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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1247692
審判番号 不服2009-24816  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-15 
確定日 2011-12-01 
事件の表示 特願2006-122351「携帯通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月28日出願公開、特開2006-262508〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年5月6日を国際出願日として出願した特願2000-617635号の一部を平成18年4月26日に新たな特許出願としたものであって、平成21年9月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年12月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成21年8月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、
「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末であって、
少なくとも電話機能を実行するためのアプリケーションと、テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションと、を含む複数のアプリケーションプログラムを格納する登録手段と、
自己に対する呼出を判断すると、該呼出に含まれる種別情報に基づき、その種別情報に対応した前記電話機能を実行するためのアプリケーションまたは前記テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションを識別し、当該識別したアプリケーションを起動する制御手段と、
を有することを特徴とする携帯通信端末。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末であって、
少なくとも電話機能を実行するためのアプリケーションと、テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションと、を含む複数のアプリケーションプログラムを格納する登録手段と、
自己に対する呼出を判断すると、該呼出に含まれる種別情報に基づき、その種別情報に対応した前記電話機能を実行するためのアプリケーションまたは前記テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションを識別し、当該呼び出しに対しては、前記識別したアプリケーションを起動する制御手段と、
を有することを特徴とする携帯通信端末。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「前記識別したアプリケーションを起動する制御手段」の構成を、補正後の「当該呼び出しに対しては、前記識別したアプリケーションを起動する制御手段」という構成に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開平3-265349号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「1.ISDNに接続されるテレビ電話装置において、着呼時に送信される整合性情報を検出する整合性検出手段と、テレビ電話通信を行なう手段と、電話通信を行なう手段と、着呼がテレビ電話通信及び電話通信のいずれによるものであるかを表示する表示手段と、前記整合性検出手段の出力に応じて前記テレビ電話通信手段または前記電話通信手段を作動させる手段と、前記整合性検出手段の出力に応じて前記表示手段を作動させる手段とを備えたことを特徴とするISDN接続のテレビ電話装置。」
(1頁左下欄、特許請求の範囲第1項)

ロ.「ところでISDNでは着呼時に通信属性(伝達能力情報要素、低位レイヤ整合性情報要素、高位レイヤ整合性情報要素)が着信側機器に通知される。」
(2頁左上欄2?5行目)

ハ.「第1図は、本発明に係るテレビ電話装置の全体ブロック図であり、図中1は本装置の音声入力手段の一つであるハンドセット、2はハンドセット1がオンフック状態またはオフフック状態のいずれにあるかを検出するオン/オフフック検出部、3は本装置の音声入力手段の一つであるマイク、4は本装置の音声出力手段の一つであり、ダイヤルトーン、呼出音、ビジートーン、本発明に係る着信音等のトーンを出力するためのスピーカ、5はマイク3とスピーカ4とに接続され、それらを同時に使用したときに発生するエコーを消去するためのエコーキャンセラ部、6はハンドセット1及びエコーキャンセラ部5に接続され、ハンドセットl、マイク3、スピーカ4の切り換え処理及びスピーカ4へ出力するダイヤルトーン、呼出音、ビジートーン、着信音等のトーンの生成処理を行なう音声処理部、7は音声処理部6に接続され、64kPCM A-low、64kPCM μ-low、64kSB-ADPCM、32kADPCM、16kAPC-AB等の音声信号符号化及び複号化アルゴリズムに従って、送信音声信号を符号化し、受信音声信号を複号化する音声符号化復号化部、8は画像を入力するためのテレビカメラ、9はテレビカメラ8より入力された自画像、受信した相手画像、本発明に係る着呼通知画面、操作画面、通信状態、メッセージ等を表示するディスプレイ、10はテレビカメラ8及びディスプレイ9に接続され、自画像と相手画像とを画面へ分割表示を行なうための信号合成等を行なうビデオ処理部、11はビデオ処理部10に接続され、CCITT勧告H.261に従って送信画像の符号化及び受信画像の複号化を行なう画像符号化複号化部、12はキーボード、タッチパネル等の操作部、13は音声符号化複号化部7及び画像符号化複号化部11に接続され、CCITT勧告H.221に従って音声データ、画像データ及びその他のデータを多重・分離する多重化部、14は多重化部13に接続され、ISDNユーザ・網インタフェースに従って回線を制御する通信部、15は各部2,5,6,7,10,11,12,13,14に接続され、各部の状態を監視し、装置全体の制御を行なう制御部である。」
(2頁右上欄20行目?3頁左上欄1行目)

上記引用例のイ.?ハ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
引用例の「テレビ電話装置」は、テレビカメラ8、すなわち「カメラ」、及び、画像を表示するディスプレイ9、すなわち、「表示装置」を備えることが記載され、
また、着呼を監視し、着呼時に送信される「整合性情報」を検出して、テレビ電話通信及び電話通信のいずれによるものかを判別して、「電話通信を行う手段」または「テレビ電話通信を行う手段」を作動させる「制御部」を有することが記載されている。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えたテレビ電話装置であって、
着呼を監視し、着呼時に検出された整合性情報に基づき、その整合性情報に対応した電話通信を行う手段またはテレビ電話通信を行う手段を作動させる制御手段と、
を有するテレビ電話装置。」

B.例えば特開平6-141089号公報(以下、「周知例1」という。)又は特開平11-33002号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例1)
ニ.「【0027】次に、本装置の操作方法について、図1、図4、図11、図17、図18及び図19を用いて説明する。なお、図17は蓋体7を反転させた状態の斜視図、図18は図17の状態より入力部3を引出した状態の斜視図、図19は図18の状態より蓋体7を起こしてテレビ電話機能を使用した状態を示す説明図である。
【0028】先ず、図4の収納状態(閉状態)において、本体2の左側面に設けた電源スイッチ42を操作することにより、携帯型情報通信装置1を起動し、相手方からの通信の待機状態とする。次に、収納状態から、カメラ部8のロックスイッチ44を押してから蓋体7を開いて、図11に示す使用状態(開状態)にする。この状態において、フアンクションキー35のうち電源キーを操作することにより、タブレット12に操作メニューを表示させることができる。操作メニューには、テレビ電話機能、電話機能、文書作成機能、作表・作図・データベース等の各種ソフトが表示される。この操作メニューの選択は入力ペン収納部36に納めた入力ペンでタブレット画面を触れることにより選択される。ここで、本実施例では、タブレット12とディスプレイ部5に表示された操作画面での選択や入力を入力ペンで行うようにしている。もちろん、手で触れることにより行うようにしてもよい。
【0029】さて、本実施例をテレビ電話機能として使用する場合は、入力部3を手前に引出して図1の状態とする。そして、タブレット12に表示された操作メニューの中から、テレビ電話機を選択する。この選択により、ディスプレイ部5とカメラ部8がON状態となる。タブレット12にはテンキーと電話帳リストが表示される。テンキーで相手先電話番号を入力すると、相手先電話番号がディスプレイ部5に表示される。また、本実施例ではROM96又はRAM97(フロッピーディスクから読み込まれたもの)に格納された電話帳リストから相手先電話番号を検索して電話をかけることもできる。この場合は、電話帳リスト表示をタブレット12で選択して、ディスプレイ部5上に表示された電話番号うちから相手先電話番号を入力ペンで選択する。選択した後、フアンクションキー35の送信/受信キーを操作することにより、通話することができる。この際、カメラ8aは蓋体7に回転可能で着脱自在に取り付けられているので、カメラ8aの方向や角度を調整できるとともに、カメラ8aを取り外して使用することもできる。また、音声は、テレビ会議の場合には、通常、本体2のマイク49でとらえられ、スピーカー37で再生されるが、ハンドセット4の電源キー16aの操作で、ハンドセット4を介して行うこともでき、人に聞かれたくない場合に使うと便利である。終了はフアンクションキー35のうちの終了キーの操作で行われ、携帯型情報通信装置1が待機状態となる。なお、音声のみの電話機能をタブレットを選択した場合は、テレビ電話機能と略同じ操作で行うことができる。」
(5頁8欄?6頁9欄、段落【0027】?【0029】)

(周知例2)
ホ.「【課題】 介護者及び被介護者にかかる負荷を軽減できるとともに、効率よく適切な介護を行うことのできる介護システム及び介護機器を提供する。
【解決手段】 この介護システムでは、介護情報通信システム1が介護ベッド3又は介護用移動車2に設けられており、介護情報通信システム1が被介護者の健康状況をモニタリングし、外部との通信を可能にする。したがって、介護者又は被介護者は、医療機関等と通信をすることができ、更に、被介護者の健康状況を医療機関等に伝えることもできる。また、介護情報通信システム1が緊急連絡指示を受け付け、メモリに保持された緊急の連絡先に通信を行う。したがって、被介護者又は介護者が緊急時に迅速に通信を行うことができる。そして、この介護情報通信システム1は、介護ベッド3又は介護用移動車に、取り付け取外し可能且つ携帯可能であり、被介護者の移動にあわせて、介護ベッド3又は介護用移動車に対して容易に取り付け或いは取外しを行うことができる。」
(1頁左下欄、【要約】)

ヘ.「【0074】次に、介護情報通信システムについて詳細に説明する。介護情報通信システム1は、図4に示すように、前面に、ビデオ映写用のアパ-チャ(開口部)10と、ラジオ/オ-ディオキー11と、テレビキー12と、テレビ/電話キー13と、ファックスキー14と、パソコン通信キー32と、ビデオキー34と、介護情報キー26と、数値及び記号入力用のテンキ-24と、デ-タの選択入力の為の方向キー23と、選択キー21と、入力キー22と、停止キー15と、再生キー16と、録音/録画キー17と、巻き戻し/早送りキー18と、チュ-ニングキー19と、音量キー20と、電源キー31と、介護ベッド3又は介護用移動車2の操作を介護情報通信システム1の画面から実施する際の切り替えキ-28と、緊急情報の提示を指定するキー29と、緊急通報を行うための緊急通報キー30と、予備の機能を割り当てるための予備機能キ-35と、表示装置27と、マイクロフォン33と、スピ-カ25と、を備えている。
【0075】(・・・中略・・・)
【0076】また、介護情報通信システム1の内部構成は、図6に示すように、無線通信波による送受信を行う電波受・発信装置59と、有線回線による音声、画像、及び文字デ-タの送受信を行うモデム60と、受信したデータのノイズを除去するノイズ除去部53と、音声データの増幅を行うアンプ62と、放送波に対する受信バンドを調節するチュ-ナ部54と、画像、音声及び文字デ-タの圧縮・解凍を行うデータ圧縮解凍部55と、音声を出力するスピ-カ部25と、情報の表示を行う表示装置27と、外部より音声を取り込むマイクロフォン33と、外部より画像を取り込むビデオ光学系58と、ソフトウエアや、種々のデータを保持する主記憶装置57と、内部にタイマ-63を有し、図7に示す各機能部を統括制御するコントロ-ラ56と、を備えている。」
(14頁25?26欄、段落【0074】?【0076】)

ト.「【0080】以下、モード毎に処理を説明する。テレビ/電話モ-ドでは、図33に示すように、コントローラ56が主記憶装置57に保持された図62に示す画面を表示装置27に表示させ、通常のテレビ電話又はインターネット電話の選択を受け付ける。そして、コントローラ56は、選択に応じて図34に示すテレビ電話処理又はインターネット電話処理を行う。テレビ電話処理及びインタ-ネット電話処理では、コントローラ56は介護者又は被介護者からテンキ-24による相手先電話番号の入力を受け付け、又は、予め主記憶装置57に保持されている相手先電話番号及び短縮ダイアルリストを表示させ、この中から方向キ-23、選択キー21、入力キ-22(以下、これらキーをまとめて選択指定キーという。)による選択入力を受け付ける。そして、コントローラ56が予め主記憶装置57にインスト-ルしておいた既存のテレビ電話ソフト及びインタ-ネット電話ソフトを実行して、前記入力された或いは選択された相手先へ回線を接続して対話を可能にする。すなわち、アパーチャ10を通してビデオ光学系58に撮影された画像及びマイクロフォン33から取り込まれた音声が相手先に送られるとともに、相手先から送られる画像が表示装置27に表示され、音声がスピーカ25によって出力され対話が可能になる。
【0081】ここで、インタ-ネット電話処理においては、最初にネットワ-ク接続処理が行われるが、このネットワーク接続処理においては、図36に示すように、主記憶装置57にプロバイダ-から支給されたユ-ザ-識別番号、暗証番号及びサ-ビスポイントの電話番号等を保持させておくことにより、コントロ-ラ56がこれら情報を使って、インタ-ネット電話ソフトを実行するので、介護者又は被介護者がいちいちそれ等を思い出して入力する必要はない。そして、対話が終了したことにより、停止キ-15が押下されると、コントローラ56が、各々のソフトを実行することにより、回線を切断して、当該モ-ドも終了して図60に示す初期画面を表示させる。なお、上記した図62に示す画面において、更にテレピ/電話のキ-が押下され、又は、そのままテレビ電話処理が実行されると、デフォルトでは通常の電話の接続が行われる。また、テレビ電話処理及びインタ-ネット電話処理を実行させるソフトウエアはそれぞれ独立したソフトとなっている。なお、接続する回線は、無線回線であっても有線回線であっても構わない。」
(15頁27?28欄、段落【0080】?【0081】)

上記周知例1、2に開示されているように、
「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末であって、電話機能を実行するためのアプリケーションと、テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションと、を含む複数のアプリケーションプログラムを備えた携帯通信端末」
は周知である。

(3)対比
引用発明の「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えたテレビ電話装置」と補正後の発明の「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末」とは、両者とも「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えた通信端末」であるという点で一致している。
また、引用発明の、「着呼を監視」については、監視する「着呼」は自己に対する呼出であるから、補正後の発明の「自己に対する呼出を判断」することに相当する。
また、引用発明の「整合性情報」は、着呼時に検出されており「呼出に含まれる」ものであり、そして、その「整合性情報」に基づき、着呼がテレビ電話通信であるか音声電話通信であるか、すなわち、通信の種別を検出しており、補正後の発明の「種別情報」に相当する。
また、引用発明の「電話通信を行う手段またはテレビ電話通信を行う手段を作動させる」構成と補正後の発明の「前記電話機能を実行するためのアプリケーションまたは前記テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションを識別し」、「当該識別したアプリケーションを起動する」構成とは、補正後の発明でいう「アプリケーション」がコンピュータを用いた機能実現手段であることを考慮すると、両者は「電話機能を実行する手段またはテレビ電話機能を実行する手段を起動する」点で一致している。

したがって、補正後の発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えた通信端末であって、
自己に対する呼出を判断すると、該呼出に含まれる種別情報に基づき、その種別情報に対応した電話機能を実行する手段またはテレビ電話機能を実行する手段を起動する制御手段と、
を有する通信端末。」

(相違点1)「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えた通信端末」に関し、補正後の発明は「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末」であるのに対し、引用発明は「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えたテレビ電話装置」である点。

(相違点2)補正後の発明では「少なくとも電話機能を実行するためのアプリケーションと、テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションと、を含む複数のアプリケーションプログラムを格納する登録手段」を有しているのに対し、引用発明ではそのような登録手段を有していない点。

(相違点3)「種別情報に対応した電話機能を実行する手段またはテレビ電話機能を実行する手段を起動する」に関し、補正後の発明は「前記電話機能を実行するためのアプリケーションまたは前記テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションを識別し」、「当該識別したアプリケーションを起動する」のに対し、引用発明は「電話通信を行う手段またはテレビ電話通信を行う手段を作動させる」である点。

(4)判断
そこで、まず、上記相違点1について検討する。
上記「(2)引用発明及び周知技術」のB.の上記周知例1、2に開示されているように「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末であって、少なくとも電話機能を実行するためのアプリケーションと、テレビ電話機能を実行するためのアプリケーションと、を含む複数のアプリケーションプログラムを備えた携帯通信端末」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、当該周知技術に基づいて、引用発明の「カメラ及び画像を表示する表示手段を備えたテレビ電話装置」を補正後の発明のような「カメラ及び画像を表示する表示手段が一体化された携帯通信端末」とする程度のことは当業者であれば適宜為し得ることである。
次に、上記相違点3について検討する。
上記相違点1において検討したとおり、引用発明に上記周知技術を適用する上での阻害要因は何ら見あたらず、そして、「アプリケーション」は、コンピュータを用いた機能実現手段であることは技術常識であるから、当業者であれば、引用発明に上記周知技術を適用して、「電話通信を行う手段」、「テレビ電話通信を行う手段」のそれぞれの機能を「電話機能を実行するためのアプリケーション」、「テレビ電話機能を実行するためのアプリケーション」により実現させることを容易に想到するものである。ここで、アプリケーションが複数あれば、識別して起動させることは自明のことにすぎない。
そのようにすれば、種別情報に対応した「電話機能を実行するためのアプリケーション」または「テレビ電話機能を実行するためのアプリケーション」を識別し、呼び出しに対して、前記識別したアプリケーションを起動する構成となるものである。

最後に上記相違点2について検討する。
「アプリケーション」を構成する「アプリケーションプログラム」がメモリに格納されて実装されるものであることは当業者には自明な事項であるから、前記周知技術ないしは前記自明な事項に基づいて、「電話機能を実行するためのアプリケーション」と、「テレビ電話機能を実行するためのアプリケーション」の「複数のアプリケーションプログラム」を、メモリに相当する「登録手段」を設けて格納することは当業者が容易に為し得ることである。

上記のとおり各相違点は格別なものでなく、そして、補正後の発明の作用効果も引用発明及び周知技術ないしは自明な事項から当業者が予測し得る範囲のものである。

したがって、補正後の発明は上記引用発明及び周知技術ないしは自明な事項に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術ないしは自明な事項に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術ないしは自明な事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-29 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-17 
出願番号 特願2006-122351(P2006-122351)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志土谷 慎吾松元 伸次  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 新川 圭二
神谷 健一
発明の名称 携帯通信端末  
代理人 志賀 正武  

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