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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01T
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T
管理番号 1247746
審判番号 不服2010-10885  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-21 
確定日 2011-12-02 
事件の表示 特願2003-512732「公開され且つ柔軟なソフトウェアアーキテクチャを備える核放射線カメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月23日国際公開、WO03/07017、平成17年 1月13日国内公表、特表2005-501232〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年7月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年7月13日、US)を国際出願日とする出願であって、平成20年7月15日付けで拒絶理由が通知され、平成21年1月16日付けで手続補正(以下、「本件補正1」という。)がなされ、同年6月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月18日付けで手続補正(以下、「本件補正2」という。)がなされたが、平成22年1月15日付けで補正却下の決定がなされ、同日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けにて手続補正(以下、「本件補正3」という。)がなされたものである。
さらに、同年8月30日付けで審尋がなされ、回答書が平成23年2月25日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正2についての補正の却下の適否について
出願人は審判請求書において「 (e)平成22年1月15日付け補正の却下の決定に関して
この補正の却下の決定において周知技術として引用された特開平11-306464号公報の段落[0024]?[0029]には、本願発明におけるように、xmlフォーマットの制御データを用いて、xml言語とは異なるスクリプト言語で書かれたスクリプトを実行することにより前記検出器を制御するような技術は開示も示唆もされていない。従って、平成22年1月15日付け補正の却下の決定は取り消されるべきものである。」と主張しているので、本件補正2の適否について判断する。

1 本件補正2にる補正後の本願発明
本件補正2により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 放射性核種イベントデータを収集する検出器と、
前記イベントデータを処理して画像データを生成する画像データ生成部と、
制御データをxmlフォーマットで記憶する記憶媒体と、 前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いるスクリプトを実行することにより前記検出器を制御して前記イベントデータを収集させる一方、これにより前記画像データ生成部から得られる前記画像データをxmlフォーマットで前記記憶媒体に記憶するプロセッサと、 前記記憶媒体に記憶されたxmlフォーマットの前記画像データ及び制御データにユーザがアクセスするのを可能にするユーザインターフェースと、を有する核放射線カメラシステム。」
から
「【請求項1】 放射性核種イベントデータを収集する検出器と、
前記イベントデータを処理して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む制御データをxmlフォーマットで記憶する記憶媒体と、
スクリプト言語で書かれたスクリプトを、前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いて実行することにより前記検出器を制御して前記イベントデータを収集させる一方、これにより前記画像データ生成部から得られる前記画像データをxmlフォーマットで前記記憶媒体に記憶するプロセッサと、
前記記憶媒体に記憶されたxmlフォーマットの前記画像データ及び制御データにユーザがアクセスするのを可能にするユーザインターフェースと、
を有する核放射線カメラシステム。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正2は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「制御データ」を「前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む制御データ」として、制御データの内容を限定し、「前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いるスクリプトを実行する」を「スクリプト言語で書かれたスクリプトを、前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いて実行する」として、スクリプトの内容について限定すると共に、文章を整える補正を含むものである。
したがって、本件補正2は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明2」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項(下線は当審で付与した。)
(1)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-194836号公報(以下「刊行物1」という。)には、「医用情報取扱方法および装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。

(1-ア) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、医用情報取扱方法および装置に関し、特に、医用情報をハイパーテキスト・マークアップランゲージ(HTML:Hyper Text Markup Language)形式のドキュメント(document)にして取り扱う医用情報取扱方法および装置に関する。」

(1-イ) 「【0004】【発明が解決しようとする課題】上記のネットワークでは、医用画像撮像装置への患者情報の入力や撮像条件の設定等は、撮像に使用する医用画像撮像装置の設置場所でしか行えず、通信回線を通じて他の端末装置等から行うことはできないという問題があった。
【0005】本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、ネットワークにおける医用画像撮像装置に他の端末装置から条件付けすることが可能な医用情報取扱方法および装置を実現することである。」

(1-ウ) 「【0010】【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。図1に、医用画像ネットワークシステム(network system)の概念図を示す。本システムは本発明の医用情報取扱装置の実施の形態の一例である。本システムの構成によって、本発明の装置についての実施の形態の一例が示される。本システムの動作によって、本発明の方法についての実施の形態の一例が示される。」

(1-エ) 「【0016】・・・図2(図3は図2の誤記と認定した。)に、医用画像撮像装置の具体例である超音波撮像装置のブロック図を示す。なお、医用画像撮像装置は超音波撮像装置に限るものではなく、例えば、X線CT(computed tomography)装置、磁気共鳴撮像装置、ディジタル(digital)X線撮影装置等、各種の医用画像撮像装置であって良い。以下、超音波撮像装置の例で説明するが、他の医用画像撮像装置の場合も同様になる。以下、端末装置34を超音波撮像装置34という。
【0017】図4(図2は図4の誤記と認定した。)に示すように、超音波撮像装置は超音波プローブ342を有する。超音波プローブ342は、撮像対象である被検体4に当接して使用される。超音波プローブ342は送受信部346に接続され、送受信部346から与えられる駆動信号に基づいて被検体4内に超音波を送波するとともにそのエコーを受波し、エコー受波信号を送受信部346に入力する。送受信部346は、超音波プローブ342から入力されたエコー受波信号につきビームフォーミング(beamforming)等の所定の処理を施してエコー受信信号を形成する。
【0018】送受信部346はデータ処理部348に接続されている。データ処理部348は例えばコンピュータ等で構成される。データ処理部348は、送受信部346からエコー受信信号を入力し、それに基づいて画像を生成する。データ処理部348には表示部350が接続され、データ処理部348から出力された画像およその他の情報を表示するようになっている。表示部350は例えばグラフィックディスプレー等で構成され、例えば図4に示すようなBモード(mode)像等を表示する。
【0019】データ処理部348には通信部352が接続され、データ処理部348が生成した画像等を含むドキュメントが、通信部352を通じて端末装置32に通信可能になっている。通信部352はHTTPおよびCGI(Common Gateway Interface)対応のものとなっている。」

(1-オ)「【0024】図6に、本システムを別な観点から見たブロック図を示す。図6において、図1ないし図4(図3は図4の誤記と認定した。)に示したものと同様な部分は同一の符号を付して説明を省略する。同図に示すように、超音波撮像装置34はメモリ500を有する。メモリ500は例えばHDD(hard disk drive)等で構成される。メモリ50には患者情報が記憶される。また、イメージ(image)生成部502で生成された画像(イメージ)、計測データ生成部504で生成された計測データ、および、計算レポート(report)生成部506で生成された計算レポートが記憶される。なお、イメージ生成部502、計測データ生成部504およびレポート生成部506は、データ処理部348における各機能をブロック図で示したものである。
【0025】メモリ500に記憶された患者情報、イメージ、計測データおよび計算レポート等は、HTML生成部508によりHTML形式のドキュメント(document)に変換される。HTML生成部508は、データ処理部348の機能をブロック図で示したものである。HTML生成部508は、例えば市販のソフトウェアであるHTMLコンバータ(converter)等を利用して実現される。生成されたHTMLドキュメントは、あらためてメモリ500に記憶され、また、必要に応じて外部入出力部358によりMO等の記憶媒体に記憶される。
【0026】HTML生成部508により、文字や数字の情報がHTMLテキストに変換され、イメージが例えばJPEG(Joint Photograph Experts Group)等の汎用画像フォーマット(format)画像に変換され、かつ、それらを結合したHTMLドキュメントが生成される。このようなHTMLドキュメントは、HTMLエディタ(editor)等を使用し、操作者が自らキーボードを操作して作成するようにしても良いのはもちろんである。
【0027】HTMLドキュメントは、別々なドキュメント同士を結びつけるハイパーリンクタグ(hyper link tag)<A HREF>や、イメージ組み込みタグ(tag)<IMG>およびその他の各種のタグを使用することにより、文章、数値、イメージ等を自在な形態で組み合わせたドキュメントセット(document set)とすることができる。したがって、撮像したイメージを患者情報、計測データ、計算レポート等のテキストと組み合わせ、一体のドキュメントとして取り扱うことがきわめて容易になる。
【0028】このようなHTMLドキュメントは、WWWの汎用ブラウザにより、PCやEWS等通常のデータ処理装置で閲覧することが可能である。したがって、外部入出力部358で書き込みを行った媒体を端末装置32の外部入出力部328で読み取ることにより、超音波撮像装置34が作成したHTMLドキュメントを端末装置32で利用することができるようになる。また、本システムに属さないPCやEWS等でも利用できることはいうまでもない。
【0029】また、HTMLドキュメントは、媒体渡しばかりでなく、通信回線30を通じて流通させることができる。すなわち、通信部328,352はいずれもHTTP対応のものとなっており、端末装置32から通信回線を通じて超音波撮像装置34にアクセス(access)することができる。超音波撮像装置34側ではHTTP/CGI解釈部510が応答し、該当するHTMLドキュメントをメモリ500から読み出して端末装置32に伝送する。なお、HTTP/CGI解釈部510は、データ処理部348の機能をブロック図で示したものである。
【0030】超音波撮像装置34が作成したHTMLドキュメントでは、タグ<FORM>が使用されており、これによって、端末装置32側の利用者がHTMLドキュメントに情報入力を行うことができるようになっている。また、超音波撮像装置34側ではHTTP/CGI解釈部510がCGIアプリケーション(application)実行機能を有し、HTMLドキュメントに入力された情報を解釈して、条件設定部512に入力情報を伝え、撮像条件等を入力情報に基づいて設定する。なお、条件設定部512は、データ処理部348の機能をブロック図で示したものである。
【0031】図7に、HTMLドキュメントを端末装置32の表示部324に表示したときの、タグ<FORM>で実現される情報入力画面の一例を示す。同図に示すように、情報入力画面には例えば入力欄702および選択欄704が含まれる。なお、これらの欄への符号付けはそれぞれ1箇所で代表する。入力欄702は患者の氏名、年令、ID(identification)等をそれぞれ入力する欄である。選択欄704は患者の性別を選択的に入力する欄である。
【0032】情報入力画面には、また、GUI(Graphic User Interface)で構成される送信ボタン(button)706および中止ボタン708が含まれる。これらはそれぞれ入力情報を超音波撮像装置34に送信するときに操作するボタンおよび入力を中止するときに操作するボタンである。
【0033】各入力欄および選択欄に所要の情報を入力し送信ボタン706をマウス等でクリック(click)すると、入力情報が超音波撮像装置34に送信される。超音波撮像装置34側ではHTTP/CGI解釈部510が入力情報を解釈し、条件設定部512が入力情報に応じた内部情報の設定を行う。このようにして、医師等が執務室に居ながらにして撮像予定の患者に関する情報をスキャンルームの超音波撮像装置34に遠隔設定する。
【0034】情報入力画面は患者情報ばかりでなく、超音波撮像装置34の撮像条件等を入力するための画面が用意され、それを通じて上記と同様に撮像条件等を端末装置32側から超音波撮像装置34に遠隔設定できるようになっている。」

上記(1-ア)?(1-オ)の記載と図1、2を参照すると、上記刊行物1には、 次の発明が記載されていると認められる。

「超音波プローブ342と、
エコー受信信号に基づいて画像を生成するイメージ生成部502と、
HTML形式のドキュメントを記憶するメモリ500と
HTML形式のドキュメントに入力された情報を解釈して、撮像条件等を設定し、撮像させ、HTML生成部508からのイメージを含むHTML形式のドキュメントを、メモリ500に記憶するデータ処理部348と、
端末装置32から超音波撮像装置34のHTML形式のドキュメントにアクセスすることができる通信部352と、
を備えた医用情報取扱装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5261406号明細書(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(2-ア) 「The detection heads 18 and 20 detect the gamma rays emitted from the body 12 and convert the gamma rays into a stream of photons which are detected and transmitted to the scintillation camera processor 22 along signal lines 24 and 26.」(第3欄64?68行)
当審訳:「検出器18、20は、人体12から放出されるガンマ線を検出し、各ガンマ線をそれぞれ光に変換し、信号線24、26を通してシンチレイションカメラ装置22に伝送します。」

(2-イ) 「Referring now to FIG.4,the generalized program flow 54 of the method in accordance with the present invention is shown.」(第5欄8?10行)
当審訳:「今から、本発明の方法の一般化したプログラムフロー54が示された図4に言及しよう。」

(3)本願優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された「Cun Wang et.al, "Potential Use of Extensible Markup Language for Radiology Reporting: A Tutorial" Radiographics (2000) Vol.20,p.287-293」(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(3-ア) 「Despite its simplicity and ubiquity,HTML has several limitations.・・・ In this article,we introduce the general features of XML,describe the use of XML for radiology report information,・・・」(288頁左欄23?45行)
当審訳:「簡素で、広く使われているが、HTMLにはいくつかの制約があります。・・・この論文ではXMLの一般的な特徴を紹介し、放射線医学における報告の情報として用いることの有用性を記載し、・・・。」

(4)本願優先日前に頒布された特開平11-306464号公報(以下「刊行物4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(4-ア) 「【0024】Step 1:管理センターサーバーにおいて、リモコン10で表示・実行させるためのスクリプトを入力する。ここでのスクリプトには、単なる文字情報だけでなく、情報表示や設備機器制御に関する様々な情報が盛り込まれる。具体的な内容を以下に列挙する。【0025】・リモコン上で表示する文字やグラフィック
・文字やグラフィックの表示属性(大きさ、色、点滅、反転、階調設定、強調など)
・文字やグラフィックの表示方法(表示回数設定、表示時間設定、ワイプ、スライド、ズーム、フェードイン/アウト など)
・分岐命令、繰り返し命令(ユーザの操作(情報操作ボタン25の操作)などにより、表示や動作を変える)
・通信により管理センターとの情報の送受信を行う命令
・機器制御を行う命令上のワイプやスライドは、表示した文字を画面に対して移動させてみせるような表示効果を示す。具体的には、インターネットなどで利用されているHTMLやXML(eXtensible Markup Language) 、SGML(Standard GeneralizedMarkup Language)などの構造化された汎用性の高い言語を用いる。このような言語を用いることにより、様々な表示能力(液晶ディスプレイの大きさや色数)や、様々な操作ボタンの種類を持つリモコンに対応できるとともに、様々な表示方法や分岐などの構造を表現することができる。これらの情報は1つのファイルとして管理される。
【0028】Step 2:上のステップで入力された情報は、HTML、XML、SGMLなどのスクリプト言語を用いているため、テキストベースで表示命令、制御命令が記載されている。このため、作成者にとっては可読性が高く、わかりやすい文書となっているが、反面、容量が大きく、表示させるためには、構文解析や字句解析などを行う高機能なインタープリタが必要となる。」

3 対比・判断
(1) 補正発明2と引用発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「イメージ生成部502」、「データ処理部348」および「通信部352」は、それぞれ補正発明2の「画像データ生成部」、「プロセッサ」および「ユーザインターフェース」に相当することは明らかである。

(2) 「超音波プローブ342」は「医用データを収集する検出器」であるから、引用発明の「超音波プローブ342と」「を備えた医用情報取扱装置」と、補正発明2の「放射性核種イベントデータを収集する検出器と」「を有する核放射線カメラシステム」とは、「医用データを収集する検出器とを有する医用情報取扱装置」である点で共通する。

(3) 引用発明は「ドキュメント」に含まれる「入力された情報を解釈して」、「撮像条件等を設定」するのであり、撮像条件は制御データであるから、引用発明の「ドキュメントを記憶するメモリ500と、」と、補正発明2の「前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む制御データを」「記憶する記憶媒体」とは、「前記検出器の制御データを記憶する記憶媒体」である点で共通する。

(4) 引用発明が検出器制御プログラムを有することは明らかであるから、引用発明の「ドキュメントに入力された情報を解釈して、撮像条件等を設定し、撮像させ、」と、補正発明2の「スクリプト言語で書かれたスクリプトを、前記記憶された」「制御データを用いて実行する」とは、「検出器制御プログラムを、前記記憶された制御データを用いて実行する」点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「医用データを収集する検出器と、
前記医用データを処理して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記検出器の制御データを記憶する記憶媒体と、
検出器制御プログラムを、前記記憶された制御データを用いて実行することにより前記検出器を制御して前記医用データを収集させ、
一方、これにより前記画像データ生成部から得られる前記画像データを前記記憶媒体に記憶するプロセッサと、
前記記憶媒体に記憶された前記画像データ及び制御データにユーザがアクセスするのを可能にするユーザインターフェースと、
を有する医用情報取扱装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
「医用データを収集する検出器」「とを有する医用情報取扱装置」について、補正発明2では、「放射性核種イベントデータを収集する検出器」とを有する「核放射線カメラシステム」であるのに対して、引用発明では、「超音波プローブ342」「を備えた医用情報取扱装置」である点。

(相違点2)
記憶媒体への記憶形式について、補正発明2では、「xmlフォーマット」であるのに対して、引用発明では、「HTML形式」である点。

(相違点3)
検出器の制御データについて、補正発明2では、「制御ステップを表すプロトコルデータを含む」のに対して、引用発明では、「制御ステップを表すプロトコルデータを含む」か不明である点。

(相違点4)
検出器制御プログラムについて、補正発明2では、「スクリプト言語で書かれたスクリプト」であるのに対して、引用発明では、「スクリプト言語で書かれたスクリプト」であるか不明である点。

(1)相違点1についての検討
刊行物2の記載事項である上記(2-ア)には、「検出器18、20は、人体12から放出されるガンマ線を検出し、各ガンマ線をそれぞれ光に変換し、信号線24、26を通してシンチレイションカメラ装置22に伝送します。」と記載されているように「放射性核種イベントデータを収集する検出器」を有する「核放射線カメラシステム」は周知技術であり、核放射線カメラシステムは医用情報取扱装置の一つである。
一方、刊行物1においては引用発明が一実施例として記載されているのであり、特許請求の範囲には検出器が特定されない医用情報取扱装置を対象とする発明が記載されている。
してみると、引用発明において,上記周知技術を採用して、相違点1に記載の補正発明2のごとく構成とすることは、十分に動機付けがあり、当業者が容易に想到するものといえる。

(2)相違点2についての検討
刊行物3の記載事項である上記(3-ア)には、「簡素で、広く使われているが、HTMLにはいくつかの制約があります。・・・この論文ではXMLの一般的な特徴を紹介し、放射線医学における報告の情報として用いることの有用性を記載し」と記載されており、放射線医学において、HTMLより、XMLが有用であることが示唆されている。
また、刊行物4の記載事項である上記(4-ア)には「上のステップで入力された情報は、HTML、XML、SGMLなどのスクリプト言語を用いているため、テキストベースで表示命令、制御命令が記載されている。このため、作成者にとっては可読性が高く、わかりやすい文書となっている」と記載されており、スクリプト言語としてHTMLもXMLも周知の言語である。
してみると、引用発明において,上記刊行物3に記載された技術的事項を採用して、相違点2に記載の補正発明2のごとく構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項であるといえる。

(3)相違点3についての検討
刊行物2の記載事項である上記(2-イ)には、「今から、本発明の方法の一般化したプログラムフロー54が示された図4に言及しよう。」と記載されており、プログラムフローは制御ステップの集合であり、プロトコルデータといえるから「制御ステップを表すプロトコルデータを含む」「制御データ」は刊行物2に記載されている。
そして、刊行物2は引用発明と同じく医用情報取扱装置に関する。
してみると、引用発明において,上記刊行物2に記載された技術的事項を採用して、相違点3に記載の補正発明2のごとく構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項であるといえる。

(4)相違点4についての検討
刊行物4の記載事項である上記(4-ア)には「【0024】Step 1:管理センターサーバーにおいて、リモコン10で表示・実行させるためのスクリプトを入力する。ここでのスクリプトには、・・・設備機器制御に関する様々な情報が盛り込まれる。具体的な内容を以下に列挙する。
【0025】・・・機器制御を行う命令
・・・
【0028】Step 2:上のステップで入力された情報は、HTML、XML、SGMLなどのスクリプト言語を用いている・・・」と記載されているように、機器制御プログラムとして「スクリプト言語で書かれたスクリプト」は技術常識である。。
してみると、引用発明において,上記技術常識を採用して、相違点4に記載の補正発明2のごとく構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項であるといえる。

(5)そして、補正発明2の作用効果は、引用発明、刊行物2?4の記載事項および技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(6)したがって、補正発明2は、引用発明、刊行物2?4の記載事項および技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正2は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。
したがって、本件補正2についての補正の却下の決定に誤りはない。

第3 本件補正3についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正3を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正3により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 放射性核種イベントデータを収集する検出器と、
前記イベントデータを処理して画像データを生成する画像データ生成部と、
制御データをxmlフォーマットで記憶する記憶媒体と、 前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いるスクリプトを実行することにより前記検出器を制御して前記イベントデータを収集させる一方、これにより前記画像データ生成部から得られる前記画像データをxmlフォーマットで前記記憶媒体に記憶するプロセッサと、 前記記憶媒体に記憶されたxmlフォーマットの前記画像データ及び制御データにユーザがアクセスするのを可能にするユーザインターフェースと、を有する核放射線カメラシステム。」
から
「【請求項1】 放射性核種イベントデータを収集する検出器と、
前記イベントデータを処理して画像データを生成する画像データ生成部と、
前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む制御データをxmlフォーマットで記憶する記憶媒体と、
前記xmlフォーマットのためのマークアップ言語とは異なるスクリプト言語で書かれたスクリプトを、前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いて実行することにより前記検出器を制御して前記イベントデータを収集させる一方、これにより前記画像データ生成部から得られる前記画像データをxmlフォーマットで前記記憶媒体に記憶するプロセッサと、
前記記憶媒体に記憶されたxmlフォーマットの前記画像データ及び制御データにユーザがアクセスするのを可能にするユーザインターフェースと、
を有する核放射線カメラシステム。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正3は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「制御データ」を「前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む制御データ」として、制御データの内容を限定し、「前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いるスクリプトを実行する」を「前記xmlフォーマットのためのマークアップ言語とは異なるスクリプト言語で書かれたスクリプトを、前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いて実行する」として、スクリプトの内容について限定すると共に、文章を整える補正を含むものである。
したがって、本件補正3は,平成18年法改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明3」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1?4およびその記載事項は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 対比・判断
補正発明3は、補正発明2の「スクリプト言語で書かれたスクリプトを、」を「前記xmlフォーマットのためのマークアップ言語とは異なるスクリプト言語で書かれたスクリプト」とスクリプト言語に関する限定を付加したものに相当する。

そうすると、引用発明と補正発明3とは、 上記「第2 3」において検討したとおりの(一致点)と(相違点1)?(相違点4)とを有し、さらに以下の(相違点5)を有する。

(相違点5)
実行するスクリプトの「スクリプト言語」について、補正発明3では、「前記xmlフォーマットのためのマークアップ言語とは異なるスクリプト言語」であるのに対して、引用発明では特に限定していない点。

そして(相違点1)?(相違点4)についての検討は上記「第2 3」にて検討したとおりであり、上記(相違点5)については以下で検討する。

(1)相違点5についての検討
本願の明細書には、「【0010】・・・上記制御サーバは、装置56に記憶されたデータを使用すると共に、これもxmlデータ記憶装置56に記憶された“スクリプト”と呼ばれるプログラム52aを実行して、ガンマカメラ82の動作を制御する。」と記載されているように「スクリプト」とは「プログラム」である。
そして、装置の制御に用いるスクリプト(プログラム)を記述する言語として、表示のためのマークアップ言語以外のスクリプト言語を用いることは、技術常識である。
してみると、引用発明において,上記技術常識を採用して、相違点5に記載の補正発明3のごとく構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項であるといえる。

(2)そして、補正発明3の作用効果は、引用発明および刊行物2?4の記載事項および技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

(3)したがって、補正発明3は、引用発明および刊行物2?4の記載事項および技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正3は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第4 本願発明について
1 本願発明
本件補正3は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?3に係る発明は、本件補正1により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】 放射性核種イベントデータを収集する検出器と、
前記イベントデータを処理して画像データを生成する画像データ生成部と、
制御データをxmlフォーマットで記憶する記憶媒体と、 前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いるスクリプトを実行することにより前記検出器を制御して前記イベントデータを収集させる一方、これにより前記画像データ生成部から得られる前記画像データをxmlフォーマットで前記記憶媒体に記憶するプロセッサと、 前記記憶媒体に記憶されたxmlフォーマットの前記画像データ及び制御データにユーザがアクセスするのを可能にするユーザインターフェースと、を有する核放射線カメラシステム。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願出願前に頒布された刊行物1?4およびその記載事項は、上記「第3 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明3の「前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む制御データ」から「前記検出器の制御ステップを表すプロトコルデータを含む」と制御データの内容の限定を省き、さらに「前記xmlフォーマットのためのマークアップ言語とは異なるスクリプト言語で書かれたスクリプトを、前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いて実行する」から「前記記憶されたxmlフォーマットの制御データを用いるスクリプトを実行する」とスクリプトの内容について限定を省き、文章を書き戻したものに相当する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含む補正発明3が、上記「第3 3」において検討したとおり、引用発明、刊行物2?4の記載事項および技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、刊行物2?4の記載事項および技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第5 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-01 
結審通知日 2011-07-05 
審決日 2011-07-25 
出願番号 特願2003-512732(P2003-512732)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01T)
P 1 8・ 56- Z (G01T)
P 1 8・ 121- Z (G01T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 真一  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 後藤 時男
信田 昌男
発明の名称 公開され且つ柔軟なソフトウェアアーキテクチャを備える核放射線カメラ  
代理人 津軽 進  
代理人 笛田 秀仙  

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