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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1247494
審判番号 不服2009-19783  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-15 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 平成10年特許願第309305号「化粧板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月 9日出願公開、特開2000-127299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成10年10月30日の出願であって、平成21年7月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年5月30日の手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。

「着色剤を含有したポリエステル樹脂フィルムからなる基材シートの一方の面に、絵柄模様層または着色下地層を有する絵柄模様層、該絵柄模様層上に撥液性を有する硬化型インキによる撥液絵柄層を形成した後、その上面に前記撥液絵柄層によりはじかれる性質を有する透明インキを用いてトップコート層を施すことにより、前記撥液絵柄層を形成した部分の前記トップコート層がはじかれて凹状部を形成した化粧シートの前記基材シートの他方の面に、接着剤を介して基板を接着積層してなる化粧板において、前記基材シートと前記絵柄模様層の間にポリエステル系ウレタン樹脂よりなるプライマー層を設けたことを特徴とする化粧板。」

3.引用例

3-1.引用例1

原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-226083号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種家具類や建築内装材等に、装飾あるいは表面保護の目的で貼着される、表面における美的効果、立体効果等に優れた、絵柄に同調した凹凸部が設けられた化粧シートに関する。」

(1b)「【0010】本発明に用いられる基材シート2としては、例えば、…(中略)…ポリエチレンテレフタレートフイルム、…(中略)…等のプラスチックフイルム等であり、」

(1c)「【0011】また、基材シート2の上面には、任意にベタ印刷層、及び、例えば、オーク、チーク、ウォルナット等の柾目、板目状の木目模様を現出する絵柄模様層を通常インキによりグラビア印刷によって形成されており、これら通常インキによる下地絵柄層3を形成するインキとしては、」

(1d)「【0014】撥液絵柄層5は表面保護層6を形成する透明インキ7をはじかせるために、シリコン樹脂やフッ素樹脂などの撥液剤を含む印刷インキを用いて設けられる。インキとしては、例えばアミノアルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂をベヒクルとし、」

(1e)「【0015】表面保護層6は、化粧シートの表面に好ましい艶を与えるととに、撥液絵柄層5によってはじかれて凹部9を形成する。この時撥液絵柄層5上の透明インキ7ははじかれると同時に前記撥液絵柄層以外の部分に引っ張られ、その結果撥液絵柄層部分にシャープな凹状部が形成される。」

(1f)「【0016】本発明の化粧シートの他の構成として図2に示すように、前記基材シート2の表面に設けられた通常インキによる下地絵柄層3と艶消しインキによる艶消し絵柄層4の表面全面に透明艶消し樹脂層8を形成し、しかるのちに前記透明艶消し樹脂層8面に前記艶消し絵柄層4以外の上面部分に撥液性物質を含むインキを用いて撥液絵柄層5を形成し、次いで、艶消し絵柄層4を抜いた印刷版により前記撥液絵柄層5によりはじかれる性質を有する透明インキ7を前記艶消し絵柄層4に印刷見当を合わせて塗布し表面保護層6を形成する構成とすることも出来る。」

(1g)また、化粧シート1を上記摘記(1a)のように各種家具類や建築内装材等に貼着する際、化粧シート1の絵柄層を設けない方の面を貼着するのは明らかである。

これらの記載事項によると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ポリエチレンテレフタレートフイルムからなる基材シート2の一方の面に、下地絵柄層3を有する艶消し絵柄層4、該艶消し絵柄層4上に撥液性を有する熱硬化性インキによる撥液絵柄層5を形成した後、その上面に前記撥液絵柄層5によりはじかれる性質を有する透明インキ7を用いて表面保護層6を施すことにより、前記撥液絵柄層5を形成した部分の前記表面保護層6がはじかれて凹部9を形成した化粧シート1の前記基材シート2の他方の面に、各種家具類や建築内装材等を貼着してなる化粧物品。」

3-2.引用例2

原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-64131号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

(2a)「【特許請求範囲】
【請求項1】 光輝性を有する熱可塑性樹脂層に絵柄層、絵柄層の絵柄に同調した模様を有する撥液絵柄層が順に積層され、少なくとも前記光輝性を有する熱可塑性樹脂層と他層との界面には凹凸模様が形成されており、さらに前記撥液絵柄層以外の面には該凹凸模様の深さよりも厚い透明樹脂層が積層された化粧シート。」

(2b)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、住宅内装材、キャビネット、住器用などに用いられる化粧シートに関する。」

(2c)「【0007】光輝性を有する熱可塑性樹脂層としては、…(中略)…等のポリエステル樹脂、…(中略)…が使える。」

(2d)「【0009】光輝性層を別に形成する場合の熱可塑性樹脂層としては、無色透明でもよいが着色されていることが好ましい。着色すれば、化粧シート全体の色調を調整できる他に、化粧シートを他の基材に貼合せて使用する場合に、基材の色、汚れ、傷などを隠蔽することができるからである。」

4.対比

本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ポリエチレンテレフタレートフイルムからなる基材シート2」、「下地絵柄層3」、「艶消し絵柄層4」、「熱硬化性インキによる撥液絵柄層5」、「表面保護層6」及び「凹部9」は、それぞれ本願発明の「ポリエステル樹脂フィルムからなる基材シート」、「着色下地層」、「絵柄模様層」、「硬化型インキによる撥液絵柄層」、「トップコート層」及び「凹状部」に相当するから、本願発明と引用発明1とは、

「ポリエステル樹脂フィルムからなる基材シートの一方の面に、絵柄模様層または着色下地層を有する絵柄模様層、該絵柄模様層上に撥液性を有する硬化型インキによる撥液絵柄層を形成した後、その上面に前記撥液絵柄層によりはじかれる性質を有する透明インキを用いてトップコート層を施すことにより、前記撥液絵柄層を形成した部分の前記トップコート層がはじかれて凹状部を形成した化粧シートの前記基材シートの他方の面に、物品を接着してなる化粧物品。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]本願発明は、ポリエステル樹脂フィルムが「着色剤を含有」するのに対し、引用発明1は、該事項について特定されていない点。

[相違点2]本願発明は、化粧シートに接着剤を介して基板を接着積層してなる化粧板であるのに対し、引用発明1は、化粧シートに各種家具類や建築内装材等を貼着してなる化粧物品である点。

[相違点3]本願発明は、基材シートと絵柄模様層の間にポリエステル系ウレタン樹脂よりなるプライマー層を設けているのに対し、引用発明1は、該構成を有さない点。

5.判断

上記相違点について検討する。

[相違点1]について;

引用例2には、他の基材に貼合せて使用される化粧シートにおいて、絵柄層が積層されるポリエステル樹脂層が、着色されていることにより、基材の色、汚れ、傷などを隠蔽することができる事項が記載されている。
そして、引用発明1における「ポリエステル樹脂フィルム」として、引用例2記載の着色されているポリエステル樹脂を適用し、その際、ポリエステル樹脂を着色する具体的な方法として、周知慣用手段である、着色剤を含有させる手段により、相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について;

化粧シートを使用する際、化粧シートに接着剤を介して基板を接着積層して化粧板とすることは、例えば、特開平9-109333号公報(以下、「周知例1」という。)(特に、段落【0019】参照。)及び特開平9-300559号公報(以下、「周知例2」という。)(特に、段落【0022】参照。)に記載されており、周知である。
そして、引用発明1において、化粧シートに貼着する物品として上記周知の「基板」を適用して「化粧板」とし、相違点2に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点3]について;

化粧板の化粧シートにおいて、ポリエステル樹脂フィルムからなる基材シートと印刷層の間にポリエステル系ウレタン樹脂よりなるプライマー層を設けることは、例えば、周知例1に記載されており、周知の技術である。
そして、引用発明1において、基材シートと、印刷層である絵柄模様層とを積層する際、上記周知技術を適用し、相違点3に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、本願発明の効果も、引用発明1及び引用例2に記載された発明並びに周知技術から、当業者が予測し得た程度のものである。

6.むすび

したがって、本願発明は、引用発明1及び引用例2に記載された発明並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

原査定は妥当である。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-20 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願平10-309305
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 健史  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 佐野 健治
豊島 ひろみ
発明の名称 化粧板  
代理人 金山 聡  

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