものにおいて,固定用の棚板の下方の空間に収納ボックスを出し入れ自在とすることも当業者が容易になしうることである。 また,クローゼット等の収納装置において,仕切板を二以上設けることも,例えば,刊行物3に記載されているように,よく知られていることであるから,刊行物1記載の発明において,仕切り板を複数設け,二つの仕切板の間に収納ボックスを出し入れできるように構成することも,当業者が容易になし得たことである。 ここで,相違点3に係る本願発明の「側板と仕切板の間の幅一杯,又は/及び,仕切板が二以上の場合における隣接する前記二つの仕切板間の幅一杯まで収納ボックスを出し入れできるような空間を形成した」という構成について,本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】には,次のように記載されている。 「…また,特にキャスター付きのコンテナ型の収納ボックス(図示を省略した)を床面100から枠体内に出し入れすることができる。このとき,仕切板11,12の下面には仕切板11,12の厚さよりはみ出した固定部材は特に設けられていないので,キャスター付きのコンテナ型の収納ボックスのスムースな出し入れが可能になる。つまり,側板1と仕切板11の間の幅一杯,仕切板11,12間の幅一杯,仕切板12と側板2の間の幅一杯までキャスター付きのコンテナ型の収納ボックスを入れることができる。」 つまり,本願発明において,「幅一杯まで収納ボックスを出し入れできるような空間を形成した」とは,仕切板の下面にその側部からはみ出すような固定部材を設けないことを意味するものであって,その点においては,刊行物1記載の発明も,かわるものではない。 すなわち,刊行物1記載の発明は,仕切板の下面にその側部からはみ出すような固定部材を設けないものであるから,側板と仕切板,あるいは複数の仕切板の間に収納ボックスを入れる場合に,幅一杯まで収納ボックスを入れることができる空間を形成することができるものである。 したがって,本願発明の相違点3に係る構成は,刊行物1及び刊行物3記載の発明に基いて当業者が容易になしうることである。 (4)作用効果及び判断のむすび そして,本願発明の作用効果は,刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術から予測できる程度のことである。 したがって,本願発明は,刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1ないし3記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができず,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-08-02 |
結審通知日 | 2011-08-23 |
審決日 | 2011-09-06 |
出願番号 | 特願2007-223229(P2007-223229) |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(A47B)
P 1 8・ 573- Z (A47B) P 1 8・ 572- Z (A47B) P 1 8・ 121- Z (A47B) P 1 8・ 574- Z (A47B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小野 忠悦、鈴木 秀幹 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
宮崎 恭 土屋 真理子 |
発明の名称 | 収納装置 |
代理人 | 山広 宗則 |