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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1247406 |
審判番号 | 不服2010-18894 |
総通号数 | 145 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-01-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-20 |
確定日 | 2011-11-21 |
事件の表示 | 特願2003-369090「ズームレンズ及びカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月26日出願公開、特開2005-134548〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年10月29日の出願であって、平成21年9月29日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月30日付けで手続補正がなされ、平成22年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年8月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 その後、前置報告書の内容について、審判請求人の意見を求めるために平成23年7月5日付けで審尋がなされ、同年8月23日付けで当該審尋に対する回答書が提出された。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1乃至13に係る発明は、平成21年11月30日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1乃至13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「物体側より順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4により構成され、 広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際に、前記第1レンズ群G1と前記第3レンズ群G3とが光軸方向において一定位置に固定され、前記第2レンズ群G2が像側へ移動され、前記第2レンズ群G2の移動に伴って発生する像面位置の変動を第4レンズ群G4の移動により補償し、 前記第3レンズ群G3は物体側より順に配列された、非球面形状の凸面を物体側に向けた第1正レンズ、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ、両凸形状の第2正レンズとがそれぞれ空気間隔を隔てて配置されており、 開口絞りが前記第3レンズ群G3の第1正レンズと負レンズの間に配置され、 以下の条件式(1)を満足することを特徴とするズームレンズ。 (1)D3a/fw>0.5 但し、 D3a:第3レンズ群G3を構成する第1正レンズの像側レンズ面から負レンズの物体側レンズ面までの距離 fw:広角端状態における焦点距離」 3.引用発明 3-1.刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-295057号公報(以下「引用例」という。)には、以下の技術事項が記載されている(後述の「3-2.引用発明の認定」において引用した記載に下線を付した) 記載事項a.請求項1 「【請求項1】 物体側より順に、正の屈折力の第1レンズ群、変倍機能を有する負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、変倍により変動する像面を補正すると共に合焦機能を有する正の屈折力の第4レンズ群を有するズームレンズにおいて、 該第2レンズ群は物体側より順に、屈折力の絶対値が物体側に比べ像側に強く、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負の第21レンズ、負の第22レンズ、物体側に凸面を向けた正の第23レンズ、負の第24レンズからなり、第3レンズ群は物体側より順に、物体側に凸面を向けた正の第31レンズ、像側に凹面を向けた負の第32レンズ、正の第33レンズからなり、第4レンズ群は正レンズ、負レンズからなり、該第32レンズの像側のレンズ面の曲率半径をR32b、該第33レンズの物体側のレンズ面の曲率半径をR33a、該第3レンズ群の焦点距離をf3、広角端での全系の焦点距離をfwとするとき、 0.1<R32b/R33a<0.9 3.0<f3/fw<4.0 を満足することを特徴とするズームレンズ。」 記載事項b.【0032】 「【0032】各実施形態のズームレンズのレンズ断面図と図17において、L1は正の屈折力の第1レンズ群、L2は負の屈折力の第2レンズ群、L3は正の屈折力の第3レンズ群、L4は正の屈折力の第4レンズ群である。SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の前方に位置している。」 記載事項c.【0035】 「【0035】各実施形態では、広角端から望遠端への変倍(ズーミング)に際して矢印のように、第2レンズ群L2を像面側へ移動させると共に、変倍に伴う像面変動を第4レンズ群L4を移動させて補正している。また、第4レンズ群L4を光軸上移動させてフォーカシングを行うリヤーフォーカス式を採用している。第4レンズ群L4に関する実線の曲線4aと点線の曲線4bは、各々無限遠物体と近距離物体にフォーカスしているときの広角端から望遠端への変倍に伴う像面変動を補正するための移動軌跡を示している。尚、第1レンズ群L1と第3レンズ群L3は、変倍及びフォーカスの為には光軸方向に不動である。」 記載事項d.【0045】 「【0045】各実施形態では第3レンズ群L3を物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第31レンズ、像面側に凹面をむけたメニスカス形状の負の第32レンズ、正の第33レンズで構成している。第31レンズはその物体側の面が非球面形状より成っている。第3レンズ群L3中に像面側に凹面を向けたメニスカス形状の第32レンズを設けることにより第3レンズ群L3全体をテレフォトタイプのレンズ構成として第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の主点間隔を短縮し、レンズ全長の短縮化を達成している。」 記載事項e.数値実施例2 「 」 記載事項f.図5 「 」 3-2.引用発明の認定 記載事項a、記載事項e(数値実施例2)の数値データ及び記載事項f(図5)の記載内容から、引用例のズームレンズは、第1レンズ群乃至第4レンズ群により構成されていることが分かる。 記載事項a、記載事項e(数値実施例2)の数値データ及び記載事項f(図5)の記載内容から、引用例のズームレンズにおける第3レンズ群の第33レンズが両凸形状であること、及び、第3レンズ群の第31レンズ,第32レンズ,第33レンズがそれぞれ空気間隔を隔てて配置されていることが分かる。 記載事項e(数値実施例2)の数値データから、引用例のズームレンズにおける第3レンズ群の第31レンズの像側レンズ面から第32レンズの物体側レンズ面までの距離をD3aとし、広角端状態における焦点距離をfwとするとき、D3a及びfwの値はそれぞれ、0.56及び1であるから、引用例のズームレンズにおいて、D3a/fwの値は0.56であると理解できる。 上記各事項及び記載事項a乃至記載事項fの記載内容から、引用例には、 「 物体側より順に、正の屈折力の第1レンズ群、変倍機能を有する負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群、変倍により変動する像面を補正する正の屈折力の第4レンズ群により構成されるズームレンズであって、 第1レンズ群L1と第3レンズ群L3は、変倍の為には光軸方向に不動であり、広角端から望遠端への変倍(ズーミング)に際して、第2レンズ群L2を像面側へ移動させると共に、変倍に伴う像面変動を第4レンズ群L4を移動させて補正し、 第3レンズ群L3を物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第31レンズ、像面側に凹面をむけたメニスカス形状の負の第32レンズ、両凸形状の正の第33レンズで構成し、第31レンズはその物体側の面が非球面形状より成っており、第31レンズ,第32レンズ,第33レンズがそれぞれ空気間隔を隔てて配置されており、 SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の前方に位置しており、 第3レンズ群の第31レンズの像側レンズ面から第32レンズの物体側レンズ面までの距離をD3aとし、広角端状態における焦点距離をfwとするとき、D3a/fwの値が0.56である、 ズームレンズ。」(以下「引用発明」という。) が記載されていると認められる。 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「ズームレンズ」が「物体側より順に、正の屈折力の第1レンズ群」、「負の屈折力の第2レンズ群、正の屈折力の第3レンズ群」、「正の屈折力の第4レンズ群により構成される」との事項は、本願発明の「ズームレンズ」が「物体側より順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4により構成され」るとの事項に相当する。 引用発明の「ズームレンズ」が「第1レンズ群L1と第3レンズ群L3は、変倍の為には光軸方向に不動であり」、「広角端から望遠端への変倍(ズーミング)に際して、第2レンズ群L2を像面側へ移動させると共に、変倍に伴う像面変動を第4レンズ群L4を移動させて補正し」ているとの事項は、本願発明の「ズームレンズ」が「広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際に、前記第1レンズ群G1と前記第3レンズ群G3とが光軸方向において一定位置に固定され、前記第2レンズ群G2が像側へ移動され、前記第2レンズ群G2の移動に伴って発生する像面位置の変動を第4レンズ群G4の移動により補償し」ているとの事項に相当する。 引用発明の「ズームレンズ」において「第3レンズ群L3を物体側から順に、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正の第31レンズ、像面側に凹面をむけたメニスカス形状の負の第32レンズ、両凸形状の正の第33レンズで構成し、第31レンズはその物体側の面が非球面形状より成っており、第31レンズ,第32レンズ,第33レンズがそれぞれ空気間隔を隔てて配置されて」いるとの事項は、本願発明の「ズームレンズ」において「前記第3レンズ群G3は物体側より順に配列された、非球面形状の凸面を物体側に向けた第1正レンズ、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ、両凸形状の第2正レンズとがそれぞれ空気間隔を隔てて配置されて」いるとの事項に相当する。 引用発明の「ズームレンズ」において「SPは開口絞りであり、第3レンズ群L3の前方に位置して」ているとの事項と、本願発明の「ズームレンズ」において「開口絞りが前記第3レンズ群G3の第1正レンズと負レンズの間に配置され」ているとの事項とは、「開口絞りが配置され」ている点で一致する。 引用発明の「ズームレンズ」は、「第3レンズ群の第31レンズの像側レンズ面から第32レンズの物体側レンズ面までの距離をD3aとし、広角端状態における焦点距離をfwとするとき、D3a/fwの値が0.56である」から、本願発明の「条件式(1)(D3a/fw>0.5)を満足する」ものである。 したがって、引用発明と本願発明とは、 「 物体側より順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1、負の屈折力を有する第2レンズ群G2、正の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4により構成され、 広角端状態から望遠端状態までレンズ位置状態が変化する際に、前記第1レンズ群G1と前記第3レンズ群G3とが光軸方向において一定位置に固定され、前記第2レンズ群G2が像側へ移動され、前記第2レンズ群G2の移動に伴って発生する像面位置の変動を第4レンズ群G4の移動により補償し、 前記第3レンズ群G3は物体側より順に配列された、非球面形状の凸面を物体側に向けた第1正レンズ、像側に凹面を向けたメニスカス形状の負レンズ、両凸形状の第2正レンズとがそれぞれ空気間隔を隔てて配置されており、 開口絞りが配置され、 以下の条件式(1)を満足するズームレンズ。 (1)D3a/fw>0.5 但し、 D3a:第3レンズ群G3を構成する第1正レンズの像側レンズ面から負レンズの物体側レンズ面までの距離 fw:広角端状態における焦点距離」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) 本願発明の「ズームレンズ」の「開口絞り」は「第3レンズ群G3の第1正レンズと負レンズとの間に配置され」ているのに対し、引用発明の「ズームレンズ」の「開口絞り」は「第3レンズ群L3の前方に位置して」いる(すなわち、第31レンズの物体側に位置している)点。 5.当審の判断 物体側より順に配列された、正の屈折力を有する第1レンズ群、負の屈折力を有する第2レンズ群、正の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群により構成されたズームレンズにおいて、その開口絞りを第3レンズ群の第1正レンズの物体側に配置するか像面側に配置するかは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項である(この点につき、例えば特開平04-153615号公報には、絞りを第3レンズ群の第1正レンズの物体側に配置した実施例(実施例2乃至4、6、9参照)及びその像面側に配置した実施例(実施例1、8、10参照)がそれぞれ記載され、特開平08-278446号公報には、絞りを第3レンズ群の第1正レンズの物体側に配置した実施例(実施例1、3乃至6参照)及びその像面側に配置した実施例(実施例2、8、9参照)がそれぞれ記載され、また、特開2002-323656号公報(【0039】参照)には、絞りを第3レンズ群の第1正レンズの物体側に配置した実施例が記載されているとともに、絞りを第3レンズ群の内部に配置してもよいと記載されており、これらの文献をみても、上記のズームレンズにおいて、その開口絞りを正の屈折力を有する第3レンズ群の第1正レンズの物体側に配置するか、像面側に配置するかは、当業者が適宜に選択し得る事項と認められる。)。 よって、引用発明において、「開口絞り」を、「第3レンズ群L3の前方に位置」させる構成に代えて、第3レンズ群L3の第31レンズの像面側に配置することにより、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 6.本願発明の効果について 本願発明による効果は、引用発明に基いて、当業者が予測し得る範囲内のものに過ぎず、格別なものとはいえない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-20 |
結審通知日 | 2011-09-22 |
審決日 | 2011-10-04 |
出願番号 | 特願2003-369090(P2003-369090) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小倉 宏之 |
特許庁審判長 |
北川 清伸 |
特許庁審判官 |
吉川 陽吾 吉野 公夫 |
発明の名称 | ズームレンズ及びカメラ |
代理人 | 岩田 雅信 |