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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1248385
審判番号 不服2010-17381  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-03 
確定日 2011-09-22 
事件の表示 特願2001-542264「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 7日国際公開、WO01/40857〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年11月30日(優先権主張平成11年12月3日)を国際出願日とする出願であって、平成22年1月25日付けで拒絶理由が通知され、同年4月2日に明細書の補正がなされたが、同年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明りようでない記載の釈明を目的とする明細書の補正がなされたものであって、その請求項に係る発明は、平成22年8月3日に補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】
基板上にマトリックス状に形成された複数の第1の垂直走査線および複数の水平走査線と、
前記複数の第1の垂直走査線および前記複数の水平走査線の交点に対応して配置される複数の画素とを備え、
各前記画素は、
対向基板および画素電極の電位差に応じた輝度を生じる液晶表示素子と、
前記複数の水平走査線のうちの対応する水平走査線からの制御信号を保持するための制御用容量素子と、
前記対応する水平走査線および前記制御用容量素子の間に接続されて、前記複数の第1の垂直走査線のうちの対応する垂直走査線の電位によってオンオフが制御される第1のスイッチング素子と、
第1の基準配線の電位を前記画素電極に書き込むために前記第1の基準配線と前記画素電極との間に接続され、その制御電極が前記制御用容量素子に接続された第2のスイッチング素子とを含み、
前記第2のスイッチング素子のオンオフが前記制御用容量素子に保持された前記制御信号によって制御され、
前記第2のスイッチング素子がオンすることによって前記画素電極に書き込まれる前記第1の基準配線の電位は、前記対向基板の電位に対して時間的に反転する電位となるように、前記対向基板の電位に液晶駆動電圧を加えた第1の電位または前記対向基板の電位から前記液晶駆動電圧を減じた第2の電位が交互に設定されることを特徴とする液晶表示装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用され、本願優先日前に頒布された特開平5-173175号公報(以下「引用例」という。)には、図とともに次の記載がある。

「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薄膜トランジスタを用いた液晶表示装置に関する。」

「【0018】
【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】図1は本発明の一実施例の一画素部分を示す回路構成図である。図1において、液晶画素1の一端は増幅器2の出力側に接続されており、増幅器2の入力側は薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間を介して信号線4に接続されている。そして、薄膜トランジスタ3のゲートはゲート線5に接続されている。また、補助容量6の一端が増幅器2の入力側に接続されている。なお、液晶画素1の他の一端と、補助容量6の他の一端とは、それぞれ直接接地されている。また、増幅器2の電圧増幅度は 1であり、増幅器2には電源線と接地線により電源が供給されている。
【0020】上記のような構成において、ゲート線5から薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間が導通するのに十分なゲート電圧が印加されると、信号線4と補助容量6とが電気的に接続され、補助容量6は信号線4から印加された電圧に充電される。そして、液晶画素1には増幅器2を介して所定の電圧が印加される。この時、同じゲート線5にゲートが接続された図示していない他の画素に対応した全ての薄膜トランジスタのドレイン・ソース間が導通するため、各薄膜トランジスタに接続された各補助容量はそれに対応する信号線から印加された電圧にそれぞれ充電され、各液晶画素には所定の電圧が印加される。次に、ゲート線5から印加されるゲート電圧が薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間が非導通となる電圧に変化すると、信号線4と補助容量6とは電気的に切り離されるが、補助容量6に充電された電圧は保持される。よって、液晶画素1には増幅器2を介して所定の電圧が印加され続ける。もし、液晶画素1にリーク電流が流れたとしても、その電流は増幅器2の出力側電流により自動的にともなわれるため、液晶画素の電圧は所定の電圧から変動しない。
【0021】図示していない複数のゲート線に対して上記の電圧印加動作が順次繰り返されることにより、全ての液晶画素に所定の電圧が印加され、所望の画像が表示される。その結果、表示コントラスト比が十分大きい液晶表示装置が得られる。
【0022】本発明は図1の実施例に限定されるものではなく、種々に変形して実施できる。 図2は本発明の他の実施例の一画素部分を示す回路構成図である。図1の実施例の増幅器2を2つの薄膜トランジスタで実施した例である。増幅器はドレインを電源線に、ゲートを入力側に、ソースを出力側に接続した第1の薄膜トランジスタ7と、ドレインを接地線に、ゲートを入力側に、ソースを出力側に接続した第1の薄膜トランジスタ7とは逆極性の第2の薄膜トランジスタ8とにより、いわゆるソース・フォロワ形の増幅器を構成する。ただし、第1と第2の薄膜トランジスタのゲート・スレッショルド電圧が 0Vでないと、出力電圧にオフセット電圧が生じるが、この電圧はほぼ一定であるので、その分だけ信号線4に印加する電圧をシフトする。
【0023】図2の実施例においても、図1の実施例と同様の効果が得られる。」

上記記載によれば引用例には、
「一画素部分を示す回路構成において、液晶画素1の一端は増幅器2の出力側に接続され、増幅器2の入力側は薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間を介して信号線4に接続され、薄膜トランジスタ3のゲートはゲート線5に接続され、補助容量6の一端が増幅器2の入力側に接続され、液晶画素1の他の一端と、補助容量6の他の一端とは、それぞれ直接接地され、増幅器2には電源線と接地線により電源が供給されており、
ゲート線5から薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間が導通するのに十分なゲート電圧が印加されると、信号線4と補助容量6とが電気的に接続され、補助容量6は信号線4から印加された電圧に充電され、液晶画素1には増幅器2を介して所定の電圧が印加され、ゲート線5から印加されるゲート電圧が薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間が非導通となる電圧に変化すると、信号線4と補助容量6とは電気的に切り離されるが、補助容量6に充電された電圧は保持され、液晶画素1には増幅器2を介して所定の電圧が印加され続ける液晶表示装置であって、
増幅器2は、ドレインを電源線に、ゲートを入力側に、ソースを出力側に接続した第1の薄膜トランジスタ7と、ドレインを接地線に、ゲートを入力側に、ソースを出力側に接続した第1の薄膜トランジスタ7とは逆極性の第2の薄膜トランジスタ8とにより構成されたソース・フォロワ形の増幅器である液晶表示装置。」(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「ゲート線5」及び「信号線4」がそれぞれ本願発明の「第1の垂直走査線」及び「水平走査線」に相当するところであり、引用発明の「ゲート線5」及び「信号線4」が複数であること及びこれらが基板上にマトリックス状に形成されるものであることは当業者に明らかな事項であり、また、引用発明の「画素」が「ゲート線5」と「信号線4」の交点に対応して配置されるものであることも当業者に明らかな事項であるから、引用発明は、本願発明の「基板上にマトリックス状に形成された複数の第1の垂直走査線および複数の水平走査線と、前記複数の第1の垂直走査線および前記複数の水平走査線の交点に対応して配置される複数の画素と」を備えるものであるといえる。
(2)引用発明の「液晶画素1」が「対向基板および画素電極の電位差に応じた輝度を生じる液晶表示素子」であることは当業者に明らかである。
(3)引用発明の「補助容量6」は、信号線4と電気的に接続され、信号線4から印加された電圧に充電されるものであるから、本願発明の「制御用容量素子」と、「前記複数の水平走査線のうちの対応する水平走査線からの信号を保持するための容量素子」の点で一致する。
(4)引用発明において、「ゲート線5から薄膜トランジスタ3のドレイン・ソース間が導通するのに十分なゲート電圧が印加されると、信号線4と補助容量6とが電気的に接続され」るから、引用発明の「薄膜トランジスタ3」は、「対応する水平走査線および容量素子の間に接続されて、前記複数の第1の垂直走査線のうちの対応する垂直走査線の電位によってオンオフが制御される第1のスイッチング素子」であるといえる。
(5)一致点
以上のことから、本願発明と引用発明は、
「基板上にマトリックス状に形成された複数の第1の垂直走査線および複数の水平走査線と、
前記複数の第1の垂直走査線および前記複数の水平走査線の交点に対応して配置される複数の画素とを備え、
各前記画素は、
対向基板および画素電極の電位差に応じた輝度を生じる液晶表示素子と、
前記複数の水平走査線のうちの対応する水平走査線からの信号を保持するための容量素子と、
前記対応する水平走査線および前記容量素子の間に接続されて、前記複数の第1の垂直走査線のうちの対応する垂直走査線の電位によってオンオフが制御される第1のスイッチング素子とを含む液晶表示装置。」の点で一致する。
(6)相違点
一方、本願発明と引用発明は、前記容量素子に保持された信号に基づいて、前記画素電極に書き込む電位を供給するものである点で共通するものの、次の点で相違する。
本願発明は、「容量素子」が「水平走査線からの制御信号を保持するための制御用容量素子」とされ、また、「画素」が「第1の基準配線の電位を前記画素電極に書き込むために前記第1の基準配線と前記画素電極との間に接続され、その制御電極が前記制御用容量素子に接続された第2のスイッチング素子」を含むとされ、
「前記第2のスイッチング素子のオンオフが前記制御用容量素子に保持された前記制御信号によって制御され、
前記第2のスイッチング素子がオンすることによって前記画素電極に書き込まれる前記第1の基準配線の電位は、前記対向基板の電位に対して時間的に反転する電位となるように、前記対向基板の電位に液晶駆動電圧を加えた第1の電位または前記対向基板の電位から前記液晶駆動電圧を減じた第2の電位が交互に設定される」とされているものであるのに対し、
引用発明は、「増幅器2」が「ドレインを電源線に、ゲートを入力側に、ソースを出力側に接続した第1の薄膜トランジスタ7と、ドレインを接地線に、ゲートを入力側に、ソースを出力側に接続した第1の薄膜トランジスタ7とは逆極性の第2の薄膜トランジスタ8とにより構成されたソース・フォロワ形の増幅器」であり、「補助容量6は信号線4から印加された電圧に充電され」、「補助容量6に充電された電圧は保持され」、この電圧が増幅器2の入力側である第1の薄膜トランジスタ7及び第2の薄膜トランジスタ8のゲートに印加され、液晶画素1に増幅器2を介して所定の電圧が印加されることになるものである点。

4.相違点についての検討
引用発明は、いわゆるアナログ階調表示を行うものであり、そのためには、信号線4に印加されるアナログ階調電圧がそのまま液晶画素1に印加される必要があるので、その増幅器2はいわゆるソース・フォロワ形の増幅器とされているものと認められる。
一方、液晶表示装置の表示形態としては、画素が点灯状態にあるか非点灯状態にあるかのみによって表示を行ういわゆる2値表示が周知であり、表示が2値表示の場合においては、液晶には点灯状態の電圧と非点灯状態の電圧のいずれかが印加されればよいのであるから、増幅器2がソース・フォロワ形の増幅器である必要はなく、スイッチング素子で構成し得ることは当業者に明らかである(この点、必要ならば、例えば、特開平2-272521号公報に第1図のTFT_(2)について(ヘ)実施例に「スイッチング三端子素子」と記載されている点、特開平5-119352号公報に図1のTr_(2) について【0037】【0038】に「ON状態」及び「OFF状態」と記載されている点、特開平9-258168号公報に図2の画素駆動TFT6について【0028】に「画素駆動TFTのオン、オフ状態」と記載されている点を参照されたい。)。
引用例の第2図に示される引用発明でいえば、第1の薄膜トランジスタ7及び第2の薄膜トランジスタ8をそれぞれスイッチング素子とすれば良いことが明らかであり、このとき、点灯時の液晶駆動電圧は電源線から供給され、非点灯時の液晶駆動電圧は接地線から供給されることが理解されるところである。
また、液晶の駆動については、液晶に常に同方向電位がかかることを防ぐために、対向基板の電位に対し反転する電圧を印加するいわゆる交流駆動が周知であるから(この点、必要ならば、例えば、特開平6-118912号公報【0007】の「交流駆動を行う液晶表示装置」との記載、特開平11-160676号公報【0006】の「この液晶に印加される電圧はフレーム時間毎に極性を反転することで、交流化を行っている。」との記載、特開平5-119352号公報【0018】の「また、電圧状態の極性は周期的に入れ換えられる。これは、TN液晶材料に長時間にわたって、直流をかけた場合には、電気分解を起こして劣化してしまうからである。この動作を交流化という。」との記載及び【0036】の「この電圧供給線は画素駆動の交流化という目的から、図に示すように交流パルスが送られる。」との記載を参照されたい。)、例えば、上記引用発明の第1の薄膜トランジスタ7と第2の薄膜トランジスタ8をスイッチング素子としたものにおいて、非点灯時の液晶駆動電圧を供給する接地線の電位を対向基板の電位とするとともに、点灯時の液晶駆動電圧を供給する電源線の電位を対向基板の電位に対して周期的に反転するものにして、いわゆる交流駆動とすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。
以上のことから、引用発明において上記相違点に係る本願発明の特定事項とすることは、引用発明における表示を2値表示とするとともに、液晶の駆動を交流駆動とすることにより、当業者が容易になし得たものと認められる。
また、本願発明が奏する効果についても、引用例に記載された事項及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が予測可能なものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-20 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-09 
出願番号 特願2001-542264(P2001-542264)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 吉野 公夫
北川 創
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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