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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1248632
審判番号 不服2008-28939  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-13 
確定日 2011-12-05 
事件の表示 特願2004-524980「新規な苦味受容体T2R76の同定」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月 5日国際公開、WO2004/011617、平成18年 5月25日国内公表、特表2006-515157〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 本願の経緯
本願は、2003年7月29日(パリ条約に基づく優先権主張2002年7月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年6月2日に明細書に対する手続補正がなされ、平成20年8月13日付けで拒絶査定がなされ、平成20年11月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成20年12月15日に明細書に対する手続補正がなされたものである。

第2 平成20年12月15日になされた手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年12月15日になされた手続補正を却下する。

[理由]
1.平成20年12月15日になされた手続補正(以下、「本件補正」という。)
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成20年6月2日に補正された、
「 【請求項1】
(a)組換え発現系を用意して、T2R76ポリペプチドを異種宿主細胞で単独又は少なくとも1つの他のT2Rポリペプチドと組み合わせて発現させること、
(b)試験物質を(a)の前記系に与えること、
(c)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をアッセイすること、
(d)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をT2R76機能の対照レベル又は質と比較すること、及び
(e)T2R76機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質を測定することにより試験物質をT2R76モジュレータとして同定すること
を含むT2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法。」
から、
「 【請求項1】
苦味のモジュレータを同定する方法であって、
(a)組換え発現系を用意して、それにより配列番号2のペプチドと少なくとも95%同一で、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)によって、その苦味受容体活性が改変されるポリペプチドを、異種宿主細胞で発現させること、
(b)試験物質を(a)の前記系に与えること、
(c)前記試験物質の存在下での苦味受容体活性をアッセイすること、
(d)前記試験物質の存在下での苦味受容体活性を前記試験物質の不存在下での苦味受容体活性と比較すること、及び
(e)前記試験物質の不存在下での苦味受容体活性と比較して、前記試験物質の存在下での苦味受容体活性が、有意に変化している場合に試験物質をT2R76モジュレータとして同定すること
を含む、同定方法。」
に補正された。

本件補正により、以下の(補正点1)?(補正点5)が補正された。
(補正点1)(a)において、「T2R76ポリペプチド」を「配列番号2のペプチドと少なくとも95%同一で、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)によって、その苦味受容体活性が改変されるポリペプチド」に補正し、また、「異種宿主細胞で単独又は少なくとも1つの他のT2R76ポリペプチドと組み合わせて発現させること」を「異種宿主細胞で発現させること」に補正した。
(補正点2)(c)において、「T2R76機能のレベル又は質」を「苦味受容体活性」に補正した。
(補正点3)(d)において、「T2R76機能のレベル又は質」を「苦味受容体活性」に補正し、また、「T2R76機能の対照レベル又は質」を「前記試験物質の不存在下での苦味受容体活性」に補正した。
(補正点4)(e)において、「T2R76機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質を測定することにより」を「前記試験物質の不存在下での苦味受容体活性と比較して、前記試験物質の存在下での苦味受容体活性が、有意に変化している場合に」に補正した。
(補正点5)「T2R76ポリペプチドのモジュレータ」を「苦味のモジュレータ」に補正した。

2.新規事項について
(1)本願明細書の記載
「苦味化合物に対するhT2R76の応答
hT2R76を発現する哺乳動物細胞系(HEK293)並びに異なるhT2R(hT2R64)を発現する対照細胞系を使用してGTPγS結合アッセイを実施する。これらの細胞系を、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)、オクタ酢酸スクロース、ウンデカ酢酸ラフィノース(raffinose undecaacetate)、(RUA)、グリシン酸銅、デナトニウム及びキニーネを0.5から2mmの範囲の種々の濃度で含む苦味化合物と接触させる。このアッセイの結果を使用して、hT2R76は既知の苦味刺激で特異的に活性化される苦味受容体であることが確認される。このGTPγS結合アッセイでは、活性は特定の濃度の既知の苦味化合物の存在下又は不存在下のいずれかで判定する。」(【0192】)

そして、これ以外に、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)に関する記載は本願明細書中に存在しない。

(2)判断
上記(1)の本願明細書の記載には、hT2R76を発現する哺乳動物細胞系(HEK293)を使用して、GTPγS結合アッセイを実施すること、その際に6-n-プロピルチオウラシル(PROP)、オクタ酢酸スクロース、ウンデカ酢酸ラフィノース(raffinose undecaacetate)、(RUA)、グリシン酸銅、デナトニウム及びキニーネの苦味化合物と接触させること、そして、「このアッセイの結果を使用して、hT2R76は既知の苦味刺激で特異的に活性化される苦味受容体であることが確認される」ことについて記載されている。しかしながら、ここに列挙されている種々の苦味化合物について実際に測定した際の実験結果は開示されておらず、また、列挙されている苦味化合物のうち、どれがT2R76を活性化したかも記載されておらず、数多くの苦味リガンドのうちどれがT2R76を活性化するかは不明であるから、PROPがT2R76を活性化することや、PROPによりT2R76の苦味受容体活性が改変されることについては、記載されているとは言えない。(なお、請求人の提示した米国特許出願公開第20080038739号明細書の表2によれば、約80種の苦味リガンドのうち、T2R76を活性化したのはブルシンのみであり、本願明細書に例示されたキニーネによっては活性化されていない。)
とすれば、「T2R76ポリペプチド」を「配列番号2のペプチドと少なくとも95%同一で、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)によって、その苦味受容体活性が改変されるポリペプチド」へと補正する補正点1を含む本件補正は、T2R76がPROPによりその苦味受容体活性が改変されるという情報を追加するものであり、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入したものと言わざるを得ない。

(3)まとめ
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.仮に本件補正が新規事項を含むものでないとした場合についての補足的検討
上記のように、本件補正は新規事項を含むものであって、却下すべきものであるが、念のため、仮に本件補正が新規事項を含むものでなく、請求人が審判請求の理由に対する補正書で述べているように特許請求の範囲の限定的減縮であるとした場合についても、以下、補足的に検討する。
本件補正後の請求項1に係る発明は、「(a)組換え発現系を用意して、それにより配列番号2のペプチドと少なくとも95%同一で、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)によって、その苦味受容体活性が改変されるポリペプチドを、異種宿主細胞で発現させること」をその構成要件として含むものである。一方、上記2.(1)で検討したように、本願明細書には【0192】に6-n-プロピルチオウラシル(PROP)に関する記載があるのみで、それ以外には6-n-プロピルチオウラシル(PROP)に関する記載は存在しない。
そして、上記2.(2)で検討したとおり、PROPによりT2R76の苦味受容体活性が改変されることについては、本願明細書中に記載されているとは言えないのであるから、本願出願時の技術常識に照らしても、苦味モジュレータを同定するという本願補正後の請求項1に係る発明の課題が解決できることが理解できるように記載されているとは言えない。
また、苦味モジュレーターを同定するという課題が解決できることが理解できるように記載されていない以上、苦味モジュレータを同定できるとは認められないから、本願明細書は当業者が本件補正後の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えない。
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとは言えず、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしておらず、また、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとは言えず、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件補正後の請求項1に係る発明は独立して特許を受けることができないものである
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである

第3 本願発明について
平成20年12月15日になされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本出願に係る発明は、平成20年6月2日になされた手続補正により補正された明細書の記載からみて、その請求項1-11に記載されたとおりのものであるところ、そのうち請求項1の記載は以下のとおりである(以下、「本願発明」という。)。

「 【請求項1】
(a)組換え発現系を用意して、T2R76ポリペプチドを異種宿主細胞で単独又は少なくとも1つの他のT2Rポリペプチドと組み合わせて発現させること、
(b)試験物質を(a)の前記系に与えること、
(c)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をアッセイすること、
(d)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をT2R76機能の対照レベル又は質と比較すること、及び
(e)T2R76機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質を測定することにより試験物質をT2R76モジュレータとして同定すること
を含むT2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法。」

第4 引用文献1について
これに対して、原審の拒絶査定の理由で引用文献1として引用した、本願の優先日前である2002年7月25日に頒布された刊行物である、国際公開第02/057309号には、以下の事項が記載されている。

1.「すなわち、本発明は、
(1) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩」(第4頁第19行?21行)
2.「(4) 上記(1)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド」(第4頁第26?27行)
3.「(7) 上記(4)記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター」(第5頁第1行)
4.「(8) 上記(7)記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体」(第5頁第2行)
5.「(44)上記(1)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を活性化する化合物を上記(8)記載の形質転換体を培養することによって該形質転換体の細胞膜に発現したGタンパク質共役型レセプタータンパク質に接触させた場合と、上記(1)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を活性化する化合物および試験化合物を上記(8)記載の形質転換体を培養することによって該形質転換体の細胞膜に発現したGタンパク質共役型レセプタータンパク質に接触させた場合における、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするリガンドと上記(1)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法」(第10頁第12行?第21行)
6.「配列番号1」(配列リスト第1頁、配列自体は省略)
7.「本発明は、ヒト胎盤由来の新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩およびそれをコードするDNAに関する。」(第1頁第6行?第7行)
8.「2. 測定法
(1)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明のレセプタータンパク質発現CHO細胞を、測定用緩衝液1 mlで2回洗浄した後、490 μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(2)10^(-3)?10^(-10)Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識リガンドを5 μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10^(-3)Mのリガンドを5 μl加えておく。
(3)反応液を除去し、1 mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識リガンドを0.2N NaOH-1% SDSで溶解し、4 mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(4)液体シンチレーションカウンター(ベックマンコールター社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximam Binding (PMB)を次の式で求める。」(第62頁第6行?第17行、PMBの式は省略)

上記7.の記載から、引用文献1のレセプタータンパク質はヒト由来であり、上記8.の(1)の記載から、引用文献1のレセプタータンパク質はチャイニーズハムスター由来のCHO細胞に形質転換されていることが読み取れるから、当該タンパク質は異種宿主細胞で発現されていることが分かる。また、上記5.の記載は、上記1.?4.の記載を引用した表現形式となっているが、上記1.?4.を引用しない記載形式に書き換え、さらに前述した当該タンパク質が異種宿主細胞で発現されていることを加味すると、引用文献1には、「配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を活性化する化合物を、配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクターで異種宿主細胞に形質転換させた形質転換体を培養することによって該形質転換体の細胞膜に発現したGタンパク質共役型レセプタータンパク質に接触させた場合と、配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を活性化する化合物および試験化合物を配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクターで異種宿主細胞に形質転換させた形質転換体の細胞膜に発現したGタンパク質共役型レセプタータンパク質に接触させた場合における、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするリガンドと配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法」について記載されていると言える。

第5 対比
上記第4 6.記載の配列番号1の配列は、本願発明で言うところのT2R76ポリペプチドの配列と同一であり、引用文献1の 「配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質」は本願発明の「T2R76」に相当する。また、引用文献1の「試験化合物」は本願発明の「試験物質」に、「リガンドと配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩」は「T2R76ポリペプチドのモジュレータ」に、「配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性」は「T2R76機能のレベル又は質」に、それぞれ相当する。
また、上述のように引用文献1の「配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質」は本願発明の「T2R76」に相当するから、引用文献1の「配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を活性化する化合物を、配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクターで異種宿主細胞に形質転換させた形質転換体を培養することによって該形質転換体の細胞膜に発現したGタンパク質共役型レセプタータンパク質に接触させた場合」および「配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩を活性化する化合物および試験化合物を配列番号1で表されるGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクターで異種宿主細胞に形質転換させた形質転換体の細胞膜に発現したGタンパク質共役型レセプタータンパク質に接触させた場合」は、それぞれ「T2R76を活性化する化合物を、組換えT2R76に接触させた場合」「T2R76を活性化する化合物および試験物質を、組換えT2R76に接触させた場合」の意味である。そして、試験物質を含んでいない前者の測定結果は、本願発明の「T2R76機能の対照レベル又は質」に該当し、試験物質を含む後者の測定結果は本願発明の「試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質」に該当する。
とすると、両者は、
「(a)組換え発現系を用意して、T2R76ポリペプチドを異種宿主細胞で単独で発現させること、
(b)試験物質を(a)の前記系に与えること、
(c)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をアッセイすること、
(d)前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質をT2R76機能の対照レベル又は質と比較すること、及び
(e)T2R76機能の対照レベル又は質と比較して有意に変化した前記試験物質の存在下でのT2R76機能のレベル又は質を測定することにより試験物質をT2R76モジュレータとして同定すること
を含むT2R76ポリペプチドのモジュレータを同定する方法。」
で一致し、
本願発明ではT2R76を活性化する化合物についての言及がないのに対し、引用文献1ではT2R76を活性化する化合物(リガンド)が必須である点で、相違する。

第6 判断
上記相違点について検討する。
T2R76がレセプターであることを考慮すると、対応するリガンド等、T2R76を活性化する物質がT2R76に結合して初めて、T23R76の本来有するシグナル伝達等々の機能が発揮されるであろうことは、本願優先日時に当業者にとって技術常識であって、T2R76を活性化する物質をT2R76と共存させて行うことで、T2R76機能のレベル又は質のアッセイが可能になることは当業者にとって明らかである。また、本願明細書の【0128】には「 開示の方法で同定したモジュレータは、アゴニスト及びアンタゴニストを含むことができる。本明細書で使用する用語「アゴニスト」は、T2R76ポリペプチドの生物学的活性を活性化し、生物学的活性を助け、又は生物学的活性を増強する物質を意味する。本明細書で使用する用語「アンタゴニスト」は、T2R76ポリペプチドの生物学的活性を妨げ、又は緩和する物質を指す。モジュレータは、T2R76ポリペプチドに特異的に結合するリガンド又は物質も含むことができる。T2R76モジュレータの判定のための活性アッセイ及び結合アッセイは、in vitro又はin vivoで実施することができる。」とあり、本願発明の「モジュレータ」にはT2R76に結合して活性化する化合物も含まれることが記載されている。
とすれば、引用文献1において、T2R76を活性化する化合物を使用してT2R76機能のレベル又は質をアッセイするに先立ち、まず、そのアッセイに必要であるが引用文献1には具体的には特定されていないT2R76を活性化する化合物を得る目的で、モジュレータ候補である試験物質とT2R76とを接触させる構成を採用し、本願発明のような構成とすることは、当業者が容易になしたものである。
なお、本願発明において、T2R76を活性化する物質を使用することが排除されていないと解する場合、本願発明は引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当することになる。

第7 まとめ
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明および本願優先日時の技術常識から当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-14 
結審通知日 2011-07-15 
審決日 2011-07-26 
出願番号 特願2004-524980(P2004-524980)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C12N)
P 1 8・ 55- Z (C12N)
P 1 8・ 121- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福間 信子中村 花野子  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 加々美 一恵
平田 和男
発明の名称 新規な苦味受容体T2R76の同定  
代理人 浅村 肇  
代理人 長沼 暉夫  
代理人 浅村 皓  
代理人 金森 久司  

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