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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1248593
審判番号 不服2009-21629  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-06 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 特願2006-543469「測定装置用コネクタおよびこの種のコネクタを備えた測定プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月16日国際公開、WO2005/054734、平成19年 6月28日国内公表、特表2007-517196〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
(1)本願は、平成16年12月8日を出願日(パリ条約による優先権主張、2003年12月8日、ドイツ)とする国際出願であって、特許請求の範囲について、平成21年5月12日付けで補正がなされたところ、同年6月25日付け(送達:同年7月8日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、特許請求の範囲についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審より、請求人に対し、平成22年8月31日付け審尋書により審尋をしたところ、指定期間を過ぎても回答はなかった。
(2)そして、原査定の拒絶の理由は、本願各請求項に記載された発明は、いずれも、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2003-509684号公報、米国特許第4019371号明細書、米国特許第4384736号明細書、米国特許第4577511号明細書、米国特許第4618314号明細書又は英国特許出願公開第2048474号明細書に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許を受けることができない、というものである。

2.補正の適否・本願発明
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前の請求項9(請求項1の従属項であった)を新たな請求項1とするものであり、本件補正により請求項の数は、9から8となった。
よって、本件補正は請求項の削除を目的とするものであり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第3項及び同条第4項の規定に適合する。

(2)本願発明
以上のとおり本件補正は認められるので、本件補正によって補正された特許請求の範囲の記載に基づいて検討するに、その請求項1の記載は、以下のとおりとなっている。
「管路に流れる流体を検査する測定装置用接続フランジであり、前記フランジは円板状取り付けリング(11)を有し、前記リングは2つの実質的に平坦な端面(12,12′)、外側被覆表面(13)および軸方向の貫通する開口(15)を決定する内側被覆表面(14)を有し、前記取り付けリング(11)の軸方向の貫通する開口(15)の直径が実質的に管路の内径に相当し、前記取り付けリング(11)の軸方向の長さ(L)が15mm未満であり、前記取り付けリング(11)は外側被覆表面に開口する少なくとも1個の放射状ドリルホール(16)を有し、前記ドリルホールに測定装置を接続できる、測定装置用接続フランジの(メタ)アクリル酸とアルカノールの反応によるアルキル(メタ)アクリル酸エステルの製造方法における使用。」
ここで、上記記載のうち、外側被覆表面(13)及び内側被覆表面(14)との発明特定事項についてみると、両者に共通する「被覆表面」という用語の意味するところが必ずしも明確でない。
そこで、「被覆表面」に関連する発明の詳細な説明の記載を参酌するに、主な記載は、以下のとおりである。
・「【0006】
従って本発明は管路に流れる流体を検査する測定装置用接続フランジを提供し、前記フランジはきわめて薄い円板状取り付けリングを有し、前記リングは2つの実質的に平坦な端面、外側被覆表面および内側被覆表面を有し、内側被覆表面は取り付けリングの軸方向の貫通する開口を決定し、取り付けリングは配置された状態で隣接する管部分の接続フランジの貫通する開口と実質的に同一直線にある。本発明の接続フランジの取り付けリングは外側被覆表面に開口する少なくとも1つの放射状ドリルホールを有し、ドリルホールに測定装置が外部で接続できる。」
・「【0011】
接続フランジの取り付けリングはきわめて異なる材料、特に管路に導かれる流体に耐性である材料からなってもよい。接続フランジの取り付けリングは有利にステンレス鋼、例えばDIN17440による材料1.4571(V4A鋼)からなる。しかし取り付けリングは耐性の低い材料からなり、内側被覆表面に耐性の保護層、例えばセラミック層またはエナメル層を備えていてもよい。」
・「【0012】
接続する測定装置は取り付けリングの外側被覆表面のオリフィスに取り付けられ、ここで放射状ドリルホールが外側被覆表面に開いている。しかし取り付けリングは有利に隣接するフランジの外径より小さい外径を有するので、放射状ドリルホールは有利に取り付けリングの外側被覆表面で接続管に接続し、前記接続管は例えば隣接する接続フランジの縁部をこえて放射状に外側に伸びる。・・・。」
・「【0013】
取り付けリングの放射状ドリルホールの構成は有利に測定するパラメーターに依存して選択する。圧力の測定のために、有利に放射状ドリルホールが取り付けリングの内側被覆表面に開放し、ドリルホールが直接軸方向の貫通する開口に連絡し、前記貫通する開口を接続フランジを取り付けた状態で検査する流体が流れる。光学的検査のために、放射状ドリルホールが内側被覆表面に通じていてもよいが、たとえば透明な窓、例えば石英窓により閉鎖されていてもよい。ドリルホールはドリルホールに挿入される測定装置の測定ヘッドが取り付けリングの内側被覆表面と同一平面で終了するように形成されていてもよい。」
・「【0022】
図1により管路に流れる流体を検査する測定装置用の本発明の接続フランジの第1実施態様が示される。図1の接続フランジ10は円板状取り付けリング11を有し、前記リングは実質的に平らな端面12を有する。端面12の反対側にあり、図1に示されていない端面12′(図4参照)は同様に平らに形成されている。取り付けリング11は外部被覆表面13および内部被覆表面14を有し、内部被覆表面14は軸方向の貫通する開口15と境を接し、軸方向の貫通する開口内で検査すべき流体が取り付けた状態で流れる。取り付けリング11内にドリルホール16が穿孔され、図1および図2の変形で内側被覆表面14に開口する。放射状ドリルホール16は外部被覆表面13で接続管17に移行し、前記接続管は図1に示されていない測定装置に接続するねじヘッド18を備えている。従って放射状ドリルホール16はねじヘッド18に接続される測定装置から検査される流体が運転中に貫流する軸方向の貫通する開口15に通じる接続を提供する。図1に示される実施態様の場合のように、要求に応じて、静電荷を避けるために取り付けリング11に金属接地ラグ19を接続することができる。」

これら発明の詳細な説明の記載によれば、「被覆表面」とは、周りを被覆すべく別途設けられた被覆層の表面のことを意味しているものではなく、単に外表面といった程度の意味で用いられていると解される。
さらに、本願の優先権主張の基礎となった第1国出願では、この「被覆表面」と訳された部分の原文は「Mantelflaeche」であり、これは、通常、外套面といった意味であるとされている。
よって、本願請求項1において、「被覆表面」とあるのは、「外套面」であると解することとし、本願発明を改めて以下のとおりに、認定する。
「管路に流れる流体を検査する測定装置用接続フランジであり、前記フランジは円板状取り付けリング(11)を有し、前記リングは2つの実質的に平坦な端面(12,12′)、外側外套面(13)および軸方向の貫通する開口(15)を決定する内側外套面(14)を有し、前記取り付けリング(11)の軸方向の貫通する開口(15)の直径が実質的に管路の内径に相当し、前記取り付けリング(11)の軸方向の長さ(L)が15mm未満であり、前記取り付けリング(11)は外側外套面に開口する少なくとも1個の放射状ドリルホール(16)を有し、前記ドリルホールに測定装置を接続できる、測定装置用接続フランジの(メタ)アクリル酸とアルカノールの反応によるアルキル(メタ)アクリル酸エステルの製造方法における使用。」(下線が変更箇所。以下、「本願発明」という。)

3.引用例記載の事項・引用発明
(1)引用例の記載事項
これに対して、原審の拒絶理由で引用された刊行物の1つである英国特許出願公開第2048474号明細書(以下、「引用例」という。)は、Thermometer mounting(温度計の取り付け)を発明の名称とする英国特許出願公開公報であり、以下の記載がある。以下において、訳文は当審による。

(a)「This invention relates to an in-line thermometer pocket unit for mounting a thermometer pocket in a pipeline to receive a temperature sensor for measuring the temperature of fluids in the pipeline.」(1頁5?9行)
「本発明は、パイプライン中の流体温度を測定する温度センサーを収納する温度計ポケットをパイプラインに取り付けるための、インライン温度計ポケット・ユニットに関する。」
(b)「It is common practice in industry to provide pockets (or housings) in pipelines into which temperature sensors, for example thermometers and thermocouples may be inserted. This is usually done by welding a flanged branch onto a section of the pipeline, inserting a flanged thermometer pocket into the branch such that the pocket extends into the main pipeline and then bolting together the flanges on the branch and the pocket.・・・」(1頁10?19行)
「例えば温度計や熱電対などの温度センサーが挿入されるポケット(あるいはハウジング)をパイプライン中に備えるようにすることが、工業プロセスにおいて、通常行われている。これは、パイプラインのある部分にフランジが付けられた分岐を溶接し、該ポケットが主パイプラインへ伸びるように、該分岐にフランジが付けられた温度計ポケットを挿入し、次に、該分岐と該ポケットのフランジ同士をボルトで締めることにより通常行われている。」
(c)「This existing practice for mounting pockets in pipelines suffers from a number of disadvantages, the most serious being damage caused to the pocket, or even to the sensor mounted in the pocket, as a result of the severe vibration of the pocket which is caused by turbulence in the fluids flowing rapidly past the pocket along the main pipeline (a phenomena known as vortex shedding). Further disadvantages are the need to locate the branch on small bore pipelines at an angle to the axis of the pipeline or coaxially with the pipeline. The provision of bends in the pipeline simply to accommodate a pocket is inconvenient and it is especially troublesome to provide bends of expanded pipe section in small bore pipelines.・・・」(1頁47行?63行)
「パイプライン中にポケットを取り付ける既存のやり方は多くの問題を引き起こし、最も重大な問題はポケットに生じ、さらに、主パイプラインに沿った流体の急激な流れの乱れによって惹起されるポケットの深刻な振動(この現象を渦の離脱という。)の結果、ポケットに設けられたセンサーにまでも、問題が生じる 。さらなる問題は、パイプラインの軸に対してある角度をもって、あるいは同軸で、小さな口径のパイプラインに分岐を配置する必要があることである。単にポケットを設けるためだけにパイプライン中に屈曲部を用意することは面倒であり、小口径のパイプラインにおいて拡張されたパイプ部分に屈曲部を設けることは、特にやっかいである。・・・」
(d)「The present invention provides a thermometer pocket unit which enables the pocket to be mounted in a pipeline without the need to provide a branch, which obviates the need to provide a bend in a pipeline to receive the pocket even in small bore pipelines, and which provides a pocket much less susceptible to vibration damage than the conventional system described hereinbefore, and which does not involve the cutting and welding of pipeline sections.・・・」(1頁66?76行)
「本発明は、分岐を設けることなくパイプライン中にポケットを設けることを可能とし、小口径のパイプラインであってもポケットを収容する屈曲部を設ける必要が無く、上記した従来のシステムよりも振動に基づく問題が小さなポケットであって、パイプラインの一部を切断したり、溶接したりすることのない温度計ポケットを提供するものである。」
(e)「According to the invention there is provided a thermometer pocket unit for mounting a thermometer pocket in a pipeline which comprises a thermometer pocket located through a hole in and welded to the wall of a pipe block of length such as to be locatable between the bolted-together flanged ends of adjacent sections of the pipeline.」(1頁77?84行)
「本発明によれば、パイプラインに温度計ポケットを取り付けるための温度計ポケット・ユニットが提供され、該ユニットは、パイプラインの隣接した部分のボルト締めされたフランジ端部同士の間に配置されるような長さのパイプ・ブロックの側壁で溶接され、孔を通して配置された温度計ポケットを含む。」
(f)「When providing a thermometer pocket in a pipeline, a unit as described in the immediately preceding paragraph is located between the flanged ends of adjacent sections of the pipeline so that the pipe block of the unit becomes part of the pipe-line, and the flanged pipeline sections are bolted together in conventional manner. ・・・ Usually, but depending to some extent upon the diameter of the pipeline, the pipe block of the unit will be of internal diameter similar to that of the pipeline so that when the unit is in position in the pipeline and the pipe block in effect is part of the pipeline, ・・・」(1頁85?100行)「パイプライン中に温度計ポケットを設ける場合、上記段落で述べたユニットは、該ユニットのパイプ・ブロックがパイプラインの一部になるように、パイプラインの隣接した部分のフランジ端同士の間に配置され、パイプラインのフランジ部分は、従来の方法で互いにボルト締めされる。そのような方法は、温度計ポケットをパイプラインに取り付けるための発明の更なる特徴に従って、提供される。通常、しかしある程度パイプラインの直径に依存するが、該ユニットのパイプ・ブロックはパイプラインのそれと同等の内径であり、その結果、該ユニットがパイプライン中に位置して、作動中の該パイプ・ブロックがパイプラインの一部を為すとき、・・・」
(g)「Since the unit is to be located between the flanged ends of adjacent sections of the pipeline which are bolted together in conventional manner, the pipe block of the unit should be as short as possible commensurate with the provision of a hole in its wall to accommodate the thermometer pocket and satisfactory welding of the pocket to the pipe block. As a guide, a spacing of up to 90 mm can usually readily be tolerated between adjacent sections of pipeline in conventional pipelines without impairing the integrity of the joint and since a typical unit according to the invention uses a pipe block of length 45 mm, the unit is readily acceptable in conventional pipeline systems.」(1頁108?123行)
「ユニットが、従来の方法で互いにボルト締めされた、パイプラインの隣接した部分のフランジ端の間に配置されることになるから、該ユニットのパイプ・ブロックは、パイプ・ブロックにポケットが十分に溶接され、かつ、温度計ポケットを収容するための側壁内に設けられた孔が設けられる程度に、なるべく短くあるべきである。参考までに、接合部を傷つけることなく、従来のパイプラインの隣接した部分の間には、通常、90mm以内の間隔が許容され、この発明に係る典型的なユニットは、パイプ・ブロック長さ45mmなので、該ユニットは、従来のパイプラインシステムに直ぐに適用可能である。」
(h)「As stated, the internal diameter of the pipe block of the unit is preferably similar to that of the pipe-line of which it becomes a part. ・・・」(1頁124?126行)
「上述したように、該ユニットのパイプ・ブロックの内径は、パイプラインのそれと同等であり、パイプラインの一部分になる。・・・」
(i)「The pipe block of the unit and the thermometer pocket may be made of any suitable material which is inert to the fluid in the pipeline; in the case of the pocket the material should have a good thermal conductivity. Normally, the unit will be made of metal, preferably carbon steel or stainless steel, since the majority of pipelines are made of metal. ・・・」(2頁19?26行)
「該ユニットのパイプ・ブロックおよび温度計ポケットは、パイプライン中の流体に不活性なあらゆる適切な材料で作られており、ポケットの場合には、材料は良熱伝導性であるべきである。大多数のパイプラインは金属で作られているので、通常、ユニットは金属、好ましくは、炭素鋼あるいはステンレス鋼で作られる。」
(j)「A typical thermometer pocket according to the invention for a thermometer, thermocouple or other temperature sensor, is a tube closed at the end which projects into the pipe block (and hence into the pipeline). ・・・」(2頁54?58行)
「本発明に係る、温度計、熱電対あるいは他の温度センサーのための典型的な温度計ポケットは、端部が閉じた管であり、パイプ・ブロックに(したがって、パイプライン中に)突出している。」
(k)「・・・The unit may also be useful in existing pipelines since owing to the short length of the pipe block it will often be possible to break a pipeline and fit the unit between two sections of the pipeline without impairing the integrity of that pipeline.」(2頁117?122行)
「パイプ・ブロックの長さが短いことにより、パイプラインに何らの障害を与えることなく、パイプラインを分解し、パイプラインの二つの部分の間に該ユニットを装着することが可能であるから、該ユニットは既存のパイプラインにも役立つだろう。」
(l)「Figure 1 shows a sectional view through a thermometer pocket unit according to the invention in position in a pipeline, and
Figure 2 shows a view of the unit taken along the line A-A in Fig. 1. 」(2頁126?130行)
「図1は、パイプライン中に置かれた本発明に係る温度計ポケット・ユニットの断面図であり、
図2は、図1にラインA-Aに沿って見た該ユニットを示す。」
(m)「Referring to the drawings, a thermometer pocket unit comprises a thermometer pocket 1 located in a hole 2 in a pipe block 3, the pocket 1 being welded to the pipe block externally at 4 and internally at 5. The thermometer pocket 1 is an essentially tubular pocket having a portion 6 extending externally of the pipe block, a stem portion 7 located largely within the thickness of the pipe block and a tapered portion 8 extending within the pipe block and closed at its lower end 9. The stem portion 7 of the pocket has an external groove in its wall so defining an air pocket 10 between the pocket 1 and the wall of the pipe block 3. The portion 6 of the pocket is of larger external diameter than the stem portion 7, thereby providing a lip 11 for locating the pocket in the hole 2 in the pipe block 3. The length of external portion 6 of the pocket is such that the pocket extends clear of the flanges between which the unit is bolted and the free end 12 of portion 6 is machined to receive a terminal housing or cover. The end 12 of the pocket is open to allow the insertion of a thermometer or other temperature sensor into the pocket.」(3頁1?26行)
「図面を参照して、温度計ポケット・ユニットは、パイプ・ブロック3の孔2に配置された温度計ポケット1を含み、ここで、該ポケット1は、外側4及び内側5でパイプ・ブロックと溶接されている。該温度計ポケット1は、パイプ・ブロックの外側に伸びる部分6、パイプ・ブロックの肉厚の中にその大部分が位置するステム部分7、及びパイプ・ブロック内に伸び、底部9で閉じる先細部分8を有する、本質的に管状のポケットである。該ポケットのステム部分7は、その壁に外向きに凹部を有し、ポケット1とパイプ・ブロックとの間にエアポケット10が形成される。ポケットの部分6はステム部分7より大きな外径を有し、よって、パイプ・ブロック3の孔2にポケットを配置するためのリップ11が提供される。外側に伸びる部分6の長さは、該ユニットがボルト締めされる両フランジを越えるように延び、また、該部分6の自由端12がターミナルハウジングやカバーを受け入れるよう機械加工される程度のものである。該ポケットの端12は、温度計あるいは他の温度センサーが挿入されるよう開いている。」
(n)「As shown, the thermometer pocket unit is located between flanges 13 and 14 welded on to adjacent sections 15 and 16 of a pipeline, sealing rings or gaskets 17 and 18 being provided between opposed faces of the flanges 13 and 14 respectively and the pipe block 3 of the thermometer pocket unit. For simplicity and clarity, the bolts joining the flanges 13 and 14 are not shown.」(3頁27?35行)
「図示したように、温度計ポケット・ユニットは、パイプラインの隣接部材15,16に溶接されたフランジ13,14の間に配置されており、シールリング又はガスケット17,18が、フランジ13,14のそれぞれの反対側面と該温度計ポケット・ユニットのパイプ・ブロック3との間に設けられている。単純に、分かりやすくするために、フランジ13,14を連結するボルトは図示されていない。」
(o)「It will readily be appreciated that the diameter of pipe block 3 can be varied, without varying any other dimensions of the unit, to provide a series of standard units for incorporation in pipelines of any desired diameter. As a guide only, the unit is useful in pipelines of up to 200 or 250 mm nominal bore; it is especially useful in pipelines of from 25 to 200 mm nominal bore.」(3頁36?44行)
「該ユニットの他の寸法を変えることなく、パイプ・ブロック3の直径を変えることで、任意の所望の口径を有するパイプラインに適合した一連の基準となるユニットが提供されることが容易に理解されよう。あくまで参考までに、ユニットは、公称200又は250mm以内の口径のパイプラインに有用であり、特に、公称25?200mmの口径のパイプラインに有用である。」

(2)引用発明
上記記載(a)ないし(o)及びFig.1,Fig.2の記載より、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
「パイプラインに流れる流体の温度を測定する温度計ポケット・ユニットであり、前記温度計ポケット・ユニットは円板状のパイプ・ブロック3を有し、前記パイプ・ブロック3は、シールリング又はガスケット17に対向する面及びシールリング又はガスケット18に対向する面、外側4を形成する面及び前記パイプ・ブロック3の内径を定める内側5を形成する面を有し、前記パイプ・ブロック3の内径がパイプラインの内径と同等であり、前記パイプ・ブロック3の軸方向の長さが既存のパイプラインに障害を与えない長さである45mmであり、前記パイプ・ブロック3は外側4を形成する面に開口する孔2を通して設けられた温度計ポケット1を備え、該温度計ポケット1は、底部9で閉じ自由端12で開いている先細の管であり、前記管の中に温度計を挿入することができる、前記温度計ポケット・ユニットを、フランジ13,14間にボルト締めすることにより装着して、パイプラインシステムを用いた工業プロセスにおける前記流体の温度測定に使用すること。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア まず、引用発明における「パイプライン」は、本願発明における「管路」に相当し、引用発明における「流体の温度を測定する」は、本願発明における「流体を検査する」に相当し、以下同様に、「温度計ポケット・ユニット」は、「測定装置用接続フランジ」に、「円板状のパイプ・ブロック3」は、「円板状取り付けリング(11)」に、「シールリング又はガスケット17に対向する面及びシールリング又はガスケット18に対向する面」は、「2つの実質的に平坦な端面(12,12′)」に、「外側4を形成する面」は、「外側外套面(13)」に、「前記パイプ・ブロック3の内径を定める」は、「軸方向の貫通する開口(15)を決定する」に、「内側5を形成する面」は、「内側外套面(14)」に、「パイプ・ブロック3の内径」は、「軸方向の貫通する開口(15)の直径」に、それぞれ相当する。

イ 上記相当関係を踏まえると、引用発明の「パイプラインに流れる流体の温度を測定する温度計ポケット・ユニットであり、前記温度計ポケット・ユニットは円板状のパイプ・ブロック3を有し、前記パイプ・ブロック3は、シールリング又はガスケット17に対向する面及びシールリング又はガスケット18に対向する面、外側4を形成する面及び前記パイプ・ブロック3の内径を定める内側5を形成する面を有し、前記パイプ・ブロック3の内径がパイプラインの内径と同等であり、」は、本願発明の「管路に流れる流体を検査する測定装置用接続フランジであり、前記フランジは円板状取り付けリング(11)を有し、前記リングは2つの実質的に平坦な端面(12,12′)、外側外套面(13)および軸方向の貫通する開口(15)を決定する内側外套面(14)を有し、前記取り付けリング(11)の軸方向の貫通する開口(15)の直径が実質的に管路の内径に相当し、」に相当すると言える。

ウ 本願発明の「前記取り付けリング(11)の軸方向の長さ(L)が15mm未満であり、」について検討するに、この点に関し、発明の詳細な説明には、「【0012】・・・測定装置を有利にこの接続管に接続できる。この目的のために接続管はその自由端部で、例えば糸接続または切断リング接続を有することができる。その場合に取り付けリングは特に狭い構成を有してもよく、本発明の接続フランジの取り付けにより管系の形状の損傷がほとんどない。取り付けリングの軸方向の長さ、すなわち流体の流れ方向の長さは有利に20mm未満、より有利に15mm未満、特に10mm未満である。」とあるから、軸方向の長さ(L)を15mm未満としたのは、管系の損傷を防ぐためである。
よって、引用発明の「前記パイプ・ブロック3の軸方向の長さが既存のパイプラインに障害を与えない長さである45mmであり、」も、本願発明の「前記取り付けリング(11)の軸方向の長さ(L)が15mm未満であり、」も、共に、「前記取り付けリング(11)の軸方向の長さ(L)が既存の管路に障害を与えない長さであ」る点で共通すると言える。

エ 本願発明の「放射状ドリルホール」について検討するに、まず、「放射状」とは、管路の軸方向(測定装置用接続フランジの軸方向も同じ方向である。)に対して直角方向に、と解されるから、「放射状ドリルホール」とは、管路の軸方向に対して直角方向に設けられたドリルホール、すなわち、ドリルで開けた(ような)孔のことと解される。
他方、引用発明は、「パイプ・ブロック3は外側4を形成する面に開口する孔2を通して設けられた温度計ポケット1を備え、該温度計ポケット1は、その中に温度計を挿入することができるように底部9で閉じ、自由端12で開いている先細の管であり、」というものであるから、まず、温度計ポケット1を形成する温度計を挿入し得る管の内部は当然に細長い孔となっており、その孔の方向は、パイプラインの軸方向に対して直角方向であることも見て取れる。
そして、その細長い孔は自由端12で開いており、温度計ポケット1は、パイプ・ブロック3の外側4を形成する面に開口する孔2を通して設けられているから、結局、該細長い孔は外側4を形成する面に対しても開口していると言える。
よって、引用発明の「前記パイプ・ブロック3は外側4を形成する面に開口する孔2を通して設けられた温度計ポケット1を備え、該温度計ポケット1は、底部9で閉じ自由端12で開いている先細の管であり、」も、本願発明の「前記取り付けリング(11)は外側外套面に開口する少なくとも1個の放射状ドリルホール(16)を有し、」も、共に、「前記取り付けリングは外側外套面に開口する少なくとも1個の放射状の細長い孔を有す」る点で共通すると言える。

オ 同様に、引用発明の「前記管の中に温度計を挿入することができる」も、本願発明の「前記ドリルホールに測定装置を接続できる」も、共に、「前記細長い孔に測定装置を接続できる」点で共通する。

カ また、引用発明における「パイプラインシステムを用いた工業プロセス」は、所定の化合物を所定の化学反応を利用して製造するものと解されるから、引用発明における「前記温度計ポケット・ユニットを、フランジ13,14間にボルト締めすることにより装着して、工業プロセスにおける前記流体の温度測定に使用すること。」も、本願発明における「測定装置用接続フランジの(メタ)アクリル酸とアルカノールの反応によるアルキル(メタ)アクリル酸エステルの製造方法における使用。」も、共に、「測定装置用接続フランジの所定の化学反応による所定の化合物の製造方法における使用。」である点で共通すると言える。

(2)してみると、両者の一致点は、以下のとおりである。
(一致点)
「管路に流れる流体を検査する測定装置用接続フランジであり、前記フランジは円板状取り付けリングを有し、前記リングは2つの実質的に平坦な端面、外側外套面および軸方向の貫通する開口を決定する内側外套面を有し、前記取り付けリングの軸方向の貫通する開口の直径が実質的に管路の内径に相当し、前記取り付けリングの軸方向の長さが既存の管路に障害を与えない長さであり、前記取り付けリングは外側外套面に開口する少なくとも1個の放射状の細長い孔を有し、前記細長い孔に測定装置を接続できる、測定装置用接続フランジの所定の化学反応による所定の化合物の製造方法における使用。」

(3)また、両者の相違点は、以下のとおりである。
(相違点)
ア 取り付けリングの軸方向の長さが、
本願発明は、「15mm未満」としているのに対し、引用発明は、45mmである点。
イ 細長い孔が、
本願発明は、「ドリルホール」とあるようにドリルにより開けた孔、あるいは、ドリルにより開けたような孔としているのに対し、引用発明は、その形成方法が不明である点。
ウ 測定装置用接続フランジが、
本願発明では、「(メタ)アクリル酸とアルカノールの反応によるアルキル(メタ)アクリル酸エステルの製造方法」に使用されるのに対し、引用発明では、所定の化合物を所定の化学反応を利用して製造するパイプラインシステムを用いた工業プロセスに使用されると解されるにとどまり、該工業プロセスの具体的な内容が明らかでない点。

5.判断
前記相違点について検討する。
(1)相違点アについて
本願発明において、取り付けリングの軸方向の長さを15mm未満としたことの技術的意義を検討する。
この点に関して、本願明細書には、前記したように「【0012】・・・測定装置を有利にこの接続管に接続できる。この目的のために接続管はその自由端部で、例えば糸接続または切断リング接続を有することができる。その場合に取り付けリングは特に狭い構成を有してもよく、本発明の接続フランジの取り付けにより管系の形状の損傷がほとんどない。取り付けリングの軸方向の長さ、すなわち流体の流れ方向の長さは有利に20mm未満、より有利に15mm未満、特に10mm未満である。」との記載がある。
すなわち、15mm未満としたのは、取り付けリングの軸方向の長さが短い方が、接続される管に対する損傷がより少ないという程度の意味であり、15mm未満としたことにより格別の臨界的意義があるものでもなく、取り付けリングの軸方向の長さは、接続対象である既存の管路の直径や、その他の諸条件を考慮して決められるべきものである。
他方、引用発明は、この長さが45mmであるけれども、既存のパイプラインに障害を与えない長さと意味付けられており、しかも、なるべく短い方が良いともされている(前記「3.(1)(g)」参照のこと。)。
よって、取り付けリングの軸方向の長さを15mm未満とすることは、既存の管路の状況等によって適宜決められるべき設計的事項であると認める。

(2)相違点イについて
細長い孔を開けるのにドリル等の切削工具を用いて行うことは、例示するまでもなく周知慣用技術であるから、引用発明の管を形成する細長い孔をドリルホールとすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。

(3)相違点ウについて
引用発明は、所定の化学反応により所定の化合物を製造する工業プロセスに使用される温度計ポケット・ユニットに係り、従来、温度計ポケットを設けるために、別途の分岐管を設けて既存のパイプラインに接続していたところ、別途の分岐管を設けることによるパイプライン中の流れに起因する問題点や、そもそも別途の分岐管を設ける際の煩わしさを解決することを目的としており、このために、温度計ポケット・ユニットを既存のパイプライン中に装着することで、インラインで温度測定を可能としたものである(前記「3.(1)(a)?(d)」)。
他方、一般に、(メタ)アクリル酸とアルカノールとのエステル交換反応を利用して、温度計測を行いつつ、アルキル(メタ)アクリル酸エステルを製造する工業プロセスは、例えば特開2001-187763号公報(発明の名称:(メタ)アクリル酸エステルの製造方法、出願人:三菱レーヨン株式会社、公開日:平成13年7月10日)で例示するように周知技術である。
よって、パイプラインシステムを用いた工業プロセスにおける流体の温度測定に使用する引用発明を、従来周知な、(メタ)アクリル酸とアルカノールとの反応を利用したアルキル(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に適用して、本願発明のように、(メタ)アクリル酸とアルカノールの反応によるアルキル(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に、かかる測定装置用接続フランジを使用するようにすることは、当業者ならば容易に想到し得たことである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知(慣用)技術から当業者が予測可能なものであって格別のものでもない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知(慣用)技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-08 
結審通知日 2011-07-13 
審決日 2011-07-27 
出願番号 特願2006-543469(P2006-543469)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 ▲高▼木 真顕
森 雅之
発明の名称 測定装置用コネクタおよびこの種のコネクタを備えた測定プローブ  
復代理人 宮城 康史  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
復代理人 篠 良一  
復代理人 住吉 秀一  

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