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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1247521
審判番号 不服2010-16974  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-28 
確定日 2011-11-24 
事件の表示 特願2008-190265号「食い込み式管接続構造、弁、食い込み式管継手及び冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 2月 4日出願公開、特開2010- 25294号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成20年7月23日の出願であって、平成22年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成22年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がされたものである。

2.平成22年7月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】
継手本体と、継手本体に螺合されて組み付けされる結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールと、フェルールを内部に収納することができる保護部材とを備え、
前記継手本体は、結合部材を螺合する雌ねじ部が内周面に形成された雌ねじ筒部とこの雌ねじ筒部の側壁を成す基部とを有し、基部の軸心部には配管差込口が形成されるとともに配管差込口の入口部にはフェルールの先端部を押し付けるカム面が形成され、
前記結合部材は、前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が外周に形成された管接続部と、管接続部の側面に形成されたフェルールの後端部を押圧する押圧面とを有し、
前記保護部材と結合部材とは、前記保護部材が、部品としての搬送及び保管段階における前記結合部材に対して、フェルールの外表面が損傷されるのを防止するようにフェルール全体を覆った状態で、重力により離脱しないように、かつ脱着可能に装着されるように構成され、
前記継手本体及び結合部材は、前記結合部材が、前記継手本体に対して、配管接続前の段階においては前記保護部材が前記フェルールを覆うように前記結合部材に装着された状態で締結可能に構成され、さらに、配管接続時においては前記保護部材を取り外した状態で締結可能に構成されている
ことを特徴とする食い込み式管接続構造。」と補正された。

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「結合部材の継手本体側端部に対し脱着可能に構成された」「保護部材」に関連して、上記下線部記載のように限定するものであって、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用刊行物
(ア)原査定の拒絶理由において引用文献2として引用された刊行物である、特開2007-162928号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
「【0059】
(第3実施形態)
次に、図4,5を参照して、本発明にかかる管継手の蓋構造の第3実施形態について説明する。第3実施形態における管継手21は、配管の接続前においてはスリーブ33がナット32に対して一体的に設けられ、ナット32の継手本体31へのねじ込みによってスリーブ33がナット32から切断されて分離するように構成されている。第3実施形態は、このように構成された管継手21について、本発明にかかる管継手の蓋構造を適用したものである。なお、以下に説明する実施形態において、第1実施形態と同一構成についてはその重複する説明を省略又は簡略する。
【0060】
図4を参照して、本実施形態に用いる管継手21の構成を説明する。管継手21は、配管が接合される継手本体31と、継手本体31に螺合される締結部材としてのナット32と、配管の接続時に継手本体31とナット32との間に介在するスリーブ33とを備えている。スリーブ33は、図4(a)に示すように、ナット32に対して一体的に加工されており、基部33eを通じてスリーブ33とナット32とが連結されている。配管34を管継手21に接続するときは、ナット32の保持孔32bに配管34を貫通させて継手本体31の接合孔31aに配管34の先端部34aを挿入する。そして、継手本体31の雄ねじ部31bに対してナット32の雌ねじ部32aをねじ込む(図4(a))。
【0061】
ナット32をねじ込んでいくと、継手本体31のガイド面31cがスリーブ33の前端部33aと当接し、ナット32のねじ込みに伴ってその押圧力が大きくなる。これにより、スリーブ33の基部33eにおいて、ナット32のねじ込み方向に加わる剪断力が大きくなり、スリーブ33の基部33eは切断され、ナット32とスリーブ33とが分離する。
【0062】
引き続きナット32をねじ込んでいくと、継手本体31のガイド面31cがスリーブ33の前端部33aと当接し、且つナット32の内側面32cがスリーブ33の後端面33dに当接する状態となる。そして、ナット32のねじ込みに伴ってスリーブ33の後端面33dがナット32の内側面32cから押圧力を受け、スリーブ33の外周面33cが継手本体31のガイド面31cにガイドされることにより、スリーブ33の前端部33aが配管34の外周面34bに食い込んでいく(図4(b))。このようにして、管継手21は、スリーブ33の前端部33aを配管34の外周面34bに食い込ませることで、配管34を継手本体31に接合する。
【0063】
次に、管継手21に適用される管継手の蓋構造について説明する。図5は本実施形態における管継手の蓋構造の構成を示す断面図である。管継手の蓋構造は、上記の管継手21と、管継手21に対して取り外し可能に設けられる仕切り蓋22とによって構成される。仕切り蓋22は、管継手21に対して装着されたときに、管継手21の開口21aを密閉するように構成される。
【0064】
仕切り蓋22は、樹脂部材により構成されるとともに、管継手21に装着されたときに、図5に示すように継手本体31とナット32とにより挟持される。仕切り蓋22は、管継手21に装着されたときに、継手本体31の接合孔31aと嵌合する嵌合部22aを有する。仕切り蓋22は、嵌合部22aと接合孔31aとの嵌合によって、径方向における位置決めがされる。また、仕切り蓋22は、管継手21に装着されたときに、継手本体31のガイド面31cに当接する円錐状の当接面22bと、スリーブ33の基部33eの側面33fに当接する押圧面22cとを有している。仕切り蓋22の押圧面22cは、配管の接続時に切断するスリーブ33の基部33eよりも外径側の側面33fに対して当接するように構成され、仕切り蓋22の装着時に押圧面22cの押圧力によってスリーブ33がナット32から切断されないようにしている。仕切り蓋22は、当接面22bとガイド面31cとの当接、及び押圧面22cと側面33fとの当接によって、ナット32のねじ込み方向における位置決めがされる。このように、仕切り蓋22は、嵌合部22aと当接面22bと押圧面22cとにより管継手21に対して支持される。ここで、側面33fは、締結方向に対して略垂直方向に形成された締結部材の平面に相当する。
【0065】
また、仕切り蓋22の内周面22dは、図5に示すように、スリーブ33の外周面33cと接触しないように構成されている。このため、仕切り蓋22が管継手21に装着されたときに、スリーブ33を押圧しないようにすることができ、スリーブ33が変形することを防止することができる。
【0066】
仕切り蓋22を管継手21に装着するときは、まず継手本体31の接合孔31aに仕切り蓋22の嵌合部22aを嵌め込む。次いで、ナット32の雌ねじ部32aを継手本体31の雄ねじ部31bに対してねじ込んでいく。すると、スリーブ33の側面33fと仕切り蓋22の押圧面22cとが当接して、仕切り蓋22をねじ込み方向に押圧していく。そして、継手本体31のガイド面31cと仕切り蓋22の当接面22bとが当接し、仕切り蓋22が管継手21に装着される。このとき、仕切り蓋22の押圧面22cは、スリーブ33の側面33fにより押圧されるため、継手本体31のガイド面31cと仕切り蓋22の当接面22bとが密着して当接し、その当接面において気密性が保持される。これにより、管継手21の開口21aが、仕切り蓋22によって密閉される。なお、上記の仕切り蓋22の装着方法では、仕切り蓋22を継手本体31に取り付けてからナット32をねじ込むようにしているが、仕切り蓋22をナット32側に取り付けてナット32をねじ込むようにしてもよい。
【0067】
このようにして、ナット32の継手本体31へのねじ込みにより、仕切り蓋22が継手本体31とナット32とで挟持されるとともに、仕切り蓋22がスリーブ33を押圧しないように装着される管継手の蓋構造を構成することができる。
【0068】
上記第3実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)?(5)に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7)第3実施形態では、管継手21は、配管の接続前においてはスリーブ33がナット32に対して一体的に設けられ、ナット32の継手本体31へのねじ込みによってスリーブ33がナット32から切断されて分離するように構成されている。このため、スリーブ33がナット32に対して別体で構成される場合と比べて、配管を接続するまでの間にスリーブ33が紛失してしまうことを防止することができ、スリーブ33を予備部品として保管しておく必要がなくなる。また、配管を接続するときにスリーブ33を組み付けなくてもよいため、配管の接続時における作業性が向上する。こうした管継手21においても、管継手21の開口21aを確実に密閉するとともに、スリーブ33の変形を防止するような管継手の蓋構造を構成することができる。
【0069】
(8)第3実施形態では、仕切り蓋22の押圧面22cは、配管の接続時に切断するスリーブ33の基部33eよりも外径側の側面33fに対して当接するように構成され、仕切り蓋22の装着時に押圧面22cの押圧力によってスリーブ33がナット32から切断されないようにしている。このため、管継手21で配管を接続するときに、既にスリーブが分離されているといった状況を回避することができる。従って、スリーブ33をナット32に対して一体的に設けることで得ることができる上記の効果(7)を損なうことなく、仕切り蓋22を管継手21に装着することができる。」

引用例1の上記記載事項から、次のことが明らかである。
・全体的にみて、「食い込み式管接続構造」との発明について開示がある。
・継手本体31について、ナット32を螺合する雄ねじ部31bが外周面に形成されており、この部分を「雄ねじ筒部」と称することができ、この雄ねじ筒部の側壁を成す部分を「基部」と称することができる。
・ナット32について、雄ねじ部31bに螺合される雌ねじ部32aが内周に形成されており、この部分を「管接続部」と称することができる。

上記記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。
「継手本体31と、継手本体31に螺合されて組み付けされるナット32と、継手本体31とナット32との間に挟着されるスリーブ33と、スリーブ33が変形することを防止する仕切り蓋22とを備え、前記継手本体31は、ナット32を螺合する雄ねじ部31bが外周面に形成された雄ねじ筒部とこの雄ねじ筒部の側壁を成す基部とを有し、基部の軸心部には開口21aが形成されるとともに開口21aの入口部にはスリーブ33の前端部33aに当接するガイド面31cが形成され、前記ナット32は、前記雄ねじ部31bに螺合される雌ねじ部32aが内周に形成された管接続部と、管接続部の側面に形成されたスリーブ33の後端部33dに当接する内側面32cとを有し、前記継手本体31及びナット32は、前記ナット32が、前記継手本体31に対して、配管接続前の段階においては前記仕切り蓋22が前記スリーブ33を覆うように継手本体31に装着された状態で締結可能に構成され、さらに、配管接続時においては前記仕切り蓋22を取り外した状態で締結可能に構成されている食い込み式管接続構造。」

(イ)原査定の拒絶理由において引用文献1として引用された刊行物である、特開2008-69811号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
「【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る食い込み式管継手について、図面に基づき説明する。
図1は実施の形態1に係る食い込み式管継手の断面図である。本実施の形態に係る食い込み式管継手は、冷凍装置、温水装置などの冷媒配管や水配管などに使用される食い込み式管継手であって、図1に示されるように雌ねじ11の切られた結合用部材1と、雄ねじ21の切られた結合用部材2とを具備する。雌ねじ11の切られた結合用部材1は、接続すべき配管4を挿入するための段部(カウンターボア)12a付きの配管挿入孔12を備えた本体側の結合用部材である。なお、以下の説明においては、雌ねじ11の切られた結合用部材1を第1結合用部材1と称し雄ねじ21の切られた結合用部材2を第2結合用部材2と称するとともに、図1における左側を、すなわち、第2結合用部材2に一体的に形成されているフェルール3の先端側を、前側あるいは先端側とし、その反対側を後側あるいは後端側として説明する。
【0023】
第1結合用部材1は、外周に雄ねじ13aが切られた接続ポート13を前側に備え、本体部14を後側に備えている。本体部14の内部は後側に開口する略碗状の空洞部15を有する。空洞部15は、後側の開口部から前側に向けての内周面に雌ねじ11が切られている。また、空洞部15の底部を成す前側の壁部15aから軸方向の後側に向けて円筒状の壁からなる配管支持部16が形成されている。配管支持部16は空洞部15の中間部まで突出し、配管支持部16の後端にはフェルール3の先端部3aを当接させるためのカム面17が形成されている。カム面17は、図5に拡大して示すように先端側に向けて内径が小さくなる円錐状孔面に形成されている。カム面17の中心軸に対する傾斜角度αは、図6に示すフェルール3を円錐状体とするテーパ面31の中心軸に対する傾斜角度βより少し大きく形成されている。その傾斜角度αは略20度であり、また、フェルール3の傾斜角度βは略15度である。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。
・引用発明の「ナット32」が、本願補正発明の「結合部材」に相当する。同様に、「スリーブ33」が「フェルール」に、「仕切り蓋22」が「保護部材」に、「開口21a」が「配管差込口」に、それぞれ相当する。
・引用発明の「スリーブ33の前端部33aに当接するガイド面31c」は、その「当接する」が、結局のところ押し付けることを意味するので、本願補正発明の「フェルールの先端部を押し付けるカム面」といえる。また、引用発明の「スリーブ33の後端部33dに当接する内側面32c」は、その「当接する」も同様、押圧することを意味するので、本願補正発明の「フェルールの後端部を押圧する押圧面」といえる。
・本願補正発明の、継手本体の「雌ねじ」と結合部材の「雄ねじ」、引用発明の、「継手本体31」の「雄ねじ部31b」と「ナット32」の「雌ねじ部32a」は、いずれも「ねじ部」との点で概念上共通する。

すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「継手本体と、継手本体31に螺合されて組み付けされる結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールと、保護部材とを備え、前記継手本体は、結合部材を螺合するねじ部が周面に形成されたねじ筒部とこのねじ筒部の側壁を成す基部とを有し、基部の軸心部には配管差込口が形成されるとともに配管差込口の入口部にはフェルールの先端部を押し付けるカム面が形成され、前記結合部材は、前記ねじ部に螺合されるねじ部が周面に形成された管接続部と、管接続部の側面に形成されたフェルールの後端部を押圧する押圧面とを有し、前記継手本体及び結合部材は、前記結合部材が、前記継手本体に対して、配管接続前の段階においては前記保護部材が前記フェルールを覆うように締結可能に構成され、さらに、配管接続時においては前記保護部材を取り外した状態で締結可能に構成されている食い込み式管接続構造。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
(相違点)
(ア)本願補正発明は、継手本体に「結合部材を螺合する雌ねじ部が内周面に形成された雌ねじ筒部」を有し、結合部材に「雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が外周に形成された管接続部」を有するのに対して、引用発明は、雌ねじと雄ねじとの関係が逆である点。

(イ)本願補正発明は、保護部材が「フェルールを内部に収納することができる」ものであって、保護部材と結合部材との関係においては、「保護部材が、部品としての搬送及び保管段階における前記結合部材に対して、フェルールの外表面が損傷されるのを防止するようにフェルール全体を覆った状態で、重力により離脱しないように、かつ脱着可能に装着されるように構成され」ており、「継手本体及び結合部材は、前記結合部材が、前記継手本体に対して、配管接続前の段階においては前記保護部材が前記フェルールを覆うように前記結合部材に装着された状態で締結可能に構成されている」のに対して、引用発明は、仕切り蓋22が継手本体31に装着されるのであって、装着されたときには、スリーブ33が変形することを防止するとし、継手本体31及びナット32との関係において、前記ナット32が、前記継手本体31に対して、配管接続前の段階においては前記仕切り蓋22が前記スリーブ33を覆うように継手本体31に装着された状態で締結可能に構成されている点。

(4)相違点についての判断
相違点(ア)について
引用例2には、食い込み式管接続構造に関し、本願補正発明の「継手部材」に相当する「結合用部材1」に雌ねじを切り、本願補正発明の「結合部材」に相当する「結合用部材2」に雄ねじを切ったものが記載されている。
引用発明において、雌ねじと雄ねじとの関係を逆にして、本願補正発明の相違点(ア)に係る構成とすることは当業者にとって格別困難でない。

相違点(イ)について
引用例1の段落【0066】には、「上記の仕切り蓋22の装着方法では、・・・仕切り蓋22をナット32側に取り付けてナット32をねじ込むようにしてもよい。」との記載がある。この記載において、仕切り蓋22をナット32側に取り付けてナット32をねじ込むとは、予め、仕切り蓋22をナット32側に取り付けておいて、その状態のまま継手本体31にねじ込むということであるから、この場合、仕切り蓋22がナット32に取り付けられた状態でガタがあったとすれば、例えば水平にねじ込むとしても仕切り蓋22はナットに取り付けられた状態において傾斜してしまい、スムーズなねじ込みができないことは明かである。
当業者であれば、ここは、ナット32側に仕切り蓋22取付けのための嵌合部を設け、また、継手本体31側には若干の隙間を設けるように設計するのが自然である。この場合、嵌合部の嵌合度合としては、例えば、重力により離脱しない程度、かつ脱着可能な程度とすることが、その嵌合の趣旨からして通常考えられるところである。
このような構成を採用したときには、継手本体31とナット32との関係では、前記ナット32が、前記継手本体31に対して、配管接続前の段階においては仕切り蓋22がスリーブ33を覆うように前記ナット32に装着された状態で締結可能に構成され、さらに、配管接続時においては前記仕切り蓋22を取り外した状態で締結可能に構成されることになるが、これらよりさらに前の段階としての、継手本体31にナット32を締結する以前の段階において、スリーブ33が一体物として形成されたナット32に対して、仕切り蓋22を取り付けることになるが、この取付けを、継手本体31とナット32の締結直前に行わなければならない必然性もないことから、予め仕切り蓋22をナット32に取り付けておくことも格別でなく、例えば、保管、搬送の場合にもそのようにすることは困難ではない。これにより、スリーブ33を仕切り蓋22の内部に収納することができ、これを全体として1つの部品のように取り扱うことができることになる。
そうすると、引用発明において、引用例1の上記記載を参照しつつ、ナット32側に仕切り蓋22の嵌合部を設け、本願補正発明の相違点(イ)に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到ということができる。

そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び引用例1,2記載事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例1,2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成22年7月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成21年12月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載されたとおりのものであるところ、請求項1には次のとおり記載されている。
「【請求項1】
継手本体と、継手本体に螺合されて組み付けされる結合部材と、継手本体と結合部材との間に挟着されるフェルールと、結合部材の継手本体側端部に対し脱着可能に構成された、フェルールを内部に収納することができる保護部材とを備え、
前記継手本体は、結合部材を螺合する雌ねじ部が内周面に形成された雌ねじ筒部とこの雌ねじ筒部の側壁を成す基部とを有し、基部の軸心部には配管差込口が形成されるとともに配管差込口の入口部にはフェルールの先端部を押し付けるカム面が形成され、
前記結合部材は、前記雌ねじ部に螺合される雄ねじ部が外周に形成された管接続部と、管接続部の側面に形成されたフェルールの後端部を押圧する押圧面とを有するとともに、前記保護部材を取り付けたまま継手本体に螺合可能に構成され、
前記フェルールは、前記保護部材が結合部材に取り付けられている状態において保護部材の内部に収納される
ことを特徴とする食い込み式管接続構造。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び引用例1,2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-20 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-11 
出願番号 特願2008-190265(P2008-190265)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中里 翔平  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
栗山 卓也
発明の名称 食い込み式管接続構造、弁、食い込み式管継手及び冷凍装置  
代理人 福井 宏司  

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