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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1247336
審判番号 不服2009-24301  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-08 
確定日 2011-12-13 
事件の表示 特願2000- 17212「電子スチルカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月 3日出願公開、特開2001-211366、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.経緯
(1)手続
本願は、平成12年1月26日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由の通知 :平成21年 5月21日(起案日)
手続補正書(明細書) :平成21年 7月27日
意見書 :平成21年 7月27日
拒絶査定 :平成21年 8月31日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成21年12月 8日
手続補正書(明細書) :平成21年12月 8日
前置報告書 :平成22年 3月 9日

(2)拒絶査定
原査定の理由は、概略、下記のとおりである。
記(査定の理由)
請求項1ないし請求項4に係る発明は、下記刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平11-331662号公報
刊行物2:株式会社ニコン『NikonF5使用説明書』,1996年10月,第3頁,第4頁
刊行物3:特開平11-184007号公報
刊行物4:特開平11-261860号公報

(3)平成21年12月8日付け補正
この補正は、補正前請求項1?4を、下記請求項1?4の記載に変更するものものである。(下線部が補正により追加された箇所)
記(特許請求の範囲:平成21年12月8日付け補正)
【請求項1】
撮像素子で撮像された被写体像及び/又は情報を表示するモニタをカメラ背面に設けた電子スチルカメラにおいて、
カメラ背面に突出し、親指載せ部を含んだ背面グリップを備え、
前記親指載せ部は、前記モニタの斜め上方に配置され、
前記親指載せ部の下方で、前記モニタと背面グリップの間に配置された、前記モニタの表示に基づいた操作をする操作部を備え、
前記操作部の表面は、該操作部よりも上側の部分の前記背面グリップよりも低いこと、
を特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載の電子スチルカメラにおいて、
前記操作部は、操作方向を指定する十字キーであること、
を特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電子スチルカメラにおいて、
前記操作部は、前記背面グリップの近傍に設けられていること、
を特徴とする電子スチルカメラ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子スチルカメラにおいて、
撮影レンズと撮像素子とが設けられた撮像ユニットと、
前記撮像ユニットと回転可能に連結された略直方体形状のモニタユニットと、
撮像素子で撮像された被写体像及び/又は情報を表示し、前記モニタユニットの背面に設けられたモニタと、
情報を表示し、前記モニタユニット上面に設けられた表示部と、
を備えた電子スチルカメラであって、
前記モニタの斜め上方にある親指載せ部と、
前記親指載せ部の上方にあって、かつ、カメラの上面と背面との稜線上に設けられ、前記モニタ及び/又は前記表示部の表示に基づいた操作をするコマンドダイアルと、
前記親指載せ部の下方にあって、AFエリアを設定し、また、操作方向を指定する十字キーと、
前記親指載せ部の左方であって、前記モニタの上方に配置されたズームアップボタン及びズームダウンボタンと、
を備えることを特徴とする電子スチルカメラ。

(4)前置報告
前置報告は、概略、下記のとおりである。

記(前置報告)
平成21年12月8日付け補正は限定的減縮を目的としているが、当該補正後の請求項1?4に係る発明は、下記の理由で独立して特許を受けることができない。
記(独立して特許を受けることができない理由)
本願の請求項1?4に係る発明は、下記刊行物A?Hに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

引用文献等一覧
刊行物A.意匠登録第977192号の類似1の公報(1998年8月14日発行)
刊行物B.特開平11-331647号公報
刊行物C.特開平11-308490号公報
刊行物D.特開平11-266430号公報
刊行物E.特開平11-261860号公報(前記刊行物4と同じ)
刊行物F.株式会社ニコン,『ニコンデジタルカメラE950 COOLPIX950使用説明書』,1999年3月25日,第14頁,第27頁,(該当製品は1999年3月に国内販売されているため、本使用説明書は遅くとも本願出願前に頒布されていたものと認められる。)
刊行物G.特開平11-344753号公報
刊行物H.特開平11-331662号公報(前記刊行物1と同じ)

2.補正の適否判断 (当審)
(1)結論
平成21年12月8日付けの手続補正を認める。

(2)理由
平成21年12月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成18年改正前特許法(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法)第17条の2第3項及び第4項、並びに同条第5項(同項で準用する第126条第5項)の各規定に適合する。詳細は、以下のとおりである。

(a)補正の内容
平成21年12月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)は、補正前請求項1について、
「前記操作部の表面は、前記背面グリップよりも低いこと」を
「前記操作部の表面は、該操作部よりも上側の部分の前記背面グリップよりも低いこと」とする補正である。

(b)補正の範囲、目的の適合性について
前記補正は、補正前請求項1に記載されていた、「操作部の表面」とその高さが比較される対象である「背面グリップ」を、「操作部よりも上側の部分の前記背面グリップ」に限定するものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。

(c)独立特許要件について
前置報告が独立特許要件違反とする特許法第29条第2項について、前置報告で引用された刊行物AないしHおよび査定で引用された刊行物1ないし4のいずれにも、補正後各発明が備える下記の主要構成は記載も示唆もされていない。

記(本願各発明が備える主要構成)
「カメラ背面に突出し、親指載せ部を含んだ背面グリップを備え」、「前記親指載せ部の下方で、前記モニタと背面グリップの間に配置された、前記モニタの表示に基づいた操作をする操作部を備え」、「前記操作部の表面は、該操作部よりも上側の部分の前記背面グリップよりも低い」こと。

すなわち、本願各発明においては、親指載せ部がカメラ背面に突出しており、操作部の表面よりも前記親指載せ部の方が高い位置にあるといえる。

そして、本願各発明の前記主要構成は、「撮影時のホールディング性を良好に保ったまま、モニタの表示に基づいた操作時の操作性も高く、誤操作のない電子スチルカメラを提供する」(段落【0008】)という課題に鑑み採用したものと認められ、
本願各発明は、前記主要構成を採用することにより、「モニタの斜め上方ある親指載せ部を含んだ背面グリップを備え、親指載せ部の下方にモニタの表示に基づいた操作をする操作部を備えるので、カメラのホールディング性を損なうことなく、操作性の高い操作部をとすることができる。」(段落【0043】)および「セレクタ十字キー316は、親指載せ部321aの下方にあって、その表面が背面グリップ321の表面よりも低くなっているので、図4から図6に示すようにカメラをホールドした場合に、不用意に操作してしまう心配がない。」(段落【0033】)等の明細書記載の顕著な効果を奏するものと認められる。

(c-1)引用刊行物の記載等

刊行物A(意匠登録第977192号の類似1の公報)の参考図(2)には、
撮像された被写体像を表示するLCDモニター部をカメラ背面に設けた電子スチルカメラにおいて、カメラ背面に突出したカメラ端部およびズームボタンを備え、前記ズームボタンは前記LCDモニター部の斜め上方に配置され、前記ズームボタンの下方の平面上かつ前記モニタと前記カメラ端部の間に配置された各種操作ボタンを備え、前記各種操作ボタンの表面は前記カメラ端部よりも低い電子スチルカメラが記載されており、
前記カメラ端部は背面グリップという名称では示されていないが、参考図(2)によればカメラ背面の各種操作ボタンの右側、電源ボタンの下方は、カメラ背面に突出しており、前記カメラ端部は「背面グリップ」といい得るものである。
また、刊行物Aにおいて親指載せ部という名称で示されていないが、撮影時等のグリップを把持しているときに親指を載せておく部分は親指載せ部といいうるものである。
前記親指載せ部の位置は、撮影時等のグリップを把持しているときに自然と親指が載せられる位置であり、かつ、グリップを把持している状態で親指が不用意に周辺の操作部に触れないような位置であるから、前記親指載せ部の位置は背面グリップよりも左側の平面上であって、かつ、前記各種操作ボタンよりも上方にあるといえる。

してみると、前記モニタと背面グリップ(カメラ端部)の間に配置された操作部の表面は、カメラ背面に突出した背面グリップ(カメラ端部)よりも低い点では本願各発明と類似している。

しかしながら、刊行物Aに記載の電子スチルカメラにおいて、
親指載せ部は、背面グリップよりも左側の平面上にあってカメラ背面に突出した背面グリップ(カメラ端部)には備えられておらず、
また、前記各種操作ボタンは前記親指載せ部と同じ平面の上にあるから、親指載せ部は前記各種操作ボタンよりも高い位置にあるとはいえない。

よって、刊行物Aに記載の電子スチルカメラは、本願各発明が備える主要構成である「カメラ背面に突出し、親指載せ部を含んだ背面グリップ」を備えておらず、また、「操作部(各種操作ボタン)の表面は、該操作部よりも上側の部分の前記背面グリップよりも低い」ものでもない。

刊行物1(特開平11-331662号公報)には、
電子カメラにおいて、背面の液晶モニター42の右斜め上方にモードダイヤル44を有し、「モードダイヤル44の中央部は僅かな窪み(凹部)44Aが形成されており、該ダイヤルを操作しないときに親指をこのダイアル中央部(44A)に置いておくことができる」(段落【0018】)ものであり、前記モードダイヤル44およびダイアル中央部(44A)は電子カメラ背面に突出して設けられているものが記載されており、
カメラ背面に突出した親指載せ部を備え、前記親指載せ部はモニタの斜め上方に配置されている点では本願各発明と類似している。

しかしながら、前記モードダイヤル44は親指載せ部を備えているといっても、グリップするためのものではなく、「背面グリップ」とはいえず、刊行物1に記載の電子カメラは「カメラ背面に突出し、親指載せ部を含んだ背面グリップ」を備えていない。

刊行物F(株式会社ニコン,『ニコンデジタルカメラE950 COOLPIX950使用説明書』,1999年3月25日,第14頁,第27頁)には、
「各部の名称」の図において、デジタルカメラ背面の液晶モニタの右側、カメラ背面の端部に、カメラ背面に突出した構成が記載されており、該カメラ背面に突出した構成が背面グリップに相当するといえ、明記されていないものの、背面に突出した前記背面グリップの上端部近傍がカメラを把持した時に親指が載せられる親指載せ部に相当するものといえ、
カメラ背面に突出し、親指載せ部を含んだ背面グリップを備えている点では本願各発明と類似している。

しかしながら、液晶モニタと背面グリップの間に操作部は備えられておらず、刊行物Fに記載のデジタルカメラは「親指載せ部の下方で、前記モニタと背面グリップの間に配置された、前記モニタの表示に基づいた操作をする操作部」を備えていない。

また、他の刊行物2?4,B?E,G?Hのいずれも、本願各発明が備える「カメラ背面に突出し、親指載せ部を含んだ背面グリップを備え」、「前記親指載せ部の下方で、前記モニタと背面グリップの間に配置された、前記モニタの表示に基づいた操作をする操作部を備え」、「前記操作部の表面は、該操作部よりも上側の部分の前記背面グリップよりも低い」主要構成を有しておらず、前記主要構成を示唆するものではない。

(d)まとめ
以上によれば、補正後各発明は、刊行物1?4,A?Hに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。
また、他に、補正後各発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
以上、補正後各発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、第17条の2第5項(同項で準用する第126条第5項)の各規定に適合する。

3.本願各発明
上記のとおり、平成21年12月8日付けの手続補正を認めることから、
本願の請求項1ないし請求項4に係る発明(以下「本願各発明」という。)は、平成21年12月8日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載した事項により特定されるとおりのものである(上記補正後各発明と同じ、以下「本願各発明」という。)。

4.拒絶査定の検討
本願各発明は、補正後各発明の独立特許要件についてした上記判断での理由と同じ理由により、刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとする拒絶査定を維持することはできない。

3.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし請求項4に係る発明は、前記各刊行物1?4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、という原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、刊行物Aないし刊行物Hに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-11-30 
出願番号 特願2000-17212(P2000-17212)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 榎 一  
特許庁審判長 奥村 元宏
特許庁審判官 乾 雅浩
▲徳▼田 賢二
発明の名称 電子スチルカメラ  
代理人 鎌田 久男  

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