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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1247794
審判番号 不服2010-6274  
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-23 
確定日 2011-11-28 
事件の表示 特願2006-110159「画像処理装置、記録装置および画像処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年11月24日出願公開、特開2006-319961〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成18年4月12日(国内優先権主張 平成17年4月15日)の出願であって、平成21年12月18日付けの拒絶査定に対し、平成22年3月23日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、平成23年6月21日付けで当審により拒絶理由の通知がなされ、平成23年8月23日付けで手続補正がなされたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成23年8月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「画像処理装置において、
モノクロ画像の色調整を行う色調整手段と、
前記色調整手段により色調整されたRGB信号を、モノクロ画像を記録するのに使用可能な無彩色インクを含む複数色インクの使用量に対応した複数のインク色信号に変換するための色変換手段を具え、
前記色変換手段は、前記複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域で前記無彩色インクが使用されるように、一つの前記RGB信号の値が同じである組合せと一つの前記複数のインク色信号の組合せとの対応関係と、一つの前記RGB信号の値が同じでない組合せと一つの前記複数のインク色信号の組合せとの対応関係と、が規定された色変換テーブルを用いて、前記RGB信号を前記複数のインク色信号に変換することを特徴とする画像処理装置。」

2.刊行物の記載事項
これに対し、当審により通知された拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2005-65113号公報(以下、「刊行物1」という)には、【図18】ないし【図23】とともに次の(1)、(2)の事項が記載されている。
(1)「【技術分野】
【0001】この発明は、LUTを用いて行う画像処理に関し、さらに詳しくは、画像処理に要する時間を低減することができる技術に関する。
【背景技術】
【0002】図18は、カラープリンタを用いてカラー画像を印刷する技術を概念的に示すブロック図である。スキャナ20は読み込んだ画像を示す所定の画像データDT2をコンピュータ10へ出力する。コンピュータ10は画像データDT2に基づいてCRT22に画像を表示させ、カラープリンタ30に画像を印刷させる。読み込んだ画像をカラーで印刷したい場合には、画像データDT2として、それぞれ赤、緑、青の量を示すR信号、G信号、B信号(以下、これらを総称して「RGB信号」ともいう)が採用される。
【0003】コンピュータ10では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム40が動作する。このオペレーティングシステムには、CRTドライバソフト17やプリンタドライバソフト41が組み込まれている。アプリケーションプログラム40からはプリンタドライバソフト41を介して、カラープリンタ30に転送するための画像データDT1が出力される。
【0004】アプリケーションプログラム40は、例えばフォトレタッチソフトであり、画像データDT2に対して画像のレタッチなどの所定の処理を行う。アプリケーションプログラム40によって得られた処理結果DT3は、CRTドライバソフト17やプリンタドライバソフト41に与えられる。
【0005】アプリケーションプログラム40が印刷命令を発すると、コンピュータ10のプリンタドライバソフト41が、処理結果DT3をカラープリンタ30にて処理可能な信号DT1に変換する。カラープリンタ30は種々のインクを備えており、信号DT1は画像データDT2に対応したインクの使用量や、印刷箇所などについての情報を有している。
【0006】プリンタドライバ41は、内部に解像度変換モジュール41aと、色変換モジュール41bと、色変換テーブル41eと、ハーフトーンモジュール41cと、ラスタライザ41dとを備えている。
【0007】解像度変換モジュール41aは、アプリケーションプログラム40から得られた処理結果DT3の解像度、即ち単位長さ当たりの画素数をプリンタドライバ41にて扱うことができる解像度に変換して変換結果DT4を得る。変換結果DT4も当然、色についての情報を有している。色変換モジュール41bは色変換テーブル41eを用いて、変換結果DT4に基づいて各画素毎にカラープリンタ30が使用する種々のインクの使用量を決定する。ハーフトーンモジュール41cは、ドットを分散して形成することによりカラープリンタ30で種々の階調値を表現するためのハーフトーン処理を実行する。ラスタライザ41dはカラープリンタ30に転送すべきデータ順にインクの使用量を並べ替え、最終的な画像データとして信号DT1をカラープリンタ30に出力する。」

(2)「【0010】以上のようにして、印刷媒体上にカラー画像を表示する技術は広く使用されている。しかしながら、色相が単一であるモノクローム画像は、所定の色相を有している場合に独特の雰囲気を有しており、モノクローム画像を印刷する需要も高い。図18に例示された従来の技術においても、モノクローム画像を印刷することは可能である。
【0011】例えばスキャナ20が読み込んだ画像を無彩色のグレー画像としてコンピュータ10に認識させる。グレー画像ではいずれの画素においても赤、緑、青が等量であるので、画像データDT2のR信号、G信号、B信号は、相互に等しい値を採る。
【0012】アプリケーションプログラム40は、画像データDT2が表すグレー画像に対して所定の色相を付与する処理(以下「色相付与処理」と称す)を行って、処理結果DT3を生成する。
【0013】図19乃至図22は、色相付与処理に伴ってRGB信号の変換を示すグラフであり、色相付与処理を行って得られた処理結果DT3が有する新たなR信号、G信号、B信号をそれぞれR’信号、G’信号、B’信号として示している(以下、これらを総称して「R’G’B’信号」ともいう)。画像データDT2のR信号、G信号、B信号は相互に等しい値を採る。ここではRGB信号の階調値を0?255の整数に対応した256段階である場合を例示している。
【0014】図19はグレー画像をグレー画像として(以下「ニュートラル調」と称す)印刷させたい場合を、図20は寒色気味(以下「クール調」と称す)に印刷させたい場合を、図21は暖色気味(以下「ウォーム調」と称す)に印刷させたい場合を、図22はカラー写真が褪色した色合い(以下「セピア調」と称す)に印刷させたい場合を、それぞれ示す。
【0015】このようにして得られたR’G’B’信号は解像度変換モジュール41aで解像度が変換された後、色変換モジュール41bにおいて色変換テーブル41eを用いてカラープリンタ30が使用する種々のインクの使用量に変換する。解像度変換モジュール41aで解像度が変換されても、R’G’B’信号の値は維持される。
【0016】図23は色変換テーブル41eを用いて、R’G’B’信号に基づいてシアン、マゼンタ、イエロー、黒の各インクの使用量C,M,Y,Kを設定する技術を説明するグラフである。R’信号、G’信号、B’信号は相互に独立であるので、3次元の立方体で色変換テーブル41eが模式的に表現される。ここでは階調値を0?255の256(=28)段階である場合を示している。色変換テーブル41eが独立した28×28×28組(約1678万組)のデータを記憶することは、メモリ容量の制限から望ましくない。このため、色変換テーブル41eでのデータの記憶位置は、格子点として離散的に、例えば階調値17個分毎に設定される。」

以上の記載から、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

「スキャナが読み込んだ画像を無彩色のグレー画像としてコンピュータに認識させ、アプリケーションプログラムは、該グレー画像に対してニュートラル調、クール調、ウォーム調、セピア調などの所定の色相を付与する色相付与処理を行って処理結果R’G’B’信号を生成し、このようにして得られたR’G’B’信号は解像度変換モジュールで解像度が変換された後、色変換モジュールにおいて色変換テーブルを用いてカラープリンタが使用するシアン、マゼンタ、イエロー、黒の各インクの使用量C,M,Y,Kに変換される画像処理装置。」

また、当審により通知された拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2003-143422号公報(以下、「刊行物2」という)には、次の(3)、(4)の事項が記載されている。

(3)「【0046】すなわち、白を示すデータについて考慮すると不自然さの最も顕著な原因を解消することができるものの、より自然な画像を印刷するためには白を示すデータ以外についても考慮するのが好ましく、本実施形態においては白を示すデータと白以外を示すデータとについてCMYK各色の階調値が滑らかに変化するようにLUTを規定してある。図7?図9は上記図4?図6に示すLUT15b?LUT15dについてsRGB階調値に対するCMYKの各階調値を示すグラフである。
【0047】図に示すように、各LUTにおいてsRGB階調値が増加するにつれKインクの階調値が減少しており、当該Kインクにて主に明度を制御している。一方、いずれのLUTにおいてもKインクにCMYインクが加えられており、これらのCMYインクにて主に彩度を制御している。すなわち、全階調値に渡ってCインクとMインクとがYインクより大きな階調値を有しており、これらのCインクとMインクとをYインクより多く吐出することによってクール調のモノクロ画像への色変換を実現している。また、いずれのLUTにおいてもCMYKの各インクはsRGBの全階調値に渡って滑らかに変化しており、トーンジャンプを発生させないようになっている。」

(4)「複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域でKインクが使用されるように規定されたLUT」(【図7】ないし【図11】)

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明の「グレー画像」は、本願発明の「モノクロ画像」に相当するから、刊行物1発明の、該グレー画像に対してニュートラル調、クール調、ウォーム調、セピア調などの所定の色相を付与する色相付与処理を行って処理結果R’G’B’信号を生成するアプリケーションプログラムは、本願発明の「モノクロ画像の色調整を行う色調整手段」に相当する。

刊行物1発明の、カラープリンタが使用する黒インクKは、「モノクロ画像を記録するのに使用可能な無彩色インク」であり、刊行物1発明の、カラープリンタが使用するシアン、マゼンタ、イエロー、黒の各インクの使用量C,M,Y,Kは、「モノクロ画像を記録するのに使用可能な無彩色インクを含む複数色インクの使用量に対応した複数のインク色信号」といえる。したがって、刊行物1発明の色変換モジュールは、前記アプリケーションプログラムで生成されたR’G’B’信号を各インクの使用量C,M,Y,Kに変換するものであって、本願発明の、「前記色調整手段により色調整されたRGB信号を、モノクロ画像を記録するのに使用可能な無彩色インクを含む複数色インクの使用量に対応した複数のインク色信号に変換するための色変換手段」に相当するものである。

また、刊行物1発明の色変換モジュール(本願発明の「色変換手段」に相当)は、色変換テーブルを用いて、R’G’B’信号を各インクの使用量C,M,Y,Kに変換するものであって、該R’G’B’信号は、ニュートラル調の場合は値が同じであり、クール調の場合は値が同じではないから、この色変換テーブルは、「一つの前記RGB信号の値が同じである組合せと一つの前記複数のインク色信号の組合せとの対応関係と、一つの前記RGB信号の値が同じでない組合せと一つの前記複数のインク色信号の組合せとの対応関係と、が規定された」ものであることは明らかである。

したがって、本願発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
画像処理装置において、
モノクロ画像の色調整を行う色調整手段と、
前記色調整手段により色調整されたRGB信号を、モノクロ画像を記録するのに使用可能な無彩色インクを含む複数色インクの使用量に対応した複数のインク色信号に変換するための色変換手段を具え、
前記色変換手段は、一つの前記RGB信号の値が同じである組合せと一つの前記複数のインク色信号の組合せとの対応関係と、一つの前記RGB信号の値が同じでない組合せと一つの前記複数のインク色信号の組合せとの対応関係と、が規定された色変換テーブルを用いて、前記RGB信号を前記複数のインク色信号に変換することを特徴とする画像処理装置。

[相違点]
色変換手段での変換に用いる色変換テーブルが、本願発明では、「前記複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域で前記無彩色インクが使用されるように、」規定されたものであるのに対し、刊行物1発明では、そのような特定はなされていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。

刊行物2の【図7】ないし【図11】には、「複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域でKインクが使用されるように規定されたLUT」(上記2.(4))が記載されており、また、このLUTは、sRGB階調値に対するCMYKの各階調値が規定された色変換テーブルである(上記2.(3))。
すなわち、刊行物2には、RGB信号を複数のインク色信号に変換する色変換テーブルにおいて、複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域で無彩色インクが使用されるように規定する技術が記載されている。

刊行物1発明において、RGB信号を各インクの使用量C,M,Y,Kに変換する色変換テーブルを、刊行物2に記載された技術を適用し、複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域で無彩色インクが使用されるように規定する構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

なお、請求人は、刊行物2の色変換テーブルは、色調整前のRGBに対して、色調に応じて調整された複数のCMYKを対応させたものであり、刊行物1の色調整後のRGBをCMYKに変換するテーブルとして用いることはできない旨、主張しているので、この点について検討する。
刊行物2に記載された色変換テーブルは、印刷する用紙の色、印刷したい色調に応じて複数のテーブルが用意されているものであり、これら複数のテーブルの何れもが、色再現範囲の全域で無彩色インクが使用されるように規定されているのであるから、色再現範囲の全域で無彩色インクが使用されるようにしたこと自体の目的は、印刷する用紙の色、印刷したい色調(色調整)とは無関係であると考えられる。このことは、「これらのCインクとMインクとをYインクより多く吐出することによってクール調のモノクロ画像への色変換を実現している」(上記2.(3))と記載されていることから、色調整はKインク(無彩色インク)ではなくCMYインクにより行っていることからもいえる。
すなわち、色調整を行うか否かに拘わらず、刊行物2には、RGB信号を複数のインク色信号に変換する色変換テーブルにおいて、複数色のインクの組合せで再現可能な色再現範囲の全域で無彩色インクが使用されるように規定する技術が記載されているということができる。
この刊行物2に記載された技術を、刊行物1発明のRGB信号を各インクの使用量C,M,Y,Kに変換する色変換テーブルに適用することが当業者に容易に想到し得ることであるのは、上記したとおりである。刊行物1発明の色変換テーブルを刊行物2のものに置き換えるのが容易に想到し得るというのではない。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明、及び、刊行物2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-26 
結審通知日 2011-09-30 
審決日 2011-10-12 
出願番号 特願2006-110159(P2006-110159)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊田 好一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
古川 哲也
発明の名称 画像処理装置、記録装置および画像処理方法  
復代理人 伊藤 勝久  
代理人 谷 義一  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 阿部 和夫  

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