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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1248341
審判番号 不服2008-9209  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-14 
確定日 2011-08-10 
事件の表示 特願2004-532687「ネットワークシステム、サーバおよびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日国際公開、WO2004/021234〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯

本件出願は、2003年 8月 8日(優先権主張2002年 8月28日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成19年 8月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年10月19日付けで手続補正書が提出されたが、平成20年 1月10日付けで拒絶査定され、これに対して同年 4月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、平成22年 4月 2日付けで審尋がなされたのに対し、同年 7月 5日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成20年 4月14日付けでした手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成20年 4月14日付けでした手続補正を却下する。

[理由]

(1)補正の内容について

平成19年10月19日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲は、平成20年 4月14日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により、以下のとおり補正された。


<<本件補正前の特許請求の範囲>>

「 【請求項1】
ネットワークを介したソフトウェアサービスを提供するネットワークシステムであって、
ソフトウェアサービスを提供する少なくとも1つのサーバであって、当該ソフトウェアサービスの提供に伴って得られる当該ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報を採取する第1のサーバと、
前記第1のサーバにより提供される前記ソフトウェアサービスに関する情報および前記第1のサーバによって採取された前記実績情報を記憶装置に格納し管理する第2のサーバとを備え、
前記第1のサーバは、前記ソフトウェアサービスの提供に伴って採取された前記実績情報を前記第2のサーバへ送信し、
前記第2のサーバは、前記第1のサーバから受信した前記実績情報により前記記憶装置に格納されている当該第1のサーバの当該実績情報を更新するネットワークシステム。
【請求項2】
前記第1のサーバは、前記実績情報として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを採取する請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記第1のサーバにより提供されるソフトウェアサービスを受けるクライアントは、前記第2のサーバに対して前記ソフトウェアサービスの検索要求を行い、当該検索要求に対応するソフトウェアサービスに関する情報および当該ソフトウェアサービスの前記実績情報を検索結果として取得し、当該実績情報に基づいて、供給されるソフトウェアサービスを決定する請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
ネットワークを介してソフトウェアサービスを提供するサーバであって、
少なくとも1つのソフトウェアサービスの処理を実行する、プログラム制御されたCPUにより実現されるサービス実行部と、
前記実行する手段による処理の実行に基づいて、前記ソフトウェアサービスの質を判断するための情報として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記ソフトウェアサービスの実績情報を採取する、プログラム制御されたCPUにより実現されるサービス質情報採取部と、
を備えるサーバ。
【請求項5】
ネットワークを介したソフトウェアサービスに関する情報を記憶装置に格納して管理しクライアントからの要求に応じて検索を行う管理サーバに、前記サービス質情報採取部により採取された前記実績情報を送信する、プログラム制御されたCPUにより実現される送信制御部をさらに含む請求項4に記載のサーバ。
【請求項6】
ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスに関する情報を管理し、クライアントからの検索要求を受け付けて当該検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第1の検索部と、
前記第1の検索部により管理される前記ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報を格納する格納部と、
前記ソフトウェアサービスを提供するサービス実行サーバから前記実績情報を取得し前記格納部に格納して管理し、前記クライアントからの前記検索要求に応じて前記第1の検索部により検索された前記ソフトウェアサービスの当該実績情報を当該格納部から検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第2の検索部とを備え、
前記第1の検索部による検索結果と共に前記第2の検索部による検索結果を前記クライアントに返送するサーバ。
【請求項7】
前記第1の検索部は、サービスの質を判断するための前記実績情報を検索する前記第2の検索部の機能を、ソフトウェアサービスの1つとして管理する請求項6に記載のサーバ。
【請求項8】
ネットワークを介してソフトウェアサービスを提供するためのコンピュータ・プログラムであって、
少なくとも1つのソフトウェアサービスの処理を実行する手段、
前記実行する手段による処理の実行に基づいて、前記ソフトウェアサービスの質を判断するための情報として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記ソフトウェアサービスの実績情報を採取する手段、
としてコンピュータを機能させるコンピュータ・プログラム。
【請求項9】
さらにコンピュータを、ネットワークを介したソフトウェアサービスに関する情報を記憶装置に格納して管理しクライアントからの要求に応じて検索を行う管理サーバに、前記実行する手段による処理の実行に基づいて採取された前記実績情報を送信する手段として機能させる請求項8に記載のコンピュータ・プログラム。
【請求項10】
ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスの検索を行うためのコンピュータ・プログラムであって、
ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスに関する情報を管理し、クライアントからの検索要求を受け付けて当該検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する第1の手段、
前記第1の手段により管理される前記ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報を、当該ソフトウェアサービスを提供するサービス実行サーバから取得し、記憶装置に格納して管理し、前記クライアントからの前記検索要求に応じて前記第1の手段により検索された前記ソフトウェアサービスの当該実績情報を当該記憶装置から検索する第2の手段、
前記第1の手段による検索結果と共に前記第2の手段による検索結果を前記クライアントに返送する第3の手段
としてコンピュータを機能させるコンピュータ・プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータに実現される前記第1の手段の機能として、サービスの質を判断するための前記実績情報を検索する前記第2の手段の機能をソフトウェアサービスの1つとして管理させる請求項10に記載のコンピュータ・プログラム。」

<<本件補正後の特許請求の範囲>>

「 【請求項1】
ネットワークを介したソフトウェアサービスを提供するネットワークシステムであって、
ソフトウェアサービスを提供する少なくとも1つのサーバであって、実際の当該ソフトウェアサービスの提供に伴って得られる当該ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを採取する第1のサーバと、
クライアントからのソフトウェアサービスの検索要求に応じてソフトウェアサービスの検索を行う第2のサーバであって、前記ソフトウェアサービスの検索に関連して検索されるべき前記第1のサーバにより提供される前記ソフトウェアサービスに関する情報および前記第1のサーバによって採取された前記実績情報を記憶装置に格納し管理する第2のサーバとを備え、
前記第1のサーバは、前記ソフトウェアサービスの提供に伴って採取された前記実績情報を前記第2のサーバへ送信し、
前記第2のサーバは、前記第1のサーバから受信した前記実績情報により前記記憶装置に格納されている当該第1のサーバの当該実績情報を更新するネットワークシステム。
【請求項2】
ネットワークを介してソフトウェアサービスを提供するサーバであって、
少なくとも1つのソフトウェアサービスの処理を実行する、プログラム制御されたCPUにより実現されるサービス実行部と、
前記実行する手段による処理の実行に基づいて、前記ソフトウェアサービスの質を判断するための情報として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記ソフトウェアサービスの実績情報を採取する、プログラム制御されたCPUにより実現されるサービス質情報採取部と、
ネットワークを介したソフトウェアサービスに関する情報を記憶装置に格納して管理しクライアントからのソフトウェアサービスの検索要求に応じて検索を行う管理サーバに、前記ソフトウェアサービスの検索に関連して検索されるべき前記サービス質情報採取部により採取された前記実績情報を送信する、プログラム制御されたCPUにより実現される送信制御部と、
を備えるサーバ。
【請求項3】
ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスに関する情報を管理し、クライアントからの検索要求を受け付けて当該検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第1の検索部と、
前記ソフトウェアサービスのサービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記第1の検索部により管理される前記ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報を格納する格納部と、
前記ソフトウェアサービスを提供するサービス実行サーバから前記実績情報を取得し前記格納部に格納して管理し、前記クライアントからの前記検索要求に応じて前記第1の検索部により検索された前記ソフトウェアサービスの当該実績情報を当該格納部から検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第2の検索部とを備え、
前記第1の検索部による検索結果と共に前記第2の検索部による検索結果を前記クライアントに返送するサーバ。
【請求項4】
ネットワークを介してソフトウェアサービスを提供するためのコンピュータ・プログラムであって、
少なくとも1つのソフトウェアサービスの処理を実行する手段、
前記実行する手段による処理の実行に基づいて、前記ソフトウェアサービスの質を判断するための情報として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記ソフトウェアサービスの実績情報を採取する手段、
ネットワークを介したソフトウェアサービスに関する情報を記憶装置に格納して管理しクライアントからのソフトウェアサービスの検索要求に応じて検索を行う管理サーバに、前記ソフトウェアサービスの検索に関連して検索される前記実績情報であって、前記実行する手段による処理の実行に基づいて採取された前記実績情報を送信する手段
としてコンピュータを機能させるコンピュータ・プログラム。
【請求項5】
ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスの検索を行うためのコンピュータ・プログラムであって、
ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスに関する情報を管理し、クライアントからの検索要求を受け付けて当該検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する第1の手段、
前記ソフトウェアサービスのサービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記第1の手段により管理される前記ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報を、当該ソフトウェアサービスを提供するサービス実行サーバから取得し、記憶装置に格納して管理し、前記クライアントからの前記検索要求に応じて前記第1の手段により検索された前記ソフトウェアサービスの当該実績情報を当該記憶装置から検索する第2の手段、
前記第1の手段による検索結果と共に前記第2の手段による検索結果を前記クライアントに返送する第3の手段
としてコンピュータを機能させるコンピュータ・プログラム。」

なお、審判請求人は、平成20年 4月14日付け審判請求書の請求の理由において、以下のとおり主張している。

「(1)本審判請求書と同日に手続補正書を提出し、特許請求の範囲の記載を変更する補正を行った。補正後の新請求項と補正前の旧請求項の対応は以下の通りである(補正前の請求項3、7、11は当該補正によって削除された)。
補正後 補正前
1 1+2
2 4+5
3 6
4 8+9
5 10
(2)請求項1の「実際の」は再公表公報の第7頁第34行等に、「として、サービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つ」は旧請求項2に、「クライアントからのソフトウェアサービスの検索要求に応じてソフトウェアサービスの検索を行う第2のサーバであって、前記ソフトウェアサービスの検索に関連して検索されるべき」は旧請求項5及び再公表公報第11頁第10?11行等の記載があるので新規事項ではなく、かつ補正前から存在する発明特定事項の限定的減縮に該当するので、請求項1に対する補正は適法である。
請求項2の「ネットワークを介したソフトウェアサービスに関する情報を記憶装置に格納して管理しクライアントからのソフトウェアサービスの検索要求に応じて検索を行う管理サーバに、前記ソフトウェアサービスの検索に関連して検索されるべき前記サービス質情報採取部により採取された前記実績情報を送信する、プログラム制御されたCPUにより実現される送信制御部と」は旧請求項5及び再公表公報第11頁第10?11行等の記載があるので新規事項ではなく、かつ補正前から存在する発明特定事項の限定的減縮に該当するので、請求項2に対する補正は適法である。
請求項3の「前記ソフトウェアサービスのサービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む」は旧請求項2等の記載があるので新規事項ではなく、かつ補正前から存在する発明特定事項の限定的減縮に該当するので、請求項3に対する補正は適法である。
請求項4、5は、請求項2、3をそれぞれプログラムの側面から表現したものであり、請求項2、3に関すると同様の理由により、請求項4、5に対する補正は適法である。
(3)以上から、上述の補正はすべて適法なものであると確信する。」

(2)本件補正前後の各請求項の対応関係について

本件補正前後の請求項の記載を対比して検討すると、本件補正前の請求項2の「ネットワークシステム」に係る発明は、本件補正後の請求項1の「ネットワークシステム」に係る発明に対応し、本件補正前の請求項5の「サーバ」に係る発明は、本件補正後の請求項2の「サーバ」に係る発明に対応し、本件補正前の請求項6の「サーバ」に係る発明は、本件補正後の請求項3の「サーバ」に係る発明に対応し、本件補正前の請求項9の「コンピュータ・プログラム」に係る発明は、本件補正後の請求項4の「コンピュータ・プログラム」に係る発明に対応し、本件補正前の請求項10の「コンピュータ・プログラム」に係る発明は、本件補正後の請求項5の「コンピュータ・プログラム」に係る発明に対応する。

(3)補正の目的

本件補正は、本件補正前の請求項1、3、4、7、8及び11を削除するとともに、審判請求人が主張するように、本件補正前の請求項2、5、6、9、10に係る発明の発明特定事項をそれぞれ限定的に減縮し、本件補正後の請求項1乃至5に係る発明とするものである。

したがって、平成20年 4月14日付けの上記手続補正により本願の請求項に係る発明についてなされた補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号又は第2号に掲げられた請求項の削除又は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(4)独立特許要件

本件補正後の請求項3に係る発明は、上記(3)で判断したとおり、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的として補正されたものであるから、本件補正後の請求項3に係る発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるのかどうか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(4-1)本願補正発明

本件補正後の請求項3に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成20年 4月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定される前記(1)の「<<本件補正後の特許請求の範囲の記載>>」に記載したとおりのものである。

(4-2)引用文献に記載の発明

(引用文献1)

原査定の拒絶の理由に引用された「天野富夫,ネットワーク・ビジネスを一変させるXML新技術“Webサービス”の本質をつかむ,JavaWORLD,(株)IDGジャパン,2001年8月1日,第5巻第8号,p.149-154」(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の内容が記載されている。

(1a)『Webサービスの定義
「Webサービス」の本質を正しく理解するためには、まずはその言葉の定義を知る必要がある。とは言ったものの、実はいまだにオーソライズされたWebサービスの定義はない。そこで、ここでは「ネットワーク上で部品として利用できるサービスであり、決められたフォーマットのメッセージを交換することによって実行されるもの」と定義することにしよう。
ここで言うサービスとは、インターネット(イントラネットやエクストラネットを含む)につながったマシン上のアプリケーションによって実行/提供される何らかの機能のことである。受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能を提供したりといったように、その内容や粒度はさまざまだ。
Webサービスにおける要求や応答は、サービスごとにフォーマットが定められたメッセージの交換によって行われる。サービスの“利用者”は一般にはアプリケーション・プログラムであり、そのプログラムが必要なサービスを呼び出し、得られた結果を統合することによって1つの処理として完結させる。さらには、複数のWebサービスを統合して、より高機能なWebサービスを構築することも可能なのだ。』(第149頁第1欄第1行?第2欄最終行)

(1b)「●UDDI
UDDI(Universal Description,Discoveryand and Integration)は、Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるが、現状のバージョンはWebサービスを発見し、利用するためのレジストリの規定が中心となっている(図1)。
Webサービスのプロバイダーは、UDDIにより、自社のビジネス領域や提供するサービスに関する情報をレジストリとして登録する。サービスの利用者は、自分の欲するサービスを提供している会社はあるか、その会社と取り引きするにはどうしたらよいか、といった照会をそのレジストリに対して行うのだ。
なお、レジストリヘの登録と照会は、SOAPメッセージのやり取りによって行われる。また、サービスの利用者は、必要な情報を得た後、レジストリを介することなくサービスの提供者に対して直接要求を行うことになる。」(第150頁第3欄第1行乃至第21行)

(1c)「Webサービスの課題

Webサービスという概念には多大な有用性/重要性がある一方で、実際にそれが普及していくためには、解決されなければならない課題も少なくない。ここでは、それらの課題のうち主要なものをいくつか挙げ、現状を整理してみよう。

・・・(中略)・・・

サービス品質の保証
提供されるサービスの質をどうやって保証するのかという点も、課題の1つに挙げられる。Webサービスがプラットフォームや実装から独立しているということは、それらの機能が実際にどのようなシステムの上で実現されているのか(2重化されたノンストップ・システムなのか、個人用PCに毛の生えた程度のものなのか)、どんな規模の会社が運営しているのかといった実態が外部からは見えないということになる。したがって、そもそもビジネスの相手として信頼してよい会社なのか、といった疑問すら生じることになるわけだ。
これに対する1つの解決策は、プロバイダーのサービスの質や実績などの情報を提供するWebサービスを利用することだ。おそらく、こういった信用情報の提供をビジネスとする企業も現れるだろう。
また、この種の情報については、改竄や否認の防止のためにXML電子署名が利用されることになる。電子署名の利用には鍵管理のためにPKIが必須だが、前述したXKMSのようなWebサービスはその普及に大いに寄与するものだ。
さらに、システム・ダウンによりサービスが停止してしまったときの損害額の算定や責任の分担についても明確化する必要がある。これに関しても、商慣習や法律上のコンセンサスが得られるまでにはしばらく時間がかかりそうだ。」(第153頁第3欄第7行乃至第154頁第1欄第25行)

したがって、上記の全ての摘記事項及び図面の記載を参酌すると、引用文献1には、以下の構成が記載されているといえる。

(ア)上記摘記事項(1b)の「●UDDI
UDDI(Universal Description,Discoveryand and Integration)は、Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるが、現状のバージョンはWebサービスを発見し、利用するためのレジストリの規定が中心となっている(図1)。」との記載によれば、当該「レジストリ」は、当該「Webサービスの記述/発見/統合のための規格」である当該「UDDI」により「規定」されるものと解することができる。

そして、上記摘記事項(1a)の『Webサービスの定義
「Webサービス」の本質を正しく理解するためには、まずはその言葉の定義を知る必要がある。とは言ったものの、実はいまだにオーソライズされたWebサービスの定義はない。そこで、ここでは「ネットワーク上で部品として利用できるサービスであり、決められたフォーマットのメッセージを交換することによって実行されるもの」と定義することにしよう。
ここで言うサービスとは、インターネット(イントラネットやエクストラネットを含む)につながったマシン上のアプリケーションによって実行/提供される何らかの機能のことである。受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能を提供したりといったように、その内容や粒度はさまざまだ。』との記載によれば、上記「Webサービス」とは、当該「インターネット」につながった「マシン上のアプリケーションによって実行/提供される」、「受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能」であるものと解することができる。

また、上記摘記事項(1b)の「Webサービスのプロバイダーは、UDDIにより、自社のビジネス領域や提供するサービスに関する情報をレジストリとして登録する。サービスの利用者は、自分の欲するサービスを提供している会社はあるか、その会社と取り引きするにはどうしたらよいか、といった照会をそのレジストリに対して行うのだ。」との記載によれば、上記「レジストリ」が、上記「Webサービス」に関する情報である当該「サービスに関する情報」を当該「Webサービスのプロバイダー」から取得して「登録」し、上記「Webサービス」の利用者である当該「サービスの利用者」から「照会」を受け付け、当該「Webサービス」の利用者の欲する「Webサービス」である当該「自分の欲するサービス」に関する情報を照会する機能を備えることは明らかである。

したがって、上記摘記事項(1a)及び上記摘記事項(1b)によれば、引用文献1には、「Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリが、インターネットにつながったマシン上のアプリケーションによって実行/提供される、受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能であるWebサービスに関する情報をWebサービスのプロバイダーから取得して登録し、Webサービスの利用者から照会を受け付け、Webサービスの利用者の欲するWebサービスに関する情報を照会する機能を備える」ことが記載されているといえる。

(イ)上記摘記事項(1a)の「また、サービスの利用者は、必要な情報を得た後、レジストリを介することなくサービスの提供者に対して直接要求を行うことになる。」との記載によれば、上記(ア)の「Webサービスの利用者」である当該「サービスの利用者」が、上記「Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリ」から、上記「照会する機能」で照会された「Webサービスに関する情報」である当該「必要な情報」を得ていることは明らかである。

したがって、上記摘記事項(1a)によれば、引用文献1には、「Webサービスの利用者は、Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリから、上記照会する機能で照会されたWebサービスに関する情報を得る」ことが記載されているといえる。

上記(ア)乃至(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1発明」という。)が記載されているといえる。

(引用文献1発明)

「 インターネットにつながったマシン上のアプリケーションによって実行/提供される、受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能であるWebサービスに関する情報をWebサービスのプロバイダーから取得して登録し、Webサービスの利用者から照会を受け付け、Webサービスの利用者の欲するWebサービスに関する情報を照会する機能を備え、
Webサービスの利用者は、上記照会する機能で照会されたWebサービスに関する情報を得る、Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリ。」


(ウ)上記摘記事項(1c)の記載によれば、「プロバイダーのサービスの質や実績などの情報を提供するWebサービス」は、当該「プロバイダー」の「Webサービス」が「2重化されたノンストップ・システム」上で「実現されているのか」、「外部からは見えない」という「課題」を解決するためのものであると解することができる。

したがって、上記(ウ)から、引用文献1には、次の記載事項(以下、「引用文献1の記載事項)という。)が記載されているといえる。

(引用文献1の記載事項)

「 プロバイダーのWebサービスが2重化されたノンストップ・システム上で実現されているのか、外部から見えないという課題を解決するために、当該プロバイダーのWebサービスの質や実績などの情報を提供するWebサービス。」

(4-3)本願補正発明と引用文献1発明との対比

本願補正発明と引用文献1発明を対比する。

引用文献1発明の「インターネット」との事項は、本願補正発明の「ネットワーク」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「マシン上のアプリケーションによって実行/提供される、受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能であるWebサービス」との事項は、本願補正発明の「ソフトウェアサービス」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「Webサービスのプロバイダーから取得して登録し」との事項は、ソフトウェアサービスに関する情報を記憶しているから、本願補正発明の「管理し」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「Webサービスの利用者」との事項は、通常、ソフトウェアサービスをコンピュータを用いて利用するから、本願補正発明の「クライアント」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「Webサービスの利用者からの照会を受け付け」との事項は、クライアントからソフトウェアサービスの発見を依頼されているから、本願補正発明の「検索要求」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「Webサービスの利用者の欲するWebサービスに関する情報を照会する機能」との事項は、通常、CPUとプログラムにより実現されるものであり、また、Webサービスの利用者の欲するWebサービスが検索要求に対応するものであることは明らかであるから、本願補正発明の「検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第1の検索部」との事項に相当する。

してみると、引用文献1発明の「インターネットにつながったマシン上のアプリケーションによって実行/提供される、受注処理などの特定のビジネス・ロジックを実行したり、システム構築に必要となるユーザー認証の機能であるWebサービスに関する情報をWebサービスのプロバイダーから取得して登録し、Webサービスの利用者から照会を受け付け、Webサービスの利用者の欲するWebサービスに関する情報を照会する機能」との事項は、本願補正発明の「ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスに関する情報を管理し、クライアントからの検索要求を受け付けて当該検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第1の検索部」との事項に相当する。

また、引用文献1発明の「Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリ」との事項は、クライアントにプロバイダーのWebサービスに係わる情報を提供する機能を備えるから、本願補正発明の「サーバ」との事項に相当する。

そして、本願補正発明の「前記第1の検索部による検索結果と共に前記第2の検索部による検索結果を前記クライアントに返送する」との事項と引用文献1発明の「Webサービスの利用者は、上記照会する機能で照会されたWebサービスに関する情報を得る」との事項とは、後記の点で相違するものの、利用者が照会された情報を得る手法として、クライアントを用いて検索された情報をネットワークを介して受信することは通常のことであるから、ともに「前記第1の検索部による検索結果を前記クライアントに返送する」点で共通する。

したがって、両者は、

(一致点)

「 ネットワークを通じて提供されるソフトウェアサービスに関する情報を管理し、クライアントからの検索要求を受け付けて当該検索要求に対応するソフトウェアサービスを検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第1の検索部とを備え、
前記第1の検索部による検索結果を前記クライアントに返送するサーバ。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)

本願補正発明では、サーバが、第1の検索部による検索結果と共に、ソフトウェアサービスのサービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記第1の検索部により管理される前記ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報である第2の検索部による検索結果をクライアントに返送し、そのため、
サーバが、前記実績情報を格納する格納部と、
前記ソフトウェアサービスを提供するサービス実行サーバから前記実績情報を取得し前記格納部に格納して管理し、前記クライアントからの検索要求に応じて第1の検索部により検索された前記ソフトウェアサービスの当該実績情報を当該格納部から検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第2の検索部とを備えるのに対し、

引用文献1発明では、サーバが、第1の検索部による検索結果をクライアントに返送するものの、上記のような実績情報をクライアントに返送しておらず、そのため、
サーバが、上記のように構成されていない点。

(4-4)相違点についての判断

(相違点1について)

引用文献1には、「プロバイダーのWebサービスが2重化されたノンストップ・システム上で実現されているのか、外部から見えないという課題を解決するために、当該プロバイダーのWebサービスの質や実績などの情報を提供するWebサービス」との記載事項がみられる。

また、引用文献1発明の「Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリ」は、クライアントにプロバイダーのWebサービスに係わる情報を提供する機能を備える「サーバ」である。

してみると、引用文献1発明の「Webサービスの記述/発見/統合のための規格であるUDDIにより規定されるレジストリ」と、引用文献1の記載事項の上記「Webサービス」とは、共にクライアントにプロバイダーのWebサービスに係わる情報を提供する機能を備える点で共通するから、引用文献1発明において、引用文献1の記載事項を適用し、サーバが、第1の検索部による検索結果と共に、ノンストップというWebサービスの質を保証するために、当該「Webサービス」が提供するプロバイダーのサービスの質や実績などの情報、つまり第1の検索部により管理されるソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報をクライアントに返送するよう構成することは、当業者であれば適宜になし得るものである。

その際、ノンストップ・システム上でWebサービスを実現していることが、サービスの休止時間の実績により裏付けされることは当業者にとって明らかであるから、引用文献1発明において、サーバが、第1の検索部による検索結果と共に、ノンストップというWebサービスの質を保証するために、第1の検索部により管理されるソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報をクライアントに返送するよう構成するのであれば、当該実績情報を、ソフトウェアサービスのサービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含むものとすることは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

さらに、引用文献1発明において、サーバが、第1の検索部による検索結果と共に、ソフトウェアサービスのサービスの利用回数、サービスの利用頻度、サービスの実行時間、サービスの休止時間、のうち少なくともいずれか1つを含む、前記第1の検索部により管理される前記ソフトウェアサービスの質を判断するための実績情報をクライアントに返送するよう構成するのであれば、そのため、サーバが、前記実績情報を格納する格納部と、前記実績情報を前記格納部に格納して管理し、前記クライアントからの検索要求に応じて第1の検索部により検索された前記ソフトウェアサービスの当該実績情報を当該格納部から検索する、プログラム制御されたCPUにより実現される第2の検索部とを備えることは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

その際、ソフトウェアサービスの提供に係わる実績情報が、これを提供するサービス実行サーバにて採取されることは当然のことであるから、引用文献1発明において、第2の検索部を、ソフトウェアサービスを提供するサービス実行サーバから前記実績情報を取得するよう構成することは、当業者であれば適宜になし得る設計的事項にすぎないものである。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用文献1発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用文献1発明及び引用文献1の記載事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(5)本件補正についてのむすび

よって、本願補正発明は、引用文献1発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願の請求項6に係る発明

上記の平成20年 4月14日付けでした手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項6に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記の平成19年10月19日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項6に記載された事項により特定される上記2.(1)の「<<本件補正前の特許請求の範囲の記載>>」に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載の発明

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、これらの記載事項及び引用文献1発明は、上記2.(4)(4-2)「引用文献に記載の発明」の項に記載したとおりである。

(3)対比

本願発明と引用文献1発明とを対比すると、本願発明は、上記本願補正発明において、上記2.(3)の「補正の目的」の項において検討した特許請求の範囲を限定的に減縮するための補正事項の構成を省いたものである。

(4)判断

してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する上記本願補正発明が、上記2.(4)「独立特許要件」の項に記載したとおり、引用文献1発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび

上記のとおり、本願の請求項6に係る発明が、引用文献1発明及び引用文献1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-10 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-30 
出願番号 特願2004-532687(P2004-532687)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 功一  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 須田 勝巳
田代 吉成
発明の名称 ネットワークシステム、サーバおよびプログラム  
代理人 上野 剛史  
代理人 市位 嘉宏  
代理人 坂口 博  
代理人 太佐 種一  

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