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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06T
管理番号 1248590
審判番号 不服2009-20093  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-20 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 特願2007- 24026「画像処理装置、および画像処理方法、並びにコンピュータ・プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月21日出願公開、特開2008-191816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成19年2月2日に出願されたものであって、平成21年1月9日付け拒絶理由通知に応答して平成21年3月18日付けで手続補正書が提出され、更に平成21年4月8日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに応答して平成21年6月11日付けで手続補正書が提出されたが、平成21年7月14日付けで当該手続補正書は却下され、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年10月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。
審判合議体は、平成23年4月15日付けで最後の拒絶理由を通知し、これに対し、平成23年6月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されている。

第2 平成23年6月6日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成23年6月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
当該手続補正(以下、「本件補正」という。)による補正後の特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりのものである。

【請求項1】
顔画像に対して前記顔画像の左右の目の中心を原点として設定し、顔画像格納メモリ上の固定座標に正規化後の顔画像の右目および左目を設定するように正規化処理を実行する画像変換部と、
前記正規化された顔画像の前記原点の周囲の少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域に散在させた複数の特徴量抽出位置から抽出した特徴量と、登録顔画像の特徴量とに基づいて前記顔画像と前記登録顔画像が一致するかを判定する判定手段と、
を備える画像処理装置。
(以下、「本願補正後発明」とする。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像変換部」の「正規化処理」に「顔画像格納メモリ上の固定座標に正規化後の顔画像の右目および左目を設定する」という記載を追加することによって、その内容を限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号)の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができたものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.公知刊行物の記載
本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2006-4003号公報(以下、「刊行物」という。)には、対応する図面とともに、以下の内容が記載されている。
なお、下線は当審が付した。

(ア)「【0033】
図1は、本発明を適用した画像処理装置の構成例を表している。この画像処理装置1は、入力された画像データの画像から目、口、鼻といった顔の特徴をガボアフィルタリングにより抽出する顔抽出部11、並びに顔抽出部11により抽出された目、口、鼻などに基づいて、その画像が人の顔であるか否かを認識する顔認識部12により構成されている。
【0034】
顔認識部12は、顔画像アライメント部51、クラス判断部52、および学習データベース53により構成されている。顔画像アライメント部51は、顔抽出部11より供給された顔の目、口、鼻といった特徴の特徴位置に基づいて、それらが通常、人の顔として位置する位置にくるように、アフィン変換などのモーフィング処理を行う。クラス判断部52は、学習データベース53に登録されている学習データを参照して、入力画像が登録済みの顔と同一人物クラスに属するか否かを判断する。
【0035】
顔抽出部11は、入力された画像が、顔の画像であり、さらに顔の目の画像であるか、口の画像であるか、または鼻の画像であると判断できた場合には、その顔の中の位置を検出し、その位置情報を画像データとともに顔認識部12の顔画像アライメント部51に供給する。
【0036】
顔画像アライメント部51は、顔特徴位置が、基準位置にくるように、アフィン変換などのモーフィング処理を行う。これにより、例えば正面からみた顔の画像である場合には、左右の目が水平な位置に所定の距離はなれて位置し、左右の目の中間の下方に鼻が位置し、その鼻よりさらに下方に口が位置するようにモーフィング処理が行われる。その結果、顔画像の識別が容易になる。
【0037】
クラス判断部52は、顔画像アライメント部51によりアライメントされた顔画像の画像データが、学習データベース53に予め登録されている顔画像の画像データと一致するか否かを判断する。このため、クラス判断部52は、図2に示されるような、機能的構成を有している。
【0038】
すなわち、クラス判断部52は、特徴点検出部101、特徴量演算部102、読み出し部103、類似度ベクトル演算部104、クラス判定部105、重複判定部106、選択部107、出力部108、表示部109、指示判定部110、および登録部111を有している。
【0039】
特徴点検出部101は、顔画像アライメント部51より入力された画像データに基づく顔画像の特徴点を検出する。特徴量演算部102は、特徴点検出部101により検出された特徴点の特徴量を演算し、類似度ベクトル演算部104に供給する。特徴量演算部102は、ガボアフィルタ(Gabor Filter)で構成される。」

(イ)「【0098】
次に、図3のフローチャートを参照して、画像処理装置1の認識処理について説明する。ステップS31において、顔抽出部11は、入力された画像データから顔を抽出する。具体的には、顔の目、口、鼻といった顔の特徴を抽出する。ステップS32において、顔画像アライメント部51は、目、口、鼻をアライメントする。具体的には、目、口、鼻等が、常識的な位置関係に位置するように、その位置を調整する。
【0099】
ステップS33において、特徴点検出部101は、顔画像アライメント部51より入力された顔画像データの顔の特徴点を検出する。いずれの点を特徴点とするかは任意であるが、例えば、図4に示されるように、水平方向と垂直方向に一定の間隔で離れて位置する画素(図4において、×印で示される画素)を特徴点とすることができる。図4において、左側の画像が入力された顔画像データによる顔の入力画像を表し、右側の画像が登録されている顔画像データによる顔の登録画像を表す。」

(ウ)「【0064】
読み出し部103は、特徴点検出部101により検出された特徴点に対応する登録画像の特徴点を登録部111から読み出し、類似度ベクトル演算部104に出力する。
【0065】
類似度ベクトル演算部104は、特徴量演算部102により演算された入力画像の特徴量と、読み出し部103により読み出された登録画像の特徴量に基づいて、入力された顔画像と登録されている顔画像の類似度ベクトルを演算する。」

また、明文の記載はないものの、図4及び上記(ア)、(イ)の記載から、
(エ)アライメントされた顔画像の少なくとも目、口、鼻の位置を含む画像領域の複数の位置から特徴点の特徴量を検出すること
が明らかである。

これらの(ア)?(エ)の記載及び図面の内容を総合すると、刊行物には、次の(オ)なる発明が記載されていると認められる。
(以下、「引用発明」とする。)

[引用発明]
(オ)入力された顔画像の顔特徴位置が基準位置にくるようにアフィン変換などのモーフィング処理を行う顔画像アライメント部と、
アライメントされた顔画像の少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域の複数の位置から検出した特徴点の特徴量と、予め登録されている顔画像の特徴量とに基づいて前記顔画像と前記予め登録されている顔画像が一致するか否かを判断するクラス判断部と、
を備える画像処理装置。

3.対比

引用発明の「入力された顔画像」は本願補正後発明の「顔画像」に相当する。
更に、引用発明は「入力された顔画像の顔特徴位置が基準位置にくるようにアフィン変換などのモーフィング処理を行う」ものであるが、当該処理を行うにあたっては画像データを記憶するための何らかの手段を備えることが必須であることから、引用発明は“顔画像データを記憶する手段”を当然備えていると言え、これは本願補正後発明の「顔画像格納メモリ」に相当する。
一般に画像データにアフィン変換を施すことは、所定の座標軸が設定された座標系内において画像データに対して回転、拡大、縮小等の処理を施すことであって、発明の詳細な説明の段落【0069】には「本装置における正規化とは、顔画像の位置合わせ、回転、拡大縮小処理の少なくともいずれかの処理を含む画像変換処理である。」と記載されていることから、引用発明の「アフィン変換などのモーフィング処理」は本願補正後発明の「正規化処理」に相当する。
そして、引用発明の「顔画像の顔特徴」は左右の目を含むものであって、引用発明は「入力された顔画像の顔特徴位置が基準位置にくるようにアフィン変換などのモーフィング処理を行う」ものであることから、引用発明は、モーフィング処理後の顔画像の左右の目の位置を“顔画像データを記憶する手段”上の所定の固定された座標位置に設定するものであると言える。
また、引用発明の「顔画像アライメント部」は顔画像の変換処理を行うものであるので、本願補正後発明の「画像変換部」に対応するものであると言える。
したがって、引用発明と本願補正後発明とは、「顔画像格納メモリ上の固定座標に正規化後の顔画像の右目および左目を設定するように正規化処理を実行する画像変換部」を備える点で一致する。

引用発明の「アライメントされた顔画像」、「予め登録されている顔画像」は本願補正後発明の「正規化された顔画像」、「登録顔画像」にそれぞれ相当し、引用発明の「少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域の複数の位置から検出した特徴点の特徴量」は本願補正後発明の「少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域に散在させた複数の特徴量抽出位置から抽出した特徴量」に相当することが明らかである。
そして、引用発明の「クラス判断部」は顔画像と予め登録されている顔画像が一致するか否かを判断するものであるので、本願補正後発明の「判定手段」に相当すると言える。

したがって、引用発明における構成要素を本願補正後発明において用いられている用語に置き換えれば、本願補正後発明と引用発明は以下の点で一致、あるいは相違する。

[一致点]
(カ)(顔画像に対して前記顔画像の左右の目の中心を原点として設定し、)顔画像格納メモリ上の固定座標に正規化後の顔画像の右目および左目を設定するように正規化処理を実行する画像変換部と、
前記正規化された顔画像の(前記原点の周囲の)少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域に散在させた複数の特徴量抽出位置から抽出した特徴量と、登録顔画像の特徴量とに基づいて前記顔画像と前記登録顔画像が一致するかを判定する判定手段と、
を備える画像処理装置。

[相違点]
(キ)本願補正後発明は「顔画像に対して前記顔画像の左右の目の中心を原点として設定」するものであるのに対し、引用発明は入力された顔画像に対してアフィン変換などを含むモーフィング処理を行う際にどの部位を原点として設定するのかについて言及がなされていない点。

4.相違点の判断

画像データの回転、拡大縮小といったアフィン変換処理を行う画像処理装置の技術分野において、画像データの重要な部位を原点として設定することは、ごく普通に行われていることにすぎず(例えば、当審の拒絶の理由に引用した刊行物3(特開2005-141318号公報)の段落【0044】の記載、特開平11-161791号公報の図2)、引用発明においてアフィン変換などを含むモーフィング処理を顔画像における重要な部位である左右の目の中心を原点として設定することは当業者が格別の創作力なくしてなし得るものである。
また、当該設定を行うことで、引用発明の「顔画像の少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域の複数の位置」が「原点の周囲」となることは自明な事項である。
そして、本願補正後発明の効果についてみても、当然予測される程度のものにすぎず、本願補正後発明は格別顕著な効果を奏するものであるということはできない。
したがって、本願補正後発明は、引用刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものと判断される。

よって、本願補正後発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。

5.補正却下の[理由]についてのむすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成23年6月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成21年10月20日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項15までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明は、次のとおりである。

【請求項1】
顔画像に対して前記顔画像の左右の目の中心を原点として設定した正規化処理を実行する画像変換部と、
前記正規化された顔画像の前記原点の周囲の少なくとも目、鼻、口の位置を含む画像領域に散在させた複数の特徴量抽出位置から抽出した特徴量と、登録顔画像の特徴量とに基づいて前記顔画像と前記登録顔画像が一致するかを判定する判定手段と、
を備える画像処理装置。

2.当審拒絶理由

当審において平成23年4月15日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。

[理由]
本件出願の請求項1?15に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物1、3
刊行物1.特開2006-4003号公報
刊行物3.特開2005-141318号公報
に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.引用刊行物に記載の発明

当審の拒絶理由に引用された刊行物1は、前記「第2 平成23年6月6日付けの手続補正についての補正却下の決定」における理由において引用した刊行物と同一のものであり、その記載事項は、同「第2における[理由]の2.」に記載したとおりである。

4.対比・判断

本願請求項1に係る発明は、前記「第2における[理由]の1.」で検討した本願補正後発明における「顔画像格納メモリ上の固定座標に正規化後の顔画像の右目および左目を設定する」という限定事項を省いたものである。
そうすると、本願請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「第2における[理由]の4.」に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1に係る発明も、同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 まとめ

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたことにより、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
したがって、原査定を取り消す。本願は特許すべきものであるとの審決を求める、という本願審判請求の趣旨は認められない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-29 
結審通知日 2011-10-04 
審決日 2011-10-17 
出願番号 特願2007-24026(P2007-24026)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06T)
P 1 8・ 575- WZ (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 稔  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 吉村 博之
溝本 安展
発明の名称 画像処理装置、および画像処理方法、並びにコンピュータ・プログラム  
代理人 宮田 正昭  

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