• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1248370
審判番号 不服2010-15241  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-07-08 
確定日 2011-09-09 
事件の表示 特願2009-529451「光非相反素子製造方法及び光非相反素子」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 3月 4日国際公開、WO2010/023738〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年8月27日を国際出願日とする出願であって、平成21年10月9日付けの拒絶理由の通知に応答して同年12月1日に手続補正がされ、同年同月24日付けの拒絶理由の通知に応答して平成22年3月8日に手続補正がされたが、同年4月9日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年7月8日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに、これと同時に手続補正がされたものである。

第2 平成22年7月8日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年7月8日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正による請求項3についての補正について
本件補正による請求項3についての補正は次のとおりのものである。
本件補正前に
「 【請求項3】
導波路が形成されたSi導波層と、前記Si導波層の前記導波路が形成された面と反対側の面に接するCe:YIG層と、を備え、
前記Si導波層が、前記磁気光学材料層の上に成膜されたSi層に導波路を形成することで得られたものであり、
前記Ce:YIG層が、300nmより厚く形成されているとともに、前記導波路を伝播する光に非相反な位相変化を生じさせるように磁化されている、光非相反素子。」(平成22年3月8日の手続補正書参照。)
とあったものを、
本件補正後に
「 【請求項3】
導波路が形成されたSi導波層と、前記Si導波層の前記導波路が形成された面と反対側の面に接するCe:YIG層と、を備える空気/Si/Ce:YIG/基板という層構造の光非相反素子であって、
前記Si導波層が、前記磁気光学材料層の上に成膜されたSi層に導波路を形成することで得られたものであり、
前記Ce:YIG層が、300nmより厚く形成されているとともに、前記導波路を伝播する光に非相反な位相変化を生じさせるように磁化されている、光非相反素子。」
とする。

該補正は、発明を特定するために必要な事項である光非相反素子の層構造について、Si層の上の層を空気層に限定している。
よって、本件補正による請求項3についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか( 特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか否か)について検討する。

(1)本願補正発明の認定
本件補正後の請求項3に係る発明(以下「本願補正発明」という。) は、本件補正後の請求項3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。

(2)引用発明の認定
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開平7-318876号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載ア及びイが図と共にある。
ア 「【請求項1】少なくともその一部が磁気光学材料とSi材料とから形成された光導波路からなることを特徴とする光非相反回路。
【請求項2】前記磁気光学材料がYIG、Bi置換YIG、Ce置換YIG膜およびLa,Ga置換YIG膜より選択された1種であることを特徴とする請求項1記載の光非相反回路。」

イ 「【0012】図4に第1の実施例の形成方法を示す。図4(a)に示すようにGGG(Gd_(3)Ga_(5)O_(12))、カチオンドープGGG、NGG(Nd_(3)Ga_(5)O_(12))等の結晶基板上にLPE、スパッタ等によりYIG、Bi置換YIG、Ce置換YIG等の磁気光学膜11を形成する。次に、図4(b)に示すようにその上にスパッタ、CVD等によりa-Si膜またはSi膜3を形成する。次に、フォトリゾグラフィ技術を用いて、この膜3をドライエッチングまたはケミカルエッチングを行ない、図4(c)に示すように所望のパターンのリブ導波路4を形成し完成する。」

上記イが参照する引用例の図4(c)からは、Si膜3の磁気光学膜2に接する面とは反対側の面にリブ導波路4が形成されていることが看取できる。このことは、上記イより、磁気光学膜11、Si膜3、リブ導波路4の順に形成されることからも導かれる。
なお、引用例に「【0014】
【実施例3】図6は本発明の第3の実施例の導波路断面図である。第1の実施例における導波路にSiO_(2)膜、樹脂等のカバー層11を形成した構造である。」とあるとおり、符号11は導波路の上に形成されるカバー層11(上記記載が参照する引用例の図6参照)を指すのであって、上記イの「磁気光学膜11」は「磁気光学膜2」の誤記である。

したがって、上記ア及びイを含む引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「結晶基板上に磁気光学膜であるCe置換YIG膜を形成し、前記Ce置換YIG膜上にSi膜を形成し、前記Si膜の前記Ce置換YIG膜に接する面とは反対側の面をエッチングしてリブ導波路を形成して完成した光非相反回路。」(以下「引用発明」という。)

(3)対比
引用発明と本願補正発明とを対比する。
引用発明の「結晶基板」、「磁気光学膜」、「Ce置換YIG膜」、「リブ導波路」及び「光非相反回路」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」、「磁気光学材料層」、「Ce:YIG層」、「導波路」及び「光非相反素子」に相当する。

引用発明は、Si膜をエッチングしてリブ導波路を形成した段階で光非相反回路として完成し、リブ導波路上にさらに別の構成要素を形成するものではないから、Si膜上には空気しか存在しない。このことに対応して、引用発明に相当する「第1の実施例」の光非相反回路が示された引用例の図4(c)は、Si膜3の上に何も描かれていない。
よって、引用発明は「空気/Si膜/Ce置換YIG膜/結晶基板という層構造」を有しており、これは、本願補正発明の「空気/Si/Ce:YIG/基板という層構造」に相当する。
なお、上記「(2)引用発明の認定」で引用した引用例の【0014】に、引用発明に相当する「第1の実施例」の導波路にカバー層11を形成した「第3の実施例」が記載されているとおり、引用発明は、Si膜の上にカバー等は無く空気が存在するのに対して、「第3の実施例」では、Si膜の上にカバー層11が存在する。

引用発明の「Si膜」は、その一方の面にリブ導波路が形成されているのであるから、本願発明の「Si導波層」に相当する。
そして、引用発明の「Si膜」は、リブ導波路が形成される前のSi膜にリブ導波路を形成することによって、リブ導波路が形成されたSi膜となったのであるから、引用発明の「Si導波層」(Si膜)は、磁気光学材料層(磁気光学膜)の上に成膜されたSi層(Si膜)に導波路(リブ導波路)を形成することで得られたものである。

してみれば、本願補正発明と引用発明とは、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点1>及び<相違点2>で相違する。
<一致点>
「導波路が形成されたSi導波層と、前記Si導波層の前記導波路が形成された面と反対側の面に接するCe:YIG層と、を備える空気/Si/Ce:YIG/基板という層構造の光非相反素子であって、
前記Si導波層が、前記磁気光学材料層の上に成膜されたSi層に導波路を形成することで得られたものである、光非相反素子。」

<相違点1>
本願補正発明は「Ce:YIG層が、300nmより厚く形成されている」と特定されているのに対し、引用発明は該特定を有しない点。

<相違点2>
本願補正発明は「Ce:YIG層が、・・・導波路を伝播する光に非相反な位相変化を生じさせるように磁化されている」と特定されているのに対し、引用発明は該特定を有するか否か定かでない点。

(4)判断
ア <相違点1>について
引用発明の「磁気光学膜であるCe置換YIG膜」の厚さの下限は、以下の点(ア)及び(イ)を鑑みれば、自ずと定まる設計事項である。
(ア) 光非相反素子は、磁化した磁気光学材料層の磁気光学効果により、前進する光と後退する光とで偏光面が回転する向きが異なることに由来する光非相反作用を利用するものであるから、該層が薄過ぎれば十分な光非相反作用が生じない。
(イ) 引用例の【0009】には「光は磁気光学膜とSi膜の両方の中を導波する。」とある。一方、一般に、膜内に光を導入し進行させる際には、膜厚が光の波長に比べて薄過ぎれば、膜内に光が進入し進行することが困難になる。

そして、光非相反素子における磁気光学材料層の厚さとして、300nmは、通常用いられる厚さからかけ離れた値ではない。
例えば、引用例の【0011】には「光波長1.55μm」とある。引用発明のCe置換YIG膜の厚さがこの値と比べて薄過ぎてはならないことは、上記(イ)で述べたとおりである。また、「光波長1.55μm」つまり1550nmは赤外線であるが、より波長の短い可視光領域(約400?700nm)を使うのであれば、該膜の厚さは約400?700nmと比べて薄過ぎない値を採用することになる。
本願出願前に頒布された特開平7-43654号公報には、以下の記載がある。
「【0007】 前記文献にも記載されている磁気光学導波路の従来例を図3に示す。光の伝搬方向(Z軸)に垂直な断面を表している。GGG基板2上に磁気光学材料であるYIG単結晶薄膜による磁気光学リブ導波層3が形成されている。」
「【0014】また従来例で示した高屈折物質装荷型(図3)と同じ屈折率2.6の物質でストリップライン5を形成した場合の、ストリップライン5と高屈折率層4の厚さをともにdとおき非相反移相量との関係を示したのが図2(B)である。導波路幅W=3.5μm、磁気光学導波層の厚さはt=0.5μmに固定してある。」
(下線は審決にて付した。)
該記載では、YIG膜の厚さが0.5μmつまり500nmとされている。

してみれば、引用発明において、本願補正発明の相違点1に係る構成を備えることは、設計事項の範囲内で、当業者が適宜なし得たことである。

イ <相違点2>について
引用例に以下の記載(ア)及び(イ)があるとおり、引用発明は、磁気光学材料層であるCe置換YIG膜が磁化されることで光非相反回路としての機能を発揮するものであるから、光非相反回路として用いる際には、本願補正発明の相違点2に係る構成を備えていなければならない。よって、相違点2は、実質的には存在しない。
(ア) 「【0002】・・・y方向に外部磁界55が印加されると、磁気光学膜52の比誘電率は式1のテンソルとなり、導波路中を通るTM偏波57、59の光は位相定数が変化し、前進波56と後退波58とでは位相定数の差を生じる。これが光非相反移相器を構成し、その量が非相反移相量である。」

(イ) 「【0011】また光波長1.55μmにおいて、磁気光学膜に磁気光学効果の大きなCe置換YIG膜(ファラデー回転角-4800deg/cm)を用いたときの非相反移相量φ_(N)とSi膜厚の関係を図3に示す。」

ウ まとめ
上記ア及びイより、引用発明において、本願補正発明の相違点1及び相違点2に係る構成を備えることは、設計事項の範囲内で、当業者が適宜なし得たことである。
また、かかる構成を採用することによる効果は、当業者が予測し得る程度のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たしていない。

エ 請求人の主張について
請求人は、平成23年4月12日の回答書において、
「本願補正発明は、空気/Si/Ce:YIG/基板という層構造において、安定した非相反移相効果を得るための技術事項として、Ce:YIG層を300nm以上より厚く成膜(形成)することを特定したのに対して、審査官の引用した引用文献1?4には、該特定が記載されていない。」旨を主張している。
しかしながら、引用文献1?4を参照することなく、空気/Si/Ce:YIG/基板という層構造を有する引用発明において、Ce:YIG層を300nm以上より厚く成膜(形成)することが、設計事項の範囲内で当業者が適宜なし得ることは、上記アで検討したとおりである。
よって、該主張は、上記アないしウの判断を左右するものではない。

3 本件補正についてのむすび
上記「2 独立特許要件について」に記載のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年3月8日の手続補正で補正された請求項3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。

2 引用例の記載事項及び引用発明の認定
引用例の記載事項及び引用発明は、上記「第2 平成22年7月8日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について」の「(2)引用発明の認定」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 平成22年7月8日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について」で検討した本願補正発明の発明を特定するために必要な事項である「光非相反素子の層構造」についての限定を省いたものに相当する(上記「第2 平成22年7月8日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 1 本件補正による請求項3についての補正について」参照。)。

すると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成22年7月8日の手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について」に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-12 
結審通知日 2011-07-13 
審決日 2011-07-29 
出願番号 特願2009-529451(P2009-529451)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 貴一  
特許庁審判長 江成 克己
特許庁審判官 杉山 輝和
松川 直樹
発明の名称 光非相反素子製造方法及び光非相反素子  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  
代理人 江口 昭彦  
代理人 土屋 徹雄  
代理人 内藤 和彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ