• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1247656
審判番号 不服2010-10099  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-12 
確定日 2011-11-30 
事件の表示 特願2007-207612「プログラム制御のためにユーザインタフェイス信号のイメージ分析を使用するためのシステム及び方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成20年2月28日出願公開,特開2008-43760〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成19年8月9日(パリ条約による優先権主張:平成18年8月10日,米国)に特許出願されたものであって,平成22年1月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成22年5月12日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同時に提出された手続補正書により,特許請求の範囲の補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。
その後,平成23年2月23日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年6月9日付けで回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?9に係る発明は,特許法第17条の2第5項第4号に掲げられた明りょうでない記載の釈明を目的として上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものと認める。

「プロセッサ上で実行中のプログラムを制御する方法であって,
メモリに格納されたアルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,ユーザインタフェイスから受信したイメージ信号の変化を分析し,
前記アルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,前記分析に基づきユーザの反応レベルを判定し,
前記アルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,前記判定されたユーザの反応レベルに応じて前記プログラムの動作特性を調節する,
という各ステップを含む,プロセッサ上で実行中のプログラムを制御する方法。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2002-18135号公報(以下,「引用例」という。)
には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審にて付与)。

(a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,コンピュータハードウエア資源によってゲームプログラムを実行することにより展開される所謂ビデオゲームと称せられるゲーム技術に関し,特に,ゲームを行うユーザの心理的な変化をゲームストーリー展開やゲーム画面表示等と言ったゲーム展開の態様に反映させる技術に関する。」

(b)「【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に係るゲーム装置は,ゲームプログラムを実行することによりゲームを展開するゲーム装置であり,展開されたゲームに対するユーザからの指示入力を受け付ける入力手段と,入力手段から受け付けた指示入力を与えたユーザの動作の変化を検出する検出手段と,検出手段から検出した動作の変化に応じて実行ゲームの展開の態様を変化させる制御手段と,を有している。」

(c)「【0012】また,本発明に係るゲーム装置は,ゲームプログラムを実行することによりゲームを展開するゲーム装置であり,展開されたゲームに対するユーザの身体的な変化を検出するセンサと,センサから検出した身体的変化に応じて実行ゲームの展開の態様を変化させる制御手段とを有している。
【0013】すなわち,本発明は,ゲームを行っているユーザが興奮している状態や緊張している状態などでは,当該ユーザの脈拍数,呼吸数,血圧値,発汗量,体温,視点や視線の定まり具合などが変化することを利用して,このような身体的な変化を検出し,これを実行しているゲームに反映させる。したがって,その時のユーザの心理状態,精神状態,健康状態などを反映させてゲームを動作させることができ,より深みのあるすなわちリアリティのあるゲーム空間を実現することができる。
【0014】なお,例えば,ユーザの脈拍数,血圧値,発汗量,体温はゲームを行っているユーザが触れるコントローラにこれらの値を検出する公知のセンサを設けて検出することができ,或いは,コントローラとは別にこのようなセンサを設けてゲームを行う時には当該センサにユーザが触れるように決めて検出を行うようにしてもよく,また,ユーザの呼吸数はマスク型のセンサ,視点や視線はアイカメラ式センサで検出することができる。」

(d)「【0015】上記の制御手段によってなされる実行ゲームの展開態様の変化は,その1つの方法としては,ゲームのストーリー展開を変化させることであり,…。また,上記の制御手段によってなされる実行ゲームの展開態様の変化は,その1つの方法としては,表示手段の画面に表示されるゲームの表示形態を変化させることであり,…。
【0016】また,上記の制御手段によってなされる実行ゲームの展開態様の変化は,その1つの方法としては,音響出力手段から出力されるゲーム中の出力音を変化させることであり,…。なお,本発明では,これら以外に,画像,ゲームストーリー,キャラクタの能力などのゲーム設定,出力音などのゲームを構成している要素を種々変化させることにより,ゲーム展開の態様を変えるようにしてもよい。」

(e)「【0017】また,本発明は,プロセッサやメモリなどのハードウエア資源が実行することにより上記のようなゲーム装置を構成するゲームプログラムを記憶した記憶媒体でもあり,展開されたゲームに対する指示入力を与えたユーザの動作の変化を検出し,検出されたユーザの動作の変化に応じて,実行ゲームの展開の態様を変化させる機能を有したゲームプログラムや,センサから検出された展開されたゲームに対するユーザの身体的な変化に応じて,実行ゲームの展開の態様を変化させる機能を有したゲームプログラムを格納したCDROMやメモリカートリッジなどの記憶媒体である。」

(f)「【0019】
【発明の実施の形態】本発明を,図に示す一実施形態を用いて具体的に説明する。本例のゲーム装置は図1に示すような全体構成となっている。なお,詳細についての説明は上記と同様であるので重複を避けるために割愛する。本発明に係るゲーム機を機能的な構成で説明すると,代表的な例示としては図2や図3に示すようになる。すなわち,CDROMなどの記憶媒体に記憶されたゲームプログラム10をゲーム機本体1のプロセッサ11などで実行することによりゲームを実行するゲーム実行部1が構成され,ボタン式コントローラ3,ジョイスティック式コントローラ4,マイクロホン6を備えた音声入力コントローラなどによりゲームに対するユーザからの指示入力を受け付ける入力部が構成され,テレビジョン装置2によりゲームを表示する画面を備えた表示部が構成される。
【0020】そして,ゲームを行うユーザの動作の変化或いは身体的な変化を検出する手段として,図2に示すように,ユーザのコントローラボタンの押圧速さや強さ,ジョイスティックの把持強さや操作速さ,音声指示入力の音圧などを検出するハードウエアとしてのセンサ12を入力部(コントローラ)に備えたものとしたり,或いは,図3に示すように,このような特別なハードウエアセンサを備えずに入力部から受け付けた指示入力の入力タイミング,単位時間当りの入力回数,指示入力の1回当りの継続時間,音声指示入力の波形特性などを検出するソフトウエア的なセンサ(検出部)13をゲームプログラム10をハードウエア資源が実行することにより構成したものとする。なお,ゲーム実行部1には,実行するゲームプログラムにより,実行しているゲームの展開の態様をセンサ12や検出部13から検出したユーザの動作の変化やユーザの身体的な変化に応じて変化させる機能(制御部)も構成されている。」

(g)「【0021】図4には,本発明に係るボタン式コントローラ3(入力部)の要部の断面構造を示してある。この例のコントローラ3は指示を入力するユーザが指で押下するボタン7をリターンスプリング14で付勢して設けており,このボタン7が押下されると電気接点が押圧されて,当該ボタン押下操作が指示入力としてゲーム実行部1へ電気信号として送られる。そして,このコントローラ3には押下されたボタン7によって押圧される圧力センサ12が設けられており,この圧力センサ12で指示入力を行ったユーザのボタン7を押す強さを検出し,当該押下強さがゲーム実行部1へ電気信号として送られて後述するようなゲーム展開の態様変化に用いられる。
【0022】例えば,図5に示すように,ゲーム実行部1の制御部に2つの閾値th1,th2を設定しておき,検出されたボタン押下強さPをこれら閾値th1,th2との比較で判別するようにすればよい。なお,ジョイスティック式の場合には,例えば,ジョイスティックを倒した時の操作強さを同様な圧力センサで検出すればよい。
【0023】具体的には,検出されたボタン押下強さPが閾値th1とth2との間であれば通常状態での操作,閾値th1未満であれば当該指示(例えば,イエス)に対してユーザが消極的な状態での操作,閾値th2を上回れば当該指示(例えば,イエス)に対してユーザが積極的な状態での操作と言ったように判別できるので,ゲーム中の相手キャラクタ(NPC)の誘いにユーザが操作している主人公キャラクタが同意すると言ったゲーム場面では,閾値th1未満の強さPでの指示入力(イエス)の場合には図18に示すように主人公キャラクタがうなずく動作を画面に表示し,また,閾値th1とth2との間の強さPでの指示入力(イエス)の場合には図19に示すように主人公キャラクタがスキップする動作を画面に表示し,また,閾値th2を上回る強さPでの指示入力(イエス)の場合には図20に示すように主人公キャラクタが笑顔で宙返りして見せる動作を画面に表示すると言ったように,ユーザのボタン押下強さに応じて主人公キャラクタの動作を喜びの程度が異なるものに変更し,これによって,ユーザの指示に対する積極さの程度に応じて画面表示される主人公キャラクタの動作の態様を変化させる。」

(h)「【0032】また,図13に示すように,ゲーム実行部(制御部)1が,マイクロホンから入力されたユーザの指示音声波形を捉え,当該指示音声波形のパターン(音声の抑揚)を設定された基本パターンp1と比較して,基本パターンより抑揚が大きいパターンp1であればかなり積極的な状態,基本パターンpより抑揚が小さいパターンp2あればかなり消極的な状態と言ったように判別して,この声の音調が変わると言ったユーザの心理状態や精神状態を反映して変化する動作に係る判別結果に応じてゲームの展開態様を変更する。」

(i)「【0033】上記のようにして検出されるユーザの心理状態や精神状態を反映して変化する動作や身体的変化を用いて,本発明では,ゲーム実行部(制御部)1が実行しているゲームの展開態様を例えば図18?図20に示したように変更するが,他の例としては次もようなものとすることもできる。
【0034】図14に示すように,物語仕立てのゲームプログラムなどでは,例えば画面に「さあ,これから冒険に出発しよう!」といったメッセージを表示してユーザの指示(意思)の入力を促すイベントの後に,舞台設定や登場キャラクタの能力設定などの違いによって種類の異なる幾つかのストーリー(ストーリー1,2,3)を用意しおき,このイベントに対するユーザの指示(はい)の入力操作強さPが大きいか,中位か,小さいかに応じてその後に展開するストーリーをこれらストーリー1,2,3のいずれかにする。すなわち,ユーザが同じ内容の指示(はい)をコントローラから入力した場合であっても,心理状態や精神状態などによって異なる当該入力の仕方の相違により,その後に展開するゲームストーリーが異なる。したがって,例えば,ユーザの積極性が低い時にはその後に展開するゲームの困難さを下げてユーザの能力に応じてゲームが容易にできるようにしたり,ユーザの緊張度が高い時にはその後に展開するゲームストーリーをスリリングにしてより大きな迫力を与えたりと言ったように,ストーリー展開によってゲームの面白さを向上させることができる。」

(j)「【0038】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によると,ユーザの精神状態や心理状態を加味してゲーム展開の態様を変化させるようにしたため,ユーザにゲーム仮想空間でより実体験に近い感覚でゲームを楽しませることができる。」

これらの記載事項を総合すると,引用例には以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ゲーム実行部のプロセッサ上で実行中のゲームプログラムによるゲーム展開の態様にユーザの心理状態や精神状態を反映させる方法であって,
記憶媒体に格納されたゲームプログラムが,前記プロセッサにより実行されて,ゲームに対するユーザからの指示入力を受け付ける入力部に備えたセンサから送られたユーザの動作の変化やユーザの身体的な変化を表す電気信号を閾値や基本パターンと比較し,
前記ゲームプログラムが,前記プロセッサにより実行されて,前記比較に基づきユーザの心理状態や精神状態を判別し,
前記ゲームプログラムが,前記プロセッサにより実行されて,前記判別されたユーザの心理状態や精神状態に応じて前記ゲームプログラムによるゲーム展開の態様を変化させる,
という各ステップを含む,プロセッサ上で実行中のゲームプログラムによるゲーム展開の態様にユーザの心理状態や精神状態を反映させる方法。」

4.対比
本願発明(以下,本欄において「前者」という。)と引用発明(以下,本欄において「後者」という。)とを対比すると,
・後者の「ゲーム実行部のプロセッサ」は,前者の「プロセッサ」に相当し,
・後者の「ゲームプログラム」のうち「比較」「判別」及び「ゲーム展開の態様を変化させる」という「各ステップ」以外のステップに対応する部分は,前者の「プログラム」に相当し,
・後者の「ゲームプログラムによるゲーム展開の態様にユーザの心理状態や精神状態を反映させる方法」は,前者の「プログラムを制御する方法」に相当し,
・後者の「記憶媒体」は,前者の「メモリ」に相当する。
また,「アルゴリズム」とは,「コンピューターなどで,演算手続きを指示する規則。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)であるから,
・後者の「ゲームプログラム」のうち「比較」「判別」及び「ゲームの態様を変化させる」という「各ステップ」に対応する部分は,前者の「アルゴリズム」に相当する。
さらに,
・後者の「ゲームに対するユーザからの指示入力を受け付ける入力部」は,前者の「ユーザインタフェイス」に相当し,
・後者の「送られた」ことは,前者の「受信した」ことに相当し,
・後者の「電気信号」と前者の「イメージ信号」とは,「信号」という概念において共通する。
また,後者の「電気信号」は,「ユーザの動作の変化やユーザの身体的な変化を表す」ものであるから,当該「電気信号」が変化していることは自明であり,さらに,後者の「閾値や基本パターンと比較」することは,前者の「分析」することに相当するので,
・後者の「ユーザの動作の変化やユーザの身体的な変化を表す電気信号を閾値や基本パターンと比較」することと,前者の「イメージ信号の変化を分析」することとは,「信号の変化を分析」する点において共通する。
また,
・後者の「ユーザの心理状態や精神状態」は,前者の「ユーザの反応レベル」に相当し,
・後者の「判別」することは,前者の「判定」することに相当し,
・後者の「ゲームプログラムによって展開されるゲームの態様を変化させる」ことは,前者の「プログラムの動作特性を調節する」ことに相当する。

してみると,両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「プロセッサ上で実行中のプログラムを制御する方法であって,
メモリに格納されたアルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,ユーザインタフェイスから受信した信号の変化を分析し,
前記アルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,前記分析に基づきユーザの反応レベルを判定し,
前記アルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,前記判定されたユーザの反応レベルに応じて前記プログラムの動作特性を調節する,
という各ステップを含む,プロセッサ上で実行中のプログラムを制御する方法。」

[相違点]
「信号」が,本願発明では「イメージ信号」であるのに対して,引用発明では「電気信号」である点。

5.判断
上記相違点について以下に検討する。

引用例の上記摘記事項(c)には,検出する身体的な変化として,「視点や視線の定まり具合」の変化が挙げられるとともに,その検出手段として,「アイカメラ式センサ」が記載されている。そして,アイカメラ式センサにおいて,カメラで撮影した画像信号(本願発明の「イメージ信号」に相当。)を扱うことは,一般的に行われていることである。
また,精神状態及び心理状態を計測するに当たり,瞬きの頻度や瞳孔面積の増加率を指標とするとともに,これらの指標を,CCD等を利用して画像信号として検出することも,例えば,原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である
特開2001-252265号公報(以下,「周知例」という。特に,
段落【0071】及び【0072】の記載を参照。)
に開示されるように周知である。
してみると,引用発明の「入力部が備えるセンサ」として,引用例に記載された「アイカメラ式センサ」を採用したり,上記周知な「CCD等」を採用したりして,これらのセンサで検出したイメージ信号に基づいてユーザの反応レベルを判定するようにすることにより,上記相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,本願発明の全体構成により奏される作用・効果は,引用発明と引用例に記載された技術的事項又は上記周知技術とから当業者が予測できた範囲内のものである。

したがって,本願発明は,引用発明と引用例に記載された技術的事項又は上記周知技術とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


なお,審判請求人は,回答書の【回答の内容】(3)欄に,補正案を提示したうえで,上記引用例は補正案に係る発明の特徴を開示ないし示唆するものでない旨を主張するとともに,補正の機会を設けるように求めているので,以下に転記する上記補正案の請求項1に係る発明(以下,「補正案発明」という。)について,これが特許を受けることができるものであるかを念のために検討する。

「プロセッサ上で実行中のプログラムを制御する方法であって,
メモリに格納されたアルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,ユーザのイメージを捕捉するカメラから受信したイメージ信号の変化を分析し,
前記アルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,前記分析に基づきユーザの反応レベルを判定し,
前記アルゴリズムが,前記プロセッサにより実行されて,前記判定されたユーザの反応レベルに応じて前記プログラムの動作特性を調節し,該調節が,前記分析ステップにより該イメージ信号の変化の割合が増大したことが示された際に前記プログラムの難易度を下げるものである,
という各ステップを含む,プロセッサ上で実行中のプログラムを制御する方法。 」

補正案発明と本願発明とを対比すると,補正案発明は,本願発明の「ユーザインタフェイス」を,「ユーザのイメージを捕捉するカメラ」に限定し(以下,「限定1」という。),併せて,本願発明のプログラムの動作特性の「調節」を,「分析ステップによりイメージ信号の変化の割合が増大したことが示された際にプログラムの難易度を下げるものである」に限定する(以下,「限定2」という)ものに相当する。

しかしながら,上記のとおり,引用例に「アイカメラ式センサ」を採用することが開示されるとともに,精神状態及び心理状態の計測にCCD等を利用することが周知であることからして,限定1によって補正案発明の進歩性が肯定されるものでないことは明らかである。
また,限定2では,「イメージ信号」がどのような物理量やユーザの反応を捉えたものであるのかを特定していないため,その「変化の割合が増大」したことにより「プログラムの難易度を下げる」ことの技術的意義がそもそも不明である。しかも,引用例1には,上記摘記事項(i)に開示されるように,ユーザの積極性が低いときにゲームの難易度を下げることが開示されており,また,引用発明における閾値や基本パターンと比較に基づくユーザの積極性の判別に当たり,ユーザの動作の変化やユーザの身体的な変化を表す電気信号が通常よりも急激に変化した場合(補正案発明の「信号の変化の割合が増大した」場合に相当。)にのみ,ユーザの積極性が高い又は低いと判別するようにすることは,例えば,上記周知例の段落【0072】に,「瞳孔面積の相対的な増加率」が「高く,散瞳」したときに「緊張度が高い」と判断することが開示されるように周知であり,当業者が適宜なし得た事項である。してみると,限定2によっても,補正案発明は特許を受けることができるものではない。
よって,補正案発明は特許を受けることができるものではない。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明と引用例に記載された技術的事項又は上記周知技術とに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-30 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-19 
出願番号 特願2007-207612(P2007-207612)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 574- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植野 孝郎  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 仁科 雅弘
鈴野 幹夫
発明の名称 プログラム制御のためにユーザインタフェイス信号のイメージ分析を使用するためのシステム及び方法。  
代理人 西山 清春  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 古谷 聡  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ