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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A23L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L |
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管理番号 | 1248531 |
審判番号 | 不服2009-8042 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-14 |
確定日 | 2011-12-12 |
事件の表示 | 特願2000-239362「スポーツ用食品」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月19日出願公開、特開2002- 51730〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 この出願は,平成12年8月8日の出願であって,平成19年10月11日付けで拒絶理由が通知され,同年12月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成20年10月23日付けで拒絶理由が通知され,平成21年1月5日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,同年3月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年4月14日に拒絶査定を不服とする審判請求書が提出された(同年7月8日付けで審判請求書の手続補正書が提出された)ものである。 第2 本願発明の認定 この出願の請求項1に係る発明は,平成21年1月5日付けの手続補正により補正された明細書及び図面(以下,「本願明細書」という。)の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ,請求項1にかかる発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものであると認める。 「酸性条件下で抽出された鶏肉抽出物であり,その乾燥粉末中にカルノシンを3?20%及びアンセリンを5?30%含有するアミノ酸及びペプチド混合物を含むことを特徴とする疲労回復食品。」 第3 原査定の拒絶の理由の概要 本願発明の拒絶の理由の概要は,本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない,ということを含むものである。 記 特開2000-201649号公報(原査定における引用文献1。以下,「刊行物1」という。) 第4 刊行物1に記載された事項 1a「【請求項1】家禽類の皮,骨及び/又は腱から調製された等電点7?10の食用ゼラチン及び/又はその加水分解物を含有する皮膚代謝促進物。 【請求項2】請求項1に記載の食用ゼラチン及び/又はその加水分解物とカルノシン及び/又はアンセリンとを含有する皮膚代謝促進物。 【請求項3】家禽類が鶏である請求項1又は請求項2記載の皮膚代謝促進物 【請求項4】請求項1?3に記載の皮膚代謝促進物を含む機能性食品。」 (【特許請求の範囲】) 1b「【0016】・・(中略)・・本発明の皮膚代謝促進物を調整するための抗酸化剤は,食肉に分布するペプチド性の抗酸化物質であるカルノシン(β-アラニル-L-ヒスチジン)及び/叉はアンセリン(N-β-アラニル-1-メチル-L-ヒスチジン)であり,特に鳥類の骨格筋に多く分布するアンセリンが好ましい。 【0017】カルノシン及びアンセリンは水溶性であるので,○1本発明の鶏ゼラチンを家禽類の皮,骨及び/叉は腱から酸性条件下で熱水抽出する際に,原料に付着した鶏骨格筋からアンセリンを同時に抽出することができ,○2熱水抽出の際に,鶏胸筋などの骨格筋を別途添加しておけば,アンセリンの抽出量を調整することもできる。・・また,本発明の皮膚代謝促進物を調製するために,本発明の鶏ゼラチンにカルノシン又はアンセリンの精製品を添加してもよく,アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する畜肉エキス,好ましくは鶏エキス等を添加しても良い。鶏エキスにはアンセリン及び/叉はカルノシンが含まれるが,鶏エキスを調製する際に供する鶏肉や鶏ガラの部位及び/叉はそれらの混合割合い等によって,アンセリン及びカルノシンのそれぞれの含量と比率は異なる。鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはない。」 第5 当審の判断 1 刊行物1に記載された発明 刊行物1には,「請求項1?3に記載の皮膚代謝促進物を含む機能性食品」(摘示1a 請求項4)が記載され,引用されている「請求項1?3」総てを技術的特徴として含むものを記載すると「鶏の皮,骨及び/又は腱から調製された等電点7?10の食用ゼラチン及び/又はその加水分解物とカルノシン及び/又はアンセリンとを含有する皮膚代謝促進物を含む機能性食品」(摘示1a 請求項1ないし4)が記載されている。 この「皮膚代謝促進物」の具体的な実施の態様として,刊行物1の段落【0017】には,「○1本発明の鶏ゼラチンを家禽類の皮,骨及び/叉は腱から酸性条件下で熱水抽出する・・。・・また,本発明の皮膚代謝促進物を調製するために,本発明の鶏ゼラチンに・・アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する・・鶏エキス等を添加しても良い。・・鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはない。」(摘示1b【0017】)と記載されている。 これを踏まえると,上記(摘示1a 請求項1ないし4)の「鶏の皮,骨及び/又は腱から調製された等電点7?10の食用ゼラチン」は,「家禽類の皮,骨及び/叉は腱から酸性条件下で熱水抽出」された「鶏ゼラチン」といえる。 また,上記(摘示1a 請求項1ないし4)の「カルノシン及び/又はアンセリン」としては,「アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する鶏エキス」で「鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはない」ものといえる。 したがって,刊行物1には, 「家禽類の皮,骨及び/叉は腱から酸性条件下で熱水抽出された鶏ゼラチン及び/又はその加水分解物と,アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する鶏エキスで,鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはないものとを含有する皮膚代謝促進物を含む機能性食品。」 の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 2 本願発明と引用発明との対比 (1)引用発明の上記「アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する鶏エキス」は,引用発明の記載「鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはないもの」より,乾燥重量当たり(即ち乾燥品中に)アンセリンを0.2?8%程度,及び,カルノシンを0?5%程度で,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはないもの,を含有するものである。 そうすると,引用発明の「アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する鶏エキス」は,引用発明の「アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する鶏エキスで,鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはないもの」であることより,乾燥重量当たり(即ち乾燥品中に)アンセリンを0.2?8%程度,及び,カルノシンを0?5%程度で,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはないものを含有するものでペプチドやアミノ酸混合物を含むものである。 したがって,引用発明の「アンセリン及び/叉はカルノシンを含有する鶏エキスで,鶏エキス中のアンセリン含量(但し,乾燥重量当たり)は0.2?8%程度,カルノシン含量は0?5%程度,両者の合計は0.2?10%程度,アンセリン:カルノシン=1.2以上:1程度であり,アンセリン含量がカルノシン含量を下回ることはないもの」と,本願発明の「酸性条件下で抽出された鶏肉抽出物であり,その乾燥粉末中にカルノシンを3?20%及びアンセリンを5?30%含有するアミノ酸及びペプチド混合物を含む」「物」とは,鶏肉抽出物であり,その乾燥粉末中にカルノシンを3?20%及びアンセリンを5?30%含有するアミノ酸及びペプチド混合物を含む物である点で共通する。 そして,本願明細書の段落【0024】には,添加剤として,ゼラチンを添加して良いことが記載されているから,本願発明は,ゼラチンを含有することを排除していない。 (2)引用発明の「機能性食品」と,本願発明の「疲労回復食品」とは,食品である点で共通する。 したがって,両者は, 「抽出された鶏肉抽出物であり,その乾燥粉末中にカルノシンを3?20%及びアンセリンを5?30%含有するアミノ酸及びペプチド混合物を含むことを特徴とする食品」 である点で一致し,以下の点で一応相違する。 ア 鶏肉抽出物が, 本願発明は,酸性条件下で抽出したものであるのに対し, 引用発明は,酸性条件下で抽出したものであるのか明らかではない点(以下,「相違点ア」という。) イ 食品が, 本願発明は,疲労回復食品であるのに対し, 引用発明は,機能性食品である点(以下,「相違点イ」という。) 3 判断 (1)相違点アについて 引用発明の鶏肉抽出物は,「鶏エキス」のことである。 一般に,鶏エキス抽出を,素材である鶏肉を酸性条件下の水性媒質中で行うことは,本願出願当時行われていた慣用手段である(例えば,特開2000-14357号公報「鶏・・に由来する食品エキス類素材をpH2?6.5の水性媒質中に保持してエキス分を抽出することを特徴とするエキス類の製造法」(特許請求の範囲 請求項1)及び,特公昭47-48667号公報「鳥・・肉を原料とし,これらの原料からエキス分を抽出するに当り,緩衝液を加えて微酸性に調整した稀食塩水を使用し,加熱抽出して抽出液を採り・・スープ用エキスの製造法」(特許請求の範囲 請求項1)参照。)。 そうすると,引用発明の鶏肉抽出物である「鶏エキス」の抽出は,本願出願当時通常行われていた抽出方法が採用されるといえるところ,本願出願当時の上記慣用手段を勘案すると,酸性条件下の水性媒質中で行われていたと認められる。 したがって,上記相違点アは,実質的な相違点であるとはいえない。 (2)相違点イについて 食品の機能について,刊行物1には,引用発明が疲労回復の機能を有することは明記されていないものの,そもそも,発明どうしの発明特定事項が同一である場合,発明の効果として同じ効果すなわち機能を元来内在しているといえる。 また,請求人の平成21年7月8日付け審判請求書手続補正書の「D.本願請求項1に係る発明が特許されるべき理由(1)理由1について」において,請求人は,「疲労回復食品とは,基本的には疲労を回復させるために食する食品ではありますが,食品でありますので,摂取者の嗜好や栄養的見地から食することは自由であり,疲労を感じていない人が食することを排除するものではありません」と述べている。 そうすると,本願発明の「疲労回復食品」は,食品である以上,摂取者の嗜好や栄養的見地から食することは自由なものであり,疲労を感じていない人が食することを排除するものではないことから,本願発明の疲労回復食品も引用発明の機能性食品も,食品であることには相違ないから,実質的な相違はないといえる。 そうすると,引用発明と本願発明との発明特定事項に実質的な相違はなく同一といえる。 以上より,上記相違点イも,実質的な相違点であるとはいえない。 (3)したがって,上記相違点ア,イは,実質的な相違点であるとはいえず,本願発明は,この出願の出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明は,この出願の出願前に頒布された刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであるので,その余について言及するまでもなく,この出願は,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-09-26 |
結審通知日 | 2011-09-30 |
審決日 | 2011-10-18 |
出願番号 | 特願2000-239362(P2000-239362) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L) P 1 8・ 113- Z (A23L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森井 隆信 |
特許庁審判長 |
秋月 美紀子 |
特許庁審判官 |
杉江 渉 齊藤 真由美 |
発明の名称 | スポーツ用食品 |
代理人 | 廣瀬 孝美 |