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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1247458
審判番号 不服2007-26868  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-01 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2003-585685「陽イオン性グアー誘導体を含有するシャンプー」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月30日国際公開、WO03/88932、平成17年 8月18日国内公表、特表2005-524684〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年4月22日(優先権主張 2002年4月22日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成19年6月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成19年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに,同年10月31日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年10月31日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
平成19年10月31日付けの手続補正は特許請求の範囲を補正するものであって,平成19年6月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に
「a)5?50重量%の洗浄性界面活性剤と,
b)少なくとも0.05重量%の陽イオン性グアー誘導体であって,
i)前記陽イオン性グアー誘導体が10,000?10,000,000の重量平均分子量を有し,及び
ii)前記陽イオン性グアー誘導体が2.0meq/g?7meq/gの電荷密度を有する陽イオン性グアー誘導体と,
c)少なくとも0.1重量%の,300ミクロン未満の平均粒径を有する粒子であって,中空粒子,固体粒子及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子と,
d)少なくとも20.0重量%の水性キャリアと
を含むシャンプー組成物。」
とあったのを,
「a)5?50重量%の洗浄性界面活性剤と,
b)少なくとも0.05重量%の陽イオン性グアー誘導体であって,
i)前記陽イオン性グアー誘導体が10,000?10,000,000の重量平均分子量を有し,及び
ii)前記陽イオン性グアー誘導体が2.0meq/g?4.5meq/gの電荷密度を有する陽イオン性グアー誘導体と,
c)少なくとも0.1重量%の,300ミクロン未満の平均粒径を有する粒子であって,中空粒子,固体粒子及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子と,
d)少なくとも20.0重量%の水性キャリアと
を含むシャンプー組成物。」(以下,「本願補正発明」という。)と補正するものである。
上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である,陽イオン性グアー誘導体の電荷密度について,その数値範囲を限縮するものであるから,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定で引用され,本願優先権主張日前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。(以下,下線は当審で付加した。)
刊行物1:特表平11-503175号公報(原査定の引用文献2)

(1)刊行物1に記載された事項
[1a]「【特許請求の範囲】
1. 抗菌剤の沈積性が改良されたシャンプー組成物であって,
(a) アニオン性界面活性剤,両性界面活性剤,双性イオン性界面活性剤,およびそれらの組合せからなる群から選択した7?30重量%の洗浄力のある界面活性剤,好適にはアニオン性界面活性剤と,
(b) 0.1?10重量%の抗菌剤と,
(c) 0.5?10重量%の沈殿防止剤と,
(d) 0.01?3meq/gの電荷密度を有する0.01?1.0重量%のカチオン性グアーポリマーと,
(e) 40?92重量%の水,
とを含有し,前記カチオン性グアーポリマーの少なくとも50重量%がコアセルベートの形をしており,前記コアセルベートが洗浄力のある界面活性剤とカチオン性グアーポリマーを含有するシャンプー組成物。
2. 前記抗菌剤が硫黄,硫化セレン,ピリジンチオン塩類,およびそれらの組合せからなる群から選択した結晶性,微粒子物質,好適には1-ヒドロキシ-2-ピリジンチオンの亜鉛塩である請求の範囲第1項に記載のシャンプー組成物。」(第2頁第1?16行)

[1b]「発明の背景
種々のふけ抑制シャンプー組成物が商業的に利用できるか,または,シャンプーの分野では別の形で知られている。これらの組成物には,通常,組成物全体に分散,浮遊している結晶性抗菌剤の微粒子が含まれている。このために使用される抗菌剤には,硫黄,硫化セレンおよびピリジンチオンの重金属塩がある。シャンプーしている間に,これらの抗菌剤が頭皮に沈積し,ふけ抑制活性を与える。
(中略)
特定のカチオン性沈積ポリマーが,抗菌剤,特に抗菌剤微粒子の沈積性を高める上で特に効果があることが判明している。これら特定のポリマーは,グアーゴムのカチオン性誘導体であり,ふけ抑制シャンプー組成物において,結晶性沈殿防止剤および高濃度のアニオン性,両性または双性イオン性界面活性剤と組合せて用いると,最も効果があることが判明した。
しがって,この発明の目的は,抗菌剤,特に抗菌剤微粒子の沈積性を改良したふけ抑制シャンプー組成物,さらに,結晶性沈殿防止剤および高濃度の洗浄力のある界面活性剤の存在下でそのように改良された沈積性を提供することである。この発明のもう一つの目的は,ふけ抑制活性が優れ,かつ,抗菌剤の濃度が低いふけ抑制シャンプー組成物を提供することである。」(第4頁第8行?第5頁第7行)

[1c]「 抗菌剤
この発明のシャンプー組成物には,安全で有効な量の抗菌剤が含まれている。抗菌剤はシャンプー組成物に抗菌活性を与える。抗菌剤は,シャンプー組成物に不溶で組成物全体に分散した結晶性微粒子が好適である。
(中略)
これらのシャンプー組成物での使用に好適な抗菌剤微粒子は硫化セレンで,その有効濃度はシャンプー組成物の重量で約0.1?約5%,好適には約0.3?約2.5%,より好適には約0.5?約1.5%の範囲である。硫化セレンは,一般に,1モルのセレンと2モルの硫黄を有する化合物と見なされているが,環状構造の,Se_(x)S_(y),(ここで,x+y=8)でもある。硫化セレン(二硫化セレン)の平均粒子直径は,前方レーザ光散乱装置,たとえば,Malvern 3600装置で測定した場合,15μm未満,好適には10μm未満である。(中略)
ピリジンチオン抗菌剤,特に1-ヒドロキシ-2-ピリジンチオン塩は,これらのシャンプー組成物で使用する場合極めて好適な抗菌剤微粒子で,その濃度はシャンプー組成物の重量で,約0.1?約3%,好適には約0.3?約2%の範囲である。好適なピリジンチオン塩は,亜鉛,錫,カドミウム,マグネシウム,アルミニウムおよびジルコニウムなどの重金属から形成したものである。亜鉛塩,特に1-ヒドロキシ-2-ピリジンチオンの亜鉛塩(亜鉛ピリジンチオン,ZPT)が最も好適である。ナトリウムなど他のカチオンも適切である。特に好適なのは板状粒子の形をした1-ヒドロキシ-2-ピリジンチオン塩で,その場合,粒子の平均サイズは,約20μmまで,好適には約8μmまで,最も好適には約5μmまでである。」(第15頁第19行?第16頁第17行)

[1d]「これらのシャンプー組成物で使用するカチオン性グアーポリマーは,カチオン置換されたガラクトマナン(グアー)ゴム誘導体である。この種の誘導体の分子量は一般に約2,000?約3,000,000の範囲にある。」(第19頁最終行?第20頁第2行)

3 対比・判断
(1)刊行物1記載の発明
上記の記載によれば,刊行物1には,以下の発明(以下,「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
「抗菌剤の沈積性が改良されたシャンプー組成物であって,
7?30重量%の洗浄力のある界面活性剤と,
0.1?10重量%の抗菌剤微粒子と,
0.5?10重量%の沈殿防止剤と,
0.01?3meq/gの電荷密度を有する0.01?1.0重量%のカチオン性グアーポリマーと,
40?92重量%の水,
とを含有するシャンプー組成物。」

(2)本願補正発明と刊行物1発明との対比
ア 刊行物1発明の「洗浄力のある界面活性剤」は,本願補正発明の「洗浄性界面活性剤と同義であり,配合量について,刊行物1発明の「7?30重量%」は,本願補正発明の「5?50重量%」との配合量範囲内に包含される。

イ 刊行物1発明の「カチオン性グアーポリマー」は,本願補正発明の「陽イオン性グアー誘導体」に相当する。
そして,刊行物1発明の「カチオン性グアーポリマー」は,摘記事項[1a][1d]の記載からみて,分子量が「約2,000?約3,000,000の範囲」,電荷密度が「0.01?3meq/g」,配合量割合が「0.01?1.0重量%」であるから,本願補正発明の「少なくとも0.05重量%の陽イオン性グアー誘導体であって,i)前記陽イオン性グアー誘導体が10,000?10,000,000の重量平均分子量を有し,及びii)前記陽イオン性グアー誘導体が2.0meq/g?4.5meq/gの電荷密度を有する陽イオン性グアー誘導体」とは,「所定の配合量割合,分子量および電荷密度を有する陽イオン性グアー誘導体」である点で共通する。

ウ 刊行物1発明の「0.1?10重量%の結晶性,微粒子物質である抗菌剤」は,特に摘記事項[1c]の記載からみて,粒子の大きさが「15μm未満」あるいは「約20μmまで」であるから,本願補正発明の「少なくとも0.1重量%の,300ミクロン未満の平均粒径を有する」「固体粒子」に相当する。

エ 刊行物1発明の「水」は,本願補正発明の「水性キャリア」に相当するものであり,配合量について,刊行物1発明の「40?92重量%」は,本願補正発明の「少なくとも20.0重量%」との配合量範囲内に包含される。

以上のことを総合すると,両発明は,
「a)7?30重量%の洗浄性界面活性剤と,
b)所定の配合割合の陽イオン性グアー誘導体であって,
i)前記陽イオン性グアー誘導体が所定の分子量を有し,及び
ii)前記陽イオン性グアー誘導体が所定の電荷密度を有する陽イオン性グアー誘導体と,
c)少なくとも0.1重量%の,300ミクロン未満の平均粒径を有する固体粒子と,
d)40?92重量%の水と
を含むシャンプー組成物。」という点で一致し,次の相違点を有する。
(相違点)
陽イオン性グアー誘導体の配合割合,分子量,電荷密度が,本願補正発明では「少なくとも0.05重量%」,「10,000?10,000,000の重量平均分子量」,「2.0meq/g?4.5meq/gの電荷密度」であるのに対し,刊行物1発明は「0.01?1.0重量%」,分子量が「約2,000?約3,000,000の範囲」,「0.01meq/g?3meq/gの電荷密度」であって,一部範囲で一致しておらず相違する点。

(3)相違点についての検討
刊行物1発明は,上記摘記事項[1a][1b]の記載からみて,抗菌剤微粒子の頭皮への沈積性を高めるためにカチオン性グアーポリマーを用いるものであって,本願明細書【0006】に記載された発明が解決しようとする課題であるところの「今般,本発明の洗浄組成物に使用される場合に,選択された陽イオン性ポリマーが,その組成物で処理された表面へのコンディショニング助剤及び/又は固体粒子有益剤の付着及び残留を,意外なほど向上させ得ることが見出された。」と一致するものである。
してみると,刊行物1発明において,抗菌剤微粒子の沈積性の最適化のために,カチオン性グアーポリマーの全体の電荷を調整すること,つまり,カチオン性グアーポリマーの配合割合,分子量,電荷密度を,刊行物に記載された範囲内で調整して,本願補正発明の範囲とすることは,当業者が容易になし得ることである。

さらに,本願補正発明に係る効果を検討する。
平成19年10月31日付けの手続補正書(審判請求書の請求の理由に対する補正)に記載された参考資料1の比較実験からは「2.5meq/gの電荷密度を有する陽イオングアーポリマーを配合した実施例のシャンプー組成物は,0.95meq/gの電荷密度を有する陽イオングアーポリマーを配合した比較例のシャンプー組成物と比べて,ZPT沈着量が著しく多かった。」との結果が得られているものの,上記「2.5meq/gの電荷密度」は刊行物1において言及された電荷密度範囲に包含されているし,上記摘記事項[1b]に「特定のカチオン性沈積ポリマーが,抗菌剤,特に抗菌剤微粒子の沈積性を高める上で特に効果があることが判明している。」と記載されているから,出願人が主張するところの上記ZPT粒子の沈着量は刊行物1の記載事項から予測される範囲内のものである。

4 むすび
したがって,本願補正発明は,刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年10月31日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願請求項1?6に係る発明は,平成19年6月5日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,下記の事項により特定される発明である。
「a)5?50重量%の洗浄性界面活性剤と,
b)少なくとも0.05重量%の陽イオン性グアー誘導体であって,
i)前記陽イオン性グアー誘導体が10,000?10,000,000の重量平均分子量を有し,及び
ii)前記陽イオン性グアー誘導体が2.0meq/g?7meq/gの電荷密度を有する陽イオン性グアー誘導体と,
c)少なくとも0.1重量%の,300ミクロン未満の平均粒径を有する粒子であって,中空粒子,固体粒子及びこれらの組み合わせからなる群から選択される粒子と,
d)少なくとも20.0重量%の水性キャリアと
を含むシャンプー組成物。」

2 引用刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物,および,その記載事項は上記「第2 2」に記載のとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から陽イオン性グアー誘導体の電荷密度について,その数値範囲を拡張するものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 3」に記載したとおり,刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-22 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-14 
出願番号 特願2003-585685(P2003-585685)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
P 1 8・ 575- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡辺 仁保倉 行雄  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 郡山 順
▲高▼岡 裕美
発明の名称 陽イオン性グアー誘導体を含有するシャンプー  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 大宅 一宏  
代理人 古川 秀利  
代理人 梶並 順  

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