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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09K
管理番号 1247467
審判番号 不服2008-18726  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-23 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2004-213273「可塑性注入材および地盤注入工法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 56909〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成16年7月21日(優先権主張:平成16年7月20日)の出願であって、以降の手続の経緯は以下のとおりである。
平成16年 9月 9日 出願審査請求
平成20年 1月28日 拒絶理由通知
平成20年 4月 4日 意見書・手続補正書
平成20年 6月16日 拒絶査定
平成20年 7月23日 審判請求
平成20年 7月23日 手続補正書
平成20年10月 6日 前置報告
平成22年11月 8日 審尋
平成23年 1月17日 回答書
平成23年 6月 8日 拒絶理由通知
平成23年 8月 4日 意見書・手続補正書

第2 平成23年8月4日付け手続補正について
平成23年8月4日付け手続補正は、本件の特許請求の範囲である
「【請求項1】
フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを有効成分として含み、セメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセントで あり、そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しやって地盤の強化を図る配合液からなる可塑性注入材。
ただし、
セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項2】
請求項1において、さらにベントナイト(B)を有効成分として含み、セメント比が 2?20重量パーセント、水粉体比が30?70重量パーセントおよびベントナイト比が0.1?5.0重量パーセントの配合液からなる請求項1の可塑性注入材。
ただし、
セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、ベントナイト比=(B/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項3】
請求項1において、さらにアルミニウム(A)を有効成分として含み、セメント比が 3?20重量パーセント、水粉体比が30?70重量パーセントおよびアルミニウム比が0.1?1.0重量パーセントの配合液からなる請求項1の可塑性注入材。
ただし、
セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、アルミニウム比=(A/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項4】
請求項1において、さらに水ガラスを有効成分として含み、セメント比が2?20重量パーセント、水粉体比が50?130重量パーセントおよび水ガラスに起因するシリカ濃度が1.6?7.5重量パーセントの配合液からなる請求項1の可塑性注入材。
ただし、
セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項5】
請求項1において、さらに消石灰を有効成分として含み、かつセメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセント、消石灰が1?15重量パーセントの配合液からなる請求項1の可塑性注入材。
ただし、
セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、消石灰比=(消石灰量/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項6】
請求項1において、さらに重炭酸塩または炭酸塩と、シリカゾルとを有効成分として含み、かつセメント比が7?20重量パーセント、水粉体比が65?130重量パーセント、重炭酸塩比または炭酸塩比が0.1?2.0重量パーセントおよびシリカ濃度が0.7?7.0重量/容量パーセントの配合液からなる請求項1の可塑性注入材。
ただし、
セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、重炭酸塩比または炭酸塩比比=(重炭酸塩または炭酸塩の重量/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。」
を、
「 【請求項1】
フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを必須有効成分として含み、さらにベントナイト(B)、アルミニウム(A)、水ガラス、消石灰、重炭酸塩または炭酸塩、およびシリカゾルの群から選択される物質を任意有効成分として含む配合液であって、セメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセントであり、そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しやって地盤の強化が図れてなる可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項2】
配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)との必須有効成分に加えて任意有効成分としてベントナイト(B)を含む場合には、この配合液はセメント比が2?20重量パーセント、水粉体比が30?70重量パーセントおよびベントナイト比が0.1?5.0重量パーセントである請求項1の可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、ベントナイト比=(B/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項3】
配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)との必須有効成分に加えて任意有効成分としてアルミニウム(A)を含む場合には、この配合液はセメント比が3?20重量パーセント、水粉体比が30?70重量パーセントおよびアルミニウム比が0.1?1.0重量パーセントである請求項1の可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、アルミニウム比(A/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項4】
配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)の必須有効成分に加えて任意成分として水ガラスを含む場合には、この配合液はセメント比が2?20重量パーセント、水粉体比が50?130重量パーセントおよび水ガラスに起因するシリカ濃度が1.6?7.5重量パーセントである請求項1の可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項5】
配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)との必須有効成分に加えて任意有効成分として消石灰を含む場合には、この配合液はセメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセント、消石灰が1?15重量パーセントである請求項1の可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、消石灰比=(消石灰量/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。
【請求項6】
配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)との必須有効成分に加えて任意有効成分として重炭酸塩または炭酸塩と、シリカゾルを含む場合には、この配合液はセメント比が7?20重量パーセント、水粉体比が65?130重量パーセント、重炭酸塩比または炭酸塩比が0.1?2.0重量パーセントおよびシリカ濃度が0.7?7.0重量/容量パーセントである請求項1の可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、重炭酸塩比または炭酸塩比=(重炭酸塩または炭酸塩の重量/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。」
とするものである。
この補正は、請求項1における、フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)について「有効成分」を「必須有効成分」とする補正(補正事項1)、請求項1に「さらにベントナイト(B)、アルミニウム(A)、水ガラス、消石灰、重炭酸塩または炭酸塩、およびシリカゾルの群から選択される物質を任意有効成分として含む配合液」との事項を追加する補正(補正事項2)、及び、請求項2?6に「配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)との必須有効成分に加えて任意有効成分として…」との事項を追加する補正(補正事項3)を含むものである。
これらの補正事項が、本件の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件当初明細書」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるか否かについて検討する。
本件当初明細書に「フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを有効成分とし…」(段落【0026】等)、「図6は多連注入システムによる本発明注入工法の説明図である。図6において、A液はフライアッシュ、セメントおよび水からなる必須成分であり…」(段落【0026】)、及び、フライアッシュ(F)、セメント(C)、水(W)のみを成分とした実施例が記載されていること(【実施例1】の配合例1?6参照)などを考慮すると、フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)が有効成分であり、また、必須成分であることは、本件当初明細書に記載した事項と認められるから、補正事項1は本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
また、本件当初明細書に「本発明は上述のとおり、フライアッシュと、セメントと、水とを有効成分とし、必要に応じてベントナイト、アルミニウム塩、水ガラス、消石灰、重炭酸塩や炭酸塩、シリカゾル…等を併用し…配合する…」(段落【0007】)、「本発明はフライアッシュと、セメントと、水とを有効成分とし、必要に応じて他の特定の成分をも有効成分とし…」(段落【0095】)と記載されていることなどを考慮すると、ベントナイト、アルミニウム塩、水ガラス、消石灰、重炭酸塩や炭酸塩、シリカゾルを必要に応じて有効成分とすることは本件当初明細書に記載した事項であり、必要に応じて有効成分とするとは任意有効成分とすることを意味するものと認められるから、補正事項2は本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
さらに、以上のとおり、フライアッシュ(F)、セメント(C)、水(W)が必須有効成分であること、及び、ベントナイト、アルミニウム塩、水ガラス、消石灰、重炭酸塩や炭酸塩、シリカゾルが任意有効成分であることは、本件当初明細書に記載した事項であるから、「配合液がフライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)との必須有効成分に加えて、任意有効成分として」、ベントナイト、アルミニウム塩、水ガラス、消石灰、重炭酸塩や炭酸塩、シリカゾルのいずれかを含有させることは、本件当初明細書に記載した事項であり、補正事項3も本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものといえる。
以上のとおりであるから、補正事項1?3はいずれも、本件当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり、平成23年8月4日付け手続補正は適法なものと認められる。

第3 特許請求の範囲の請求項1に記載された発明
本件出願に係る発明は、平成23年8月4日付け手続補正により補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである(以下、「本件発明」という。)。
「フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを必須有効成分として含み、さらにベントナイト(B)、アルミニウム(A)、水ガラス、消石灰、重炭酸塩または炭酸塩、およびシリカゾルの群から選択される物質を任意有効成分として含む配合液であって、セメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセントであり、そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しやって地盤の強化が図れてなる可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。」

第4 平成23年6月8日付け拒絶理由
平成23年6月8日付け拒絶理由は、以下の拒絶理由を含むものである。

この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物ア?ウに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
〈引用刊行物〉
ア.特開平10-195437号公報
イ.特開平01-234491号公報
ウ.特開平11-092760号公報

第5 当審の判断
上記拒絶理由のうち、引用刊行物イに基づく理由の適否について検討する。

1.引用刊行物イに記載された事項
引用刊行物イには、以下の事項が記載されている。
a.「この発明は、地盤などに注入される急結性グラウト材に関するものである。」(第1頁左欄第13?14行)
b.「急結性グラウト材は、以下の物性を持つものを利用することが多い。…1日で、8kgf/cm^(2)程度の圧縮強度を発現する。」(第1頁左欄第16行?右欄5行)
c.「従来…フライアッシュを使用した急結性グラウト材としては、表Iに示すものが知られている。但し、この表中の配合割合の欄において、”FA”はフライアッシュ、”PC”はポルトランドセメント、”Be”はベントナイト、”WG”は水ガラスを示す。


この表1によると、急結性グラウト材として必要な物性を全て満足する配合割合は、D-21およびD-27で表されるものだけとなっている。」
(第1頁右欄第6行?第2頁左下欄第9行)

2.引用刊行物イに記載された発明
引用刊行物イには「地盤…に注入される急結性グラウト材」(摘記a)であり、「1日で、8kgf/cm^(2)程度の圧縮強度を発現する」(摘記b)ものが記載されている。
また、引用刊行物イの表1において「…”FA”はフライアッシュ、”PC”はポルトランドセメント…を示す。」(摘記c)から、引用刊行物イの表1の”FA”、”PC”、”水”は順に、本件発明の”フライアッシュ(FA)”、”セメント(PC)”、”水(W)”にあたる。
そこで、引用刊行物イの表1のD-1?26について、セメント比((C/F+C)×100)、及び、水粉体比((W/F+C)×100)を計算すると、例えば、No.D-1の実施例(FA=954kg/m^(3)、PC=108kg/m^(3)、水482kg/m^(3))はセメント比((C/F+C)×100)が10.2%、水粉体比((W/F+C)×100)が45.4%であるように、D-1?26として、「セメント比が10.2?17.4重量パーセント、および水粉体比が38.8?70.2重量パーセント」の条件を満たす例が記載されているといえる(摘記c)。
以上より、引用刊行物イには「フライアッシュ(FA)と、セメント(PC)と、水(W)とを含み、セメント比が10.2?17.4重量パーセント、および水粉体比が38.8?70.2重量パーセントであり、地盤に注入されて1日で8kgf/cm^(2)程度の圧縮強度を発現する地盤に注入される急結性グラウト材(セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。)」が記載されているといえる(以下、「引用発明」と言う。)。

3.本件発明と引用発明との対比・検討
(1)対比
本件発明と引用発明を対比すると、引用発明の「フライアッシュ(FA)と、セメント(PC)と、水(W)とを…含み、セメント比が10.2?17.4重量パーセント、および水粉体比が38.8?70.2重量パーセント(セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。)」は、セメント比、水粉体比について本件発明と重複する範囲のものであり、また、水にフライアッシュとセメントとを配合した配合液と認められるから、本件発明の「フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを…含み…配合液であって、セメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセントであり… ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。」に相当する。
また、引用発明の「地盤に注入されて1日で8kgf/cm^(2)程度の圧縮強度を発現する」は、それによって地盤の強度を向上させることを意味すると認められるから、本件発明の「地盤の強化が図れてなる」に相当する。
そして、引用発明の「地盤に注入される急結性グラウト材」は、本件発明の「可塑性注入材」に相当する。
そうすると、本件発明と引用発明とは、「フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを含む配合液であって、セメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセントであり、地盤の強化が図れてなる可塑性注入材。
ただし、セメント比=(C/F+C)×100であり、水粉体比=(W/F+C)×100であり、F、C、Wはいずれも重量比を表す。」の点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点1:本件発明は、フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを「必須有効成分」とするのに対して、引用発明は、それらが「必須有効成分」と表現されていない点
相違点2:本件発明は、「ベントナイト(B)、アルミニウム(A)、水ガラス、消石灰、重炭酸塩または炭酸塩、およびシリカゾルの群から選択される物質を任意有効成分として含む」のに対して、引用発明は、それらの任意有効成分を含むものとされていない点
相違点3:本件発明は、「そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しや」るものであるのに対して、引用発明はそのような言及のないものである点

(2)検討
上記相違点1?3について検討する。
(ア)相違点1
引用刊行物イには、表1のD-1?26として、フライアッシュ(FA)と、セメント(PC)と、水(W)とを含む急結性グラウト材が記載されており(摘記c)、いずれのものにおいても、フライアッシュ(FA)と、セメント(PC)と、水(W)とは、急結性グラウト材を構成する成分として必ず含まれているから、フライアッシュ(FA)と、セメント(PC)と、水(W)は、必須有効成分と認められる。
よって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
(イ)相違点2
引用刊行物イには、表1のD-1?26の中に、ベントナイト(Be)、消石灰を含むものが記載されている(D-21、22、24?26)(摘記c)。
これらの成分は本件発明の「ベントナイト(B)、アルミニウム(A)、水ガラス、消石灰、重炭酸塩または炭酸塩、およびシリカゾルの群から選択される物質」の条件を満たすものである。
そして、これらの成分は、急結性グラウト材を構成する成分として、D-1?26の中に含むものと含まないものがあるから、任意有効成分と認められる。
よって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
(ウ)相違点3
本件出願の発明の詳細な説明の「本発明はフライアッシュと、セメントと、水とを有効成分とし…セメント比、水粉体比…を特定の範囲に定めた配合液とすることにより、地盤中に注入した配合液がゲル状になったとき、そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する可塑状態を経て固結する可塑性固結材を地盤に圧入して土粒子を周辺に押しやり、地盤強化を図りながら固結する。」(段落【0095】)、「本発明は上述のとおり、フライアッシュ(F)、セメント(C)、水(W)を有効成分とし、セメント比を50重量%以下、好ましくは2?20重量%、および水粉体比を30?130重量%、好ましくは30?70重量%の配合液とする。…これによって、本発明にかかる上述配合液は…そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結する。」(段落【0008】?【0009】)との記載、及び、実施例において、フライアッシュ(F)、セメント(C)、水(W)を規定された割合で配合した可塑性注入材が良好な結果を示していると認められること(段落【0035】?【0044】)等を考慮すると、本件発明の可塑性注入材の「そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しや」る機能は、フライアッシュ、セメント、水をセメント比、水粉体比が特定の範囲、即ち、セメント比が50重量%以下、水粉体比が30?130重量%、となるように配合することによって発現されるものと推認される。
してみると、引用発明は「フライアッシュと、セメントと、水とを有効成分として含み、セメント比が50重量パーセント以下、および水粉体比が30?130重量パーセント」であるという条件を満たすものであって、本件発明と同様の有効成分、セメント比、水粉体比のものである以上、引用刊行物イ中に言及はされていないとしても、「そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しや」るという同様の機能を有するものと認められる。
よって、相違点3は実質的な相違点とは言えない。

なお、本件発明は「種々の目的に応じた流動特性、固結特性を呈する所望の可塑性注入材を得、この注入材を地盤中に圧入して土粒子を周辺に押しやり、地盤強化を図りながら地盤を強固に固結することができる。」(本件明細書段落【0007】)という効果を奏するものであるが、「(3)相違点3」で述べたとおり、引用発明は、引用刊行物イ中に言及はされていないとしても、「そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しや」るという同様の機能を有するものといえるから、同様の作用、効果を奏するものと認められる。

(3)まとめ
以上のとおり、上記相違点1?3はいずれも相違点とはいえないから、本件発明は引用刊行物イに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

4.請求人の平成23年8月4日付け意見書における主張について
請求人は、平成23年8月4日付け意見書において『引用文献イ(特開平01-234491号公報)は急結性グラウト材に係り、その特徴は特許請求の範囲の記載に徴し、「水とフライアッシュと水ガラスとセメントとから構成されたグラウト材であって、その配合割合が、フライアッシュ400?700kg/m^(3)、水ガラス70?200kg/m^(3)、セメント100?300kg/m^(3)であることを特徴とする急結性グラウト材。」
なお、引用文献イで用いられるフライアッシュは第4ページ右欄第15行?17行に記載のように、地盤に注入したときに土圧を小さくするために用いられる急結性グラウト材である。』(第2頁(3))と主張している。
しかしながら、上記「1.引用刊行物イに記載された事項」であげた摘記事項がいずれも引用刊行物イの[従来の技術]の記載であることから判るように、引用発明は引用刊行物イの[従来の技術]に記載された発明であって、引用刊行物イの特許請求の範囲に記載された発明ではないから、「地盤に注入したときに土圧を小さくするために用いられる急結性グラウト材である。」とはいえない(むしろ、引用刊行物イの第2頁左下欄第17?18行に従来の技術に属するD-21の急結グラウト材について「注入後の土圧が大きくなり、周囲の地盤への影響が大きくなる…」との記載があることを考慮すると、地盤注入後の周囲への圧力を大きくして、土粒子を周辺に押しやる働きをするものと推認される。)から、請求人の主張は認められない。
また、請求人は、同意見書において「これら引用文献ア?ウには本願発明の上述(B)、すなわち、フライアッシュ(F)と、セメント(C)と、水(W)とを含む必須有効成分に上述(C)、すなわち、ベントナイト(B)、アルミニウム(A)、水ガラス、消石灰、重炭酸塩または炭酸塩、およびシリカゾルの群から選択される物質を任意有効成分として含有し、これによりそのままでは流動しないが、外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより土粒子を周辺に押しやって地盤の強化を図るという本願注入材の利点については何も開示していない。」
(第2頁(3))と主張している。
しかしながら、「3.イ(3)相違点3」で述べたとおりの理由により、引用発明は、引用刊行物イ中に言及はされていないとしても、「そのままでは流動しないが外力が作用すると流動する所望の可塑状態を経て固結し、かつ地盤中に圧入することにより、土粒子を周辺に押しや」るという同様の機能を有するものといえるから、請求人の主張は認められない。

第6 結び
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の点について検討するまでもなく、本件出願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-12 
結審通知日 2011-09-20 
審決日 2011-10-04 
出願番号 特願2004-213273(P2004-213273)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C09K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 松本 直子
木村 敏康
発明の名称 可塑性注入材および地盤注入工法  
代理人 染谷 仁  
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