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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1247394 |
審判番号 | 不服2008-10677 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-28 |
確定日 | 2011-11-22 |
事件の表示 | 特願2005-26999「アニオン性及び両性界面活性剤、高度に荷電したカチオン性ポリマー及び水溶性塩を含む洗浄化粧組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成17年9月2日出願公開、特開2005-232169〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願(以下、「本願」という。)は、2005年1月5日(優先権主張 平成16年1月5日 フランス)の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。 平成19年4月25日付け 拒絶理由通知 平成19年11月1日 意見書、手続補正書 平成20年1月22日付け 拒絶査定 平成20年4月28日 審判請求書 平成20年7月9日 手続補正書(方式) 第2 本願発明について 本願の請求項1?16に係る発明は、平成19年11月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に記載された発明は下記のものである(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 化粧品として受容可能な水性媒体中に以下を含む洗浄化粧組成物: - 少なくとも一つのアニオン性界面活性剤及び以下から選択する少なくとも一つの両性界面活性剤:(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(3)?C_(8))アルキルベタイン、スルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(6)?C_(8))アルキルスルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノプロピオネート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジプロピオネート及びホスホベタイン、この場合、アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の質量比率は1に等しいか又はそれより小さく、 - カチオン性荷電密度が5meq/gより大きい少なくとも一つのカチオン性ポリマー、 - 組成物の全質量に対して少なくとも1質量%の少なくとも一つの無機又は有機の水溶性塩、この場合、この塩のアニオンは1?7の炭素原子を含み、 組成物中の界面活性剤の総量は、組成物の全質量に対して、18質量%に等しいか又はそれより少ない。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、「この出願の請求項1?16に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」とするものである。 1.米国特許第06338842号明細書 2.特表2002-536311号公報 第4 刊行物に記載された事項 本願の出願前である平成14年10月29日に頒布された刊行物である特表2002-536311号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1a)「【請求項1】 化粧品的に許容可能な水性媒体に、(A)少なくとも1種のアニオン性界面活性剤と少なくとも1種の両性界面活性剤を含有する洗浄基剤と、 (B)・・・から選択される少なくとも1種の水不溶性カルボン酸エステルを含有してなり、・・・ カチオン性界面活性剤を含有せず、 アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の重量比が3以下であることを特徴とする洗浄及びコンディショニング用化粧品組成物。 【請求項2】 洗浄基剤が、組成物の全重量に対して4重量%?50重量%、好ましくは6重量%?35重量%、さらに好ましくは8重量%?25重量%の含有量で存在することを特徴とする請求項1に記載の組成物。 【請求項3】 アニオン性界面活性剤(類)が組成物の全重量に対して3?30重量%、好ましくは5?20重量%の範囲の濃度で存在することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 両性界面活性剤(類)が組成物の全重量に対して1?20重量%、好ましくは1.5?15重量%の範囲の濃度で存在することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項5】 アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の重量比が0.2?3、特に0.4?2.5であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組成物。 ・・・ 【請求項10】 組成物が少なくとも1種のカチオン性ポリマーをさらに含有することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の組成物。 【請求項11】 カチオン性ポリマーが、・・・、ジアリルジメチルアンモニウム塩のホモポリマー、・・・から選択されることを特徴とする請求項10に記載の組成物。 ・・・ 【請求項14】 組成物が少なくとも1種の水溶性の塩をさらに含有することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の組成物。 ・・・ 【請求項16】 水溶性の塩が、塩化ナトリウム、・・・から選択されることを特徴とする請求項14又は15に記載の組成物。 ・・・ 【請求項22】 請求項1ないし21のいずれか1項に記載の組成物の、ケラチン物質からのメークアップの除去及び/又はクレンジングのための使用。 【請求項23】 毛髪等のケラチン物質を洗浄しコンディショニングする方法において、請求項1ないし21のいずれか1項に記載の組成物を有効量、湿ったケラチン物質に適用し、任意の待ち時間をおいた後に水ですすぐことを特徴とする方法。」(特許請求の範囲) (1b)「本出願人は、特定の洗浄基剤、少なくとも1種の特定のカルボン酸エステルを使用することにより、特に処理された毛髪がもつれがほぐれ易く、なめらかであるといった優れた化粧品特性を示し、良好な使用特性、例えば本来の良好な洗浄力と良好な発泡力を有する、安定した洗浄用組成物が得られることを見出した。 ・・・ また、本発明の組成物は、すすいだ後に、特にもつれのほぐれ易さに現われ、何ら脂性感を伴わないで、滑らかさ、柔軟性及びしなやかさをもたらす顕著なトリートメント効果を毛髪に付与する。」(段落【0006】?【0007】) (1c)「(ii)両性界面活性剤(類): 本発明において、両性界面活性剤の性質はあまり重要な特徴ではなく、特に(非限定的列挙)、脂肪族基が8?22の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状の鎖であり、少なくとも1種の水溶性のアニオン性基(例えば、カルボキシラート、スルホナート、スルファート、ホスファート又はホスホナート)を含有する、脂肪族の第2級又は第3級アミンの誘導体であってよく;さらに、(C_(8)-C_(20))アルキルベタイン類、スルホベタイン類、(C_(8)-C_(20))アルキルアミド(C_(1)-C_(6))アルキルベタイン類又は(C_(8)-C_(20))アルキルアミド(C_(1)-C_(6))アルキルスルホベタイン類を挙げることができる。 アミン誘導体としては、次の式:・・・の構造を有し、米国特許第2528378号及び米国特許第2781354号に開示され、ミラノール(Miranol)(登録商標)の名称で販売されている製品を挙げることができる。 ・・・ 具体例としては、ローン・プーラン社(Rhone-Poulenc)からミラノール(登録商標)C2M濃縮物の商品名で販売されているココアンホジアセタートを挙げることができる。 本発明においては、特にベタイン類のグループに属する両性界面活性剤、例えばアルキルベタイン類、特に、ヘンケル社(Henkel)から、30%の活性物質を含有する水溶液として「デハイトン(Dehyton)AB30」の商品名で販売されているココイルベタイン、又はアルキルアミドベタイン類、例えばゴールドシュミット社(Goldschmidt)から販売されているテゴベタイン(Tegobetaine)(登録商標)F50が好ましく使用される。」(段落【0014】?【0017】) (1d)「実施例1 本発明の4つのシャンプー組成物を調製した。 本発明の組成物1ないし4は透明で安定している(透明度は濁度計を用いてNTU(比濁単位)で評価する)。 これらの組成物で処理された毛髪は容易にもつれがほぐれ、毛髪の先端から末端まで滑らかである。」(段落【0047】) 第5 当審の判断 1 刊行物1に記載された発明 刊行物1の上記摘記事項(1d)には、「シャンプー組成物」の具体的な配合例が記載されているところ、そのうち例「3」として、 「-2.2モルのエチレンオキシドを含むラウリルエーテル硫酸ナトリウム(70/30C_(12)/C_(14))のAM70%の水溶液(AM=活性物質) 5.25gAM、 -AM30%のココイルベタイン(デハイトンAB30) 9gAM -ミスチリン酸イソプロピル 2g -ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマーのAM40%の水溶液(カルゴン社(Calgon)のメルクアット100 0.4gAM -NaCl 4g -香料、防腐剤 適量 -塩酸 pH6.8にする量 -脱塩水 計100g を含むシャンプー組成物」が記載されており、「(AM=活性物質)」とされているから、 「-2.2モルのエチレンオキシドを含むラウリルエーテル硫酸ナトリウム(70/30C_(12)/C_(14)) 5.25g -ココイルベタイン(デハイトンAB30) 9g -ミスチリン酸イソプロピル 2g -ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマー(カルゴン社(Calgon)のメルクアット100 0.4g -NaCl 4g -香料、防腐剤 適量 -塩酸 pH6.8にする量 -脱塩水 計100g を含むシャンプー組成物」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 2 本願発明と引用発明との対比・判断 ア 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「2.2モルのエチレンオキシドを含むラウリルエーテル硫酸ナトリウム」は、本願明細書の段落【0010】の「本発明で使用することができるアニオン性界面活性剤として、特に以下の型の塩、特にアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩・・・を特に挙げることができる:・・・アルキルエーテルスルフェート・・・アルキルアリールポリエーテルスルフェート・・・、これらの全ての化合物のアルキル基及びアシル基は6?24の炭素原子を含み、・・・」の記載からみて、さらに、段落【0037】の「組成1?3」で使用されている「ナトリウムラウリルエーテルスルフェート(2.2モルの酸化エチレン)」と同じ化合物であるから、本願発明の「アニオン性界面活性剤」に相当する。 引用発明の「ココイルベタイン(デハイトンAB30)」は、上記摘記事項(1c)からみて「両性界面活性剤」といえるから、本願発明の「以下から選択する少なくとも一つの両性界面活性剤:(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(3)?C_(8))アルキルベタイン、スルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(6)?C_(8))アルキルスルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノプロピオネート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジプロピオネート及びホスホベタイン」と、「両性界面活性剤」である点で共通する。 引用発明の「ジアリルジメチルアンモニウムクロリドのホモポリマー(カルゴン社(Calgon)のメルクアット100」は、本願明細書の段落【0018】?【0023】の「本発明の目的のために、“カチオン性ポリマー”という用語は、カチオン性基及び/又はカチオン性基にイオン化することが可能な基を含む全てのポリマーを意味する。 カチオン性ポリマーを、第1、第2、第3及び/又は4級アミン基を含む単位を含むものから選択し、該基はポリマーの主鎖を形成してもよいし、又は主鎖に直接結合する側鎖置換基に結合していてもよい。 ・・・ 本発明に従って使用することができ、かつ特に挙げることができるポリアミン、ポリアミノアミド及びポリ4級アンモニウム型のポリマーは、・・・。これらのポリマーのうち、以下を挙げることができる: ・・・ (6)アルキルジアミン又はジアルキルジアリルアンモニウムの環状ポリマー、・・・ 例えば、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドホモポリマーを挙げることができ、これはオンデオ-ナルコ(Ondeo-Nalco)社により“Merquat(登録商標)100”の名称で市販され、また、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとのコポリマーを挙げることができる。」の記載からみて、さらに、段落【0037】の「組成1?2」で使用されている「ポリ(ジメチルジアリルアンモニウムクロリド)^((4))荷電密度6.2meq/g」、「(4)オンデオ-ナルコ(Ondeo-Nalco)社によりMerquat(登録商標)100の商品名で市販されている。」と同じ化合物であるから、本願発明の「カチオン性荷電密度が5meq/gより大きい・・・カチオン性ポリマー」に相当するといえる。 引用発明の「NaCl」は、本願明細書の段落【0034】の「本発明で使用することができる無機又は有機の水溶性塩を、・・・。 特に挙げることができるこれらの塩の例は以下を含む:塩化ナトリウム・・・。・・・、塩化ナトリウムが特に好ましい。」の記載及び、段落【0037】の「組成1?3」で使用されている「NaCl」と同じ化合物であるから、本願発明の「無機又は有機の水溶性塩、この場合、この塩のアニオンは1?7の炭素原子を含み」に相当するといえる。さらに、引用発明において「NaCl」は「シャンプー組成物」100g中に「4g」含んでいるから、本願発明と同様に、「少なくとも1質量%」含んでいるといえる。 また、引用発明の「アニオン性界面活性剤」である「2.2モルのエチレンオキシドを含むラウリルエーテル硫酸ナトリウム」、「両性界面活性剤」である「ココイルベタイン(デハイトンAB30)」は、「シャンプー組成物」100g中に、「5.25g」、「9g」含まれているのであるから、本願発明と同様に、「アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の質量比率は1に等しいか又はそれより小さ」いものであり、「組成物中の界面活性剤の総量は、組成物の全質量に対して、18質量%に等しいか又はそれより少ない」ものであるといえる。 そして、引用発明の「シャンプー組成物」は、「アニオン性界面活性剤」、「両性界面活性剤」を「シャンプー組成物」100g中に「5.25g」、「9g」含むものであり、本願明細書の段落【0008】の「“洗浄組成物”という用語は、組成物の全質量に対して、少なくとも4質量%のアニオン性及び両性界面活性剤を含み、かつ任意にノニオン性界面活性剤を含む組成物を意味する」との記載、及び段落【0036】の「本発明に従う組成物を、ケラチン繊維、特に毛髪を洗浄しかつ/又はコンディショニングするために使用することができ、例えばコンディショニングシャンプーとして使用することができる。」の記載からみて、本願発明の「洗浄組成物」に相当するといえる。 また、引用発明の「シャンプー組成物」は「アニオン性界面活性剤」、「両性界面活性剤」、「カチオン性ポリマー」、「NaCl」以外の物質も含有するものであるが、本願発明も、本願明細書の段落【0035】の「本発明に従う組成物はさらに、以下のような本技術分野で周知の一又は複数の標準的な添加物を含むことができる:天然若しくは合成の、アニオン性、両性、双性イオン性、ノニオン性若しくはカチオン性の、会合性若しくは非-会合性のポリマー増粘剤、非-ポリマー増粘剤、例えば酸若しくは電解質、カチオン性界面活性剤、真珠光沢剤、不透明化剤、染料若しくは顔料、芳香剤、鉱油、植物油及び/又は合成油、セラミドを含むワックス、ビタミン、UV-遮蔽剤、フリーラジカル補足剤、可塑剤、保存剤又はpH安定剤」の記載からみて、他の物質を含有する態様を含むものである。 したがって、両者は、 「化粧品として受容可能な水性媒体中に以下を含む洗浄化粧組成物: - 少なくとも一つのアニオン性界面活性剤及び少なくとも一つの両性界面活性剤、この場合、アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の質量比率は1に等しいか又はそれより小さく、 - カチオン性荷電密度が5meq/gより大きい少なくとも一つのカチオン性ポリマー、 - 組成物の全質量に対して少なくとも1質量%の少なくとも一つの無機又は有機の水溶性塩、この場合、この塩のアニオンは1?7の炭素原子を含み、 組成物中の界面活性剤の総量は、組成物の全質量に対して、18質量%に等しいか又はそれより少ない。」 という点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 相違点:「両性界面活性剤」として、本願発明では、「以下から選択する少なくとも一つの両性界面活性剤:(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(3)?C_(8))アルキルベタイン、スルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(6)?C_(8))アルキルスルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノプロピオネート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジプロピオネート及びホスホベタイン」を用いるのに対し、引用発明では「ココイルベタイン」を用いている点。 イ 判断 (ア)相違点について 刊行物1の上記摘記事項(1c)には、「両性界面活性剤」として、「デハイトン(Dehyton)AB30の商品名で販売されているココイルベタイン」とともに、具体的なものとして、「ローン・プーラン社(Rhone-Poulenc)からミラノール(登録商標)C2M濃縮物の商品名で販売されているココアンホジアセタート」及び「ゴールドシュミット社(Goldschmidt)から販売されているテゴベタイン(Tegobetaine)(登録商標)F50」を挙げており、「ローン・プーラン社(Rhone-Poulenc)からミラノール(登録商標)C2M濃縮物の商品名で販売されているココアンホジアセタート」及び「ゴールドシュミット社(Goldschmidt)から販売されているテゴベタイン(Tegobetaine)(登録商標)F50」は本願明細書の段落【0037】の例1、例2?3で使用されている「ジナトリウムココアンホジアセテート」、「ココイルアミドプロピルベタイン」と同じものである。 そうすると、引用発明において、「ココイルベタイン」に代えて、「以下から選択する少なくとも一つの両性界面活性剤:(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(3)?C_(8))アルキルベタイン、スルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアミド(C_(6)?C_(8))アルキルスルホベタイン、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジアセテート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホモノプロピオネート、(C_(8)?C_(24))アルキルアンホジプロピオネート及びホスホベタイン」である「ジナトリウムココアンホジアセテート」、「ココイルアミドプロピルベタイン」を用いることは当業者が容易に想到し得たことといえる。 (ウ)本願発明の効果について 本願発明の効果について、本願明細書の段落【0037】には組成例を示すのみであり、実施例及び比較例による有利な効果は示されておらず、必ずしも明らかではないが、段落【0037】の「シャンプーとして天然の毛髪に適用すると、これらの組成物は、湿った毛髪及び乾いた毛髪の両者に高度のくし通り性を与える。」との記載、及び、平成20年4月28日付け審判請求書に対する平成20年7月9日付け手続補正書において、「比較実験」において、毛髪のくし通り特性が優れる旨主張しているので、本願発明の効果を「毛髪のくし通り特性」を改善するものであるとして検討する。 刊行物1の上記摘記事項(1b)及び(1d)の記載からみて、引用発明の「シャンプー組成物」も毛髪のくし通り特性が優れたものといえる。 また、平成20年4月28日付け審判請求書に対する平成20年7月9日付け手続補正書の「比較実験」をみると、表3及び表4の結果からみて、引用発明(組成物C)の「最大くり通り力の低下」は「83.9%」であるのに対し、本願発明(組成物D、E)の「最大くり通り力の低下」は「94.3%」、「92.8%」となっているものの、表1及び表2の結果からみて、本願発明(組成物B)の「最大くり通り力の低下」は「58.3%」となっているから、引用発明に比べて、常に優れた「毛髪のくし通り特性」を有するものとは評価することができず、また、本願発明は引用発明に比べて格別顕著な効果を奏するものとは評価することもできない。 ウ 請求人の主張について 平成20年4月28日付け審判請求書に対する平成20年7月9日付け手続補正書において、請求人は、(A)「引例2は両性界面活性剤の種類によって該活性剤を含む組成物のくし通り特性が大きく異なり、特定の界面活性剤を使用することにより優れたくし通り特性を有する組成物が得られることを引例2は記載も示唆もしていない」こと、(B)「引例2は、・・・その両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、特定のカチオン性ポリマー及び少なくとも1質量%の塩とを組み合わせること、アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の質量比を1以下とすること及び組成物中の界面活性剤の総量を組成物の全質量に対して18質量%以下とすることを、記載も示唆もしていない」ことを主張している。 上記(A)の主張について、上記イ(ア)で検討したように、刊行物1には、本願発明の実施例で示されている両性界面活性剤を使用できることが記載されているから、引用発明において、その両性界面活性剤を使用してみることは当業者であれば容易に想到し得たことといえる。また、上記イ(イ)で検討したように、本願発明が特定する両性界面活性剤を使用しても、引用発明に比べて、常に優れた「毛髪のくし通り特性」を有するものとは評価することができないから、請求人のこの主張を採用することはできない。 次に、上記(B)の主張についても、特定の「両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、特定のカチオン性ポリマー及び少なくとも1質量%の塩とを組み合わせること」、「アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の質量比を1以下とすること」、「組成物中の界面活性剤の総量を組成物の全質量に対して18質量%以下とすること」についての技術的意義については明細書に何ら記載されていないし、実施例・比較例としても具体的に何ら示されていない。さらに、平成20年4月28日付け審判請求書に対する平成20年7月9日付け手続補正書の「比較実験」をみても、これらの事項の技術的意義を評価することはできない。そして、「両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤、特定のカチオン性ポリマー及び少なくとも1質量%の塩とを組み合わせること」、「アニオン性界面活性剤/両性界面活性剤の質量比を1以下とすること」、「組成物中の界面活性剤の総量を組成物の全質量に対して18質量%以下とすること」については、上記アで検討したように、引用発明もこれらの構成をすべて有しているから、請求人のこの主張も採用することはできない。 3 まとめ したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その余の事項については検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-06-21 |
結審通知日 | 2011-06-27 |
審決日 | 2011-07-12 |
出願番号 | 特願2005-26999(P2005-26999) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼岡 裕美 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
杉江 渉 郡山 順 |
発明の名称 | アニオン性及び両性界面活性剤、高度に荷電したカチオン性ポリマー及び水溶性塩を含む洗浄化粧組成物 |
代理人 | 浅井 賢治 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 平山 孝二 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 箱田 篤 |