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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1247426
審判番号 不服2010-8979  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-27 
確定日 2011-11-25 
事件の表示 特願2004-366952「撮像装置及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日出願公開、特開2006-171588〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年(2004年)年12月20日の出願(特願2004-366952号)であって、平成21年10月8日付けで拒絶理由が通知され、同年12月11日付けで手続補正がなされ、平成22年1月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成22年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成22年4月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成21年12月11日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、

「自動合焦手段を備えた撮像装置において、
複数の撮影モード毎に任意の合焦範囲を設定する合焦範囲設定手段と、
前記複数の撮影モードの中から任意の撮影モードを選択する撮影モード選択手段と、
前記撮影モード選択手段によって選択された撮影モードに対応した合焦範囲に基づき、前記自動合焦手段に合焦動作を行わせる合焦制御手段と、
を備えたことを特徴とする撮像装置。」が

「自動合焦手段を備えた撮像装置において、
複数の撮影モード毎に任意の合焦範囲を撮影者が設定する合焦範囲設定手段と、
前記複数の撮影モードの中から任意の撮影モードを選択する撮影モード選択手段と、
前記撮影モード選択手段によって選択された撮影モードに対応した合焦範囲に基づき、前記自動合焦手段に合焦動作を行わせる合焦制御手段と、
を備え、
前記合焦範囲設定手段は、近距離から無限大に至る被写体との距離を適宜表示した合焦領域を表示する合焦領域表示手段と、
この合焦領域上に設定する合焦範囲の下限及び上限を撮影者が指定する合焦範囲指定手段と、
この合焦範囲指定手段によって指定された範囲を合焦範囲として設定する範囲設定手段とを含むことを特徴とする撮像装置。」と補正された。

そして、この補正は、合焦範囲を設定する主体について「撮影者」と特定する補正事項、及び、合焦範囲設定手段について「前記合焦範囲設定手段は、近距離から無限大に至る被写体との距離を適宜表示した合焦領域を表示する合焦領域表示手段と、この合焦領域上に設定する合焦範囲の下限及び上限を撮影者が指定する合焦範囲指定手段と、この合焦範囲指定手段によって指定された範囲を合焦範囲として設定する範囲設定手段」(本件補正前の請求項6の内容)であると特定する補正事項からなるから、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当する。
すなわち、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成22年4月27日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記の「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前の特許出願
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願の日前の特許出願であって、その出願後には出願公開がされた特願2004-228016号(特開2006-47645号)(以下「引用先願」という。)の明細書及び図面(以下「明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審において付した。)なお、引用先願の発明者は本願の発明者と同一ではなく、また本願の出願の時において、引用先願の出願人は本願の出願人と同一でもない。

「【0001】
本発明は、焦点調節装置および方法に関し、更に詳しくはビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置に用いられ、適切な合焦状態に撮像装置を調節する焦点調節装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の映像機器で用いられる自動焦点調節方法として、例えば、CCD等の撮像素子から得られる映像信号を分析して合焦状態を評価する信号を作成し、その信号を用いて合焦位置を決定する方法がある。かかる方法は、オートフォーカス専用のセンサーを必要としないためローコストで実現でき、パララックスが無く、また、精度も高いという利点を備えている。一方、フォーカスレンズを、フォーカスレンズの移動範囲である、所定の焦点調節距離範囲内で駆動し、順次評価信号を作成する必要があるため、測距時間が長くかかってしまうという欠点がある。
【0003】
測距時間を短縮する1つの方法として、測距する焦点調節距離範囲(以下、「測距距離範囲」と呼ぶ。)を狭くする方法がある。通常撮影時に例えば50cm?無限遠の範囲を測距距離範囲とした場合に、測距時間短縮モードとして、例えば、測距距離範囲を50cm?3mとすることにより、測距時間を短くすることが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平05-107464号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法では、測距時間短縮モードにおいて、被写体が測距距離範囲外の距離にある場合には、被写体に合焦できないという欠点がある。
【0006】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、測距距離範囲で測距を行うことにより測距時間を短縮しつつ、測距距離範囲外の被写体にも合焦可能にすることを目的とする。」

「【0011】
図1は、本発明の実施の形態における焦点調節装置を利用したデジタルカメラの概略図である。
【0012】
本実施の形態におけるデジタルカメラは、光学系1およびフォーカスレンズ2を持ち、これらにより結像した光を撮像素子3により光電変換し、出力ノイズを除去するCDS回路やA/D変換前に行う非線形増幅回路等を備えた前置処理回路4とA/D変換器5を通してデジタル化した信号をメモリコントローラ6を介してメモリ7に格納し、図示していない信号処理回路によって、ホワイトバランス処理、γ変換、圧縮といった処理を必要に応じて施してから記録媒体8に記録する。
【0013】
フォーカス動作は、制御部11の制御に基づいて、フォーカスレンズ駆動回路12がフォーカスレンズ2を駆動することで行われる。フォーカスレンズ駆動回路12は、フォーカスレンズ2を所定量づつ移動させ、各位置(以下、「焦点調節位置」と呼ぶ。)において撮像した画像信号を用いて、画像のコントラストに応じた信号(以下、「AF評価値」と呼ぶ。)をAF評価値演算回路14において演算する。
【0014】
AF評価値の演算は次のように行う。まず、撮影された画像の内、測距に用いる画像の一部を示す測距枠内の画像データの各ラインに、水平方向のバンドパスフィルタを適用する。次に、ライン毎にバンドパス出力信号の絶対値の最も大きいものを選択する。選択した信号を垂直方向に積分する。上記構成により、水平方向のコントラストの大きいものが検出され、垂直方向に積分することで信号のS/Nの向上につながる。このように演算することで、合焦状態で最も値が大きくなり、デフォーカス状態にすると値が小さくなるような信号である、AF評価値を得ることができる。したがって、AF評価値の極大値が得られた焦点調節位置で撮影を行うことで、合焦した画像を得ることができる。
【0015】
フォーカスレンズ2の駆動は、測距範囲設定部13により設定された、フォーカスレンズ2の移動範囲である測距距離範囲内で行い、AF評価値演算回路14において各焦点調節位置で上述したようにして算出されたAF評価値に基づいて、合焦位置決定部15が合焦位置を決定した後、フォーカスレンズ駆動回路12はその位置にフォーカスレンズ2を駆動する。なお、SW1(9)が操作された場合にフォーカス動作が行われ、SW2(10)が操作された場合に撮像および画像の記録が行われる。」

「【0024】
なお、本実施の形態で使用する測距距離範囲は、例えば、予め決められた固定の測距距離範囲を記憶しておいたり、デジタルカメラがレンズ交換式である場合には、取り付け可能なレンズに応じて(具体的には、焦点距離や、製品の種類に応じて)予め測距距離範囲を記憶しておき、取り付けられたレンズに応じて記憶してある測距距離範囲の1つを選択したり、撮影モード(風景撮影モード、人物撮影モード、接写モード等)に応じて予め測距距離範囲を記憶しておき、設定された撮影モードに応じて記憶してある測距距離範囲の1つを選択したり、ユーザーが任意に設定するなど、様々な方法が考えられる。」

イ 引用先願の明細書に記載された発明の認定
【0024】の記載における「測距距離範囲」の設定について、「撮影モード(風景撮影モード、人物撮影モード、接写モード等)に応じて」設定することと、「ユーザーが」設定することは、相互に対立することでなく、両者を併存させて採用し得ることは明らかであるから、「測距距離範囲」の設定について「撮影モード(風景撮影モード、人物撮影モード、接写モード等)に応じて」「ユーザーが任意に」設定することは、【0024】の記載から、自明な事項であるといえる。
また、設定された撮影モードに応じて記憶してある測距距離範囲の1つを選択するための手段(以下「選択手段」という。)を有することは当然である。
上記の点を踏まえ、上記の引用先願の明細書等の記載を総合勘案すれば、引用先願の明細書等には、
「適切な合焦状態に調節する焦点調節装置を用いた撮像装置であって、
測距範囲設定部13によって、撮影モード(風景撮影モード、人物撮影モード、接写モード等)に応じて予めユーザーが任意に測距距離範囲を設定し、
メモリ7又は記憶媒体8において、設定された測距距離範囲を記憶し、
選択手段を用いて、設定された撮影モードに応じて記憶してある測距距離範囲の1つを選択し、
焦点調節装置が、測距範囲設定部13により設定された、フォーカスレンズ2の移動範囲である測距距離範囲内でフォーカスレンズ2の駆動を行って焦点調節をする撮像装置。」
の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。

(3)本願補正発明と先願発明の対比
ア 対比
本願補正発明と先願発明を対比する。

先願発明の「適切な合焦状態に調節する焦点調節装置」が本願補正発明の「自動合焦手段」に相当するから、先願発明の「適切な合焦状態に調節する焦点調節装置を用いた撮像装置」が本願補正発明の「自動合焦手段を備えた撮像装置」に相当する。

先願発明の「測距距離範囲」及び「ユーザー」が、それぞれ、本願補正発明の「合焦範囲」及び「撮影者」に相当するから、先願発明の「撮影モード(風景撮影モード、人物撮影モード、接写モード等)に応じて予めユーザーが任意に測距距離範囲を設定」する「測距範囲設定部13」が、本願補正発明の「複数の撮影モード毎に任意の合焦範囲を撮影者が設定する合焦範囲設定手段」に相当する。

先願発明の「設定された撮影モードに応じて記憶してある測距距離範囲の1つを選択」する「選択手段」が、本願補正発明の「前記複数の撮影モードの中から任意の撮影モードを選択する撮影モード選択手段」に相当する。

先願発明の「測距範囲設定部13により設定された、フォーカスレンズ2の移動範囲である測距距離範囲内でフォーカスレンズ2の駆動を行って焦点調節」する「焦点調節装置」が、本願補正発明の「前記撮影モード選択手段によって選択された撮影モードに対応した合焦範囲に基づき、前記自動合焦手段に合焦動作を行わせる合焦制御手段」に相当する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と先願発明は、
「自動合焦手段を備えた撮像装置において、
複数の撮影モード毎に任意の合焦範囲を撮影者が設定する合焦範囲設定手段と、
前記複数の撮影モードの中から任意の撮影モードを選択する撮影モード選択手段と、
前記撮影モード選択手段によって選択された撮影モードに対応した合焦範囲に基づき、前記自動合焦手段に合焦動作を行わせる合焦制御手段と、
を備える撮像装置。」の発明である点で一致し、次の点で一応相違している。

ウ 相違点
合焦範囲設定手段について、本願補正発明においては、「近距離から無限大に至る被写体との距離を適宜表示した合焦領域を表示する合焦領域表示手段と、この合焦領域上に設定する合焦範囲の下限及び上限を撮影者が指定する合焦範囲指定手段と、この合焦範囲指定手段によって指定された範囲を合焦範囲として設定する範囲設定手段とを含む」のに対して、先願発明においては、その点の限定がない点。

(4)当審の判断
ア 上記相違点について検討する。
カメラ等の撮像装置が撮像の条件・状態等を特定の範囲に設定できる機能を有する場合に、ユーザが撮像の条件・状態等に関する範囲を設定するための表示装置として、表示装置上に設定可能な全領域を表示し、この領域上にユーザが設定しようとする範囲(上限及び下限)を指定し、指定された範囲をユーザ指定の範囲として設定することは、例えば、特開2002-90792号公報(【0059】【0060】【0064】【図13】【図14】参照)、特開平4-136720号公報(第3ページ左上欄第12行?同ページ右上欄第15行、第6?8図参照)にも記載されているように周知の技術である。よって、撮像装置における合焦範囲の設定の手段として上記の周知技術を採用した、本願補正発明における上記相違点に係る特定事項は、それ自体が周知技術であるといえる。
本願補正発明は、先願発明に対して、単に、上記の周知技術を付加したものに過ぎない。また、それによって、格別の効果を奏するものでもない。
したがって、上記相違点は、課題解決のための具体化手段における微差に過ぎず、実質的な相違点ではない。

イ まとめ
以上のとおり、上記「(3)本願補正発明と先願発明の対比」において「一応相違している」とした点は、実質的な相違点ではなく、本願補正発明は、先願発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

4 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年4月27日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年12月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成22年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前の特許出願
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前の特許出願(引用先願)の記載事項及び先願発明については、上記「第2 平成22年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願の日前の特許出願」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成22年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、合焦範囲を設定する主体について「撮影者」と特定する補正事項、及び、合焦範囲設定手段について「前記合焦範囲設定手段は、近距離から無限大に至る被写体との距離を適宜表示した合焦領域を表示する合焦領域表示手段と、この合焦領域上に設定する合焦範囲の下限及び上限を撮影者が指定する合焦範囲指定手段と、この合焦範囲指定手段によって指定された範囲を合焦範囲として設定する範囲設定手段」であると特定する補正事項によって限定したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定して特定したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成22年4月27日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と先願発明との対比」及び「(4)当審の判断」において記載したとおり、先願発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様に、先願発明と実質的に同一である。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、先願発明と実質的に同一であるから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-08-17 
結審通知日 2011-09-06 
審決日 2011-09-20 
出願番号 特願2004-366952(P2004-366952)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 幸仙
発明の名称 撮像装置及びプログラム  

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