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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1248488
審判番号 不服2010-17603  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-05 
確定日 2011-12-14 
事件の表示 特願2004- 83650「携帯電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日出願公開、特開2004-274777〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年3月7日に出願した特願2003-61124号の一部を、平成16年3月22日に新たな特許出願(特願2004-83650号)としたものであって、平成22年4月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において平成22年9月21日付けで拒絶理由通知がなされ、平成22年11月29日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成22年11月29日付け手続補正書の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体と成し、本体部の折畳み内面側に数字等の入力キー部を、本体部の折畳み外面側にカメラを設け、開いた状態でも折り畳んだ状態でも撮影可能な、開いた状態では縦長に持って使用するカメラ付き携帯電話機において、
開いた状態で撮影するためのシャッターボタンを前記入力キー部に備え、
折り畳んだ状態で横長に持って撮影するためのシャッターボタンを前記本体部の右側面に備え、
前記カメラは折畳み外面であって前記連結部に近い位置に配置し、
前記開いた状態で撮影するためのシャッターボタンは前記折畳み内面であって前記連結部に近い位置に配置し、
前記折り畳んだ状態で横長に持って撮影するためのシャッターボタンは前記右側面であって前記連結部の反対端に近い位置に配置したことを特徴とする携帯電話機。」

3.引用例
当審で通知した拒絶理由に引用された「A5303H,ケータイベスト,日本,ソフトバンクパブリッシング株式会社,2003年2月15日,Vol.12,第74頁」(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
イ.「34万画素を誇るVGA対応のカメラは、ヒンジ部に搭載。180度回転できるようになっている。回転式を採用することで、開いた状態でも閉じた状態でも、通常の撮影とセルフショットが可能だ。閉じた状態でファインダーとなる背面液晶は、大型の1インチカラー。ケータイトップクラスの26万色を表示し、TFT方式なのでとても美しい表示ができる。」
ロ.「サブソフトキー
背面に2つのボタンを装備。撮影中にズーム操作とシャッターとして使用。」

引用例1の図面を参照すれば、携帯電話機A5303Hは、本体部と蓋体部をヒンジ部により折り畳み可能に連結して機器本体となし、本体部の折畳み内面側に数字等の入力キー部を設けたものであるといえる。
摘記事項イによれば、ヒンジ部にカメラを設け、開いた状態でも閉じた状態でも撮影可能な携帯電話機であるといえる。
引用例1の図面から明らかなように、本体部の折り畳み内面であってヒンジ部に近い位置にはセンターキーが設けられており、折り畳み可能なカメラ付き携帯電話機において、開いた状態で撮影するためのシャッターボタンとして入力キー部のセンターキーを用いることは技術常識である。また、開いた状態では縦長に持って使用することは通常の使用形態である。
摘記事項ロ及び図面を参照すれば、折り畳んだ状態で撮影するためのシャッターボタンは、本体部の外面の中央付近に配置されていることが把握できる。

したがって、引用例1には、技術常識を考慮すると、
「本体部と蓋体部をヒンジ部により折畳み可能に連結して機器本体と成し、本体部の折畳み内面側に数字等の入力キー部を、ヒンジ部にカメラを設け、開いた状態でも折り畳んだ状態でも撮影可能な、開いた状態では縦長に持って使用するカメラ付き携帯電話機において、
開いた状態で撮影するためのシャッターボタンを前記入力キー部に備え、
折り畳んだ状態で撮影するためのシャッターボタンを前記本体部の外面の中央付近に備え、
開いた状態で撮影するためのシャッターボタンは前記折畳み内面であって前記ヒンジ部に近い位置に配置した携帯電話機。」
との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

当審で通知した拒絶理由に引用された特開平10-336498号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
イ.「【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、電子スチルカメラとPHS端末との複合機器に適用した一実施例として、図面を参照して説明する。
A.第1実施例の構成
A-1.複合機器の構成
図1は本発明の第1実施例による複合機器の構成を示すブロック図である。図において、複合機器は、PHSによる通信機能を実現するための回路と電子スチルカメラによる撮影機能を実現するための回路とを備えている。
【0012】(1)電子スチルカメラ部
図において、1はCCDであり、図示しないレンズを介して結像した静止映像を電気信号に変換し、バッファ2へ供給する。バッファ2は、上記静止映像信号を所定レベルに増幅した後、A/D変換部3へ供給する。A/D変換部3は、上記静止映像信号をデジタルデータ(以下、画像データという)に変換した後、TG(Timing Generator;タイミング発生器)4へ供給する。TG4は、CCD1を駆動する駆動回路4を制御するためのタイミング信号を生成し、これを駆動回路5へ供給するとともに、このタイミング信号に従って、上記画像データを取り込み、データバスへ出力する。」
ロ.「【0023】A-2.複合機器の外観構成および使用形態
次に、図2は、上述した複合機器の外観構成を示す斜視図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。図において、30は、当該複合機器を電子スチルカメラとして使用した場合、CCD1で撮影した映像を取り込むためのシャッターキーである。また、31は、LCD13aに対する表示画面およびファインダーの縦横を切り換えるための切替スイッチであり、該切替スイッチ31を下側に投入した場合には、LCD13aの表示領域およびファインダー32を横長とし、上側に投入した場合には、LCD13aの表示領域およびファインダー32を縦長とするようになっている。また、LCD13aが設けられている蓋部33は、本体に対し、図示の矢印方向に回転自在に設けられており、使用形態に応じて、開閉されるようになっている。図示の状態は、蓋部33が開かれた状態である。
【0024】また、34は、当該複合機器をPHS端末として用いた場合、ダイヤルするとき等に用いる電話帳(データベース)を表示させたり、電話帳から任意の相手を指定したりするときに操作される操作キーである。次に、35は、4方向でオン/オフ可能な十字キーであり、LCD13aに表示されたデータ選択や機能選択等において、カーソルやポインタを移動させるときに用いられる。また、36は、当該機器が通信機器として動作している場合に所定番号にダイヤルさせるための通信キーである。また、37は、確立した回線を切断するための切断キーであり、38は、通話を一時保留する保留キーである。また、39は、電子スチルカメラまたは通信機器で動作している場合にそれぞれで実行可能な機能を選択するための機能キーである。ちなみに、電子スチルカメラとしての動作中において、撮影した画像を送信する場合には、機能キー39で画像送信を選択し、十字キー35で送信する画像を選択すると、ダイヤル番号入力画面となるので、タッチパネル13bをタッチすることでダイヤル番号を入力するか、あるいは電話帳を開いて送信先を選択し、通信キー36を押下すると、選択した相手にダイヤルされ、回線が接続後に画像通信が開始される。
【0025】A-3.複合機器の使用形態
次に、図3ないし図6は、本第1実施例による複合機器の使用形態を示す模式図である。当該複合機器は、その使用用途に応じて、その用途で最も使用しやすいような把持形態をとるようになっている。一般的に、カメラの操作(シャッターキーの押下)は右手で行われ、電話(ハンドセット)の操作は左手で行われる。そこで、本第1実施例では、それぞれの機能の操作がスムーズに行われるように、従来の操作形態を引き継ぎ、その使用用途に対する把持形態を考慮して、各種スイッチの配置を決定している。
【0026】(1)電子スチルカメラ(ファインダー方式)
まず、当該複合機器をファインダー方式の電子スチルカメラとして使用する場合には、図3に示すように、LCD13aが設けられている蓋部33を閉じて右手で本体右側を把持する。言い換えると、通常のカメラを把持する状態と同じである。この場合、使用者は、ファインダー32から被写体を確認し、本体を把持している右手の人差し指でシャッターキー30を操作する。
【0027】(2)電子スチルカメラ(LCD表示方式)
次に、当該複合機器をLCD表示方式の電子スチルカメラとして使用する場合には、図4に示すように、LCD13aが設けられている蓋部33を開け、LCD13aが使用者側に見えるようにし、本体と蓋部の連結部付近を右手で把持する。この場合、CCD1で取り込まれた画像がLCD13aにリアルタイムで表示されるので、使用者は、LCD13aで被写体(写り具合)を確認し、本体を把持している右手の人差し指でシャッターキー30を操作する。
【0028】(3)PHS端末
次に、当該複合機器をPHS端末として使用する場合には、図5に示すように、LCD13aが設けられている蓋部33を開け、LCD13aが使用者側に見えるようにし、本体が縦長となるように左手で把持する。このとき、スピーカ19は上側、マイク20は下側となる。この場合、LCD13aには、ダイヤルキーや電話番号、電話帳等が表示されるので、使用者は、本体を把持している左手で操作キー34を操作することにより、電話帳から任意の相手を指定したりする。
【0029】(4)PHS端末(カメラ使用)
次に、当該複合機器をカメラ使用のPHS端末として使用する場合には、図6に示すように、LCD13aが設けられている蓋部33を開け、LCD13aが使用者側に見えるようにし、裏面にある撮影レンズを撮影したい方向に向け、本体が縦長となるように左手で把持する。この場合、CCD1で取り込まれた画像がLCD13にリアルタイムで表示されるので、使用者は、LCD13aで被写体(写り具合)を確認しながら、本体を把持している左手でシャッターキー30を押下し、画像を取り込む。」

引用例2には、電子スチルカメラとPHS端末の複合機器が開示されており、この複合機器は、「カメラ付き携帯電話機」であるといえる。
引用例2の図2?図6を参照すれば、複合機器は、本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体となしたものであることが把握できる。
引用例2の段落【0026】及び図3によれば、複合機器は折り畳んだ状態で撮影可能であり、折り畳んだ状態で横長に持って撮影するためのシャッターボタンは、本体部の側面であって、右手の人差し指で操作する位置に配置されているといえる。

したがって、引用例2には、技術常識を考慮すると、
「本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体と成し、機器本体にカメラを設け、折り畳んだ状態で撮影可能な、カメラ付き携帯電話機において、
折り畳んだ状態で横長に持って撮影するためのシャッターボタンは、本体部の側面であって、右手の人差し指で操作する位置に配置すること」
が開示されている。

当審で通知した拒絶理由に引用された特開2002-300237号公報(以下、「引用例3」という。)の図1、及び特開2002-305566号(以下、「引用例4」という。)の図1を参照すると、引用例3、4には、
「本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体と成したカメラ付き携帯電話において、カメラを本体部の折畳み外面であって連結部に近い位置に配置すること」が開示されている。

4.対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「ヒンジ部」は、本願発明の「連結部」に相当する。

したがって、本願発明と引用例1発明とは、
「本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体と成し、本体部の折畳み内面側に数字等の入力キー部を、機器本体にカメラを設け、開いた状態でも折り畳んだ状態でも撮影可能な、開いた状態では縦長に持って使用するカメラ付き携帯電話機において、
開いた状態で撮影するためのシャッターボタンを前記入力キー部に備え、
折り畳んだ状態で撮影するためのシャッターボタンを前記本体部に備え、
前記開いた状態で撮影するためのシャッターボタンは前記折畳み内面であって前記連結部に近い位置に配置した携帯電話機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「カメラ」について、本願発明では、「本体部の折畳み外面であって連結部に近い位置に配置」されるのに対して、引用例1発明では、「ヒンジ部に配置」されるものである点。
[相違点2]
「折り畳んだ状態で撮影するためのシャッターボタン」について、本願発明では、「横長に持って撮影するための」ものであり、「本体部の右側面であって連結部の反対端に近い位置に配置」されるのに対して、引用例1発明では、「本体部の外面の中央付近に配置」されるものである点。

5.当審の判断
[相違点1]について
引用例3、4には、「本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体と成したカメラ付き携帯電話において、カメラを本体部の折畳み外面であって連結部に近い位置に配置すること」が開示されており、引用例1発明において、カメラを「ヒンジ部」に配置することに代えて、「本体部の折畳み外面であって連結部に近い位置に配置」することは、引用例3、4の開示事項を適用することにより容易になし得たことである。

[相違点2]について
引用例2には、「本体部と蓋体部を連結部により折畳み可能に連結して機器本体と成し、機器本体にカメラを設け、折り畳んだ状態で撮影可能なカメラ付き携帯電話機において、折り畳んだ状態で横長に持って撮影するためのシャッターボタンは、本体部の側面であって、右手の人差し指で操作する位置に配置すること」が開示されている。
引用例1発明に引用例2の開示事項を適用することに困難性は認められず、また、携帯電話機を横長に持つときに連結部をどちらに向けるようにするかは、当業者が設計に際して適宜決定すべき事項であることを考慮すれば、「折り畳んだ状態で横長に持って撮影するためのシャッターボタン」を「本体部の右側面であって連結部の反対端に近い位置に配置」することは当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明、及び引用例2?4の開示事項から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、及び引用例2?4の開示事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-05 
結審通知日 2011-01-11 
審決日 2011-01-25 
出願番号 特願2004-83650(P2004-83650)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢島 伸一  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 萩原 義則
山本 春樹
発明の名称 携帯電話機  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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