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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04Q
管理番号 1247691
審判番号 不服2009-22713  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-20 
確定日 2011-12-01 
事件の表示 特願2008-289940「RF送信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 3月 5日出願公開、特開2009- 50024〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯と本願発明
1.手続の経緯
本願は、2002年5月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年5月10日、米国)を国際出願日とする特願2002-590123号の一部を平成20年11月12日に新たな特許出願としたものであって、平成21年7月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「ある搬送周波数の搬送波を有する情報含有信号をRF送信するRF送信機と、
前記搬送波をRF送信する代りに、前記搬送周波数を指定するデータを代用する手段と、
RF送信を受けるRF受信機であって、前記代用されたデータを使用して、前記指定された搬送周波数を含む情報含有信号を再構成する手段を有する該RF受信機と、
を備え、
RF送信が、前記代用されたデータを有する情報含有信号によって振幅偏移キーイング変調される、RF送信システム。」

第2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-174712号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、赤外線リモートコントロールシステムに関し、特に、キャリア周波数を判別しコード化することで、伝送線路上にキャリア周波数の変調信号を重畳することなく伝送する赤外線リモートコントロールシステムに関する。」(第2頁第1欄第34?39行目)

ロ.「【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】図1は、本発明の赤外線リモコン信号伝送システムのブロック図である。図1に示すように、本発明システムは、赤外線受光部2、バンドパスフィルタBPF3、キャリア判別回路1、コマンド復調回路4、判別コード付加回路5、伝送周波数変調回路6、伝送周波数復調回路7、判別コード分別回路8、キャリア発生回路10、リモコン信号生成回路9、赤外線発光部11より構成される。
【0012】赤外線受光部2では、赤外線リモコン信号の電気信号化を行う。
【0013】BPF3では想定されるリモコンのキャリア周波数帯域を通過させ不要な周波数成分の信号の除去を行う。
【0014】キャリア判別回路1では、入力されたリモコン信号のキャリア周波数の判別を行う。
【0015】コマンド復調回路4ではキャリア周波数のON/OFFによって送られるコマンドデータの抽出を行う。
【0016】判別コード付加回路5では、コマンドデータに対してキャリア周波数の判別コードの付加を行う。
【0017】伝送周波数変調回路6では、判別コードが付加されたコマンドデータに対して、伝送周波数でのFM変調が行われ伝送線路への送出が行われる。
【0018】伝送周波数復調回路7では、伝送信号に対して伝送周波数によるFM復調が行われ、判別コードが付加されたコマンドデータの抽出を行う。
【0019】判別コード分別回路8では、判別コードが付加されたコマンドデータから判別コードとコマンドデータの分別を行う。
【0020】キャリア発生回路10は、判別コードから得られた周波数のキャリア出力を行う。
【0021】リモコン信号生成回路9では、コマンドデータに対してキャリア発生回路10からのキャリア出力との合成が行われる。赤外線発光部11では、光信号への変換が行われる。
【0022】図2は、赤外線リモコン信号の波形図である。赤外線リモコン信号は、キャリア信号ON/OFFにより信号形成が行われており、キャリア信号ON時がHiレベル2、OFF時がLowレベル3の信号として、リモコン信号情報が伝達されコマンドデータ化が行われる。図3はキャリア判別回路1のブロック図であり、図4はキャリア判別回路の動作を説明するためのフローチャートである。以下、図4を参照して、本発明の赤外線リモコン信号伝送システムについて説明する。
【0023】図示しない赤外線リモコンから送信側の赤外線受光部2に赤外線リモコン信号が入力されると、赤外線受光部2にて電気信号化が行われBPF3に入力される。
【0024】BPF3では想定されるリモコンのキャリア周波数帯域を通過させ不要な周波数成分の信号の除去が行われ、キャリア判別回路1及びコマンド復調回路4に入力される。キャリア判別回路1に入力されたリモコン信号は、マイクロコンピュータ199とカウンタ211に入力される。
【0025】マイクロコンピュータ19内部では、リモコン信号の入力に対してキャリアの有無の判定(ステップS1)を行い、キャリア入力が発生した時にカウンタ21へのリセット信号の解除及びタイマ31へのリセット信号の解除(図ステップS2)が行われ、カウンタ21及びタイマ31の動作が開始される。
【0026】カウンタ21は動作が開始されるとリモコン信号のキャリア信号のLOWレベルからHIレベルへの変化に伴いカウントアップを行い、動作開始からの変化の数を記録する。その後マイクロコンピュータ19は、タイマ割り込み信号の有無の判定(ステップS3)を行い、タイマ割り込みが発生した時点でカウンタ21のカウントデータを取り込み、得られたカウントデータからキャリア周波数の演算を行う(ステップS4)。
【0027】最後にキャリア周波数の演算結果からキャリア周波数の判別コードへのデータ変換を行い(ステップS5)、判別コード付加回路5に判別コードを送出する。
【0028】コマンド復調回路4ではキャリア周波数のON/OFFによって送られるコマンドデータの抽出を行い、判別コード付加回路5へコマンドデータの出力を行う。判別コード付加回路5では、コマンドデータに対してキャリア周波数の判別コードの付加を行い、伝送周波数変調回路6に出力を行う。伝送周波数変調回路6では、判別コードが付加されたコマンドデータに対して、伝送周波数でのFM変調が行われ伝送線路に送出される。
【0029】受信側では、伝送周波数復調回路7にて伝送周波数によるFM復調が行われ、判別コードが付加されたコマンドデータが抽出され、判別コード分別回路8に入力される。判別コード分別回路8では、判別コードが付加されたコマンドデータから判別コードとコマンドデータの分別を行い、コマンドデータは、リモコン信号生成回路9に出力し、判別コードについては、判別コードからキャリア周波数を判別し、キャリア発生回路10に対して判別コードから得られたキャリア周波数を発生するための設定データを送出する。リモコン信号生成回路9では、コマンドデータに対してキャリア発生回路10からのキャリア出力との合成が行われ、赤外線発光部11に送出される。赤外線発光部11では、光信号への変換が行われ、送信側にて入力された赤外線リモコン信号と同様の信号が出力される。」(第3頁第3欄第3行目?第4頁第5欄第1行目)

上記摘記事項ロ.段落【0023】-【0028】によれば、引用例のシステムにおける「送信側」は、「判別コードが付加されたコマンドデータ」に対して「FM変調」を行い、「伝送線路に送出」、すなわち「送信」している。
また、上記摘記事項イ.の「キャリア周波数を判別しコード化することで、伝送線路上にキャリア周波数の変調信号を重畳することなく」との記載、上記摘記事項ロ.段落【0027】の「キャリア周波数の判別コードへのデータ変換を行い」との記載からして、引用例のシステムにおける送信側は、「キャリア」を送出することに代えて、「判別コード」を用いていると認められる。
また、上記摘記事項ロ.段落【0029】によれば、引用例のシステムにおける「受信側」は、「判別コードから得られたキャリア周波数」を含む「リモコン信号」を「合成」して「出力」している。
また、上記摘記事項ロ.段落【0017】、【0028】によれば、引用例のシステムにおける送信側の送信は、「判別コードが付加されたコマンドデータ」によって「FM変調」が行われている。
また、引用例のシステムは、送信側を含むことからして、「送信システム」とよぶことができる。

したがって、上記の摘記事項、及びこの分野の技術常識より、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。
「判別コードが付加されたコマンドデータを送信する送信側と、
キャリアを送信する代わりに、判別コードを用いる手段と、
送信を受ける受信側であって、判別コードを使用して、判別コードから得られたキャリア周波数を含むリモコン信号を合成して出力する手段を有する受信側と、
を備え、
送信が、前記判別コードが付加されたコマンドデータによってFM変調される、送信システム。」

第3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「キャリア」、及び「キャリア周波数」は、本願発明の「搬送波」、「搬送周波数」にそれぞれ相当し、
引用発明の「コマンドデータ」は、遠隔制御を行うための情報を含んでいるから、「情報含有信号」とよべるものであり、
引用発明の「判別コード」は、搬送周波数を指定する情報であるからして、「コマンドデータ」に「判別コードが付加され」るとは、「コマンドデータ」が搬送周波数の搬送波を有するといえるものであり、
以上を総合すると、
引用発明の「判別コードが付加されたコマンドデータ」は、本願発明の「ある搬送周波数の搬送波を有する情報含有信号」に相当する。
また、引用発明の「送信」と、本願発明の「RF送信」とは、少なくとも「送信」という点で一致している。
また、引用発明の「送信側」、及び「受信側」は、システムにおける「送信機」、及び「受信機」といえる。
また、引用発明は、搬送波の代わりに判別コードを用いているが、これは「代用」といえる動作であり、
「判別コード」は搬送周波数を指定するデータであから、
引用発明の「キャリアを送信する代わりに、判別コードを送信する手段」は、本願発明の「前記搬送波を送信する代わりに、前記搬送周波数を指定するデータを代用する手段」に相当する。
また、引用発明において受信側が用いる「判別コード」は、搬送波の代わりに代用されたデータであるから、「代用されたデータ」とも言えるものである。
また、引用例の「リモコン信号」は、何らかの情報を含む信号であるから、「情報含有信号」とよべるものであり、
この信号は、搬送波周波数を含んでおり、
この搬送波周波数は、判別コードによって指定されたものであり、
リモコン信号を「合成」することは、受信側において受信されたリモコン信号を再び復元することであるから、「再構成」といえるものであり、
以上を総合すると、
引用発明の「判別コードから得られたキャリア周波数を含むリモコン信号を合成して出力する」は、「前記指定された搬送周波数を含む情報含有信号を再構成する」に相当する。
また、引用例の「判別コードが付加されたコマンドデータ」について、
「判別コード」は、搬送波周波数を指定するデータとして代用されたものであり、
「コマンドデータ」は、何らかの情報を含む信号であるから、「情報含有信号」とよべるものであり、
「判別コード」が付加される「コマンドデータ」は、「判別コード」を有するデータであるといえるものであるから、
以上を総合すると、
引用例の「判別コードが付加されたコマンドデータ」は、本願発明の「代用されたデータを有する情報含有信号」に相当する。
また、引用発明の「FM変調」と、本願発明の「振幅偏移キーイング変調」は、「変調」という点で一致する。

よって、両者は以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
「ある搬送周波数の搬送波を有する情報含有信号を送信する送信機と、
前記搬送波を送信する代わりに、前記搬送周波数を指定するデータを代用する手段と、
送信を受ける受信機であって、前記代用されたデータを使用して、前記指定された搬送周波数を含む情報含有信号を再構築する手段を有する該受信機と、
を備え、
送信が、代用されたデータを有する情報含有信号によって変調される、送信システム。」

(相違点1)
「送信」について、本願発明は「RF送信」であるのに対して、引用例は伝送線路が有線であるか無線であるか開示されておらず、引用発明は「RF送信」であるか否か明らかではない点。
(相違点2)
「送信機」及び「受信機」について、本願発明は「RF送信機」及び「RF受信機」であるのに対して、引用発明はRF信号の受信機及び送信機であるか否か明らかではない点。
(相違点3)
「変調」について、本願発明は「振幅偏移キーイング変調」であるのに対して、引用発明は「FM変調」である点。

第4.当審の判断
まず、相違点1、2について、まとめて検討する。
リモコンのデータを中継するシステムにおいて、中継のための伝送線路を無線伝送路とすること、すなわち中継をRF信号の送受信により行うことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-16668号公報(段落【0012】)、特開2000-324569号公報(段落【0016】)などに開示されているよう周知事項であるから、当該周知事項を考慮すれば、伝送線路に無線を採用し、引用発明における「送信」、「送信機」、及び「受信機」を、「RF送信」、「RF送信機」、及び「RF受信機」とすることは、当業者が容易になし得たことである。
次に、相違点3について検討する。
リモコンのデータを無線送信するシステムにおける変調方式として「振幅偏移キーイング変調」(ASK変調)は、特開平11-256900号公報(段落【0039】)、特開平7-183922号公報などに開示されているよう周知事項であるから、当該周知事項を考慮すれば、引用発明における「変調」として、「振幅偏移キーイング変調」を採用することは当業者が容易になし得たことである。
また、「変調」の方式として、「FM変調」の代わりに「振幅変位キーイング変調」を用いても良いことは、特開平11-256900号公報(段落【0039】)、特開平9-84131号公報(段落【0060】)などに開示されているよう周知事項であるから、当該周知事項を考慮すれば、この点からみても、引用発明における「FM変調」に代えて、「振幅偏移キーイング変調」を採用することは当業者が容易になし得たことである。
そして、補正後の発明が奏する効果も引用発明、及び周知事項から容易に予測出来る範囲内のものである。

第5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-04 
結審通知日 2011-07-06 
審決日 2011-07-22 
出願番号 特願2008-289940(P2008-289940)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 新川 圭二

宮田 繁仁
発明の名称 RF送信システム  
代理人 石井 たかし  
代理人 木越 力  
代理人 倉持 誠  

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