【重要】サービス終了について

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1248355
審判番号 不服2008-30620  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-03 
確定日 2011-08-22 
事件の表示 特願2003-535217「ニオブ粉,その焼結体,その化成体及びそれらを用いたコンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月17日国際公開,WO03/32344〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2002年10月1日(優先権主張2001年10月2日,日本国)を国際出願日とする出願であって,平成20年3月27日付けで拒絶理由が通知され,同年5月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月4日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年12月3日に審判が請求されるとともに,平成21年1月5日に明細書の記載を補正する手続補正書が,また,同年2月10日に審判請求の理由を補充する手続補正書が提出されたものである。
その後,平成23年3月23日付けで当審により審尋がされ,同年5月24日に回答書が提出された。

第2 平成21年1月5日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定。

[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,明細書の段落【0025】について,補正前の,
「前記した範囲の平均窒素濃度のニオブ粒子は,例えばニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?1000℃に加熱することにより得ることができる。好ましくは,窒素雰囲気中で加熱したニオブ粒子を,さらに,不活性ガス雰囲気中,例えば,アルゴン雰囲気中で200?1000℃に加熱する。さらに好ましくは,窒素雰囲気中で加熱した後アルゴン雰囲気中で加熱したニオブ粒子を真空中で200?1000℃に加熱する。特に好ましくは,これら加熱中及びその間に,ニオブ粒子を酸素に触れさせないようにする。これらの方法では加熱温度,加熱時間,及びガスの圧力を調整することにより平均窒素濃度及びその分布を制御することができる。」
との記載を,補正後の,
「前記した範囲の平均窒素濃度のニオブ粒子は,例えばニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?400℃に加熱するか,または,窒素雰囲気中で200?1000℃に加熱したニオブ粒子を,さらに,不活性ガス雰囲気中,例えば,アルゴン雰囲気中で200?1000℃に加熱するかのいずれかにより得られる。さらに好ましくは,窒素雰囲気中で加熱した後アルゴン雰囲気中で加熱したニオブ粒子を真空中で200?1000℃に加熱する。特に好ましくは,これら加熱中及びその間に,ニオブ粒子を酸素に触れさせないようにする。これらの方法では加熱温度,加熱時間,及びガスの圧力を調整することにより平均窒素濃度及びその分布を制御することができる。」
とする補正内容を含むものである(下線は補正箇所を示す)。

2 新規事項の有無の検討
(1)上記補正内容について検討すると,補正前の記載は,ニオブ粒子の加熱処理について,「窒素雰囲気中で200?1000℃に加熱することにより得ることができる」とした上で,好ましい加熱方法として,不活性ガス雰囲気での加熱処理を追加する方法,さらに好ましい方法として,さらに真空中での加熱を追加する方法について記述したものと理解できる。
これに対し,補正後の記載は,「ニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?400℃に加熱する」方法について,他の方法と区別できるものとして記述している。

(2)しかし,本願の出願当初の明細書の他所を見ても,「ニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?400℃に加熱する」方法を,他の方法と区別できるものとして説明しているものと理解できる記載は見当たらない。
表1には,実施例9,10として,窒素雰囲気中で400℃に加熱した例が提示されているが,実施例3は500℃,実施例6は600℃であり,200?400℃の範囲を他と区別する根拠とはならない。

(3)そうすると,本件補正の内容は,本願の出願当初の明細書の記載に基礎を有しないことになる。そして,審判請求人は,審判請求の理由において,上記の補正に基づいて,本願発明と従来技術との違いを強調しているから,本件補正は,新たな技術的事項を導入しないものともいえない。

3 したがって,本件補正は,本願の出願当初の明細書に記載した事項の範囲内でしたものとはいえず,特許法17条の2第3項の規定に違反するので,同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明の容易想到性
1 本願発明
平成20年5月30日に提出された手続補正書によれば,本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,次のとおりである(以下,この発明を「本願発明」という。)。

【請求項1】
「窒素を含むコンデンサ用ニオブ粉において,ニオブ粉粒子の平均窒素濃度が粒子表面から深さ方向に不均一であり,ニオブ粉粒子表面からの深さ50?200nmまでの平均窒素濃度が0.29?4質量%であり,かつ,粒子表面からの深さ50nmまでの平均窒素濃度が0.19?1質量%であるニオブ粉。」

2 引用例の記載と引用発明
(1)引用例の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-223141号公報(以下「引用例1」という。)には,次の記載がある(下線は当審で付加したもの。以下同じ。)。
ア 従来の技術等
・「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は,固体電解コンデンサーのアノード電極として好適な,窒素含有金属粉末およびその製造方法ならびにそれを用いた多孔質焼結体および固体電解コンデンサーに関する。
【0002】【従来の技術】近年,電子集積回路は,より低電圧での駆動,高周波化,低ノイズ化が求められていて,固体電解コンデンサーについても,低ESR化,低ESL化の要求が高まってきている。固体電解コンデンサーのアノード電極に好適に用いられる金属粉末としては,例えば,ニオブ,タンタル,チタン,タングステン,モリブデン等が挙げられる。・・・」
・「【0003】一方,ニオブコンデンサーは,酸化ニオブの誘電率が大きく,かつ,タンタルよりも安価であることから,固体電解コンデンサーとして長年研究されてきた。しかし,化成酸化膜の信頼性が低いことから実用化には至っていない。すなわち,ニオブは高電圧で化成酸化すると,アモルファスの酸化膜が結晶化し漏れ電流が増加するとともに,コンデンサーの故障頻度の増加をもたらすという問題があった。ところが,最近では,電子回路の駆動電圧が低下する傾向にあるため,化成電圧を低くできるようになってきている。ニオブは,化成電圧が低い場合には信頼性を維持できるため,ニオブコンデンサーの実用化に有利な環境が整ってきつつある。特に,アルミニウム電解コンデンサーの代替品として,高容量で,かつ,アルミニウム電解コンデンサーよりもESRやESLの小さいニオブコンデンサーが開発のターゲットになっている。
【0004】高容量のニオブコンデンサーを製造するためには,タンタルの場合と同様に,BET比表面積換算一次粒子平均径d_(50)が少なくとも,500nm以下,好ましくは400nm以下であることが求められる。・・・」
・「【0005】一方,このような微細なニオブ粉末やタンタル粉末を使用して,高容量のアノード電極とする場合には,これらの粉末の高表面積化にともなって,粉体中の酸素含有量が増加するため,熱処理工程や化成酸化工程で結晶性酸化物を形成しやすくなり,漏れ電流が増加するという問題があった。また,コンデンサーの定格電圧の低下にともなって,誘電体酸化膜を形成する化成電圧も低下している。よって,形成される誘電体酸化膜の膜厚が薄くなる傾向にあり,容量は高くなるものの長期の信頼性に劣るという問題もあった。そこで,酸素の影響を抑え,薄い膜の信頼性を向上させる方法として,焼結体や誘電酸化膜を製造した後,これらに窒素をドープする方法が知られている。
【0006】例えば,米国特許A5448447号には,漏れ電流の低下,高温での化成酸化膜の安定性および信頼性の向上を目的として,窒素がドープされている。また,WO98/37249公報には,高容量のタンタル粉末への窒素の均一なドーピング方法として,還元パウダーに塩化アンモニウムを添加し,加熱凝集と同時に窒素を導入する方法が開示されている。さらに,ニオブのスパッタリングNb-O膜への窒素ドープによる漏れ電流の低減(K.Sasakiら,Thin Solid Films,74(1980)83-88),窒化ニオブの焼結体アノードによる漏れ電流等の改良(WO98/38600公報)等がある。また,特開平8-239207号公報には,還元して得られたタンタルまたはニオブ粉末を加熱凝集する工程,または,脱酸素の工程で窒素含有ガス雰囲気下で加熱する加熱窒化法が開示されている。」

イ 発明が解決しようとする課題と課題解決手段
・「【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来知られている方法では,粉末の表面または膜の表面から窒化が進行するため,窒化反応が窒素の拡散律速になり,窒化が不均一になりやすいという問題があった。さらに,窒素量が3000ppmを超えると,例えば金属粉末がタンタルの場合には,TaN_(0.04),TaN_(0.1),Ta_(2)N等の結晶性の窒化物が生成し,さらにドーピング量が増加すると,TaN,Ta_(2)N等が主成分の結晶相が生成する。これらの結晶性窒化物が生成すると,アノード電極の比容量を低下させるとともに誘電体膜の信頼性低下の原因になるという問題があった。また,焼結体や誘電酸化膜を製造した後,これらに窒素をドープする方法では,窒素化工程が余分に必要となるため,生産性が低下するという問題もあった。すなわち,従来,微細なニオブまたはタンタルに必要十分な量の窒素が均一にドープされていて,かつ,窒素が結晶性の化合物を形成しておらず,金属結晶格子内に固溶状態で含有されている窒素金属化合物は見出されていなかった。
【0008】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,金属結晶内に窒素が均一に固溶している窒素含有金属粉末を生産性良く得て,高比容量で漏れ電流が少なく長期の信頼性に優れた固体電解質コンデンサーを提供することを課題とする。
【0009】【課題を解決するための手段】本発明の窒素含有金属粉末は,50?20000ppmの窒素を固溶している窒素含有金属粉末であり,金属は,ニオブまたはタンタルであることを特徴とする。本発明の窒素含有金属粉末の製造方法は,ニオブ化合物またはタンタル化合物を還元剤で還元しながら,反応系内に窒素含有ガスを導入して,ニオブまたはタンタルを生成させると同時に,ニオブまたはタンタルに窒素を含有させることを特徴とする。上記ニオブ化合物またはタンタル化合物は,フッ化カリウム塩またはハロゲン化物であることが好ましい。または,上記ニオブ化合物は,フッ化ニオブ酸カリウムであることが好ましい。上記還元剤は,ナトリウム,マグネシウム,カルシウム,水素化マグネシウム,水素化カルシウムから選ばれる1種以上か,水素含有ガスのいずれかであることが好ましい。上記製造方法においては,窒素含有金属粉末中,50?20000ppmの窒素が固溶していることが好ましい。また,上記窒素含有ガス中には,純窒素ガスおよび/または加熱により窒素ガスを発生する窒素発生ガスが含まれていることが好ましい。本発明の窒素含有金属粉末は,多孔質焼結体としてアノード電極に使用することに適している。」

ウ 発明の実施の形態
・「【0010】【発明の実施の形態】以下,本発明を詳細に説明する。本発明の窒素含有金属粉末は,ニオブまたはタンタルに,50?20000ppmの窒素が均一に固溶している粉末である。金属へ窒素が固溶すると,金属結晶の格子定数が変化するため,金属への窒素の固溶は,X線回折ピークの位置のシフトによって確認することができる。ニオブおよびタンタルは,固体電解コンデンサーの電極として使用した場合に高容量であることから,好ましく用いられる。例えば,タンタルに4000ppmの窒素が固溶すると,金属タンタルの(110)面の面間隔d=2.3375Åが,d=2.3400Åへと,約0.1%増加する。また,本発明の窒素含有金属粉末は,BET比表面積基準の平均粒子径が80?500nm,好ましくは80?360nmである。このような平均粒子径を有する微細な窒素含有金属粒子は,多孔質焼結体を形成して固体電解コンデンサーのアノード電極として使用すると,高容量が達成できるため好ましい。
【0011】このような窒素含有金属粉末は,ニオブ化合物またはタンタル化合物を還元しながら,反応系内に窒素含有ガスを導入して,ニオブまたはタンタルを生成させると同時に,ニオブまたはタンタルに窒素を含有させることによって得られる。この場合,還元反応と窒素の導入を同時に行うことができれば,反応系は液相系でも,気相系でもよい。ニオブ化合物またはタンタル化合物としては,特に制限はなくこれらの金属の化合物を使用できるが,フッ化カリウム塩,ハロゲン化物等が好ましい。フッ化カリウム塩としては,K_(2)TaF_(7),K_(2)NbF_(7),K_(2)NbF_(6)等が挙げられ,ハロゲン化物としては,五塩化ニオブ,低級塩化ニオブ,五塩化タンタル,低級塩化タンタル等の塩化物や,ヨウ化物,臭化物等が挙げられる。また,特にニオブ化合物としては,フッ化ニオブ酸カリウム等のフッ化ニオブ酸塩や,五酸化ニオブ等の酸化物も挙げられる。」

エ 実施例
・「【0023】【実施例】以下,本発明を実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]50Lの反応容器に,希釈塩のフッ化カリウムと塩化カリウムを各15kg入れ,850℃まで昇温して融液とした。ついで,この融液にノズルを挿入し,窒素ガスを750ml/分の流量でバブリングして,融液中に導入した。この融液内へ,1回あたりフッ化タンタルカリウム200gを添加し,1分後,溶解したナトリウムを58g添加し,2分間反応させた。この操作を30回繰り返した。なお,この間,窒素ガスのバブリングを継続して行った。還元反応終了後冷却し,得られた集塊を砕き,弱酸性水溶液で洗浄し,タンタル粒子を得た。さらに,フッ酸と過酸化水素を含む洗浄液で精製処理した。タンタルの還元粒子の収量は1.6kgであった。このようにして得られたタンタル粒子は下記の特性を有した。
BET比表面積 1.8m^(2)/g
一次粒子の平均粒子径 200nm
窒素の含有量 5800ppmX線回折データ
窒素の形態…結晶相が認められない固溶状態
Ta(110)面の面間隔…2.3400Å」

オ 特許請求の範囲の請求項1
・「【請求項1】 50?20000ppmの窒素を固溶している窒素含有金属粉末であり,金属が,ニオブまたはタンタルであることを特徴とする窒素含有金属粉末。」

(2)引用発明
上記ア?オによれば,引用例1には,「固体電解コンデンサの電極に用いられる窒素含有金属粉末であって,50?20000ppmの窒素が均一に含有され,金属がニオブまたはタンタルである,窒素含有金属粉末。」についての発明が開示されている(以下,この発明を「引用発明」という。)。

3 一致点及び相違点
(1)本願発明と引用発明を対比すると,引用発明において,金属としてニオブを選択した場合,「固体電解コンデンサの電極に用いられる窒素含有金属粉末」は,本願発明の「窒素を含むコンデンサ用ニオブ粉」に相当する。

(2)そうすると,本願発明と引用発明は,「窒素を含むコンデンサ用ニオブ粉。」である点で一致し,次の点で相違する。

〔相違点〕
本願発明では,「ニオブ粉粒子の平均窒素濃度が粒子表面から深さ方向に不均一であり,ニオブ粉粒子表面からの深さ50?200nmまでの平均窒素濃度が0.29?4質量%であり,かつ,粒子表面からの深さ50nmまでの平均窒素濃度が0.19?1質量%である」のに対し,引用発明は,「ニオブ粉粒子」が「50?20000ppmの窒素が均一に含有され」るものである点。

4 検討
(1)引用発明は,「ニオブ粉粒子」が「50?20000ppmの窒素が均一に含有され」るものであるが,引用例1の「【0007】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来知られている方法では,粉末の表面または膜の表面から窒化が進行するため,窒化反応が窒素の拡散律速になり,窒化が不均一になりやすいという問題があった。」との記載によれば,従来知られている方法では,「粉末の表面または膜の表面から窒化が進行するため,窒化反応が窒素の拡散律速になり,窒化が不均一になりやすい」というのであるから,従来知られている方法によれば,窒素含有量は,多かれ少なかれ,粒子表面から深さ方向に不均一になっていたものと理解できる。

(2)引用発明は,窒素含有量を均一にしたものであるが,ニオブ粉粒子の窒素濃度は,「50?20000ppm」であり,実施例1では,タンタル粉粒子の場合であるが,窒素濃度は「5800ppm」である。1ppmは0.0001質量%に相当するから,これらは,それぞれ,「0.05?2質量%」,「0.58質量%」に相当する。
そうすると,窒素濃度が粒子表面から深さ方向に「均一」か「不均一」かの相違を除き,引用発明の窒素濃度は,本願発明のものと重なることが分かる。

(3)次に本願明細書を見ると,本件補正前の段落【0025】には,窒素濃度の調整方法について,次のように記載されている。
「前記した範囲の平均窒素濃度のニオブ粒子は,例えばニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?1000℃に加熱することにより得ることができる。好ましくは,窒素雰囲気中で加熱したニオブ粒子を,さらに,不活性ガス雰囲気中,例えば,アルゴン雰囲気中で200?1000℃に加熱する。さらに好ましくは,窒素雰囲気中で加熱した後アルゴン雰囲気中で加熱したニオブ粒子を真空中で200?1000℃に加熱する。特に好ましくは,これら加熱中及びその間に,ニオブ粒子を酸素に触れさせないようにする。これらの方法では加熱温度,加熱時間,及びガスの圧力を調整することにより平均窒素濃度及びその分布を制御することができる。」
この記載と,表1を合わせて読むと,ニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?1000℃に加熱しただけの場合は,ニオブ粉粒子の表面から深さ50nmまでの平均窒素濃度を深さ50?200nmまでの平均窒素濃度よりも大きくでき,窒素雰囲気中で加熱したニオブ粒子を,さらに,不活性ガス雰囲気中,例えば,アルゴン雰囲気中で200?1000℃に加熱した場合は,ニオブ粉粒子の表面から深さ50nmまでの平均窒素濃度を深さ50?200nmまでの平均窒素濃度と同程度にすることができ,さらに,窒素雰囲気中で加熱した後アルゴン雰囲気中で加熱したニオブ粒子を真空中で200?1000℃に加熱すると,ニオブ粉粒子の表面から深さ50nmまでの平均窒素濃度を深さ50?200nmまでの平均窒素濃度よりも小さくできることが分かる。
上記の処理方法のうち,ニオブ粒子を窒素雰囲気中で200?1000℃に加熱する方法は,原査定の拒絶の理由に引用され,本願の優先日前に日本国内で頒布された刊行物である特開2000-91165号公報に記載(段落【0018】?【0021】)されているような,ニオブ粉粒子に窒素を含有させる公知の方法と同種のものといえる。

(4)そうすると,引用発明において,ニオブ粉粒子に窒素を含有させる従来の方法を採用した場合,ニオブ粉粒子の平均窒素濃度は,本願発明と数値範囲が重なるものと推認できる。引用発明は,窒素含有量を均一にするものであるけれども,技術的には不均一であることを妨げないし,引用例1の従来技術の説明によれば,従来不均一になっていたものである。
したがって,本願発明は,引用発明に引用例2に記載されたような公知の技術を適用することにより,当業者が容易に到達し得たものといえる。

(5)なお,本願明細書の表1には,ニオブ粉粒子の表面から深さ50nmまでの平均窒素濃度と深さ50?200nmまでの平均窒素濃度について,いくつかの場合の実施例(実施例1?実施例10)が示されている。これらの実施例を見ると,深さ50nmまでの平均窒素濃度と深さ50?200nmまでの平均窒素濃度との関係は,両者が等しい場合(実施例1,実施例4,実施例7),前者が後者よりも大きい場合(実施例3,実施例6,実施例9,実施例10),前者が後者よりも小さい場合(実施例2,実施例5,実施例8)など,全ての組合せがある。したがって,両者の大小関係それ自体は,等しい場合も含めて,格別の技術的意義を有しないと考えられる。

(6)以上のとおり,本願発明は,引用発明及び公知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

第4 結言
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-06-24 
結審通知日 2011-06-28 
審決日 2011-07-11 
出願番号 特願2003-535217(P2003-535217)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 575- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子重田 尚郎  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 小川 将之
近藤 幸浩
発明の名称 ニオブ粉、その焼結体、その化成体及びそれらを用いたコンデンサ  
代理人 林 篤史  
代理人 大家 邦久  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ