• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1248609
審判番号 不服2010-24544  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-11-01 
確定日 2011-12-08 
事件の表示 特願2004-148482「植物病害防除用照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月 2日出願公開、特開2005-328734〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成16年5月19日の出願であって,平成22年7月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年11月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に,同時に手続補正がなされた。
その後,平成23年4月8日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,同年6月9日に回答書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成22年11月1日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「紫外線を含む光を放出する光源を備えた植物病害防除用照明装置であって、
前記光源から放出される紫外線が、
UV-Bの範囲(280?340nm)の波長成分の光を含むと共に、植物にあたる位置のUV-Bの光量が50μW/cm^(2)以下になるように制御され、
且つ、前記紫外線のうち、UV-Aの範囲(340?380nm)の波長成分、及びUV-Cの範囲(100?280nm)の波長成分が略ゼロになるように制御され、
且つ、前記光源から放出される光のうち、380nm以上の可視域の波長成分が略ゼロになるように制御されたことを特徴とする植物病害防除用照明装置。」


第3 引用刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2003-339236号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。(下線は,当審にて付与。)
(1a)「【請求項1】 植物育成用の可視光線ランプと藻やカビの発生抑制用の紫外線ランプを具備することを特徴とする植物育成用照明装置。」

(1b)「【0017】紫外線ランプ12は、前記可視光線用ランプとは異なり、植物の生育に必要と考えられている青色領域よりも短い波長領域にある紫外線領域の光、特にUV-B領域(概ね290?320nm)の光を出射するものが用いられる。この紫外線ランプ12は、カビや藻の発生を抑制するために用いられる。すなわち、本発明は、紫外線ランプ12を併用することにより、従来から植物育成用の人工光源として用いられている育成用のランプ(上記各公報参照)のみでは不十分であった紫外線領域の光を補うことにより、カビや藻の発生乃至育成を抑制するものである。」

(1c)「【0019】本発明では、紫外線の照射量は、UV-B領域、具体的には305nmにおける照射量が、好ましくは60μw/cm^(2)以下、望ましくは50μw/cm^(2)以下に制御される。60μw/cm^(2)を越え、70μw/cm^(2)程度になれば、葉の表面に凹凸が現れたり、葉が舟状に丸まるなどの奇形が現われ、苗の生育に対して悪影響が見受けられる。」

これらの記載事項(1a)?(1c)及び図面の記載からみて,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。

「紫外線ランプ12を備える藻やカビの発生抑制用装置であって,
前記紫外線ランプ12から放出される紫外線が,UV-B領域(概ね290?320nm)の光を含むものであって,
紫外線の照射量は,UV-B領域,具体的には305nmにおける照射量が,50μw/cm^(2)以下に制御される,
紫外線ランプ12を備える藻やカビの発生抑制用装置。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)


第4 当審の判断
1.本願発明と刊行物記載の発明との対比
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「紫外線ランプ12」及び「藻やカビの発生抑制用装置」が本願発明の「紫外線を含む光を放出する光源」及び「植物病害防除用照明装置」に相当しており,同様に「UV-B領域(概ね290?320nm)の光」が「UV-Bの範囲(280?340nm)の波長成分の光」に相当している。
そして,刊行物1記載の発明において,光源から放出される紫外線の照射量である「50μw/cm^(2)以下」という値が,植物に当たる位置における照射量であることは,自明のことである。
したがって,両者は,以下の点で一致している。

「紫外線を含む光を放出する光源を備えた植物病害防除用照明装置であって、
前記光源から放出される紫外線が、
UV-Bの範囲(280?340nm)の波長成分の光を含むと共に、植物にあたる位置のUV-Bの光量が50μW/cm^(2)以下になるように制御された,
植物病害防除用照明装置。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点)
本願発明は,紫外線のうち,UV-Aの範囲(340?380nm)の波長成分,及びUV-Cの範囲(100?280nm)の波長成分が略ゼロになるように制御され,
且つ,光源から放出される光のうち,380nm以上の可視域の波長成分が略ゼロになるように制御されるのに対して,刊行物1記載の発明は,紫外線のうちUV-Aの範囲(340?380nm)とUV-Cの範囲(100?280nm)の波長成分,及び,380nm以上の可視域の波長成分については,放出するか否かについて特に特定されていない点。

2.相違点についての判断
刊行物1には,全体としては植物育成用照明装置が記載されており,該植物育成用照明装置は,植物育成用の可視光線ランプ11と上記刊行部1記載の発明である「紫外線ランプ12を備える藻やカビの発生抑制用装置」とから構成されている。
つまり,刊行物1に記載された植物育成用照明装置において,植物の育成に必要な可視域の波長成分の光などは併用される可視光線ランプ11から植物に照射されるのであって,刊行物1記載の発明である「紫外線ランプ12を備える藻やカビの発生抑制用装置」は,カビや藻の発生乃至育成を抑制するために紫外線のうちUV-Bの範囲(280?340nm)の波長成分の光を照射すればその目的を達成するものであって,他の波長成分の光を照射する必要はない。
なお,本願発明の「植物病害防除用照明装置」も,それのみでは植物を育成できるものではなく,植物育成のためには他に何らかの植物育成用のランプが必要となることは明らかである。
そうすると,刊行物1記載の発明の「紫外線ランプ12を備える藻やカビの発生抑制用装置」において,UV-Bの範囲(280?340nm)の波長成分以外の波長成分の光については,それらによって植物に意図しない影響を与えることのないよう,周知のフィルタ等によりカットするなどして略ゼロとなるように制御することは、当業者が容易になし得たことである。
まして,紫外線のうちUV-Aの範囲(340?380nm)の波長成分が糸条菌の胞子形成に影響を与えることが知られており(請求人は,本願明細書段落【0004】において認めているし,他に,特開昭51-100445号公報の1頁右欄等にも,波長域が400nm以下の近紫外光が病原糸状菌の胞子形成に有効であることが記載されている。),紫外線のうちUV-Cの範囲(100?280nm)の波長成分が植物や人体に悪影響を与えることは例示するまでもなく周知であり,さらに,波長500nm以下の可視域の波長成分の光に虫を誘引することが知られている(例えば特開平11-283571号公報参照)ことから考えても,刊行物1記載の発明において,UV-Bの範囲(280?340nm)の波長成分以外の波長成分の光を略ゼロとなるように制御することは当業者が容易になし得たことである。

3.まとめ
よって,本願発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-07 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-26 
出願番号 特願2004-148482(P2004-148482)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 宮崎 恭
土屋 真理子
発明の名称 植物病害防除用照明装置  
代理人 板谷 康夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ