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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04H
管理番号 1247347
審判番号 不服2010-2195  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-01 
確定日 2011-12-12 
事件の表示 特願2007-189066「集合住宅」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 2月 5日出願公開、特開2009- 24407〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成19年7月20日にされた出願であって、平成21年10月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年2月1日に審判請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成21年8月10日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められ、そのうち請求項4に係る発明は、次のとおりである。
「【請求項4】下階と上階とを備えた集合住宅において、
前記下階は、
玄関が設けられた下階第1スペースと、
前記下階第1スペースの奥に位置し、天井の位置が前記下階第1スペースの天井の位置より低く形成された下階第2スペースと、
前記下階第2スペースの上に位置し、床面の位置が前記下階第1スペースの天井の位置より低く形成され、かつ天井の位置が前記下階第1スペースの天井の位置より高く形成された下階収納スペースとを備え、
前記上階は、
前記下階第1スペースの上に位置し、玄関が設けられ、床面の位置が前記下階第2スペースの床面より高く形成され、天井の位置が前記下階第2スペースの天井より高く形成された上階第1スペースと、
前記下階収納スペース上に位置し、床面の位置が前記上階第1スペースの天井の位置より低く形成され、かつ天井の位置が前記上階第1スペースの天井の位置より高く形成された上階第2スペースと、
前記上階第1スペースの上に位置し、床面の位置が前記上階第2スペースの床面の位置より高く形成された上階収納スペースとを備えた集合住宅。」(以下、請求項4に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2007-120228号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】
下階の天井と上階の床との間に天井裏収納室を備える住宅であって、
この天井裏収納室が、下階の天井面から下方に下げられた下げ天井部を収納室床部とし、かつ、上階の床面から上方に上げられた上げ床部を収納室天井部としてあることを特徴とする住宅。」
(1b)「【0018】
この発明に係る住宅は、標準的な階高、軒高の住宅の施工コストに近い施工コストをもって、標準的な階高、軒高の住宅における意匠性を損なうことなく、しかも、法規制面で不利益を被ることなく、標準的な仕様の階高、軒高のままで、上階と下階との間に、効果的に用い得る天井裏収納室を構成できる住宅を提供する。」
(1c)「【0033】
まず、図1?図4に示される典型的な住宅Wについて具体的に説明する。
この図示例に係る住宅Wは、下階Aの天井と上階Bの床との間に天井裏収納室Hを備える住宅Wであって、この天井裏収納室Hが、下階Aの天井面Abから下方に下げられた下げ天井部Ab’を収納室床部Haとし、かつ、上階Bの床面Baから上方に上げられた上げ床部Ba’を収納室天井部Hbとしてある。
【0034】
かかる図示例の住宅Wは、下階Aと上階Bとにそれぞれ独立した住戸W’、W’、W’…を備える二階建の集合住宅であって、下階A及び上階Bのいずれにあっても界壁13を境にして玄関22を隣り合わせるようにして構成してあり、当該界壁13と外壁11とで囲まれた住空間内を一住戸分として構成してある。
【0035】
かかる住宅Wを構成する各住戸W’は、通路15に沿って備えられている外壁11のドア12aから玄関22に入り込み得る構成としてあり、この玄関22に連続して床面Aa、Baと天井面Ab、Bb間に各種設備が設けてある。まず。玄関22から設けられている廊下21の一方の側に窓12bを備えたトイレット24及びキッチン21aを、また、他方の側に浴室23と洗面ルーム25とが並ぶように設けてあり、廊下21の突き当たりに間仕切り壁27が設けてあって、この間仕切り壁27に備えられている開口に居室20、この図示例にあっては洋室20’のドア20aが設けてあり、当該ドア20aから洋室20’に出入りし得る構成としてある。
・・・
【0037】
かかる住宅Wの各住戸W’における上階Bの洋室20’には、その屋根裏に近い上部位置に、前記間仕切り壁27から掃き出し窓12cを備えた外壁11aに向けて水平に突き出すロフト16を設けてあり、・・・
【0038】
かかるロフト16を備えた上階Bの洋室20’に対応する下階Aに備えられている洋室20’としての居室20が天井裏収納室Hを備える構成とし、その使い勝手を良好としている。
【0039】
この図示例に係る天井裏収納室Hは、前記掃き出し窓12cの備えられている外壁11aに沿うようにして、この外壁11aから所定の幅で当該洋室20’内に備えられる構成としてある。」
(1d)「【0045】
この図示例にかかる住宅Wにあっては、上階Bと下階Aとの間に構成される天井裏収納室Hは、その収納室床部Haと収納室天井部Hbとの間を外壁11、界壁13、仕切り壁Hcその他適宜の仕切り壁材によって囲まれた密閉収納空間として構成してあり、当該天井裏収納室Hを構成する収納室床部Ha、すなわち、下階Aにおける下げ天井部Ab’にハッチHd’状に出入り口Hdを設け、界壁13に備え付けの昇降手段Heとしての梯子He’を用いて随時当該天井裏収納室Hに収納物の出し入れをなし得るようにしてある。」
(1e)「【0048】
ついで図5?図8に示される他の典型的な住宅Wについて具体的に説明する。
この図示例に係る住宅Wは、下階Aの天井と上階Bの床との間に天井裏収納室Hを備える住宅Wであって、この天井裏収納室Hが、下階Aの天井面Abから下方に下げられた下げ天井部Ab’を収納室床部Haとし、かつ、上階Bの床面Baから上方に上げられた上げ床部Ba’を収納室天井部Hbとしてある。
【0049】
この図5?図8において示される住宅Wにあっては、前記天井裏収納室Hを掃き出し窓12cの備えられている外壁11aから、居室20としての洋室20’のドア20aに到る間、すなわち、上階Bにあって外壁11aと間仕切り壁27との間にある洋室20’の床面Baの全てを上げ床部Ba’として、廊下21に段部Ba”を設けるようにして、この廊下21から当該段部Ba”を上がり込む態様でドア20aから当該洋室20’に立ち入りうる構成とし、また、これに対応する下階Aにおける洋室20’の天井面Abを下方に下げた下げ天井部Ab’として、この下げ天井部Ab’と上げ床部Ba’との間に天井裏収納室Hを構成した以外の構成を前記図1?図4に示されている住宅Wの構成と同一又は実質的に同一の構成としてある。
【0050】
従って、前記図1?図4に示される住宅Wと同一又は実質的に同一の構成部分についいては同一の番号を付して、その説明を省略する。
・・・
【0053】
また、この図示例にあっても、上階Bにおける床面Ba(厳密には当該洋室20’を除く上階Bの床面Ba)から上方に位置するように上げ床部Ba’を設け、この上げ床部Ba’を収納室天井部Hbとして、また、当該手収納室天井部Hbから下がった位置に収納室床部Haを構成する下げ天井部Ab’を備えるように構成してある。」
(1f)【図7】には、玄関に連続する廊下21とその両側に設けられたトイレット24、キッチン21a、浴室23及び洗面ルーム25は、全体として同じ高さの床面及び天井面を有するスペースとして形成されていることが示され(以下、このスペースを「設備スペース」という。)、下階Aの設備スペースの上に上階Bの設備スペースが設けられ、下階Aの洋室20’の上に天井裏収納室Hが設けられ、天井裏収納室Hの上に上階Bの洋室20’が設けられること、上階Bの設備のスペースの天井部と屋根の間には屋根裏空間が形成され、上階Bの洋室20’の天井は屋根裏の位置に形成され、ロフト16は、洋室20’の天井の下方、設備のスペースの天井と同じ高さの位置に設けられることが示されている。

これらの記載事項、特に図5?8に示される住宅例の記載によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「下階Aと上階Bとにそれぞれ独立した住戸W’、W’を備える二階建の集合住宅であって、
前記下階Aは、
玄関に連続して形成された設備スペースと、
その奥に位置し、天井部Ab’が下階Aの設備スペースの天井部Abより低い洋室20’と、
下階Aの洋室20’の上に位置し、床面Haの位置が、前記下階Aの設備スペースの天井部Abより低く形成され、かつ天井部Hbの位置が下階Aの設備スペースの天井部Abより高く形成され、下階Aから出入り可能な天井裏収納室Hを備え、
前記上階Bは、
下階Aの設備スペースの上に位置し、玄関に連続して形成され、床面Baの位置が、下階Aの洋室20’の床面Aaより高く形成され、天井部Bbの位置が下階Aの洋室20’の天井部Ab’より高く形成された上階Bの設備スペースと、
天井裏収納室Hの上に位置し、床面Ba’を上階Bの設備スペースの床面Baより高く形成した洋室20’とを備え、
上階の設備スペースの天井Bbと屋根との間には、屋根裏空間が形成され、
上階Bの洋室20’の天井は、屋根裏の位置に形成され、その屋根裏に近い上部位置には、上階Bの設備スペースの天井部Bbと同じ高さの位置に、ロフト16を水平に突き出すように設けた
集合住宅。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

3 対比・判断
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「二階建の集合住宅」は、本願発明の「下階と上階とを備えた集合住宅」に相当し、以下、同様に
「下階Aの設備スペース」は、玄関に連続して形成されるスペースであるから、「玄関が設けられた下階第1スペース」に、
「下階Aの洋室20’」は、設備スペースの奥に位置し、天井部Ab’が下階Aの設備スペースの天井部Abより低く形成されたものであるから、「下階第2スペース」に、
「下階Aから出入り可能な天井裏収納室H」は「下階収納スペース」に、
「上階Bの設備スペース」は、玄関に連続して形成されるスペースであるから、「玄関が設けられた上階第1スペース」に
「上階Bの洋室20’」は、天井裏収納室Hの上に位置するものであるから、「上階第2スペース」に、
「下階Aの設備スペースの天井部Ab」は「下階第1スペースの天井」に、
「下階Aの洋室20’の天井部Ab’」は「下階第2スペースの天井」に、
「天井裏収納室Hの天井部Hb」は「下階収納スペースの天井」に、
「上階Bの設備スペースの天井部Bb」は「上階第1スペースの天井」に相当する。

したがって、両者は、
「下階と上階とを備えた集合住宅において、
前記下階は、
玄関が設けられた下階第1スペースと、
前記下階第1スペースの奥に位置し、天井の位置が前記下階第1スペースの天井の位置より低く形成された下階第2スペースと、
前記下階第2スペースの上に位置し、床面の位置が前記下階第1スペースの天井の位置より低く形成され、かつ天井の位置が前記下階第1スペースの天井の位置より高く形成された下階収納スペースとを備え、
前記上階は、
前記下階第1スペースの上に位置し、玄関が設けられ、床面の位置が前記下階第2スペースの床面より高く形成され、天井の位置が前記下階第2スペースの天井より高く形成された上階第1スペースと、
前記下階収納スペース上に位置し、床面の位置が前記上階第1スペースの天井の位置より低く形成され、かつ天井の位置が前記上階第1スペースの天井の位置より高く形成された上階第2スペースと、
を備えた集合住宅。」
の点で一致し、下記の点で相違している。
〈相違点〉
本願発明は、上階第1スペースの上に位置し、床面の位置が上階第2スペースの床面の位置より高く形成された上階収納スペースを有しているのに対し、刊行物1記載の発明では、このような上階収納スペースを有していない点。

そこで、上記相違点について検討する。
屋根裏空間を収納空間として使用することは,例示するまでもなく周知の技術であり、刊行物1記載の発明において、ロフトと同じ高さに形成されている上階Bの設備スペースの上の屋根裏空間を、上階収納スペースとし、本願発明の相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到する程度のことである。
そして、本願発明全体の効果も、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。
なお、請求人は、審判請求書において、本願発明(請求書における本願発明2)について、「上階第2スペースが『天井の位置が前記上階第1スペースの天井の位置より高く形成され』ていることで、上階第1スペースの天井の位置は上階第2スペースの天井の位置より低い。従って、上階第2スペースの床面から天井面までの高さを十分確保しても、上階収納スペースは上階第2スペースの天井位置と上階第1スペースの天井位置との差を、空間として加算することができることにより、上階収納スペースに十分な高さを確保しても、集合住宅の高さを低く抑えることができる。」と主張しているが、刊行物1記載の発明において、上階第2スペース(上階Bの洋室20’)のロフト以外の部分の天井の位置は屋根裏の高さであり、上階第1スペース(上階Bの設備スペース)の上の屋根裏空間を収納空間として利用しても、集合住宅の高さは変わらず、本願発明の作用効果は、刊行物1記載の発明から予測できる程度のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1記載の発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-23 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-15 
出願番号 特願2007-189066(P2007-189066)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
土屋 真理子
発明の名称 集合住宅  
代理人 加藤 久  

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