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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1247565
審判番号 不服2010-2322  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-03 
確定日 2011-12-13 
事件の表示 特願2007-151544「画像処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成20年12月18日出願公開、特開2008-306444、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.経緯
(1)本願は、平成19年6月7日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

拒絶理由通知 :平成21年 3月 2日(起案日)
意見書 :平成21年 5月22日
手続補正 :平成21年 5月22日
拒絶理由通知《最後》 :平成21年 7月 3日(起案日)
意見書 :平成21年 9月18日
手続補正 :平成21年 9月18日
補正の却下の決定 :平成21年10月13日(起案日)
拒絶査定 :平成21年10月13日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成22年 2月 3日

(2)原査定の理由
原審での査定の理由(平成21年7月3日付け拒絶理由)は、概略、以下のとおりである。

平成21年5月22日付け手続補正書による、請求項1?6についてする「『画像処理装置』が『ホストCPU』を含むものではなくこれを外部構成とする」補正は、「『画像処理装置』が『ホストCPU』を含むものではなくこれを外部構成とする」ことが出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていないから、
平成21年5月22日付け手続補正書でした手続補正は、願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

2.補正却下の適否(当審の判断)
請求人は、審判請求書の【請求の理由】の「3.本願発明が特許されるべき理由」において、
「平成21年9月18日付け手続補正書による補正後の請求項1?6に係る発明は、平成21年3月2日起案の拒絶理由通知書(発送日:平成21年3月24日)に示された引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明し得たものではなく、特許法第29条第2項の規定に該当しない。従って、平成21年9月18日付け手続補正書による補正は、同法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものではなく、同法第53条第1項の規定による当該補正の却下は不当であり、本願は、当該補正後の内容で特許されるべきものである。」と主張している。
上記主張は、平成21年10月13日付けの補正の却下の決定について不服を申し立てているものと認められる。
したがって、平成21年10月13日付けの補正の却下の決定の適否について、以下に検討する。

《結論》
平成21年10月13日付けの補正の却下の決定を取り消す。

《理由》
(1)補正の内容
平成21年9月18日付けの手続補正は、
請求項1について、

補正前請求項1:
「【請求項1】
動画の圧縮符号化データを記憶する圧縮動画メモリと、
書き換え可能なワークメモリと、
前記ワークメモリ内の記憶エリアを各々1フレームの画像データを記憶可能な複数のフレームバッファからなるリングバッファとして使用し、前記圧縮動画メモリに記憶された動画の圧縮符号化データの復号化処理の開始を指示する復号化指令をホストCPUから受け取ったとき、前記リングバッファにおける各フレームバッファを巡回的に選択して復号結果である画像データを格納しつつ前記圧縮動画メモリに記憶された動画の圧縮符号化データの復号化処理を実行する復号化手段と、
表示装置に表示する画像データを記憶するフレームメモリと、
前記フレームメモリ内の画像データを前記表示装置に表示させる制御を行う手段であって、前記ホストCPUが前記復号化指令を前記復号化手段に与えて前記復号化処理の実行を開始させた後、任意のタイミングにおいて、前記リングバッファの各フレームバッファのうち描画対象の画像データの記憶先であるフレームバッファを指定するアドレスを含む描画指令を出力したとき、この描画指令に応じて、前記リングバッファにおける各フレームバッファのうち前記描画指令に含まれるアドレスにより指定されたフレームバッファから画像データを読み出し、この読み出した画像データを前記フレームメモリ内の画像データに反映させる描画処理を実行する表示制御手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。」
を、

補正後請求項1:
「【請求項1】
ホストCPUと、 動画の圧縮符号化データを記憶する圧縮動画メモリと、
書き換え可能なワークメモリと、
前記ワークメモリ内の記憶エリアを各々1フレームの画像データを記憶可能な複数のフレームバッファからなるリングバッファとして使用し、前記圧縮動画メモリに記憶された動画の圧縮符号化データの復号化処理の開始を指示する復号化指令を前記ホストCPUから受け取ったとき、前記リングバッファにおける各フレームバッファを巡回的に選択して復号結果である画像データを格納しつつ前記圧縮動画メモリに記憶された動画の圧縮符号化データの復号化処理を実行する復号化手段と、
表示装置に表示する画像データを記憶するフレームメモリと、
前記フレームメモリ内の画像データを前記表示装置に表示させる制御を行う手段であって、前記ホストCPUが前記復号化指令を前記復号化手段に与えて前記復号化処理の実行を開始させた後、任意のタイミングにおいて、前記リングバッファの各フレームバッファのうち描画対象の画像データの記憶先であるフレームバッファを指定するアドレスを含む描画指令を出力したとき、この描画指令に応じて、前記リングバッファにおける各フレームバッファのうち前記描画指令に含まれるアドレスにより指定されたフレームバッファから画像データを読み出し、この読み出した画像データを前記フレームメモリ内の画像データに反映させる描画処理を実行する表示制御手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。」

とするものである。

(2)補正の却下の決定の理由の概要
平成21年9月18日付けの手続補正でする請求項1についての補正は限定的減縮を目的としている。
しかし、当該補正後の請求項1?6に係る発明は、平成21年3月2日付け拒絶理由通知書にて示した引用文献1?3に基づいて、当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることはできない。
したがって、この補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第53条第1項の規定により、却下する。

(3)判断
平成21年9月18日付け手続補正書でする請求項1についての補正(以下、「本件補正」という)について検討するに、
本件補正は、平成21年05月22日付でした補正が、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、との拒絶理由通知(平成21年7月3日付け)に示す事項についてするものであり、
補正前請求項1においは「画像処理装置」が「ホストCPU」を含まないものであるところを、「画像処理装置」に「ホストCPU」を追加する補正であって、請求項1の記載を、明細書において「画像処理装置」が「ホストCPU」を含んでいうものと記載していることに対応するように補正するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第4号の「明瞭でない記載の釈明」(拒絶の理由に示す事項についてするもの)を目的とするものに該当すると認められる。
また、本件補正は、特許法第17条の2第5項第3号(出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内)、第5項第4号(補正前後の発明の単一性)にも適合することは明らかである。
したがって、上記の通り、平成21年10月13日付けの補正の却下の決定を取り消す。

なお、本件補正は、「『画像処理装置』が『ホストCPU』を含むものではなくこれを外部構成とする」補正と認められるものではあるところ、
その補正の結果、発明の詳細な説明の記載と請求項の記載が齟齬することになるから36条の記載不備があるとするのであればともかく、
この「『画像処理装置』が『ホストCPU』を含むものではなくこれを外部構成とする」ことが、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内を超える新たな技術事項を導入したものとまでは言えず、
したがって、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないとする平成21年7月3日付けの上記拒絶理由通知の理由自体も適切とはいえない。

3.原査定の適否(当審の判断)

《結論》
原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。

《理由》
原査定は、平成21年9月18日付けの上記補正が却下されることを前提に、平成21年5月22日付け手続補正書による、請求項1?6についてする「『画像処理装置』が『ホストCPU』を外部構成とする補正」が出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、とするものであるところ、
前記「2.補正却下の適否」のとおり、平成21年10月13日付けの補正の却下の決定は取り消すので、平成21年9月18日付けの手続補正により、当初明細書等についてする補正は、もはや、「『画像処理装置』が『ホストCPU』を含むものではなくこれを外部構成とする」ものではなく、「『画像処理装置』が『ホストCPU』を含むもの」となり、これが、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていることは明らかであるので、
上記原査定には、理由がない。

4.第29条第2項(容易想到性)について
平成21年3月2日付けの拒絶理由通知で通知した拒絶理由(29条第2項)についてもみておく。
また、平成21年10月13日付けの補正却下では、上記拒絶理由通知 で引用した刊行物に加えて、周知例も引用して、これらに基づく容易想到を理由に独立特許要件違反としているので、当該周知例も併せてみておく。

(1)拒絶理由の概略
本願出願の各請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記1?3の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平10-224739号公報
刊行物2:特開2007-060480号公報
刊行物3:特開2000-165816号公報

以下は、、表示制御を、全体制御を行うホストCPUと、表示制御を行う表示制御手段とで分担して行うことが周知であることを示す周知例として引用するもの
周知例1:特開2005-269578号公報
周知例2:特開平11-344974号公報

(2)本願各発明
本願各発明は、本願明細書及び図面(平成21年5月22日付け、平成21年9月18日付けの各手続補正により補正された明細書及び図面)の記載からみて、平成21年9月18日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載したとおりの下記のものと認める。

記(本願各発明)
【請求項1】
ホストCPUと、
動画の圧縮符号化データを記憶する圧縮動画メモリと、
書き換え可能なワークメモリと、
前記ワークメモリ内の記憶エリアを各々1フレームの画像データを記憶可能な複数のフレームバッファからなるリングバッファとして使用し、前記圧縮動画メモリに記憶された動画の圧縮符号化データの復号化処理の開始を指示する復号化指令を前記ホストCPUから受け取ったとき、前記リングバッファにおける各フレームバッファを巡回的に選択して復号結果である画像データを格納しつつ前記圧縮動画メモリに記憶された動画の圧縮符号化データの復号化処理を実行する復号化手段と、
表示装置に表示する画像データを記憶するフレームメモリと、
前記フレームメモリ内の画像データを前記表示装置に表示させる制御を行う手段であって、前記ホストCPUが前記復号化指令を前記復号化手段に与えて前記復号化処理の実行を開始させた後、任意のタイミングにおいて、前記リングバッファの各フレームバッファのうち描画対象の画像データの記憶先であるフレームバッファを指定するアドレスを含む描画指令を出力したとき、この描画指令に応じて、前記リングバッファにおける各フレームバッファのうち前記描画指令に含まれるアドレスにより指定されたフレームバッファから画像データを読み出し、この読み出した画像データを前記フレームメモリ内の画像データに反映させる描画処理を実行する表示制御手段と
を具備することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記復号化手段は、前記リングバッファにおいて前記描画処理を終えた画像データの記憶先であるフレームバッファを指示する描画済みフレームバッファポインタを具備し、前記ホストCPUが前記描画処理の進行に応じて出力する更新制御の指令に応じて前記描画済みフレームバッファポインタを更新し、前記描画済みフレームバッファポインタが指示するフレームバッファまでの間に復号結果の記憶先として使用可能な範囲内のフレームバッファが存在することを条件に前記復号化処理を継続することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記復号化手段は、前記ホストCPUからフレームバッファポインタ自動更新開始指令を受け取った後、前記表示装置の垂直走査に同期して、前記描画済みフレームバッファポインタの更新制御を繰り返すことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記復号化手段は、前記ホストCPUからフレームバッファポインタマニュアル更新指令を受け取る毎に、その後の前記表示装置の垂直走査に同期して、前記描画済みフレームバッファポインタの更新制御を1回実行することを特徴とする請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記復号化手段は、前記ホストCPUから前記フレームバッファポインタマニュアル更新指令に応じて描画済みフレームバッファポインタの更新を行う際の更新フレームバッファ数を指示された場合に、前記フレームバッファポインタマニュアル更新指令を受け取る毎に、その後の前記表示装置の垂直走査に同期して、前記ホストCPUから指示された更新フレームバッファ数だけ前記描画済みフレームバッファポインタの更新を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ホストCPUから複数の動画についての復号化指令および描画指令が出力される場合、前記復号化手段は、各動画に対応した複数のリングバッファを前記ワークメモリ内に構成し、各動画についての復号化指令に応じて、前記動画圧縮メモリに記憶された各動画の圧縮符号化データの復号化を各々実行し、復号化処理により得られる画像データを各動画に対応した各リングバッファに各々格納し、前記表示制御手段は、各動画についての描画指令に応じて、各動画に対応した各リングバッファから画像データを各々読み出し、読み出した各画像データを用いて前記描画処理を実行する請求項1?5のいずれか1の請求項に記載の画像処理装置。

(3)判断
(a)本願各発明(請求項1から請求項6までに係る発明)の主要構成
査定で引用された各刊行物、補正却下で挙げられた各周知例のいずれにも、本願各発明が備える下記の主要構成は記載されていない。また、これら各刊行物を組み合わせても、同主要構成を導くことはできない。

記(本願各発明が備える主要構成)
「前記フレームメモリ内の画像データを前記表示装置に表示させる制御を行う手段であって、前記ホストCPUが前記復号化指令を前記復号化手段に与えて前記復号化処理の実行を開始させた後、任意のタイミングにおいて、前記リングバッファの各フレームバッファのうち描画対象の画像データの記憶先であるフレームバッファを指定するアドレスを含む描画指令を出力したとき、この描画指令に応じて、前記リングバッファにおける各フレームバッファのうち前記描画指令に含まれるアドレスにより指定されたフレームバッファから画像データを読み出し、この読み出した画像データを前記フレームメモリ内の画像データに反映させる描画処理を実行する表示制御手段」を具備すること。

特に、表示制御手段が、前記リングバッファの各フレームバッファのうち描画対象の画像データの記憶先であるフレームバッファを指定するアドレスを含む描画指令であって、
当該描画指令に含まれるアドレスにより指定されたフレームバッファから画像データを読み出し、この読み出した画像データをフレームメモリ内の画像データに反映させる描画処理を実行するようにする描画指令、
を任意のタイミングにおいて出力する点

そして、本願各発明の上記主要構成は、「従来の技術では、動画の圧縮符号化データの復号化処理を表示装置の垂直走査に対して非同期に進めることができるが、復号結果である画像データは、復号フレームバッファ内で順番待ちをして表示装置に表示されるものであり、復号結果である画像データを表示装置に表示させるタイミングを任意に制御することが困難であるという問題があった。」(段落【0005】)という課題に鑑み採用したものと認められ、
本願各発明は、上記主要構成を採用することにより、
「ホストCPUは、復号化指令および描画指令を各々出力することにより、動画の圧縮符号化データの復号化処理と、復号結果である画像データを表示対象に反映させる描画処理とを独立して進行させることができる。その際、表示制御手段は、描画指令に応じて、リングバッファに格納された画像データを用いた描画処理を実行するので、ホストCPUは、動画を表示部に表示させるタイミングを任意に制御することができる。」(段落【0008】)
「ホストCPU1からの指令により、任意のタイミングにおいて描画処理を実行させるように」できる(段落【0016】)等の明細書記載の効果を奏するものと認められる。

以上によれば、本願各発明は、査定で引用された各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

(b)引用刊行物の記載等
各刊行物の記載について見ておく。

(b1)刊行物1:特開平10-224739号公報
請求項1,第1の実施の形態段落(【0013】?【0023】、特に図1,2,段落【0014】?【0016】,【0018】,【0019】)によれば、
刊行物1には、復号化回路の出力信号を記憶し再生信号を読み出し出力する環状記憶回路における当該記憶と読み出し出力が非同期でなされること、
制御回路4は、再生方法の制御と、環状記憶回路3から記憶状態の通知を受け、復号化回路の動作速度及び環状記憶回路3の書き込みアドレスと読み出しアドレスをそれぞれ制御すること
は、認められるものの、
上記本願各発明が備える主要構成に相当する「表示制御手段」がないことは明らかであり、また、刊行物1に同「表示制御手段」を具備するようにするに足る動機付け、示唆も認めることはできない。

(b2)刊行物2,3
刊行物2(特開2007-060480号公報)には、「映像音声ストリームから分離された映像ストリームは映像デコーダ124へ送られ、再生可能な映像信号に復号化されて一旦映像メモリバッファ128に記憶され、再生タイミングに同期したタイミングで映像出力メモリ134に送られてCRTや液晶表示デバイスなど(図示せず)の表示装置で再生される。」(段落【0033】)とされ、
その「映像出力メモリ134」は、本願各発明における「表示装置に表示する画像データを記憶するフレームメモリ」に略相当するものということができる。
また、刊行物3(特開2000-165816号公報)には、複数の動画の圧縮符号化データを時分割多重したビットストリームを受信し、時分割制御により、複数チャネルの動画の圧縮符号化データの復号化処理を並列実行する装置が記載されている(図1,段落【0017】?【0038】)。
しかしながら、いずれの刊行物にも、上記本願各発明が備える主要構成に相当する「表示制御手段」が記載されておらず、また、同「表示制御手段」を具備するように至るに足る動機付け、示唆も認めることはできない。

(b3)周知例1,2
周知例1(特開2005-269578号公報)には、表示制御に関して「デコーダ37は、限定受信LSI36のCAS60から出力されたトランスポートストリームパケットTSから映像信号及び音声信号を復元処理し、得られた映像信号を表示制御部38に出力する機能と、得られた音声信号を音声出力部39に出力する機能とをもっている。」、「表示制御部38は、デコーダ37から出力された映像信号に基づいて、図示しない表示デバイスを表示制御するものである。」(図1、段落【0044】,【0045】)なる記載はあるものの、
上記本願各発明が備える主要構成に相当する「表示制御手段」を示すものでも、同主要構成で特定される「表示制御手段とホストCPU」との関係を示すものでもない。
また、周知例2(特開平11-344974号公報)には、表示制御に関して「文字表示部40はVRAMを備え、カラオケ曲の歌詞などを文字パターンに展開する。この文字パターンは、映像信号として表示制御部41に入力される。また、カラオケ演奏時はCD-ROMチェンジャ24は背景映像を再生し、この映像信号も表示制御部41に入力される。表示制御部41は、文字パターンを背景映像にスーパーインポーズで合成してモニタ26に表示する。」(段落【0036】)なる記載はあるものの、
上記本願各発明が備える主要構成に相当する「表示制御手段」を示すものでも、同主要構成で特定される「表示制御手段とホストCPU」との関係を示すものでもない。

(c)まとめ
以上のように、刊行物1?3,周知例1,2のものは、いずれも、本願各発明のように、
表示制御手段が、前記リングバッファの各フレームバッファのうち描画対象の画像データの記憶先であるフレームバッファを指定するアドレスを含む描画指令であって、
当該描画指令に含まれるアドレスにより指定されたフレームバッファから画像データを読み出し、この読み出した画像データをフレームメモリ内の画像データに反映させる描画処理を実行するようにする描画指令、
を任意のタイミングにおいて出力する
のではなく、
本願各発明が備える上記主要構成である上記「表示制御手段」を示すものではないし、
かかる主要構成の「表示制御手段」を具備するように至るに足る動機付け、示唆も認めることはできない。

5.むすび
上記3のとおりであるから、平成21年5月22日付け手続補正書による、請求項1?6についてする補正が願書の最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない、
という原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2011-11-29 
出願番号 特願2007-151544(P2007-151544)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (H04N)
P 1 8・ 561- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 古市 徹石川 亮  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 渡邊 聡
▲徳▼田 賢二
発明の名称 画像処理装置  
代理人 松本 隆  

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