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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1248526 |
審判番号 | 不服2009-4137 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-26 |
確定日 | 2011-12-15 |
事件の表示 | 特願2001-127589「食品の原材料の型崩れを防止する方法、食品の原材料の食感を保持する方法及び食品の原材料」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月29日出願公開、特開2002-315519〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成13年4月25日の出願であって、平成21年1月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月26日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成21年3月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成21年3月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「食品の原材料を煮込んだり、又は長期間浸漬する際に、アラビアガム、大豆多糖類、プルラン、アラビノガラクタン、低粘性グアーガム、低粘性ローカストビーンガム、低粘性タラガム、低粘性タマリンドガム及び低粘性コンニャクマンナンのうち少なくとも1以上からなる糊料を溶解させた溶液を用いることよって、食品の原材料の型崩れを防止することを特徴とする食品の原材料の型崩れを防止する方法。」(下線は、補正箇所を示す。)と補正された。 上記補正は、補正前に「食品の原材料を浸漬する」とあったところを、「食品の原材料を煮込んだり、又は長期間浸漬する」とし、「浸漬」については「長期間」であることを付加して減縮するものの、「煮込んだり」することを選択的に付加することは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しないし、誤記の訂正または明りょうでない記載の釈明を目的としたものにも該当しないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項のいずれの号にも該当しない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成21年3月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成20年12月25日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「食品の原材料を浸漬する際に、アラビアガム、大豆多糖類、プルラン、アラビノガラクタン、低粘性グアーガム、低粘性ローカストビーンガム、低粘性タラガム、低粘性タマリンドガム及び低粘性コンニャクマンナンのうち少なくとも1以上からなる糊料を溶解させた溶液を用いることよって、食品の原材料の型崩れを防止することを特徴とする食品の原材料の型崩れを防止する方法。」 2 引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された以下の刊行物1(原査定の引用文献3)、刊行物2(原査定の引用文献9)には以下の事項がそれぞれ記載されている。以下、下線は当審で付加した。 (1)刊行物1:特開昭58-81735号公報 (1a)「剥皮された果菜表面に、糊剤あるいは凝固性物質を主材料とする軟皮形成材料による薄皮膜を形成し、この薄皮膜を被覆した果菜を常法によりシラップとともに缶またはびんに充填し密封殺菌することを特徴とする剥皮果菜類缶びん詰の製造方法。」(特許請求の範囲) (1b)「剥皮された果菜類、最も適当な例として剥身のぶどうはケーキ上に装飾用として載せたり、料理のデザートに供されたりそのまま食用とされたり多数の使用例がある。」(第1頁左下欄13?16行) (1c)「しかしぶどうなどの剥身されたものには次に列挙するような問題点が避けられない。 (I)缶びん詰にする際の皮剥時の熱処理及び薬品処理などにより得た剥身は、果肉組織が軟化して居り、これが貯蔵中に一層促進される結果、例えばケーキ上に使用する際の生果肉に対して保形性及び光沢などが低下すること」(第1頁右下欄3?10行) (1d)「ここに発明者等はかかる問題を解決すべく種々の試験を行ったところ、上記例えばぶどう剥身の表面を軟皮で被覆し、これを缶びん詰にすることにより、(1)果皮を除去する面倒さがない、(2)光沢を保持、(3)耐液性を改良、(4)保水性を改良するなど驚くほど効果をもたらす知見を得この発明を完成したものである。」(第1頁右下欄18行?第2頁左上欄3行) (1e)「次にこの発明において、軟皮形成材料の主材料である糊剤あるいは凝固性物質としては、ローメトキシペクチン、ポリビニルアルコール、アルギン酸塩(特にナトリウム塩)、カルボキシメチルセルローズ、澱粉(以上基材)、パラフィン、カゼイン、コラーゲン、エチルセルローズ、アセチルセルローズ、シエラツク、サンダラツク(以上補助材)ゼラチン、アラビヤゴム、ローカストビーンガム、ペクチン、メチルセルローズ、油脂(以上改良材)があげられ、これらは、上記基剤、補助剤、改良材を一種又は2種以上夫々選択して用いると共に、これらは溶液中に 基材 :0.1?4.0% 補助剤:0.001?0.5% 改良材:0.1?2.0% 程度含有するようにするのが良い。」(第2頁右上欄5?20行) (1f)「この被覆処理は具体的には、該溶液中で剥皮果肉を適宜回転させながら、あるいは振動を与えつつ浸漬処理する方法による」(第2頁左下欄1?3行) (1g)実施例には、果肉の軟化、形崩れがないこと、食味が良好であることが記載されている。(第3頁右上欄10行、同左下欄18行、第4頁表) (2)刊行物2:特開2000-197457号公報 (2a)「【請求項1】餅類を液状物に浸漬して常温流通可能とした餅加工食品であって、前記液状物が、アラビアガム、プルラン、アラビノガラクタン、大豆多糖類の中から選ばれた少なくとも一種の糊料を含むことを特徴とする餅加工食品。」 (2b)「【0005】この発明は、上記した問題を解決して、餅の吸水を抑制し、加熱殺菌処理での溶解を防止すると共に、常温保持による老化を防止した餅加工食品を提供することを目的としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】この発明は、餅類を液状物に浸漬して常温流通可能とした餅加工食品であって、前記液状物が、アラビアガム、プルラン、アラビノガラクタン、大豆多糖類の中から選ばれた少なくとも一種の糊料を含むことを特徴としている。上述した糊料を善哉液や雑煮液等に加えることによって、餅への水分吸収を効果的に抑制して、常温保存時の餅の膨らみやダレを抑えることができる。特にアラビアガムを0.1?30.0%、より好ましくは1.0?20.0%含有させる。0.5%未満では餅の吸水対策として十分な効果が得られず、また30.0%を超えると液に粘性が出て商品価値が低下する。アラビノガラクタン、大豆多糖類、プルランも同様の配合で同様の効果が得られる、またこれらの糊料を複合して用いることができる。」 (2c)「[実施例1]以下の配合で善哉を作った。 【0011】 【表1】餅生地 ヒドロキシルプロピル化タピオカ澱粉 12部 餅粉 20部 ネイティブ型ジェランガム 0.5部 寒天 0.2部 キサンタンガム 0.2部 タラガム 0.3部 砂糖 20部 水 46.8部 善哉液 小豆生豆 15部 砂糖 40部 アラビアガム 5部 水 40部 【0012】上記配合の善哉をレトルト容器に密封し、115℃、40分のレトルト殺菌を行った。善哉液への餅の溶け出しは殆どなく、食感もレトルト殺菌処理前と変化がないことが確認された。 【0013】[実施例2]以下の配合で汁粉を作った。 【0014】 【表2】餅生地 ヒドロキシルプロピル化タピオカ澱粉 10部 餅粉 20部 ネイティブ型ジェランガム 0.5部 アルギン酸ナトリウム 0.2部 乳酸カルシウム 0.1部 ローカストビーンガム 0.3部 キサンタンガム 0.2部 砂糖 10部 水 58.7部 汁粉 小豆生餡 30部 砂糖 25部 水飴 2部 アラビアガム 3部 プルラン 3部 水 37部 【0015】上記配合の汁粉をレトルト容器に密封し、115℃、40分のレトルト殺菌を行った。汁粉への餅の溶け出しは殆どなく、食感もレトルト殺菌処理前と変化がないことが確認された。 【0016】実施例1及び2の善哉及び汁粉について、20℃、90日の常温保存試験を行い、状態を調べた。実施例1の糊料を除いたものを対照品1とし、同様に実施例2の糊料を除いたものを対照品2として、同じ試験を行った。その結果を下記表3に示す。」 (2d)実施例1、2は、20℃、90日常温保存後、食感変化が少ないことが示されている。(【0007】【表3】) 3 対比・判断 上記刊行物1の記載事項(特に上記(1a))から、刊行物1には、 「剥皮された果菜表面に、糊剤あるいは凝固性物質を主材料とする軟皮形成材料による薄皮膜を形成し、この薄皮膜を被覆した果菜を常法によりシラップとともに缶またはびんに充填し密封殺菌する剥皮果菜類缶びん詰の製造方法」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。 (ア)刊行物1発明の「剥皮された果菜」は、ケーキやデザートの材料として用いることは記載されているから(上記(1b))、本願発明の「食品の原材料」に相当する。 (イ)本願発明の「糊料」ついて、本願明細書段落【0013】に「本発明に係る食品の原材料の型崩れ防止剤及び食感保持剤は、食品の原材料に調味液などを加える際に単に添加しても良く、また予め食品の原材料の表面にコーティングしておいても良い。」と記載されており、本願発明の「糊料」は、浸漬及びコーティングのいずれにも用いうる性質を有するものであるといえる。 そうすると、刊行物1発明の「糊剤あるいは凝固性物質を主材料とする軟皮形成材料」と、本願発明の「アラビアガム、大豆多糖類、プルラン、アラビノガラクタン、低粘性グアーガム、低粘性ローカストビーンガム、低粘性タラガム、低粘性タマリンドガム及び低粘性コンニャクマンナンのうち少なくとも1以上からなる糊料」とは、糊料である点で共通する。 (ウ)刊行物1発明の「剥皮された果菜表面に」「軟皮形成材料による薄皮膜を形成」することと、本願発明の「食品の原材料を浸漬する際に」「糊料を溶解させた溶液を用いること」とは、食品の原材料を糊料を用いて処理する点で共通する。 (エ)刊行物1には、剥皮された果菜の表面を軟皮で被覆することで、果菜の耐液性や保水性を改良し(上記(1d))、果肉軟化や形崩れを防止し、食味を良好とすること(上記(1g))が記載されているから、刊行物1発明の「剥皮果菜類缶びん詰の製造方法」は、剥皮果菜類の形崩れを防止し、食感を保持できる方法といえる。 したがって、両者の間には、以下の一致点及び相違点がある。 (一致点) 食品の原材料を糊料を用いて処理することよって、食品の原材料の型崩れを防止する食品の原材料の型崩れを防止する方法である点。 (相違点) 糊料及びこれを用いた処理が、本願発明では、アラビアガム、大豆多糖類、プルラン、アラビノガラクタン、低粘性グアーガム、低粘性ローカストビーンガム、低粘性タラガム、低粘性タマリンドガム及び低粘性コンニャクマンナンのうち少なくとも1以上からなる糊料を溶解させた溶液を用いて浸漬するのに対して、刊行物1発明では、糊剤あるいは凝固性物質を主材料とする軟皮形成材料で薄皮膜を形成する点。 そこで、上記相違点について検討する。 刊行物1(上記(1d)(1g))には、剥皮された果菜表面に糊剤を主材料とする軟皮形成材料による薄皮膜を形成することで、耐液性や保水性を改良して型崩れ防止できることが記載されており、刊行物1発明は薄皮膜により耐液性や保水性を改良して型崩れ防止されているといえる。 そして、刊行物2(上記(2a)?(2d))には、アラビアガム、プルラン、アラビノガラクタン、大豆多糖類の中から選ばれた少なくとも一種の糊料を含む液状物に餅類を浸漬することにより、餅類への水分吸収を抑制し、膨らみやダレを抑えることが記載され、餅類ではあるが、糊料を含む液状物浸漬することで、表面が糊料を含む液状物に覆われた状態になり、水分吸収が抑制されて形崩れが防止できるといえる。そして、このように表面が糊料を含む液状物に覆われた状態になることで水分吸収が抑制されることは、餅類類以外でも、剥皮された果菜等のような表面の耐水性に問題がある食品原材料でも生じることは、当業者が自然に考察するところである。 そうすると、刊行物1発明において、耐水性等を改良して形崩れを防止するために、軟皮膜により被覆することに代えて、刊行物2に記載されたように水分吸収を抑制できる、アラビアガム、大豆多糖類、プルラン、アラビノガラクタン、低粘性グアーガム、低粘性ローカストビーンガム、低粘性タラガム、低粘性タマリンドガム及び低粘性コンニャクマンナンのうち少なくとも1以上からなる糊料を溶解させた溶液を用いて浸漬することは、当業者が容易になし得たことといえる。 そして、本願発明の効果は、刊行物1及び2の記載事項から予測し得たものであり、格別顕著なものとはいえいない。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-11 |
結審通知日 | 2011-10-18 |
審決日 | 2011-11-01 |
出願番号 | 特願2001-127589(P2001-127589) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 匡子 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
杉江 渉 齊藤 真由美 |
発明の名称 | 食品の原材料の型崩れを防止する方法、食品の原材料の食感を保持する方法及び食品の原材料 |
代理人 | 千且 和也 |
代理人 | 伊丹 勝 |