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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1247485
審判番号 不服2009-3614  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-18 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2001- 53309「ファイル管理プログラム、ファイル管理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、ファイル管理装置およびファイル管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-259180〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月28日の出願であって、平成20年10月7日付けで拒絶理由通知がなされ、同年12月11日付けで手続補正がなされたが、平成21年1月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項9に係る発明は、平成20年12月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項9に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「複数のファイルを仮想的に結合した仮想ファイルを管理するファイル管理装置であって、
前記複数のファイル、および、前記複数のファイルを仮想結合するための情報である管理情報を記憶する記憶手段を備え、
前記管理情報は、前記複数のファイルのそれぞれを特定するための識別情報と前記複数のファイルのそれぞれが仮想結合の対象となるか否かを示す結合情報とを含み、
前記管理情報を前記記憶手段から読み出す読出手段と、
前記読み出された管理情報において仮想結合の対象となっているファイルの中から、仮想結合を解除するファイルの指定を受け付ける第1の受付手段と、
前記仮想結合を解除するファイルの指定を受け付けた場合に、前記記憶手段に記憶された管理情報において、前記指定されたファイルの前記識別情報は削除せずに、該ファイルの前記結合情報を仮想結合の対象としないことを示す情報に変更する第1の変更手段とを備えた、ファイル管理装置。」

3.引用例及び周知例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-138565号公報(以下、「引用例」という。)、及び原査定の備考欄において周知例として引用された特開平11-2224218号公報(以下、「周知例」という。)には、それぞれ、図面とともに次の事項が記載されている。

(引用例)
A.「〔従来の技術〕
関係(リレーショナル)データベースシステムにおいては、実在する複数の基本ファイルから必要な情報を得る場合、複数の基本ファイルを合成した新たな基本ファイルを作成するのではなく、複数の基本ファイルから仮想ファイルを定義し、この仮想ファイルに対してアクセスを行うことが多い、これは、基本ファイル間でのデータ内容の一貫性を保つと共に、同内容のデータの重複格納の防止等を図るためである。
ところで、従来、仮想ファイルの定義は、次の事項を含んでいた。
○1(審決注:丸囲み数字を表記することができないため、「○1」と表記する。以下、同様。)基本ファイルの決定
○2様式の決定
○3アクセス経路の決定
○4関係インデックスの決定
○5様式連関の決定
ここで、様式とは基本ファイルから必要な項目を順序も考慮して選択したものであり、アクセス経路とは仮想ファイルにアクセスする場合にどの様式からアクセスするかの順序であり、関係インデックスとは複数の基本ファイルを合成する処理に用いるインデックスであり、様式連関とは結合,連鎖,併合等の基本ファイルを合成する態様である。なお、結合とは複数の基本ファイルの様式の所定の項目に同じインデックス値(キー値)を有するファイルレコードのみを順次抽出することをいい、連鎖とはアクセス経路が1番目の基本ファイルの様式のファイルレコードと、それに対してアクセス経路の順序が連続し、かつ様式の所定の項目に同じインデックス値を有するファイルレコードとを続けて抽出することをいい、併合とは複数の基本ファイルの様式の所定の項目のインデックス値の順に全ファイルレコードを抽出することをいう。ただし、本発明では結合だけを対象としている。
第8図は複数の基本ファイルから定義された仮想ファイルに対して結合検索を行うようにした複数ファイル結合処理方式の構成を示したものである。
第8図において、データベース11にはディレクトリ12とインデックスレコードファイル15とファイルレコードファイル16とが格納され、ディレクトリ12には基本ファイル定義情報13と仮想ファイル定義情報14とが登録され、データベース11に対して利用者からの要求を受けて結合検索手段17がアクセスを行うようになっている。
第9図は第8図におけるディレクトリ12内の基本ファイル定義情報13および仮想ファイル定義情報14の例を示したものである。すなわち、基本ファイル定義情報13として、項目A1,A2,A3,A4から構成される基本ファイルAの定義情報と、項目Bl,B2,B3から構成される基本ファイルBの定義情報と、項目C1,C2,C3,C4から構成される基本ファイルCの定義情報と、基本ファイルAの項目A1についてインデックスaを設定する旨の情報と、基本ファイルBの項目B1についてインデックスbを設定する旨の情報と、基本ファイルCの項目C1についてインデックスcを設定する旨の情報とが含まれている。また、仮想ファイル定義情報14として、基本ファイルA,B,Cのそれぞれ全ての項目を選択した様式A,B,Cの定義情報と、様式(基本ファイル)A,B,Cを様式連関として結合(J)により合成する旨の情報(VABC-J’)と、結合のための関係インデックスとしてインデックスa,b,cとする旨の情報と、アクセス経路として様式A→様式B→様式Cの順とする旨の情報とが含まれている。」(第1頁右下欄第6行?第2頁左下欄第15行)

ここで、上記A.の記載において、「基本ファイルA,B,C」の「A,B,C」は、それぞれの基本ファイルを特定するための「識別情報」であると解される。
また、上記A.の記載において、「複数の基本ファイルから定義された仮想ファイルに対して結合検索を行う」にあたり、当然、「データベース11」に登録された「仮想ファイル定義情報」を読み出すことは行われるものと解される。

よって、上記A.の記載及び関連する図面を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「複数の基本ファイルを仮想的に結合した仮想ファイルに対して結合検索を行う複数ファイル結合処理方式であって、
前記複数の基本ファイル、および、前記複数の基本ファイルを仮想結合するための情報である仮想ファイル定義情報を登録するデータベースを備え、
前記仮想ファイル定義情報は、前記複数の基本ファイルのそれぞれを特定するための識別情報を含み、
前記仮想ファイル定義情報を前記データベースから読み出す読出手段を備えた、複数ファイル結合処理方式。」

(周知例)
B.「【0041】図5において、ファイルB(51)?ファイルE(54)は、上記の方法により所定条件ごとに分割されたファイルである。図5の横方向の長さはファイルのサイズを示しており、各ファイルともサイズが異なることが分かる。これらのファイルの情報は、管理テーブル24に図6に示したような形式で記録されている。管理テーブル24は、ファイル名61、開始位置62、サイズ63、結合フラグ64の項目を持つ各ファイルのリストからなり、ファイル登録手段23によりこれらの情報が登録/更新される。ファイル名61はファイルを識別する情報を、開始位置62は記録領域25上での該当ファイルの記録開始位置をあらわす情報を、サイズ63は該当ファイルのサイズをあらわす情報を、結合フラグ64は該当ファイルが上記の所定条件により分割されて記録されているかどうかをあらわす情報をそれぞれ保持している。例えば、ファイルBは、記録領域25上のオフセット201フレーム目から70フレーム分記録され、結合フラグが1になっていることから、転送中のファイルの全データが転送完了すると他のファイルと結合されることを示している。また、ファイルAは、現在転送中のファイルとは異なるものであることがわかる。
【0042】監視手段22がファイルの結合命令を発行すると、登録手段23は、管理テーブル24の結合フラグ64が1になっているファイルを検索し、これらのファイルを1つのファイルに結合する。結合されたファイルの結合フラグ64は0にセットされ、これ以降に転送されるファイルと結合されることがないようにする。図5、図6ではファイルB?ファイルEが結合されてファイルFという1つのファイルになり、その情報も更新されていることを示している。当然ながら図5に示したように、ファイルF(55)のファイルサイズはファイルB(51)?ファイルE(54)の合計と一致する。また、ファイルFは送信側システムに保持されている元々のファイルと全く同一のデータである。」

上記B.の記載及び関連する図面を参照すると、周知例には、次の技術が記載されているものと認められる。(以下、「周知例記載の技術」という。)
「複数のファイルを結合するにあたり、前記複数のファイルのそれぞれが結合の対象となるか否かを示す結合フラグを設け、前記結合フラグが1になっているファイルを結合し、前記結合フラグが0になっているファイルを結合しないようにすること。」

4.対比
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、次のことがいえる。

(あ)引用例記載の発明における「基本ファイル」は、本願発明における「ファイル」に相当する。

(い)引用例記載の発明の「複数の基本ファイルを仮想的に結合した仮想ファイルに対して結合検索を行う複数ファイル結合処理方式」は、「仮想ファイル定義情報」により「仮想ファイル」の管理を行っているということができる。
よって、上記「仮想ファイル定義情報」は、「管理情報」と呼ぶことのできる情報であり、また、上記「複数の基本ファイルを仮想的に結合した仮想ファイルに対して結合検索を行う複数ファイル結合処理方式」は、「複数のファイルを仮想的に結合した仮想ファイルを管理するファイル管理装置」としての機能を有するものであるということができる。

(う)引用例記載の発明における「データベース」は、本願発明における「記憶手段」に相当する。
そして、引用例記載の発明において、上記「データベース」に「仮想ファイル定義情報」を「登録」することは、本願発明において、上記「記憶手段」に「管理情報」を「記憶」することに相当する。

上記(あ)?(う)の事項を踏まえると、本願発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致し、また、相違するものと認められる。

(一致点)
本願発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「複数のファイルを仮想的に結合した仮想ファイルを管理するファイル管理装置であって、
前記複数のファイル、および、前記複数のファイルを仮想結合するための情報である管理情報を記憶する記憶手段を備え、
前記管理情報は、前記複数のファイルのそれぞれを特定するための識別情報を含み、
前記管理情報を前記記憶手段から読み出す読出手段を備えた、ファイル管理装置。」
である点。

(相違点)
本願発明は、「管理情報」が「複数のファイルのそれぞれが仮想結合の対象となるか否かを示す結合情報」を含むものであるとともに、「読み出された管理情報において仮想結合の対象となっているファイルの中から、仮想結合を解除するファイルの指定を受け付ける第1の受付手段」及び「仮想結合を解除するファイルの指定を受け付けた場合に、記憶手段に記憶された管理情報において、指定されたファイルの識別情報は削除せずに、該ファイルの結合情報を仮想結合の対象としないことを示す情報に変更する第1の変更手段」を備えるのに対し、引用例記載の発明は、そのようなものであるとはされていない点。

5.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
上記周知例記載の技術に見られるように、一般に、複数のファイルを結合するにあたり、前記複数のファイルのそれぞれが結合の対象となるか否かを示す結合フラグを設け、前記結合フラグが所定の値になっているファイルのみを結合するようにすることは、適宜に行われていることにすぎない。
そして、上記周知例記載の技術は、「仮想ファイル」に係る技術ではないが、引用例記載の発明と同様に、複数のファイルを結合する技術分野に属する技術であることには変わりなく、上記周知例記載の技術を「仮想ファイル」の管理を行う引用例記載の発明に対して適用できない理由はない。
してみれば、引用例記載の発明に対して、上記周知例記載の技術を適用し、「仮想ファイル定義情報(管理情報)」として「複数のファイルのそれぞれが仮想結合の対象となるか否かを示す結合フラグ(結合情報)」を用いるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることであるというべきである。

次に、引用例記載の発明は、そもそも、「複数の基本ファイルを仮想的に結合した仮想ファイルに対して結合検索を行う複数ファイル結合処理方式」に係るものであり、引用例の上記A.に「実在する複数の基本ファイルから必要な情報を得る場合、複数の基本ファイルを合成した新たな基本ファイルを作成するのではなく、複数の基本ファイルから仮想ファイルを定義し、この仮想ファイルに対してアクセスを行うことが多い」と記載されているように、アクセスの際に必要とされる情報を含む基本ファイルのみを結合して仮想ファイルを作成するものであると解されるから、必要とされる情報が変わった場合には仮想ファイルを構成する基本ファイルを変更できるようにすることは、当然のことである。
そして、引用例記載の発明に対して、上記周知例記載の技術を適用し、「仮想ファイル定義情報(管理情報)」として「複数のファイルのそれぞれが仮想結合の対象となるか否かを示す結合フラグ(結合情報)」を用いるようにした場合に、該「結合情報」を変更するように指定すれば、ファイル毎に、仮想ファイルを構成するファイルに含めるか否かを変更できることは、当業者にとって自明であり、仮想結合を解除したい場合に、仮想結合を解除するファイルを指定して当該ファイルの「結合情報」を「仮想結合の対象としないことを示す情報」に変更するようにすることは、当業者が当然に行うことにすぎない。
さらに、「仮想ファイル」は、そもそも、仮想的に複数のファイルを一つのファイルとして扱うようにしたにすぎないものなのであるから、仮想結合が解除されて仮想ファイルを構成する基本ファイルでなくなった場合であっても、上記複数のファイル自身の識別情報は削除することなくそのままとすることは、当然のことである。

よって、引用例記載の発明に対して、上記周知例記載の技術を適用することにより、「管理情報」を「複数のファイルのそれぞれが仮想結合の対象となるか否かを示す結合情報」を含むものとし、「読み出された管理情報において仮想結合の対象となっているファイルの中から、仮想結合を解除するファイルの指定を受け付ける第1の受付手段」及び「仮想結合を解除するファイルの指定を受け付けた場合に、記憶手段に記憶された管理情報において、指定されたファイルの識別情報は削除せずに、該ファイルの結合情報を仮想結合の対象としないことを示す情報に変更する第1の変更手段」を備えるようなものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(本願発明の作用効果について)
そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知例記載の技術から当業者が容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知例記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-26 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2001-53309(P2001-53309)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 工藤 嘉晃  
特許庁審判長 長島 孝志
特許庁審判官 加内 慎也
小曳 満昭
発明の名称 ファイル管理プログラム、ファイル管理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体、ファイル管理装置およびファイル管理方法  
代理人 深見 久郎  
代理人 野田 久登  
代理人 酒井 將行  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 森田 俊雄  
代理人 仲村 義平  
代理人 堀井 豊  

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