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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1247664
審判番号 不服2010-19454  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-27 
確定日 2011-11-30 
事件の表示 特願2003-555191「毛細管および微細溝のアレイの光ガイド照射を備えた分析装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 3日国際公開、WO03/54527、平成17年 5月19日国内公表、特表2005-514591〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年12月9日(パリ条約による優先権主張日 平成13年12月19日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成22年4月22日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年8月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は,平成21年2月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ,その請求項1は,次のとおりである。

「【請求項1】
細長い光ガイドと,
前記光ガイドを通って延在する導管のアレイと
を具備し,前記導管が泳動媒体を支持しており,前記光ガイド及びその周囲の媒体は,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記光ガイド内部で内部反射され前記導管を照射するように選択された屈折率を有し,前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する,分析物の検出のための分析セル。」(以下,「本願発明」という。)


第3 引用例およびその記載事項
本願優先日前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である実願平4-17622号(実開平5-79469号)のCD-ROM(以下,「引用例1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。 なお,以下において,下線は当審にて付与したものである。
(1-ア)
「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】少なくとも一部に透光部を有する複数の泳動管と,
前記複数の泳動管の透光部を密着状態で並列に保持しかつ前記泳動管と実質的に等しい屈折率の透光性材料からなる光透過部と,
前記光透過部を介して前記泳動管に光を照射する発光部と,
前記泳動管からの光を検出するための受光部と,
前記泳動管に電圧を印加するための電圧印加手段と,
を備えた電気泳動装置。」

(1-イ)
「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は,電気泳動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンパク質,ペプチド及びDNA等の生体高分子の高分離分析及び精製を行う際,特に構造や性質が接近した成分の分離を行う場合にキャピラリー電気泳動装置が使用される。
一般に,キャピラリー電気泳動装置は,キャピラリー(泳動管)と,キャピラリーを保持する光透過部と,光透過部に光を照射する発光部と,光透過部からの光を検出する受光部とを備えている。
【0003】
このキャピラリー電気泳動装置を使用する際には,キャピラリーに電圧が印加される。これによりキャピラリー内の試料が電気泳動し,キャピラリー内で分離される。そして,分離された試料が光透過部を通過する際にその吸光度の変化が検出される。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
近年,生体科学の発達により,使用される電気泳動装置の高性能化及び処理の高速化が要望されている。そこで,キャピラリー,発光部及び受光部からなるセットを複数セット配置したり,あるいは複数のキャピラリーを並列に配置するとともにこれらを挟むように1対の発光部及び受光部を配置することが考えられる。このような構成により,複数のキャピラリーの試料を同時に分離し迅速な分析処理が行える。
【0005】
しかし,前者の構成では,多数の発光部及び受光部が必要となり,装置が大きくなってしまう。また,後者の構成では,複数のキャピラリー及びその間の空間を発光部からの光が通過する際に,反射及び屈折により光が減少してしまう。
本考案の目的は,簡単な構成で,しかも光強度の劣化が少なく,迅速な分析処理を行うことができるようにすることにある。」

(1-ウ)
「【0007】
【作用】
本考案に係る電気泳動装置では,複数の泳動管内に試料が注入されるとともに電圧が印加される。これによって,試料は各泳動管内を電気泳動し分離される。一方,発光部からの光は光透過部を介して一端側の泳動管に入射する。一端側の泳動管を通過した光は,光透過部を介して順次隣接する泳動管を通過し,他端側の泳動管を通過する。このとき,試料による蛍光,反射光を各受光部で受光する。したがって,分析処理を短時間で行える。
【0008】
ここで,光透過部は,泳動管と実質的に等しい屈折率の透光性材料からなるとともに泳動管の透光部を密着状態で保持する。したがって,光透過部と泳動管との間で光強度が劣化することはなく,また隣接する泳動管の間に空間が存在しないのでこの部分で光強度が劣化することもない。」

(1-エ)
「【0009】
【実施例】
図1は,本考案の一実施例の概略図である。
図において,電気泳動装置1は,並列に配置された複数の泳動管(キャピラリー)2と,キャピラリー2の一部を保持する光透過部3と,光透過部3に対して光を照射する発光部4と,光透過部3からの光を検出する複数の受光部5とを備えている。
【0010】
キャピラリー2は,石英ガラス等で構成されており,その曲げ強度を増大させるために外面にポリイミド被膜がコーティングされている。キャピラリー2は細い管状の部材であり,両端が液体キャリアの収容されたリザーバ6,7内に挿入されている。そして,中間部が光透過部3に支持されている。図2に示すように,キャピラリー2の光透過部3に支持された部分は,外面にポリイミド被膜がテーティング(当審注:「テーティング」は,「コーティング」の誤記である。)されておらず,透光部2aが形成されている。
【0011】
光透過部3はセル本体10を有している。セル本体10は,複数のキャピラリー2の各透光部2aを密着状態で平行に保持している。セル本体10はキャピラリー2の透光部2aと等しい屈折率の透光性材料,たとえば,石英ガラスや紫外線透過型樹脂等で形成されている。なお,キャピラリー2の透光部2aとセル本体10とは,両者の間に空気層を含まないように高い気密状態で密着している。
【0012】
セル本体10の上面には,キャピラリー2の各透光部2aから照射された光を検出するための受光部5が配置されている。各受光部5は,キャピラリー2の上方に並列に配置されており,たとえばフォトセルから構成されている。
図1に示されるように,前記発光部4は,紫外線ランプ20と,紫外線ランプ20からの光を反射するミラー21,22とを有している。そして,反射ミラー22からの光が光透過部3のセル本体10に入射し,各キャピラリー2の透光部2aを通過する。この光は,受光部5によって検出できるようになっている。
【0013】
前記リザーバ6,7内には,それぞれ電極23が配置されている。両電極23間には,高電圧電源24及びスイッチ25が配置されている。また,一方のリザーバ6に隣接して,試料が収納された試料容器26が配置されている。
次に,上述の実施例の動作を説明する。
まず,電気泳動及び測定動作を行う前に,各キャピラリー2の一端を試料容器26内に挿入し,各キャピラリー2の一端に試料を配置する。
【0014】
各キャピラリー2の端部をリザーバ6へ戻し,スイッチ25を接続すれば,高電圧電源24によって各キャピラリー2の両端間に高電位差が生じる。この結果,各キャピラリー2内をリザーバ6側からリザーバ7側に向けて試料が移動する。試料は,各キャピラリー2内を通過する間に分離される。一方,紫外線ランプ20からの光は反射ミラー21,22によって光透過部3のセル本体10に導かれる。この光は,透光部2aを通して各キャピラリー2内に入射される。各キャピラリー2内を通過した光は,その一部が反射して受光部5に入射し,これによって通過した光の強度が測定される。
【0015】
ここで,各キャピラリー2内を通過した光は,セル本体10を介して順次隣接するキャピラリー2内を通過していく。このとき,セル本体10はキャピラリー2と等しい屈折率の透光性材料で形成されており,しかもキャピラリー2とセル本体10とは密着して境界部に空気層が存在しないので,光の屈折は抑えられ,強度の劣化を抑えることができる。」

(1-オ)
「【0016】
・・・
〔他の実施例〕
(a)前記実施例では,キャピラリーに入射した光の減衰(乱反射等による光の逃げ)を防ぐために,キャピラリーの透光部以外の外面にポリイミド等のコーティングを行ったが,セル本体の外周部に反射膜を設けても良い。反射膜は,例えば,金属蒸着膜等の全反射させる鏡面を有するものが望ましい。」

(1-カ)
【図2】には,細長いセル本体10の長手軸方向に対して,複数の泳動管2の長手軸が垂直であり,光が,前記セル本体10の長手軸方向に入射して,前記複数の泳動管2に照射される様子が記載されている。

上記摘記事項(1-ア)?(1-カ)の記載からみて,引用例1には,次の2つの発明が記載されていると認められる。

「少なくとも一部に透光部2aを有する複数の泳動管2であって,石英ガラスで構成された複数の泳動管2と,
前記複数の泳動管2の透光部2aを密着状態で並列に保持しかつ前記泳動管2と実質的に等しい屈折率の石英ガラスで形成された細長いセル本体10と,
前記セル本体10を介して前記泳動管2に光を照射する発光部4と,
前記泳動管2からの光を検出するための受光部5と,
前記泳動管2に電圧を印加するための電圧印加手段と,を備え,
前記セル本体10の長手軸方向に対して,複数の泳動管2の長手軸は垂直であり,前記発光部4からの光が,前記セル本体10の長手軸方向に入射して,前記複数の泳動管2に照射される,電気泳動装置。」(以下,「引用発明1」という。)

「少なくとも一部に透光部2aを有する複数の泳動管2であって,石英ガラスで構成された複数の泳動管2と,
前記複数の泳動管2の透光部2aを密着状態で並列に保持しかつ前記泳動管2と実質的に等しい屈折率の石英ガラスで形成された細長いセル本体10と,
前記セル本体10を介して前記泳動管2に光を照射する発光部4と,
前記泳動管2からの光を検出するための受光部5と,
前記泳動管2に電圧を印加するための電圧印加手段と,を備え,
前記セル本体10の長手軸方向に対して,複数の泳動管2の長手軸は垂直であり,前記発光部4からの光が,前記セル本体10の長手軸方向に入射して,前記複数の泳動管2に照射され,
前記セル本体10の外周部には,光を全反射させる鏡面を有する反射膜が設けられた,電気泳動装置。」(以下,「引用発明2」という。)


第4 対比・判断

1-1 引用発明1との対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

ア 引用発明1では,「前記セル本体10を介して前記泳動管2に光を照射」している。そうすると,引用発明1の「細長いセル本体10」は,光を泳動管2に導いているといえるから,本願発明の「細長い光ガイド」に相当する。
また,引用発明1の「複数の泳動管2」は,その構造および機能からみて,本願発明の「前記光ガイドを通って延在する導管のアレイ」に相当する。

イ 引用例1の摘記事項(1-ウ)における「【0007】・・・本考案に係る電気泳動装置では,複数の泳動管内に試料が注入されるとともに電圧が印加される。これによって,試料は各泳動管内を電気泳動し分離される。・・・」の記載からみて,引用発明1の「泳動管2」が,泳動媒体を支持していることは明白である。

ウ 引用発明1の「前記セル本体10の長手軸方向に対して,複数の泳動管2の長手軸は垂直であり,前記発光部4からの光が,前記セル本体10の長手軸方向に入射して,前記複数の泳動管2に照射される」点と,本願発明の「前記光ガイド及びその周囲の媒体は,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記光ガイド内部で内部反射され前記導管を照射するように選択された屈折率を有」する点とは,「前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記導管を照射する」点で共通する。

エ 引用例1の摘記事項(1-ウ)における「【0007】・・・一端側の泳動管を通過した光は,光透過部を介して順次隣接する泳動管を通過し,他端側の泳動管を通過する。このとき,試料による蛍光,反射光を各受光部で受光する。したがって,分析処理を短時間で行える。」の記載からみて,引用発明1の「電気泳動装置」は,分析物の検出のための装置であり,また,セル本体10を備えているから,本願発明の「分析物の検出のための分析セル」に相当する。

してみると,両者は,

(一致点)
「細長い光ガイドと,
前記光ガイドを通って延在する導管のアレイと
を具備し,
前記導管が泳動媒体を支持しており,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記導管を照射する,分析物の検出のための分析セル。」
の点で一致し,以下の点で一応相違する。

(相違点)前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記導管を照射する点に関し,本願発明では,「前記光ガイド及びその周囲の媒体は」,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,「前記光ガイド内部で内部反射され」前記導管を照射する「ように選択された屈折率を有し」,「前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する」のに対し,引用発明1では,そのような構成であるかが不明な点。

1-2 上記相違点について
ア 「前記光ガイド及びその周囲の媒体は」,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,「前記光ガイド内部で内部反射され」前記導管を照射する「ように選択された屈折率を有」する点について
本願明細書の段落【0027】に「・・・セル114用の適切な材料としては,たとえば,溶融石英ガラス,・・・が挙げられる。」と記載され,同段落【0031】に「・・・周囲の媒体は空気であることが好ましい。・・・」と記載され,同明細書の12頁の表1に,セルの屈折率が「1.49」であり,周囲の媒体の屈折率が「1」であることが記載され,石英ガラスの屈折率が1.49程度であることが,例えば,特開平11-314940号公報の段落【0016】に「・・・石英ガラス(屈折率1.49)・・・」と記載されているように,技術常識であることからみて,本願発明では,「前記光ガイド及びその周囲の媒体」が,石英ガラスおよび空気であることを包含し,「光ガイド」および「周囲の媒体」の「選択された屈折率」が,それぞれ,1.49程度,および,1であることを包含していることが明白である。
他方,引用発明では,「セル本体10」すなわち「光ガイド」は石英ガラスであり,セル本体10の周囲の媒体は,引用例1の段落【0011】に「・・・キャピラリー2の透光部2aとセル本体10とは,両者の間に空気層を含まないように高い気密状態で密着している。・・・」と記載され,また,【図1】および【図2】には,セル本体10が,空気以外の媒体(例えば,水等)に浸漬された様子も記載されていないことから,空気であることが明白である。
してみると,「前記光ガイド及びその周囲の媒体」,および,これらそれぞれの屈折率に関し,本願発明と,引用発明1との間に差異はない。
また,物質中に入射した光が散乱現象を生じることは,例えば,特開平10-281990号公報に「【0007】また,一般的に物質中に入射した光エネルギーは散乱現象を生ずる。散乱現象は,レ-リ-散乱,ブリリアン散乱等の弾性散乱やラマン散乱等の非弾性散乱に大別できる。・・・【0008】しかしながら,入射光の波長が短波長化するにしたがって光散乱は無視できなくなり,・・・」と記載され,引用例1の摘記事項(1-オ)に「・・・(乱反射等による光の逃げ)を防ぐ・・・」と記載されているように,技術常識であるから,引用発明において,セル本体10に入射した光がセル本体10内部で散乱現象を生じることは明白である。
さらに,光が石英ガラスから空気に向かって入射する場合のように,屈折率の大きい物質から小さい物質に光が入射する際には,光の入射角が臨界角を越えると,その界面にて全反射が生じることは,例えば,特開平10-318966号公報に「【0009】・・・屈折率の大きい物質から小さい物質に光が入射する際には,その界面での反射率が高く,臨界角を越えると全反射が生じる。・・・」と記載され,特開平7-218738号公報に「【0017】ミラ-面は,空気と石英ガラスの界面での全反射を利用し,・・・」と記載されているように,技術常識であるから,引用発明において,上記のとおり,セル本体10内部で散乱した光のうち入射角が臨界角を越える光については,セル本体10である石英ガラスと,周囲の媒体である空気との界面にて,全反射が生じることは明白である。また,当該全反射された光の一部が,泳動管2を照射することとなるのも明白である。
そうすると,引用発明では,「前記光ガイド及びその周囲の媒体は」,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,「前記光ガイド内部で内部反射され」前記導管を照射する「ように選択された屈折率を有」する構成を備えているといえる。

イ 「前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する」点について
本願明細書の段落【0022】に「・・・光源12からの光がセル14に入射するとき,光は,導管18のそれぞれを照射するために,セル14内部で内部全反射される。・・・」と記載され,同段落【0031】に「セルと周囲の媒体との間の界面における屈折率の差は,光源からセルの本体に光を閉じ込める。・・・」と記載され,請求人が,平成22年10月7日付け審判請求書手続補正書の2頁21?28行において「さらに,請求項1に係る本願発明は,光ガイドの内面が反射性であることを要件としていますが,・・・。・・・本願発明は,光ガイド及びその周囲の媒体が,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が前記光ガイド内部で内部反射され前記導管を照射するように選択された屈折率を有しており,反射膜等は必要としていません。」と主張していることからみて,本願発明における「前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する」は,光ガイドが,光ガイドと周囲の媒体との間の界面における屈折率の差により,光源からの光が全反射される面を具備すること,を包含していることが明白である。
他方,引用発明では,上記「ア」で検討のとおり,セル本体10内部で散乱した光のうち入射角が臨界角を越える光については,セル本体10である石英ガラスと,周囲の媒体である空気との界面にて,全反射が生じるのであるから,引用発明では,セル本体10(光ガイド)が,セル本体10と周囲の媒体との間の界面における屈折率の差により,光源からの光が全反射される面を具備する構成を備えていることが明白である。

1-3 まとめ
以上のとおりであるから,上記相違点は,本願発明と引用発明1との実質的な相違点であるとはいえず,本願発明は,引用例1に記載された発明である。

2-1 引用発明2との対比
本願発明と引用発明2とを対比する。

上記「1-1 引用発明1との対比 ア?エ」で検討したのと同様に,両者は,

(一致点)
「細長い光ガイドと,
前記光ガイドを通って延在する導管のアレイと
を具備し,
前記導管が泳動媒体を支持しており,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記導管を照射する,分析物の検出のための分析セル。」
の点で一致し,以下の点で一応相違する。

(相違点)前記光ガイドに入射する光源からの光が,前記導管を照射する点に関し,本願発明では,「前記光ガイド及びその周囲の媒体は」,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,「前記光ガイド内部で内部反射され」前記導管を照射する「ように選択された屈折率を有し」,「前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する」のに対し,引用発明2では,そのような構成であるかが不明な点。

2-2 上記相違点について
ア 「前記光ガイド及びその周囲の媒体は」,前記導管の長手軸と実質的に同一平面にありかつ前記導管の長手軸に対して垂直である方向において前記光ガイドに入射する光源からの光が,「前記光ガイド内部で内部反射され」前記導管を照射する「ように選択された屈折率を有」する点について
上記「1-2 上記相違点について ア」で検討のとおりである。

イ 「前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する」点について
本願明細書の段落【0025】に「・・・内面124,128,132のいずれかは,セル114に戻るように光を反射するために,鏡面であってもよく,少なくとも部分的に反射性であってもよい。面132の少なくとも一部はミラーであることが好ましい。」と記載され,【図3】において,光が,内面132に対し小さい入射角で入射する様子が記載され,臨界角よりも小さい入射角で入射する光を反射させるためには,高反射率の物質,すなわち,ミラーを設ける等する必要のあることが,例えば,特開平7-218738号公報に「【0018】なお,反射率の点では全反射を利用する方法の方が優れているが,反射面に金等の高反射率を有する金属又は誘電体多層膜を蒸着して,臨界角より小さい角度で反射させる方法も考えられる。」と記載されているように,技術常識であるから,本願発明における「前記光ガイドが少なくとも部分的に反射性である内面を具備する」は,光ガイドに少なくとも部分的に反射性であるミラーを設けること包含していることが明白である。
他方,引用発明2では,「前記セル本体10の外周部には,光を全反射させる鏡面を有する反射膜が設けられ」ているのであるから,セル本体10(光ガイド)に反射性である反射膜,すなわち,ミラーが設けられているといえる。

2-3 まとめ
以上のとおりであるから,上記相違点は,本願発明と引用発明2との実質的な相違点であるとはいえず,本願発明は,引用例1に記載された発明である。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項に係る発明について言及するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-29 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-19 
出願番号 特願2003-555191(P2003-555191)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
石川 太郎
発明の名称 毛細管および微細溝のアレイの光ガイド照射を備えた分析装置  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 石田 敬  
代理人 永坂 友康  

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