• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02H
管理番号 1248380
審判番号 不服2010-21891  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-09-29 
確定日 2011-09-15 
事件の表示 特願2005-515293「過熱防止デバイスおよびこれを備える電気装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 5月19日国際公開,WO2005/046017〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成16年11月2日(優先日,平成15年11月7日)の出願であって,平成22年6月21日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月29日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付け手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「温度に応じて抵抗が変化するPTC素子を含む過熱防止デバイスであって,
電気装置に流れる電流を印加電圧に応じて制御するスイッチング素子と,
電気抵抗がRであり,スイッチング素子に対して並列に電気接続された抵抗器と,
を更に含み,PTC素子は抵抗器に対して直列に電気接続され,PTC素子及び抵抗器は電気装置に対して並列に電気接続され,PTC素子はその電気抵抗が急激に増加するトリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) がR/P_(H) <1/10の関係を満足し,トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) がR/P_(L) >10の関係を満足し,PTC素子は電気装置の所定の箇所に熱的に結合して配置され,所定の箇所が高温状態となったときにスイッチング素子の印加電圧を変化させて電気装置に流れる電流を遮断することを特徴とする,過熱防止デバイス。」
と補正された。

上記補正は,実質的に,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「抵抗器」について「スイッチング素子に対して並列に電気接続された」との限定を付加し,同じく「PTC素子」と「抵抗器」と「電気装置」との関係について「PTC素子は抵抗器に対して直列に電気接続され,PTC素子及び抵抗器は電気装置に対して並列に電気接続され」との限定を付加するものであって,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-152516号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,電池パックを異常温度から保護するための電池パック温度保護回路に関する。」

・「【0010】・・・抵抗素子の抵抗値,サーミスタの温度特性,またはスイッチ回路の動作点を適切に選べば,周囲温度が予め設定された温度を越えた場合に,スイッチ回路を開放させて,電池を外部から遮断することが可能となる。」

・「【0020】・・・例えば過充電や過放電により電池1が発熱すると,サーミスタ21Bの周囲温度が上昇する。」

・「【0027】
V2=V×R1/(R1+RTH1) ・・・(2)
ただし,Vは電池1の両極間の電圧であり,RTH1はサーミスタ21Bの抵抗値であり,R1は抵抗素子21Aの抵抗値である。」

・「【0030】ここで,サーミスタ23Bは,図8に例示するように,周囲温度の上昇に伴って110℃付近で抵抗値が増加する正の特性を有する。この場合,抵抗素子21A(20kΩ)とサーミスタ23Bとの接続点に現れる電圧V3は,図9に示すように,周囲温度の上昇に伴って110℃付近で増加する傾向を示す特性を有するものとなる。」

・「【0032】実施の形態4.図10に,この発明の実施の形態4にかかる電池パック温度保護回路24が適用された電池パックの回路構成を示す。この電池パック温度保護回路24は,前述の図7に示す電池パック温度保護回路23の構成において,抵抗素子21AとPTC型のサーミスタ23Bとを入れ替えて構成される。
【0033】この場合,抵抗素子21Aとサーミスタ23Bとの接続点に現れる電圧V4は,図11に示すように,周囲温度の上昇に伴って110℃付近で減少する傾向を示す特性を有するものとなる。この特性を利用し,設定温度に合わせてFET21Cのゲートカットオフ電圧を選択すれば,設定温度以下の場合にFET21Cをオンさせ,設定温度以上の場合にオフさせて,GND端子12から流れ込む電流I1を遮断することが可能となる。
【0034】上述の各実施の形態によれば,電池パック温度保護回路を構成する各部品は小型軽量であり,しかも表面実装部品であるため,電池パックの小形軽量化及び自動搭載が可能となり,製造コストも低減される。」

・「【0036】
【発明の効果】以上説明したように,この発明によれば以下の効果を得ることができる。すなわち,所定の抵抗値を有する抵抗素子と周囲温度に応じて抵抗値が変化するサーミスタとを直列接続して,これらを電池に対して並列接続し,前記電池に対してスイッチ回路を直列接続し,前記抵抗素子とサーミスタとの接続点に現れる電位に応じて前記スイッチ回路を開閉するようにしたので,組み立て費用の増加を招くことなく電池パックを小形軽量化することが可能となる。」

・図8には,サーミスタの抵抗値が周囲温度の110℃付近で急激に増加する特性が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると,引用例1には実施の形態4に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「周囲温度に応じて抵抗値が変化するPTC型のサーミスタ23Bを含む電池パック温度保護回路24であって,
電池1に流れる電流I1を印加する電圧V4に応じて制御するFET21Cと,
抵抗値がR1であり,FET21Cに対して並列に電気接続された抵抗素子21Aと,
を更に含み,PTC型のサーミスタ23Bは抵抗素子21Aに対して直列に電気接続され,サーミスタ23B及び抵抗素子21Aは電池1に対して並列に電気接続され,サーミスタ23Bはその抵抗値RTH1が周囲温度の110℃付近で急激に増加する正の特性を有し,電池1の両極間の電圧Vに対し,V×R1/(R1+RTH1)で算出されるサーミスタ23Bと抵抗素子21Aとの接続点に現れる電圧V4を変化させ,電池パック温度保護回路24を構成するサーミスタ23Bは表面実装部品であり,電池1が発熱して周囲温度が上昇し,FET21Cのゲートカットオフ電圧に合わせた設定温度以上になった場合にFET21Cに印加する電圧V4を減少させて電池1に流れる電流I1を遮断する,電池パック温度保護回路24。」

b)同じく,引用された特開平10-270094号公報(以下「引用例2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電気自動車用電池電源装置を構成する多数の単電池の内,少なくとも1つが異常昇温したときに,これを検出するために開発された電池の異常昇温検出方法及び装置に関するものである。」

・「【0018】各単電池7の側周面にはPTC(Positive TemperatureCoefficient)センサ14が接着されている。このPTCセンサは単電池7が内部の異常によって昇温したとき,電気抵抗が急激に増大してその異常を検知する温度センサであり,例えば80℃に達したときに電気抵抗が急激に増大するものを用いている。」

「【0058】
【発明の効果】本発明によれば,1つの抵抗測定装置を用いた簡単な構造の装置で,直列に接続された多数の単電池の内の1個でも異常昇温したときに,これを的確に検出できて,電池の安全性を確保できると共に,温度センサ自身の発熱の問題が生じない電池の異常昇温検出方法及び装置を提供することができる。」

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず,後者の「周囲温度」は前者の「温度」に,後者の「抵抗値」は前者の「抵抗」に,後者の「PTC型のサーミスタ23B」は前者の「PTC素子」に,後者の「電池パック温度保護回路24」は前者の「過熱防止デバイス」に,後者の「電池1」は前者の「電気装置」に,後者の「印加する電圧V4」は前者の「印加電圧」に,後者の「FET21C」は前者の「スイッチング素子」に,後者の「抵抗値がR1であり」とする態様は前者の「電気抵抗がRであり」とする態様に,後者の「抵抗素子21A」は前者の「抵抗器」に,それぞれ相当している。

次に,後者の「サーミスタ23Bはその抵抗値RTH1が周囲温度の110℃付近で急激に増加する正の特性を有し」ている態様における「110℃」が前者の「PTC素子はその電気抵抗が急激に増加するトリップ温度」に相当し,後者の「サーミスタ23B」は「トリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) 」と「トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) 」とを有することが明らかであり,また,後者の「電池1の両極間の電圧Vに対し,V×R1/(R1+RTH1)で算出されるサーミスタ23Bと抵抗素子21Aとの接続点に現れる電圧V4を変化させ」る態様と前者の「トリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) がR/P_(H) <1/10の関係を満足し,トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) がR/P_(L) >10の関係を満足し」ている態様とは,「トリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) とトリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) が,電気抵抗Rと所定の関係を有し」ているとの概念で共通するから,結局,後者の「サーミスタ23Bはその抵抗値RTH1が周囲温度の110℃付近で急激に増加する正の特性を有し,電池1の両極間の電圧Vに対し,V×R1/(R1+RTH1)で算出されるサーミスタ23Bと抵抗素子21Aとの接続点に現れる電圧V4を変化させ」る態様と前者の「PTC素子はその電気抵抗が急激に増加するトリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) がR/P_(H) <1/10の関係を満足し,トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) がR/P_(L) >10の関係を満足し」ている態様とは,「PTC素子はその電気抵抗が急激に増加するトリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) とトリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) が,電気抵抗Rと所定の関係を有し」ているとの概念で共通している。

また,後者の「電池パック温度保護回路24を構成するサーミスタ23Bは表面実装部品であり」とする態様と前者の「PTC素子は電気装置の所定の箇所に熱的に結合して配置され」る態様とは,「PTC素子は所定状態で配置され」るとの概念で共通する。

さらに,後者の「電池1が発熱して周囲温度が上昇し,FET21Cのゲートカットオフ電圧に合わせた設定温度以上になった場合にFET21Cに印加する電圧V4を減少させて電池1に流れる電流I1を遮断する」態様と前者の「所定の箇所が高温状態となったときにスイッチング素子の印加電圧を変化させて電気装置に流れる電流を遮断する」態様とは,「PTC素子が配置された箇所が高温状態となったときにスイッチング素子の印加電圧を変化させて電気装置に流れる電流を遮断する」との概念で共通する。

したがって,両者は,
「温度に応じて抵抗が変化するPTC素子を含む過熱防止デバイスであって,
電気装置に流れる電流を印加電圧に応じて制御するスイッチング素子と,
電気抵抗がRであり,スイッチング素子に対して並列に電気接続された抵抗器と,
を更に含み,PTC素子は抵抗器に対して直列に電気接続され,PTC素子及び抵抗器は電気装置に対して並列に電気接続され,PTC素子はその電気抵抗が急激に増加するトリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) とトリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) が,電気抵抗Rと所定の関係を有し,PTC素子は所定状態で配置され,PTC素子が配置された箇所が高温状態となったときにスイッチング素子の印加電圧を変化させて電気装置に流れる電流を遮断する,過熱防止デバイス。」
である点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
PTC素子の「トリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) とトリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) が,電気抵抗Rと所定の関係を有し」ている態様に関し,本願補正発明は,「トリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) がR/P_(H) <1/10の関係を満足し,トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) がR/P_(L) >10の関係を満足し」ている条件を特定しているのに対し,引用発明は,かかる特定がなされていない点。
[相違点2]
「PTC素子は所定状態で配置され」る態様に関し,本願補正発明は,「PTC素子は電気装置の所定の箇所に熱的に結合して配置され」ているのに対し,引用発明は,かかる配置が明確にされていない点。
[相違点3]
「PTC素子が配置された箇所」に関し,本願補正発明は,「電気装置の所定の箇所」であるのに対し,引用発明は,かかる配置箇所が明確にされていない点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1について
まず,本願補正発明において,「トリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) がR/P_(H) <1/10の関係を満足し,トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) がR/P_(L) >10の関係を満足し」ている条件の技術的意義について考察する。

本願明細書の段落【0028】には,「抵抗器は周知の抵抗器であってよく,一般的には固定抵抗器である。固定抵抗器の抵抗は,多少の温度依存性が認められるものの,実質的に一定であるとみなし得る。他方,可変抵抗素子の抵抗Pは温度,より詳細には電気装置(例えば二次電池)と熱的に結合させた箇所の温度に依存して変化する。可変抵抗素子(複数の可変抵抗素子を用いる場合にはその全て)がLow状態にある場合は,抵抗Pは比較的小さい所定の値(=P_(L) )である。可変抵抗素子(複数の可変抵抗素子を用いる場合にはそのうちの少なくとも1つ)がHigh状態にある場合は,抵抗Pは極めて大きな値(=P_(H) )となる。可変抵抗素子の状態に応じて電流のON/OFFを制御するためには,前者の場合にはゲート-ソース間電圧V_(G) _(S) が所定の閾値電圧V_(t) _(h) よりも大きく,後者の場合にはゲート-ソース間電圧V_(G) _(S) が所定の閾値電圧V_(t) _(h) 以下になるように,本発明の過熱防止デバイスを設計する。」と記載され,同段落【0029】には,「本発明を限定するものではないが,可変抵抗素子の抵抗Pと抵抗器の抵抗Rとの関係は,R/P_(L) >10かつR/P_(H) <1/10となるように設計することが好ましい。」と記載されている。

これらの記載によれば,上記条件は,PTC素子のトリップ温度よりも低い低温状態においては,スイッチング素子のゲート-ソース間電圧V_(G) _(S) が所定の閾値電圧V_(t) _(h) よりも大きくしたON状態とし,また,PTC素子のトリップ温度よりも高い高温状態においては,スイッチング素子のゲート-ソース間電圧V_(G) _(S) が所定の閾値電圧V_(t) _(h) 以下になるOFF状態とするための条件であると解されるものの,上記条件の中の「R/P_(L) >10」及び「R/P_(H) <1/10」の数値限定は,単に,好ましいとされる範囲を特定したものであって,本願明細書,特許請求の範囲及び図面の全体の記載を参酌しても,該数値限定による格別な臨界的意義は何等認めることができない。

一方,引用発明において,PTC素子のトリップ温度よりも低い低温状態においては,スイッチング素子をON状態とするために,スイッチング素子への印加電圧を所定の閾値電圧よりも大きくすべく,抵抗器の電気抵抗Rに対するPTC素子の電気抵抗P_(L) を相対的に小さく設定し,また,PTC素子のトリップ温度よりも高い高温状態においては,スイッチング素子をOFF状態として電気装置に流れる電流を遮断するために,スイッチング素子への印加電圧を所定の閾値電圧以下にすべく,抵抗器の電気抵抗Rに対するPTC素子の電気抵抗P_(H) を相対的に大きく設定することは,当然に考慮されるべき事項であり,その際,電気抵抗Rに対するPTC素子の電気抵抗P_(L) ,P_(H) の具体的な数値の選定は,電気装置の両極間電圧,スイッチング素子の動作点,抵抗器の電気抵抗R及びPTC素子の温度特性等を加味しつつ,当業者が実験的に最適な特性が得られるものとして適宜決定し得る設計的事項にすぎない。

そうすると,引用発明において,上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点2,3について
例えば,引用例2にも開示されているように,PTC素子(「PTCセンサ14」が相当)を電気装置(「単電池7」が相当)の所定の箇所(「側周面」が相当)に熱的に結合(「接着」が相当)して配置することで,電気装置の異常昇温を的確に検出し得るようにすることは,過熱防止デバイス(「電池の異常昇温検出装置」が相当)の分野における周知技術である。

引用発明において,電気装置の異常昇温の的確な検出は,当然に要求されるべき課題であるといえるから,かかる課題の下に上記周知技術を採用して相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,平成22年3月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「温度に応じて抵抗が変化するPTC素子を含む過熱防止デバイスであって,
電気装置に流れる電流を印加電圧に応じて制御するスイッチング素子と,
電気抵抗がRである抵抗器と,
を更に含み,PTC素子はその電気抵抗が急激に増加するトリップ温度よりも高い高温状態の電気抵抗P_(H) がR/P_(H) <1/10の関係を満足し,トリップ温度よりも低い低温状態の電気抵抗P_(L) がR/P_(L) >10の関係を満足し,電気装置の所定の箇所に熱的に結合して配置され,所定の箇所が高温状態となったときにスイッチング素子の印加電圧を変化させて電気装置に流れる電流を遮断することを特徴とする,過熱防止デバイス。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及び,その記載事項は,前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,実質的に,前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「抵抗器」の限定事項である「スイッチング素子に対して並列に電気接続された」との構成を省き,「PTC素子」と「抵抗器」と「電気装置」との関係の限定事項である「PTC素子は抵抗器に対して直列に電気接続され,PTC素子及び抵抗器は電気装置に対して並列に電気接続され」との構成を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり,引用発明及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため,本願は,同法第49条第2号の規定に該当し,拒絶をされるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-15 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-01 
出願番号 特願2005-515293(P2005-515293)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02H)
P 1 8・ 575- Z (H02H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志佐藤 智康  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田村 嘉章
冨江 耕太郎
発明の名称 過熱防止デバイスおよびこれを備える電気装置  
代理人 田村 恭生  
代理人 鮫島 睦  
代理人 言上 惠一  
代理人 山尾 憲人  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ