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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1247747
審判番号 不服2010-11907  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-02 
確定日 2011-12-02 
事件の表示 特願2004-330262「蛍光ランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 1日出願公開、特開2006-140083〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
特許出願: 平成16年11月15日
手続補正: 平成21年 3月 9日
拒絶査定: 平成22年 2月25日(送達日:同年 3月 3日)
拒絶査定不服審判の請求: 平成22年 6月 2日
手続補正: 平成22年 6月 2日
審尋: 平成23年 5月30日(発送日:同年 6月 1日)
審尋回答: 平成23年 7月28日

2 補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年 6月 2日付け手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、次のとおり補正するものである。
(本件補正前)
「 【請求項1】
蛍光ランプにおいて、ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径は1ミクロン以下、0.01ミクロン以上であり、前記蛍光体層の層厚は5ミクロン以下、0.1ミクロン以上であることを特徴とする蛍光ランプ。」
(本件補正後)
「 【請求項1】
蛍光ランプにおいて、ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径は0.5ミクロン以下、0.01ミクロン以上、前記蛍光体層の層厚は5ミクロン以下、0.1ミクロン以上で、得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下であることを特徴とする蛍光ランプ。」
この補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である
「ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径」について、「1ミクロン以下、0.01ミクロン以上」との限定をさらに「0.5ミクロン以下、0.01ミクロン以上」とし、また「得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下である」としたものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例記載の事項・引用発明

ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-303045号公報(以下「引用例1」という。)には、蛍光ランプに用いられる無機蛍光体の発明に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

「 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどの各種のフラットパネルディスプレイ、陰極線管、蛍光ランプ、放射線増感紙、インクジェット用インク、電子写真トナー、ハロゲン化銀写真材料等に好適に用いることができる無機蛍光体(以後蛍光体ともいう)に関する。」
「 【0005】
さらに最近は液晶ディスプレイのバックライトとして蛍光ランプが多用されるようになっている。この場合、蛍光ランプは光反射フィルムと導光板および拡散板を組み合わせて用いられるが、省エネルギーを目的として、蛍光ランプの発光効率は光反射板を組み合わせたときにできるだけ大きいことが望まれている。従来の蛍光ランプでは、蛍光膜の光透過率が低く、発光した光の一部を反射フィルムによって再度蛍光ランプを透過させ、一方向に集束させるときに光の損失が大きいという問題があった。また、発光輝度とコンパクトさの点から管径は一般照明用ランプの管径25?35mmに比べてずっと小さく、蛍光体塗布は従来の蛍光体スラリーの流し込みではなく、注射器注入法あるいは減圧吸入法などが用いられる。このときスラリー中の蛍光体に凝集があったり流動性が悪かったりすると注入ノズルでの蛍光体の詰まりや形成された蛍光膜肌の悪化などの問題が生じ、やはり小粒径高輝度な蛍光体が求められている。」
「 【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、粒径が小さくとも発光効率、発光輝度の低下が少ない無機蛍光体を提供し、より詳細には緻密で均質な蛍光面を形成して輝度の高いフラットパネルディスプレイ、陰極線管、蛍光ランプ、放射線増感紙、インクジェット用インク、電子写真トナー、ハロゲン化銀写真材料を得るための無機蛍光体を効率的に提供することにある。」
「 【0026】
本発明の蛍光体は、平均1次粒子粒径は200nm以下であるが、150nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましく、1nm以上50nm以下であることが最も好ましい。高次凝集粒径は1.0μm以下であるが、800nm以下がより好ましく、500nm以下が更に好ましく、300nm以下が最も好ましい。また、平均一次粒子粒径が200nm以下であり、且つ高次凝集粒径が1.0μm以下である蛍光体は70容量%以上であるが、80容量%以上であることがより好ましく、90容量%以上であることがさらに好ましい。」

ここで、段落【0026】で説明されている蛍光体の用途として、蛍光ランプの蛍光膜(段落【0005】)が含まれていることは明らかである。したがって、以上の記載から、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。

「蛍光ランプにおいて、蛍光膜に使用される蛍光体の平均1次粒子粒径は200nm以下、1nm以上であることを特徴とする蛍光ランプ。」(以下、「引用発明1」という。)


イ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開2000-156202号公報(以下「引用例2」という。)には、蛍光ランプの発明に関し、次の事項が図面とともに記載されている。

「 【0002】
【従来の技術】
蛍光ランプは、ガラス管内壁に形成した蛍光体層によって管内に発生した紫外線を可視光に変換し、この可視光を光源として利用するものである。この蛍光体ランプにおいては、蛍光体層の層厚は、蛍光ランプが放射する可視光量(光束)に影響を与える一要素であり、その最適値は蛍光体層を構成する蛍光体粒子群の平均粒径と相関することが知られている(「蛍光体ハンドブック」、蛍光体同学会編、オーム社、p.173-174およびp.186-187)。蛍光体層の層厚は、ガラス管内壁の単位面積当たりの蛍光体量を増減することによって調整される。よって、従来、蛍光体層を形成するために使用する蛍光体量(塗布量)は、蛍光体粒子群の平均粒径に応じて設定されるのが一般的であり、蛍光体粒子群の平均粒径が小さいほど少量に設定されていた。」
「 【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、蛍光体の塗布量の最適化においては、使用する蛍光体粒子群の平均粒径が考慮されている。しかし、蛍光体粒子群の粒径分布については、蛍光体層の形成に及ぼす影響についての検討がなされておらず、蛍光体塗布量の最適化において何ら考慮されていないのが現状である。
【0004】
本発明は、いかなる粒径分布の蛍光体粒子群を使用した場合においても、高い光束を実現することができる蛍光ランプを提供することを目的とする。」
「 【0013】
前記本発明の蛍光ランプにおいては、前記蛍光体層の層厚が、前記蛍光体層を構成する蛍光体粒子群における平均粒径の1?20倍であることが好ましい。
【0014】
層厚が粒子群の平均粒径の1倍未満であると、確実にガラス管を蛍光体層で被覆するのが困難となり、層厚が粒子群の平均粒径の20倍を超えると、蛍光体粒子から放射された可視光が別の蛍光体粒子によって吸収されて蛍光ランプの光束低下を招くおそれがあるが、この好ましい例によれば、これらの問題を回避することができる。」
「 【0029】
また、蛍光体層を構成する蛍光体粒子群の平均粒径は、特に限定するものではないが、好ましくは0.3?30μm程度、更に好ましくは0.4?10μm程度である。また、蛍光体粒子群における粒径のばらつきについても、特に限定するものではない。なお、粒径のばらつきは、前述した粒子集中度によって評価することができる。」

以上の記載から、引用例2には次の発明が記載されているものと認められる。

「蛍光ランプにおいて、ランプのガラス管内壁に形成された蛍光体層の層厚は、蛍光体層を構成する蛍光体粒子群における平均粒径の1?20倍であることを特徴とする蛍光ランプ。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「蛍光膜」「蛍光体の平均1次粒子粒径」は、それぞれ本願補正発明の「蛍光体層」「蛍光体の平均粒子径」に相当する。また、引用発明1における「蛍光体の平均1次粒子粒径」を「200nm以下」とする限定は、200nmが0.2ミクロンに相当するものであるから、本願補正発明における「蛍光体の平均粒子径は0.5ミクロン以下」とする限定に包含される。そして、引用発明1において蛍光膜が「ランプ管内壁に形成され」ていることも技術常識から見て明らかである。
したがって、引用発明1と本願補正発明とは、「蛍光ランプにおいて、ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径は0.5ミクロン以下であることを特徴とする蛍光ランプ。」の点で一致し、以下の点で相違する

・相違点1
本願補正発明では、「蛍光体の平均粒子径」の下限が「0.01ミクロン以上」とされているのに対し、引用発明1では「1nm以上」すなわち0.001ミクロン以上である点。

・相違点2
本願補正発明では、蛍光体層の層厚は「5ミクロン以下、0.1ミクロン以上」とされているのに対し、引用発明1では、そのような限定がされていない点。

・相違点3
本願補正発明では「得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下」であるのに対し、引用発明1では、そのような限定がされていない点。

(4)判断
ア 相違点1について
蛍光体製造の際の困難性を考慮して蛍光体の平均粒子径の下限を設定することは、当業者が当然に行うべき事項に過ぎない。またその具体的な数値は、用いる製造方法等に応じて適宜選定されるべき設計事項であり、これを「0.01ミクロン以上」とすることは、当業者が適宜に決定し得る事項といえる。したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得た事項である。

イ 相違点2について
引用例2に開示されている、蛍光体ランプにおいて高い光束を実現するという課題(段落【0004】)は、一般の蛍光体ランプが有している周知の課題であって、引用発明1の蛍光ランプが同課題を有していることも明らかであるから、引用発明2を引用発明1に適用することは困難なものではない。そして、蛍光体の「平均1次粒子粒径は200nm以下」すなわち0.2ミクロン以下である引用発明1の蛍光ランプに対して「蛍光体層の層厚は、蛍光体層を構成する蛍光体粒子群における平均粒径の1?20倍」という引用発明2の事項を適用すれば、引用発明1の蛍光体層の層厚は4ミクロン以下となるから、本願補正発明における「蛍光体層の層厚は5ミクロン以下」を充足する。
また、蛍光体層製造の際の困難性を考慮して、層厚の下限を設定することは、当業者が当然に行うべき事項に過ぎない。またその具体的な数値は、用いる製造方法等に応じて適宜選定されるべき設計事項であり、これを「0.1ミクロン以上」とすることは、当業者が適宜に決定し得る事項といえる。 したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得た事項である。

ウ 相違点3について
本願補正発明の請求項1における「得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下」という事項は「ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径は0.5ミクロン以下、0.01ミクロン以上、前記蛍光体層の層厚は5ミクロン以下、0.1ミクロン以上」とした蛍光ランプが奏する効果に過ぎず、他の何らかの構成を特定するものではない。この点に関しては平成23年7月28日付けの審尋回答書において
「この補正後の本願請求項1は、蛍光ランプの性能として良好な数値である「輝度:2000(cd/m2)以上」、「輝度差:80(cd/m2)以下」を得るための「蛍光体の平均粒子径」及び「蛍光体層の層厚」が、「蛍光体の平均粒子径:0.5ミクロン以下、0.01ミクロン以上」、「蛍光体層の層厚:5ミクロン以下、0.1ミクロン以上」であることを特定するものであり、すなわち、蛍光ランプの実用化にあたって良好な性能を得ることのできる「蛍光体の平均粒子径」及び「蛍光体層の層厚」の具体的な範囲を特定した点にこそ、補正後の本願請求項1の特許性があります。」
と述べられているとおり、請求人も認めている。

以上ア?ウの検討をまとめると「蛍光ランプにおいて、ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径は0.5ミクロン以下、0.01ミクロン以上、前記蛍光体層の層厚は5ミクロン以下、0.1ミクロン以上であることを特徴とする蛍光ランプ。」は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また係る蛍光体の平均粒子径及び蛍光体層の層厚を有する蛍光ランプは「得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下」となるものである。そして、本願補正発明によってもたらされる効果も、引用発明1及び2から予想しうるものに過ぎず、格別なものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


(5)まとめ
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
本件補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成22年 3月 9日付け手続補正によって補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。

「 【請求項1】
蛍光ランプにおいて、ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径は1ミクロン以下、0.01ミクロン以上であり、前記蛍光体層の層厚は5ミクロン以下、0.1ミクロン以上であることを特徴とする蛍光ランプ。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例記載の事項・引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2に記載の事項及び引用発明1及び2は、前記「2(2)引用例記載の事項・引用発明」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記「2(1)補正の内容」で検討した本願補正発明から「ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径」についての限定事項である「0.5ミクロン以下」との発明特定事項を「1ミクロン以下」に広げ、また「得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに「ランプ管内壁に形成された蛍光体層に使用される蛍光体の平均粒子径」を「0.5ミクロン以下」と限定し、また「得られる輝度が2000(cd/m^(2))以上、輝度差が80(cd/m^(2))以下」としたものに相当する本願補正発明が、前記「2(4)判断」に記載したとおり引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-27 
結審通知日 2011-09-28 
審決日 2011-10-18 
出願番号 特願2004-330262(P2004-330262)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 紀史  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 ▲高▼木 真顕
中塚 直樹
発明の名称 蛍光ランプ  
代理人 池田 憲保  
代理人 福田 修一  

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