• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B01F
管理番号 1248580
審判番号 不服2008-30231  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-27 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 平成11年特許願第186366号「チャンバ内オゾン殺菌方法及びオゾン殺菌装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年1月16日出願公開、特開2001-9252号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月30日の出願であって、平成20年8月7日付けの拒絶理由の通知に対して、同年10月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月27日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年12月17日付けで審判請求の請求の理由に係る手続補正書及び明細書の記載に係る手続補正書が提出されたものであり、その後、平成23年6月27日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋がなされ、その回答期間内に回答がなされなかったものである。

2.平成20年12月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(2-1)補正事項
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に係る補正を含み、補正前後の請求項1の記載は、次のとおりである。
(補正前)
「【請求項1】 殺菌対象物が収納されたチャンバ内のオゾンガスを撹拌しながら殺菌対象物を殺菌するためのチャンバ内オゾン殺菌方法において、上記チャンバ外に設けたオゾン発生器からのオゾンをチャンバ内に導入すると共に、チャンバ内に空気を導入し、他方チャンバ内を排気すべくその排気中のオゾンを分解して排気し、上記チャンバ内に複数の電極を設けると共に、その電極間に電圧を印加してイオン風を発生させ、そのイオン風でチャンバ内のオゾンガスを撹拌し、殺菌対象物を殺菌することを特徴とするチャンバ内オゾン殺菌方法。」

(補正後)
「【請求項1】 殺菌対象物が収納された滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌しながら殺菌対象物を殺菌するための滅菌処理庫内オゾン殺菌方法において、上記滅菌処理庫外に設けたオゾン発生器からのオゾンを滅菌処理庫内に導入すると共に、滅菌処理庫内に空気を導入し、他方滅菌処理庫内を排気すべくその排気中のオゾンを分解して排気し、上記滅菌処理庫内に複数の電極を設けると共に、その電極間に電圧を印加してイオン風を発生させ、そのイオン風で滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌し、殺菌対象物を殺菌することを特徴とする滅菌処理庫内オゾン殺菌方法。」

(2-2)補正の適否
請求項1に係る補正の補正事項は、補正前の「チャンバ」を補正後の「滅菌処理庫」とするものである。
ここで、上記補正事項は、「チャンバ」を「処理庫」にいい換えると共に、ここで行われる処理が「滅菌」であるという限定事項を付加するものであり、
かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野および解決しようとする課題が同一であるので、
上記補正事項は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に反する新規事項を追加するものではない。

(2-3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について、以下に検討する。

(2-3-1)本願補正発明
本願補正発明は、上記(2-1)で示した補正後の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

(2-3-2)引用例記載の発明
原査定の拒絶理由で引用した実願平3-95044号(実開平5-37245号)のCD-ROM(以下、「引用例」という。)には、以下の記載および図示がある。
(a)「【請求項1】 オゾンを発生して室内に放出するオゾン発生器と、前記室内のオゾン濃度を検知する濃度センサと、前記検知されたオゾン濃度に基づきオゾン発生器のオゾン発生量を制御して、前記室内のオゾン濃度を所定濃度に所定時間持続させるコントローラとからなることを特徴とするオゾン消臭・殺菌装置。」

(b)「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、食品陳列室や貯蔵室、ホテルの客室或いは電車、バスの乗車室など室内の消臭、殺菌に使用するオゾン消臭・殺菌装置に関する。」

(c)「【0003】
室内又は室外に設置された或いは運び込まれたオゾン発生器に電圧を印加してオゾンを発生させ、そのオゾンを室内に放出させて室内の臭いの原因物質をオゾン分解し、併せて細菌を殺菌するものである。」

(d)「【0010】
オゾン発生器2の入口側には、これから遠い順にコンプレッサ6、乾燥器7及び空気冷却器8を直列に連結した空気供給配管L1 の一端が接続され、又オゾン発生器2の出口側にはそのオゾン放出管L3 に、オゾン分解セル10を途中に連結した空気排出管L2 の一端が接続されている。空気供給管L1 の他端は空気吸入口11となっており、その手前にバルブV1 が介挿されている。空気排出管L2 の他端は、バルブV2 を介して空気供給管L1 のバルブV1 と空気吸入口11との間に接続されている。オゾン発生器2のオゾン放出管L3 の先端には、室1内にオゾンを吹き出す吹き出しノズル9が設けられ、室1内には吹き出されたオゾンを撹拌する撹拌ファン12が設置されている。」

(e)「【0013】
本考案のオゾン消臭・殺菌装置によれば、空気供給管L1 の吸入口11から取り入れられた空気を、コンプレッサ6で加圧して乾燥器7及び空気冷却器8に送り、そこで乾燥及び冷却した後、オゾン発生器2に供給する。オゾン発生器2には図示しない電源から電圧が印加され、これに供給された空気を放電により電離してオゾンを発生する。発生されたオゾンは放出管L3 を通ってノズル9に導かれ、ノズル9から室1内に放出される。その室1内に放出されたオゾンの放出濃度をセンサ4が検知して監視する。その濃度検知信号は、コントローラ5及び指示・記録計13に出力される。」

(f)「【0014】
撹拌ファン12が室1内に放出されたオゾンを撹拌して、室1内に万遍なく拡散させる。その室1内に拡散されたオゾンの濃度をセンサ3が検知して監視する。その濃度検知信号は、同様にコントローラ5及び指示・記録計13に出力される。」

(g)【0017】
以上のようにして、室1内のオゾン濃度を所定濃度に所定時間保持して室1内の消臭、殺菌が終了し、オゾン発生器2でのオゾンの発生が停止されたら、空気供給管L1 及びオゾン放出管L3 を通って空気を室1内に導入する。そしてバルブV1 を閉、バルブV2 を開にバルブ切り替えすることにより、室1内の残存オゾンを導入した空気により放出管L3 を通って排出管L2 に排出する。排出間L2 に排出されたオゾンは分解セル10を通過する間に分解して無害化したのち、空気供給管L1 先端の空気吸入口11から室1外又は室1内に放出される。」

(h)【図1】には、「オゾン発生器2を室1外に設ける」ことの図示がある。

(i)上記(b)からして、引用例には、「食品貯蔵室内オゾン殺菌装置およびこれの使用方法(殺菌方法)」が記載されているということができる。

(j)上記(b)ないし(e)からして、オゾン発生器2に供給された空気を放電により電離してオゾンを発生させ、このオゾン(オゾンを含む空気)を食品貯蔵室1内に放出することが示されているので、引用例には、「オゾン発生器2からのオゾンを食品貯蔵室1内に放出すると共に、食品貯蔵室1内に空気を放出する」ことが記載されているということができる。

(k)上記(b)(g)からして、食品貯蔵室1内の残存オゾン(オゾンを含む空気)を排気するときにオゾンを分解して無害化することが示されているので、引用例には、「食品貯蔵室1内を排気すべくその排気中のオゾンを分解して排気する」ことが記載されているということができる。

(l)上記(j)で示す「オゾン発生器2からのオゾンを食品貯蔵室1内に放出すると共に、食品貯蔵室1内に空気を放出する」ことと、同(k)で示す「食品貯蔵室1内を排気すべくその排気中のオゾンを分解して排気する」こととは、異なるタイミングで行われるものであることから、引用例には、「オゾン発生器2からの・・・放出し、他方食品貯蔵室1内を・・・排気する」ことが記載されているということができる。

上記(a)ないし(l)の記載事項および図示内容より、引用例には、
「食品が貯蔵された食品貯蔵室1内のオゾンガスを撹拌しながら食品を殺菌するための食品貯蔵室1内オゾン殺菌方法において、上記食品貯蔵室1外に設けたオゾン発生器2からのオゾンを食品貯蔵室1内に放出すると共に、食品貯蔵室1内に空気を放出し、食品貯蔵室1内を排気すべくその排気中のオゾンを分解して排気し、上記食品貯蔵室1内に撹拌ファン12を設けると共に、これにより風を発生させ、その風で食品貯蔵室1内のオゾンガスを撹拌し、食品を殺菌する、食品貯蔵室1内オゾン殺菌方法。」の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が開示されている。

(2-3-3)対比・判断
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「食品」、「貯蔵」、「オゾン発生器2」は、本願補正発明の「殺菌対象物」、「収納」、「オゾン発生器」にそれぞれ相当する。

○引用例記載の発明の「食品を殺菌する」「食品貯蔵室1」は、人の居る状況で殺菌(滅菌)を行う室である場合と、人の居ない状況で殺菌を行う室である場合のいずれもあり得ること自体、自明の事項であり、後者の場合、本願補正発明の「滅菌処理庫」に相当する。

○引用例記載の発明の「オゾンを食品貯蔵室1(滅菌処理庫)内に」「放出」することは、本願補正発明の「オゾンを滅菌処理庫内に」「導入」することに相当する。

○引用例記載の発明の「食品貯蔵室1(滅菌処理庫)内に空気を」「放出」することは、本願補正発明の「滅菌処理庫内に空気を」「導入」することに相当する。

○引用例記載の発明の「食品貯蔵室1内に撹拌ファン12を設けると共に、これにより風を発生させ、その風で食品貯蔵室1内のオゾンガスを撹拌」することと、本願補正発明の「滅菌処理庫内に複数の電極を設けると共に、その電極間に電圧を印加してイオン風を発生させ、そのイオン風で滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌」することとは、「滅菌処理庫内に風を発生させ、その風で滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌」するという点で共通する。

上記より、本願補正発明と引用例記載の発明とは、
「殺菌対象物が収納された滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌しながら殺菌対象物を殺菌するための滅菌処理庫内オゾン殺菌方法において、上記滅菌処理庫外に設けたオゾン発生器からのオゾンを滅菌処理庫内に導入すると共に、食品貯蔵庫内に空気を導入し、他方食品貯蔵庫内を排気すべくその排気中のオゾンを分解して排気し、上記滅菌処理庫内に風を発生させ、その風で滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌し、殺菌対象物を殺菌する、滅菌処理庫内オゾン殺菌方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願補正発明では、滅菌処理庫内に複数の電極を設けると共に、その電極間に電圧を印加してイオン風を発生させ、そのイオン風で滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌するのに対して、
引用例記載の発明では、食品貯蔵室1(滅菌処理庫)内に撹拌ファン12を設けると共に、これにより風を発生させ、その風で食品貯蔵室1内のオゾンガスを撹拌する(流す)点。

上記<相違点>について検討する。
一般に、複数の電極を設けると共に、その電極間に電圧を印加してイオン風を発生させ、そのイオン風でガスを流すことは、本願出願前周知の事項(例えば、特開昭52-10859号公報の第1頁左下欄下から第10行?同右下欄第5行、特開昭54-128491号公報の第3頁右下欄下から第3行?第4頁右上欄第9行、実願平2-33463号(実開平3-122847号)のマイクロフィルムの第9頁第11?18行、第10頁下から第3行?第11頁第1行参照)であり、そして、引用例記載の発明と上記周知の事項とは、「風を発生させ、その風でガスを流す」という点で共通している。
そうすると、引用例記載の発明における、食品貯蔵室1(滅菌処理庫)内に撹拌ファン12を設けると共に、これにより風を発生させ、その風で食品貯蔵室1内のオゾンガスを撹拌する(流す)ことについて、小型、コスト安等の経済的要請から、「風を発生させ、その風でガスを流す」という点で共通している上記周知の事項を適用することで、「滅菌処理庫内に複数の電極を設けると共に、その電極間に電圧を印加してイオン風を発生させ、そのイオン風で滅菌処理庫内のオゾンガスを撹拌」することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
したがって、相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者であれば容易になし得ることである。
そして、ファンを用いることなく殺菌処理庫内のオゾンガスの濃度を均一にできる等の本願補正発明の作用効果は、当業者であれば十分に予測し得ることである。
よって、本願補正発明は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2-3-4)独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反し、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(3-1)平成20年12月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月7日付け手続補正書により補正された、上記2.(2-1)で示した補正前の請求項1に記載された事項により特定されるものである。

(3-2)引用例記載の発明
引用例記載の発明は、上記2.(2-3-2)で示したとおりである。

(3-3)対比・判断
上記2.(2-2)で示したように、請求項1に係る補正は、特許請求の範囲の減縮を目的にするものであることから、本願発明は、本願補正発明を包含している。
そうすると、本願補正発明が、上記2.(2-3-3)で示したように、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本願補正発明を包含する本願発明も同じく、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、引用例記載の発明および本願出願前周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、請求項2について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-05 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-26 
出願番号 特願平11-186366
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B01F)
P 1 8・ 121- Z (B01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小久保 勝伊  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 目代 博茂
中澤 登
発明の名称 チャンバ内オゾン殺菌方法及びオゾン殺菌装置  
代理人 絹谷 信雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ