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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1248680
審判番号 不服2011-1732  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-25 
確定日 2011-12-16 
事件の表示 特願2005- 88051「蛇行防止ガイド付エンドレスベルト」拒絶査定不服審判事件〔平成18年10月 5日出願公開、特開2006-267807〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成17年3月25日の出願であって、平成23年1月25日付けで拒絶査定不服の審判請求がなされ、当審において、同年8月2日付けで通知した拒絶の理由に対して、同年9月20日付けで手続補正書が提出されたものである。

本願の請求項1?3に係る発明は、上記手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。

「【請求項1】
樹脂製のエンドレスベルトに粘着層を介して蛇行防止ガイド部材が貼設されている蛇行防止ガイド付エンドレスベルトであって、
前記粘着層の両面に、0.01?10μmの厚みのプライマー層を有し、
前記粘着層の粘着剤が、アクリル系、シリコーン系、天然ゴム系、合成ゴム系、またはウレタン系の粘着剤であり、
前記プライマー層のプライマーが、ポリイソシアネート系プライマーまたはポリウレタン系プライマーである蛇行防止ガイド付エンドレスベルト。」


2.引用刊行物の記載事項
これに対して、当審における拒絶理由通知で引用した、本願の出願前に頒布された、
刊行物1:特開2003-98796号公報、
刊行物2:特開2000-43156号公報 、
刊行物3:特開平4-272361号公報
には、図面とともに以下の事項が記載されている。
なお、刊行物2,3は周知技術の例示文献である。
また、以下の下線は当審で付した。

(1)刊行物1
(1a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンドレスベルトを、その内部に挿入した複数のローラーの回転により、80mm/sec以上の線速で、40℃以上に加熱される画像形成装置内を少なくとも一部を走行させるエンドレスベルト走行装置であって、該エンドレスベルトは、その両側縁内面に、帯状の弾性体を前記ローラーよりも外側に接着層により固定したエンドレスベルトであって、該弾性体が130℃、30分の加熱による重量減少が0.01?0.30%であることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト走行装置。
【請求項2】 前記弾性体のゴム硬度が65?85であることを特徴とする請求項1に記載のエンドレスベルト走行装置。
【請求項3】 前記エンドレスベルト内面に帯状の弾性体を固定する粘着層の厚みが10?50μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のエンドレスベルト走行装置。
【請求項4】 前記弾性体がウレタン系樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のエンドレスベルト走行装置。
【請求項5】 前記弾性体と粘着剤層との間にプライマー層を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のエンドレスベルト走行装置。
【請求項6】 前記プライマー層がウレタン塩化ビニル共重合レジンであることを特徴とする請求項5に記載のエンドレスベルト走行装置。」

(1b)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンドレスベルト走行装置、それを用いた画像形成装置に関するものである。」

(1c)「【0004】一般的にエンドレスベルト感光体は、導電化した高分子フィルムや金属フィルムの基体上に感光層を設けた構造であるが、特に金属フィルムの基体を用いたエンドレスベルト感光体は、熱に対するエンドレスベルトの伸縮が小さく、テンションに対する形状保持性が高いため、画像形成の高速化のために、エンドレスベルト感光体の周速を早くしても、エンドレスベルト感光体の変形等が起こることなく、高品質の画像形成が可能である。
【0005】通常、画像形成装置におけるエンドレスベルトの走行は、エンドレスベルトの内側に複数のローラーを挿入し、該ローラーの回転により行なわれるが、ローラーの真円度、真直度、平行度等の不均一性の問題から、エンドレスベルトの幅方向に蛇行してしまう。
・・・(中略)・・・
【0008】また、特開平04-190280号公報には、特定のゴム硬度と厚さを持った柔軟性物質をエンドレスベルトの内側両縁部に貼り付け、寄り止めガイドとしたエンドレスベルトが開示されている。このエンドレスベルトは、柔軟性物質の寄り止めガイドの存在により、蛇行が発生することなく、安定な走行が可能であり、優れた性能を有している。該柔軟性物質には、多くの場合、所謂ゴムの弾性体が用いられる。ゴムは、多くの材料を混合し、加硫化することにより製造されるが、混合の処方は、ゴム製造メーカーの財産であり、ゴムの利用者に開示されることは通常ない。ゴムの規格はゴム硬度のような物性値により管理されるが、ゴム製造時の気温、湿度等の環境、作業者の熟練度、製造量により、処方が一定であっても、物性値が一定しない場合が多いため、ゴム製造メーカーは、若干の添加剤をゴムに添加して、物性値を安定化させている。この添加剤の材料及び添加量はやはり、ゴム製造メーカーから開示されることはほとんどない。
【0009】ゴムは固体でありながら、低分子量の物質はゴム中を移動することが知られ、例えばゴム表面に粘着剤を設けた場合には、移動してきた低分子量の物質により、接着性を大きく落とす、いわゆるマイグレートが生じる場合がある。接着性を重要視する場合には、ゴムメーカーは低分子量の物質の添加を極力行なわないが、ゴム硬度が65?85のゴムの場合には、どうしても添加物の使用が避けられない。また、加硫は完全に100%とはならないため、未反応の低分子化合物はどうしても残留してしまう。
【0010】エンドレスベルト走行装置の寄り止めガイドにゴム等の弾性体を用いた場合、ある程度の柔軟性を要求するため、接着性が確保できる範囲の添加剤が使用されてきた。しかしながら、画像形成の高速化の要求に対応し、エンドレスベルトの線速を80mm/sec以上と上げた場合に、弾性体の製造ロットにより、蛇行の発生する確率が極めて高くなる場合があった。また、画像形成装置の小型化に伴い、画像形成の定着等で用いる熱源により、エンドレスベルトの一部の温度が高くなる画像形成装置あるいは、エンドレスベルトを40℃以上に加熱して、画像の安定性を確保する画像形成装置ではやはり蛇行の発生する確率が高かった。
【0011】蛇行が発生したエンドレスベルトを解析したところ、寄り止めガイドが一部剥がれている箇所があり、その剥離している部分で蛇行が発生することが分かった。しかし、そのガイドに用いた弾性体の物性値は蛇行のほとんど発生しない寄り止めガイドに用いる弾性体と同じであった。同じ粘着剤を用いて、ゴムの製造ロットを変えて寄り止めガイドを作製したところ、前述の蛇行の発生したゴムでは、接着性のバラツキが若干大きかった。このゴムの違いを確認したが、やはり物性に違いはなく、ゴム製造メーカーからの情報開示は得られなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題に鑑み、エンドレスベルトの線速が早く、エンドレスベルトが40℃以上の温度で用いられるエンドレスベルト走行装置において、経時の蛇行が発生することなく、高品質の画像形成が可能であるエンドレスベルト走行装置及びこれらを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、エンドレスベルトの蛇行の発生が、寄り止めガイドの接着性の低下による寄り止めガイドの剥がれのために発生し、寄り止めガイドに用いる弾性体の製造ロットにより蛇行発生頻度が異なることを見出し、鋭意検討を重ねた結果、該弾性体を130℃、30分加熱したときの重量減少が0.01?0.30%である弾性体から作製した寄り止めガイドを用いたエンドレスベルトが80mm/sec以上の速い線速で、40℃以上の温度で使用しても、蛇行を発生させることなく、高品質の画像形成が可能であることを見出し、本発明に至った。
【0014】即ち、本発明は、エンドレスベルトを、その内部に挿入した複数のローラーの回転により、80mm/sec以上の線速で、40℃以上に加熱される画像形成装置内を少なくとも一部を走行させるエンドレスベルト走行装置であって、該エンドレスベルトは、その両側縁内面に、帯状の弾性体を前記ローラーよりも外側に接着層により固定したエンドレスベルトであって、該弾性体が130℃、30分の加熱による重量減少が0.01?0.30%であることを特徴とする画像形成装置用エンドレスベルト走行装置である。
【0015】弾性体を130℃、30分加熱による重量減少成分は可塑剤あるいは未反応成分であり、これらの成分は比較的低分子量の成分であり、室温程度の温度領域では弾性体中を移動しつづけている。また、これらの成分は接着剤表面に到達すると、接着剤へ移行し、接着剤を膨潤させて接着力を低下させてしまう。このため、弾性体を130℃、30分加熱することによる重量減少は0.01?0.30%、好ましくは0.02?0.28%、さらに好ましくは0.04?0.26%である。重量減少が0.01重量%以下では、弾性体がエンドレスベルトの寄り止めガイドとして硬すぎるため好ましくない。重量減少が0.30%以上では、寄り止めガイドの接着性が低下しやすく、エンドレスベルト走行装置が蛇行を発生しやすく好ましくない。
【0016】本発明で、弾性体の重量減少の測定温度を130℃としたが、130℃より低い温度で0.30%以上の重量減少を生じる弾性体の寄り止めガイドは接着力が充分でなく、当然好ましくない。ただし、130℃より低い温度では、寄り止めガイドの接着性を低下させる低分子成分の除去が不充分となるため、130℃より低い加熱により重量減少が0.01?0.30%であったとしても、寄り止めガイドとして好ましいかどうか分からない。130℃より大きな温度では、弾性体中の低分子量の除去による重量減少は大きいのであるが、弾性体そのものの分解あるいは変質が生じやすく、低分子量との分離が難しく好ましくない。
【0017】本発明で、弾性体の130℃加熱での重量減少の測定時間を30分としたが、30分より短くても、0.30%以上の重量減少を生じる弾性体の寄り止めガイドは接着力が充分でなく、当然好ましくない。一般に、30分の加熱であれば、雰囲気の温度分布は均一となり、重量減少もほぼ一定となるため好ましい。」

(1d)「【0018】図1に、本発明のエンドレスベルト走行装置の概略図を示した。本発明のエンドレスベルト走行装置は、エンドレスベルト内に複数の駆動ローラを挿入し、該駆動ローラーの回転によりエンドレスベルトが走行可能なエンドレスベルト走行装置を作製することができる。図1では駆動ローラーを3本としているが、駆動ローラーの数はエンドレスベルトのテンション、エンドレスベルト走行装置の大きさ、形状を所望のものとできれば複数であれば何本でも良い。
【0019】本発明のエンドレスベルト走行装置は、感光体、中研(当審注:これは中間の誤記である。)転写ベルト、定着ベルト、搬送ベルト等の走行装置に用いることができ、エンドレスベルトの線速は80mm/sec以上、好ましくは100mm/sec以上、さらに好ましくは120mm/sec以上の高速での使用においても蛇行は発生せず、高解像度で高品質の画像形成が可能となる。」

ここで、図1は次のとおり。

(1e)「【0022】本発明のエンドレスベルト走行装置に用いるエンドレスベルトの寄り止めガイドである弾性体の材質としては、適度なゴム弾性があり、画像形成装置内での環境による変質のないものであれば特に限定されるものではないが、ポリウレタンゴム、ネオプレンゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等の合成ゴムあるいは天然ゴムの一種あるいは二種以上の混合物等のゴムを例示することができ、中でも温湿度に対する安定性、耐磨耗性が小さく、耐オゾン特性の優れるウレタンゴムが最も好ましい。また、弾性体の機械的強度の向上を目的に炭素体、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、ガラス繊維等のフィラーの混合することもできる。フィラーの中でもカーボンブラック等の炭素体の混入は弾性体の機械的特性の向上のみならず、炭素体の潤滑効果により駆動ローラーと寄り止めガイドとの摩擦力を低減させることができるため、駆動ローラーから加わる摩擦力等の力が小さくなり、エンドレスガイドの蛇行は起り難く大変好ましい。
【0023】本発明のエンドレスベルト走行装置に用いるエンドレスベルトの寄り止めガイドである弾性体を固定する接着剤は、エンドレス基体及び該弾性に対して充分な接着性を有し、画像形成装置内での環境による変質のないものであれば特に限定されるものではないが、例えばアクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、熱硬化系接着剤が例示でき、中でも経時での接着性、固定の容易さの面からアクリル系の接着剤が好ましい。
【0024】(略)
【0025】また、弾性体と粘着剤の間には、弾性と粘着剤の接着性の向上および、弾性体からの低分子成分の移行を抑制するために、プライマー層を設けることが好ましく、例えば反応硬化性のポリウレタンプライマー、ウレタン系レジン等を該弾性体表面へ塗布、あるいは接着剤に混入し、接着層とすることにより、弾性体と接着層との接着性は完全なものとなり好ましく、特にプライマーとしてウレタン-塩化ビニル共重合レジンは粘着剤及び弾性体ともに接着が完全であり、弾性体からの低分子成分の移行を抑制する効果が高く大変好ましい。

(1f)「【0026】図2に、典型的なエンドレスベルトの寄り止めガイド付近の模式図を示した。本発明のエンドレスベルトは、感光体へ応用した場合特に効果が高い。感光体の寿命は、感光体上への画像形成が繰り返される回数で決ってしまうため、感光体の長寿命化のためには感光体の表面積を向上させることが有効であるため、通常のドラムではドラム径を大きくすることになるが、ドラム径の大きな感光体を用いると画像形成装置の小型化は難しくなる。一方、エンドレスベルト感光体は、複数のローラーを感光体内に挿入することで、形状を自由に変えることができ、画像形成装置内への感光体の配置の自由度が増すため、感光体の表面積が大きくなっても、画像形成装置の小型化に貢献することができる。
【0027】本発明のエンドレスベルト走行装置を用いる画像形成装置は、単色、カラーいずれも優れた画像形成を行なうことができるが、特に、カラー画像形成においては、より忠実な画像形成が求められるとともに、異なる色のトナーを積層して、カラー画像を形成させるため、極めて僅かな蛇行が発生しても色ずれとなり、問題となりやすいが、本発明の画像形成装置は、蛇行が発生することなく極めて高画質の画像形成を行なうことができる。」
ここで、図2は次のとおり。ただし、図2は、接着層における接着剤とプライマーの重なり順が、本願明細書の記載事項と逆である。


(1g)「【0040】本発明のエンドレスベルトを感光体に用いた場合、エンドレス感光体はエンドレスベルト状の基体と感光層から形成され、基体と感光層の間には中間層を設けることができる。また、感光層上には保護層を設けることもできる。
【0041】(略)
【0042】(略)
【0043】本発明のエンドレス感光体は基本的には基体と感光層から構成され、基体と感光層の間には下引き層を設けることができる。感光層は、電荷発生層と電荷輸送層を順次積層した積層型あるいは電荷発生剤と電荷輸送剤を混合して用いる単層型何れの場合も用いることができる。さらに、保護層を設けることもできる。
【0044】?【0053】(略)
【0054】これらの要件を満足させるための電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂及び吸着剤より構成される。これらを適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。
【0055】?【0069】(略)
【0070】保護層は結着樹脂中に金属、又は金属酸化物の微粒子を分散した層である。(略)
【0071】(略)
【0072】また、本発明のエンドレスベルトを中間転写ベルトとした場合、中間転写ベルトは導電性支持体として、アルミニウム、鉄、銅及びステンレス等の金属や合金ベルト、カーボンや金属粒子等を分散した導電性樹脂ベルト上にアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等に導電材としてカーボン(ケッチェンブラック)、グラファイト、カーボン繊維、金属粉、導電性金属酸化物、有機金属酸化物、有機金属化合物、有機金属塩、導電性高分子等を分散して体積抵抗率を制御した弾性層、PFA、FEP等のフッ素樹脂をコーティングした表面離型層から形成されるタイプ、及び基材として、ポリエチレン(高密度、中密度、低密度、直鎖状低密度)、・・・(中略)・・・1種またはこれらの混合物からなるもの、特にポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレンテトラフロロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂やフッ素ゴムに導電性フィラーを加え、電気抵抗を調整したタイプが用いられる。中間転写ベルトの抵抗値は10^(6)Ω・cm?10^(10)Ω・cm(1kV印加時)が好ましい。
【0073】(略)
【0074】(略)
【0075】本発明のエンドレスベルトを転写紙搬送ベルトとして用いるときは、アルミニウム、鉄、銅及びステンレス等の金属や合金、カーボンや金属粒子等を分散した導電性樹脂ベルト、ニッケル、ステンレス等の金属ベルトを用いることができる。また、転写紙搬送ベルトは電圧を印加するよう構成され、転写紙が転写紙搬送ベルトに静電的に吸着されトナー画像の乱れ、転写紙の横ズレ、しわ等の発生を低減することができる。
【0076】本発明のエンドレスベルトを定着ベルトに用いる場合は、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の耐熱性の樹脂フィルム、金属フィルム等を用いることができる。」

(1h)「【0077】
【実施例】以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。なお、「部」は重量部を意味する。
<実施例1?3、比較例1>厚さ0.8mm、ゴム硬度70のウレタンゴムシート(DUS216-70Aシーダム製)を季節を変えて4ロット購入した。4ロットのウレタンゴムのゴム硬度は全て70±1.5の範囲であった。各ウレタンゴムを130℃、30分加熱することによるウレタンゴムの重量減少を測定したところ、それぞれ0.05%、0.22%、0.34%、0.13%であった。各ウレタンゴムの片面に、酢酸エチルにウレタン-塩化ビニル共重合レジンを溶解させた溶液を塗布し、乾燥させることで、ウレタンゴム上に約4μmのウレタン-塩化ビニル共重合レジンを積層した。ウレタン-塩化ビニル共重合レジンを積層した面に厚さ40μmのアクリル系粘着シートを圧着させながら貼りあわせた後、幅4mm、長さ285mmの長さにトムソン刃で打ち抜き寄り止めガイドを作製し、各ロット5組の寄り止めガイドを作製した。
【0078】下記組成の混合物をボールミルポットに取りφ10mmアルミナボールを使用し72時間ボールミリングした。
酸化チタン(CRー60:石原産業製) 50.0部
アルキッド樹脂
(ベッコライトM6401-50、大日本インキ化学工業製)
15.0部
メラミン樹脂
(スーパーベッカミンL-121-60、大日本インキ化学工業製)
10.0部
メチルエチルケトン(関東化学製) 31.7部
【0079】このミリング液にシクロヘキサノン(関東化学製)105.0部を加えさらに2時間ボールミリングして下引き層用塗布液を作製した。この塗布液を周長290.3mm、厚さ30μmのニッケルシームレスベルト(ビッカース硬度480?510、純度99.2%以上)上にスプレー塗布し、135゜Cで25分間乾燥して、膜厚6.5μmの下引き層を形成した。
【0080】続いて下記構造式の化合物(I)(リコー製)の電荷発生物質1.5部、下記構造式の化合物(II)(リコー製)の電荷発生物質1.5部、ポリビニルブチーラール樹脂1.0部(エスレックBLS;積水化学製)、シクロヘキサノン(関東化学製)80.0部からなる混合物をボールミルポットに取り、φ10mm瑪瑙ボールを使用し、120時間ボールミリングした後、さらにシクロヘキサノン78.4部とメチルエチルケトン237.6部を加え電荷発生層塗布液を調整した。この塗布液をスプレー塗布により下引層上に塗布後、130℃で20分間乾燥し、厚さ0.12μmの電荷発生層を形成した。
【0081】
【化1】(略)
【0082】
【化2】(略)
【0083】次に下記組成の電荷輸送層塗工液を調整し、この塗布液をスプレー浸積塗布により電荷発生層上にスプレー塗布し、140℃で30分間乾燥し、厚さ25μmの電荷輸送層を形成した。
【0084】下記構造式(III)の電荷輸送物質(リコー製) 7部
【0085】
【化3】(略)
ポリカーボネート樹脂(C-1400、帝人化成製) 10部
シリコーンオイル(KF-50、信越化学製) 0.002部
テトラヒドロフラン(関東化学製) 841.5部
シクロヘキサノン(関東化学製) 841.5部
3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール(東京化成製) 0.04部
【0086】この感光体ベルトを幅367mmに切断した。感光体基体の端部から5mmの両側縁内面に前記寄り止めガイドを剥離紙を剥しながら貼り付け固定し、寄り止めガイドのウレタンゴムの4ロット毎に5本の感光体を作製した。」

(1i)「【0096】
【発明の効果】以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、請求項1に記載の本発明により、寄り止めガイドの弾性体から粘着剤への低分子成分の移行による寄り止めガイドの接着性の低下が生じないため、画像形成速度が速い状態でも蛇行の発生しない高画質の画像形成が可能なエンドレスベルト走行装置を提供することができる。また、請求項2に記載の本発明により、感光体の曲げや寄り止めガイドの横方向からの力に対しても耐えうる寄り止めガイドを用いることにより、蛇行の発生しない高画質の画像形成が可能なエンドレスベルト走行装置を提供することができる。また、請求項3に記載の本発明により、寄り止めガイドの横方向からの力に対しても粘着剤が露出しないため、蛇行の発生しない高画質の画像形成が可能なエンドレスベルト走行装置を提供することができる。また、請求項4に記載の本発明により、寄り止めガイドの弾性体に温湿度に対する安定性、耐磨耗性が小さく、耐オゾン特性の優れるウレタンゴムを用いることにより、蛇行の発生しない高画質の画像形成が可能なエンドレスベルト走行装置を提供することができる。また、請求項5及び6に記載の本発明により、寄り止めガイドの弾性体と粘着剤の接着性を向上し、弾性体中の低分子成分の粘着剤への移行を抑制し、寄り止めガイドの接着性の低下を防止できるため、蛇行の発生しない高画質の画像形成が可能なエンドレスベルト走行装置を提供することができる。また、請求項7に記載の本発明により、高品質の画像形成が可能なエンドレスベルト感光体走行装置を提供することができる。」

これら記載によれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「エンドレスベルトを、その内部に挿入した複数のローラーの回転により、80mm/sec以上の線速で、40℃以上に加熱される画像形成装置内を少なくとも一部を走行させるエンドレスベルト走行装置に用いられるエンドレスベルトであって、
該エンドレスベルトの両側縁内面に、エンドレスベルトの寄り止めガイドである帯状のウレタン系樹脂を主成分とする弾性体を、前記ローラーよりも外側に接着層により固定しており、
該弾性体が130℃、30分の加熱による重量減少が0.01?0.30%であり、
弾性体と粘着剤層との間には、弾性体と粘着剤の接着性の向上および、弾性体からの低分子成分の移行を抑制するために、プライマー層が設けられ、
弾性体を固定する接着剤は、エンドレス基体及び該弾性体に対して充分な接着性を有し、画像形成装置内での環境による変質のないものであれば特に限定されるものではないが、例えばアクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、熱硬化系接着剤が例示でき、中でも経時での接着性、固定の容易さの面からアクリル系の接着剤が好ましく、
前記プライマー層は、例えば反応硬化性のポリウレタンプライマー、ウレタン系レジン等を該弾性体表面へ塗布したものである、
寄り止めガイドを有するエンドレスベルト。」

ここで、「接着層」「粘着剤層」「プライマー層」の関係については、刊行物1の他の記載も参照すると、エンドレスベルトの寄り止めガイドである弾性体の上に、順に、プライマー層、粘着剤層が設けられており、接着層は、粘着剤層を指すか、あるいは、粘着剤層とプライマー層を合わせたものを指すものということができる。そして、接着層又は粘着剤層の上に、エンドレスベルトが接着されているものといえる。
また、「接着剤」と「粘着剤」は、ほぼ同義で用いられているものと理解される。

(2)刊行物2
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】一面(2a)にコロナ放電処理がなされ、且つ印刷が施された自己伸縮性を有するポリエチレン系フィルム(2)を、筒状に形成してチューブ体(1)を製造する方法であって、前記フィルム(2)の一面(2a)の端部(5)に、該フィルム(2)の長手方向に沿って2-シアノアクリレート系接着剤(3)を塗布する接着剤塗布工程と、前記フィルム(2)を筒状にして両端部(5),(6)を重ね合わせて接着する接着工程とを有することを特徴とするチューブ体の製造方法。
【請求項2】前記接着剤塗布工程の前に、前記フィルム(2)の両面(2a),(2b)の端部(5),(6)に、該フィルム(2)の長手方向に沿ってプライマー(7)を塗布するプライマー塗布工程を有する請求項1記載のチューブ体の製造方法。」

(2b)「【0004】ところで、ポリエチレン系フィルムは、印刷用のインキや接着剤との親和性に乏しいため、従来から印刷や接着を行う前に、予めフィルムの一面(片面)に親和性を高めるための表面処理、代表的なものとしてはフィルムの一面にコロナ放電処理が施され、フィルム面が活性化されている。尚、該表面処理が、フィルムの一面にのみ施される理由は、フィルムの両面にコロナ放電処理を行うと、該フィルムを巻き取ってフィルムロールの状態とした際、ブロッキング(フィルム同士の癒着)が生じるからである。
【0005】しかしながら、一面にのみコロナ放電処理がなされたフィルムにあっては、筒状にして重ね合わされるフィルムの両端部の接着代面うち、一方の端部の接着代面にはコロナ放電処理がなされていないので、接着剤にて接着してチューブ体を製造することが困難である。
【0006】かかる点に鑑みて、フィルムの一面にのみコロナ放電処理がなされたフィルムロールを引き出し、該一面に印刷を施すと共に、フィルムの他面の端部に長手方向(コロナ放電処理がなされていないフィルムの接着代面)に沿ってコロナ放電処理を施し、その後、フィルムを筒状にして両端部を接着剤にて接着してチューブ体を製造するという方法も知られている。
【0007】しかしながら、かかる製造方法にあっては、フィルムロールからフィルムを引き出して筒状にして接着する作業を行うチューブ形成装置に、コロナ放電処理装置を装備しなければならないという問題点を生ずる。つまり、上記製造方法にあっては、フィルムロールからフィルムを引き出した後にコロナ放電処理を行うので、従来から工業的に汎用されているチューブ形成装置に、高価なコロナ放電処理装置やそれに付随する設備を新たに装備しなければならないという設備コスト上の問題点を生ずる。
【0008】また、ポリエチレン系フィルムを用いてチューブ体を製造するには、上記ブロッキングの問題のみならず、ポリエチレン系フィルムを筒状にして接着した後、接着剤を硬化させるために、25℃?30℃位に保たれたエイジングルームに24時間?48時間位の間チューブ体を静置しなければならない。従って、製造に長時間を要するだけでなく、チューブ体の接着具合の検査を直ぐに行えないので、接着不具合を早期に発見できず、場合によっては、チューブ体を製造し終わった後に接着不具合が発見されて最初から製造し直さなければならない事態も生じる。また、エイジングルームの設置場所を確保しなければならないという問題点もある。
【0009】この点、例えば、塩化ビニル系フィルム等のように、接着代面を溶剤で溶解させて接着できるものであれば、溶剤が揮発した後に検査を行えるので比較的時間のロスが少ないのであるが、ポリエチレン系フィルムにあっては、溶剤にて溶解させて接着させる手段が採用できず、従って、従来からエイジングのため長時間静置しなければならないのである。
【0010】本発明は、上記問題点に鑑みて、自己伸縮性を有するポリエチレン系フィルムを用いてチューブ体を製造するに際し、フィルム同士のブロッキングを生じさせず、しかも、フィルムの両端部を接着した後、極めて短時間の間に確実に接着するチューブ体の製造方法を提供することを第1の課題とする。さらに、本発明は、短時間で製造することができ、しかも、接着部分に皺等が生じないストレッチラベルとして好適なチューブ体を提供することを第2の課題とする。


(2c)「【0014】さらに、前記チューブ体1の製造方法として、請求項2記載のように、前記接着剤塗布工程の前に、前記フィルム2の両面2a,2bの端部5,6に、該フィルム2の長手方向に沿ってプライマー7を塗布するプライマー塗布工程を有せば、該フィルム2の両端部5,6同士が、2-シアノアクリレート系接着剤3を介して更に強力に接着するので好ましい。」

(2d)「【0027】次に上記チューブ体の製造方法について、図2を参考にしつつ説明する。尚、図面には、フィルム引出装置、接着剤塗布装置等の各種装置類は全く図示しない。また、特に説明がない限り、チューブ体1、フィルム2、接着剤3等の構成については上記で説明したものと同様である。
【0028】<表面処理及び印刷工程>公知の手段により自己伸縮性を有するポリエチレン系フィルム2を製膜し、該フィルム2の一面2a全面に、印刷インキとの親和性を高めるためコロナ放電処理を行い(かかるコロナ放電処理は、フィルム2の一面2aのぬれ張力が、約48ダイン/cm程度になるように行う)、フィルムロールに巻き取る。尚、フィルム2の他面2bに、フィルムロールとして巻き取った際に重なり合う面同士がブロッキングを起こさない程度に弱くコロナ放電処理を行ってもよい。次に、表面処理がなされた前記フィルムロールからフィルム2を引き出し、該フィルム2の一面2a全面(又はフィルム2の一面2aのうち接着代である端部5を除いた面)にグラビア印刷法等によって所定の印刷を行い印刷層8を設けた後、フィルム2を巻き取り、印刷済みのフィルムロール10とする。
【0029】<プライマーの塗布工程>前記フィルムロール10から印刷済みのフィルム2を引き出し、前記フィルム2の両面2a,2bの端部5,6に、フィルム2の長手方向に沿ってプライマー7を塗布する。かかるプライマーを塗布した後、熱風等の加熱源で乾燥させることは好ましい方法である。尚、プライマー7の塗布幅は、接着剤3とほぼ同様の幅に塗布すればよい。
【0030】<接着剤の塗布工程>前記フィルム2の一面2aの端部5であって塗布乾燥されたプライマー7の上に、フィルム2の長手方向に沿って2-シアノアクリレート系接着剤3を塗布する。尚、接着剤3は、上記接着剤層の厚みD及び幅Wとほぼ同様の厚み及び幅に塗布される。また、必要に応じて、前記フィルム2の他面2bの端部6であって塗布乾燥されたプライマー7の上に、フィルム2の長手方向に沿って2-シアノアクリレート系接着剤3を塗布してもよい。
【0031】<接着工程>一面2aの端部5にプライマー7と接着剤3が塗布され、且つ他面2bの端部6にプライマー7が塗布されたフィルム2を、筒状に形成しながら両端部5,6を重ね合わせて接着し、チューブ体1を形成する。尚、必要に応じて、筒状に形成されたチューブ体1を扁平状にして巻き取り、チューブロールとしてもよい。
【0032】かかるチューブ体1は、外面(フィルム2の他面2b)にコロナ放電処理がなされいない(又は、弱くコロナ放電処理がなされている)ので、該外面は、ぬれ張力が32?36ダイン/cmとなり、チューブロールとして巻き取ってもブロッキングを起こす虞がない。かかるチューブ体1は、適宜所定の寸法に裁断されてストレッチラベルとして使用される。
【0033】このように本発明に係るチューブ体の製造方法によれば、親和性を高めるコロナ放電処理がフィルム2の一面2aにのみ施されているので、巻き取られたフィルムロール10のフィルム2の外面(他面2b)同士がブロッキングを起こす虞がない。
【0034】さらに、2-シアノアクリレート系接着剤3を用いているので、瞬間的にフィルム2の両端部5,6が接着し、短時間でチューブ体1を製造できる。また、接着工程後、短時間の間に動かすことができるので、接着具合を直ぐに検査することができ、従って、仮に接着不具合が発見されても早期に処置することができる。さらに、エイジングが不要となるので、従来必要であったエイジングルームの設置場所の省スペース化を図ることができる。
【0035】尚、上記実施形態に於いては、フィルム2の両面2a,2bの端部5,6にプライマー7が塗布された最も好ましい態様を例示したが、プライマー7は、フィルム2の他面2bの端部6のみに塗布してもよく、又、接着剤3の接着力が十分に得られる場合には、フィルム2にプライマー7を塗布しなくてもよい。」

(2e)「【0037】・・・(中略)・・・特に、請求項2記載のように、フィルムの両面の端部にプライマーを塗布すれば、接着強度がより高まるので、確実にフィルムの両端部を接着させることができる。」

図1は次のとおり。


(3)刊行物3
(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】あらかじめ、固着すべき両建材の固着面にそれぞれ下地用プライマーを適用、乾燥した後、一方の建材の固着面に両面接着テープを貼り付け、更に高揺変性ポリウレタン又は変性シリコーン系接着剤を前記両面接着テープと平行にビード状に打込み、その面にプライマー処理された他方の建材の固着面を圧着接着することを特徴とする建材間の固着方法。」

(3b)「【0014】かくして新しく開発された本発明の建材間の固着方法を適宜図面を用いて説明するが、例えばパネル11と間柱10の場合まず双方の固着面に、それぞれ素材に適合した下地用プライマー12a,12bを塗布、乾燥する。間柱が杉材のときは、イソシアネート系の下地プライマーを塗布することが最適である。また、メラミン系のパネルにはシラン系のプライマーが最適である。
【0015】次に、図1?3に示すように間柱の長手方向へ平行に両面接着テープ13を貼り付けた後、図4?6に示すような接着剤14が入ったカートリッジ容器16に先端をカットしたノズル15を付け、カートリッジガン17に装着して押出し施工する。
【0016】そして、直ちに下地用プライマーを塗布したパネルを所定の位置へ圧着する。この圧着の際にはパネルが両面接着テープに圧着できるまでとする(図1?3参照)。
【0017】このときビード形状は汎用の丸形でもよいが圧着作業の点で三角形の方がより容易である。三角形状ビードを得るには、ノズルの形状を図4の10aの如く加工し、押し出される接着剤が間柱の上に打ち込まれる。また、接着剤が硬化固定するまでのパネル類を固定保持するために強力な接着力を有する両面接着テープを併用し、この両面接着テープが接着層の厚みを確保する。」

図1は次のとおり。

(3c)「【0022】先づ、杉材の接着予定面に接着剤が接着しやすくなるようイソシアネート系プライマー(シーカプライマー)を塗布し乾燥させ、一方、パネルとして90cm角×5mm厚のメラミン系パネルを用い、このパネルにはプライマーとしてシラン系プライマー(シーカ接着クリーナーNo.2)を塗布し乾燥させた。
【0023】次に、プライマー処理された杉材の接着予定面に、両面テープを長手方向に貼り付けた後、高い揺変性を持ち形くづれのしない接着剤を高さ15mm×巾10mmのビード状に打ち込み、ビード状の表面が硬化しないうちに、プライマー処理したメラミン系パネルを押し付け、両面接着テープまで押し付け圧着した。施工後7日間放置し、一部を切り取りせん断強度を測定した結果、20kgf/cm^(2)の値を得た。」


3.対比・判断
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と刊行物1記載の発明とを対比すると、
刊行物1記載の発明の
「エンドレスベルトの寄り止めガイドである帯状のウレタン系樹脂を主成分とする弾性体」、
「接着層」又は「粘着剤層」、
「弾性体を固定する接着剤は、エンドレス基体及び該弾性体に対して充分な接着性を有し、画像形成装置内での環境による変質のないものであれば特に限定されるものではないが、例えばアクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、熱硬化系接着剤が例示でき、中でも経時での接着性、固定の容易さの面からアクリル系の接着剤が好ましく」、
「前記プライマー層は、例えば反応硬化性のポリウレタンプライマー、ウレタン系レジン等を該弾性体表面へ塗布したものである」、
「寄り止めガイドを有するエンドレスベルト」
は、
それぞれ、本願発明1の
「蛇行防止ガイド部材」、
「粘着層」、
「前記粘着層の粘着剤が、アクリル系、シリコーン系、天然ゴム系、合成ゴム系、またはウレタン系の粘着剤であり」、
「前記プライマー層のプライマーが、ポリイソシアネート系プライマーまたはポリウレタン系プライマーである」ものにより、プライマー層が形成されている、
「蛇行防止ガイド付エンドレスベルト」
に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりと認められる。

[一致点]
「エンドレスベルトに粘着層を介して蛇行防止ガイド部材が貼設されている蛇行防止ガイド付エンドレスベルトであって、
前記粘着層の片面又は両面に、プライマー層を有し、
前記粘着層の粘着剤が、アクリル系、シリコーン系、天然ゴム系、合成ゴム系、またはウレタン系の粘着剤であり、
前記プライマー層のプライマーが、ポリイソシアネート系プライマーまたはポリウレタン系プライマーである、
蛇行防止ガイド付エンドレスベルト。」

[相違点1]
エンドレスベルトが、
本願発明1は、樹脂製であるのに対して、
刊行物1記載の発明は、特定されていない点。

[相違点2]
プライマー層に関して、
本願発明1は、粘着層の両面に、0.01?10μmの厚みのプライマー層を有するのに対して、
刊行物1記載の発明は、弾性体(蛇行防止ガイド部材)と粘着層との間にプライマー層がある、つまり、粘着層に片面のみにプライマー層を有するに留まり、また、その厚みも特定されいない点。

そこで、相違点について検討する。

(相違点1について)
刊行物1の【0072】【0075】【0076】には、エンドレスベルトとして、中間転写ベルト、転写紙搬送ベルト、定着ベルトの用途であって、樹脂製のものが例示されている(上記(1g)参照)。
したがって、刊行物1記載の発明において、エンドレスベルトを樹脂製とすることは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
一般に、2つの部材を粘着層または接着層により接着する際に、接着性をより高めるために、各部材と粘着層または接着層との間にそれぞれプライマー層を設ける(すなわち、粘着層の両面にプライマー層を設ける)ことは、周知の技術である。例えば、刊行物2,3を参照。
また、刊行物1記載の発明は、弾性体(蛇行防止ガイド部材)と粘着剤層との間にプライマー層を設けたものであるが、より高い耐久性や剥離接着性を得るために、上記周知の技術を適用して、本願発明1の如くなすことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。

さらに、プライマー層の厚みについては、当業者であれば、プライマー層の機能を果たせる程度の厚みとすることは、当然のことである。また、刊行物1の実施例では、「ウレタンゴム上に約4μmのウレタン-塩化ビニル共重合レジンを積層した」とあり(上記(1h)の【0077】)、約4μmの厚みのプライマー層を採用している。してみると、刊行物1記載の発明において、プライマー層の厚みを0.01?10μmとすることは、当業者が容易になし得ることである。

なお、刊行物1には、粘着剤としてウレタン系のもの、プライマーとしてポリイソシアネート系のものが示されていないものの、それらは、周知のものであり、刊行物1記載の発明において適用することは、当業者が適宜なし得ることである。

(効果について)
そして、本願発明1によってもたらされる効果は、刊行物1?3に記載された事項、周知技術から当業者であれば予測することができる程度のことであり、格別なものとはいえない。

(請求人の主張)
請求人は、当審の拒絶理由通知に対する意見書において、次のように主張する。
「これに対し、刊行物1は、接着性の向上と、経時的な接着力を維持すべくガイドである弾性体からの低分子成分の移行を抑制する点を目的として、粘着層と弾性体の間にプライマー層を施しているに過ぎません。すなわち、刊行物1の課題は、低分子成分の粘着剤への移行で接着力が低下することを問題視しています。すなわち、刊行物1では、ベルト本体と粘着層との間の接着力についての言及が一切なく、刊行物1では、粘着層とベルト本体との間にもプライマー層を形成し、粘着層の両面にプライマー層を設けることが必要である(問題視している)ことを開示も示唆もしていません。つまり、刊行物1に接した当業者は、ベルトと粘着層との間にプライマー層を設ける必要がないものと認識します。
また、刊行物2は、同じ部材の表面と裏面同士を接着剤で接着するため、一方にプライマー層を形成するだけでは接着力が弱いことは明らかであり、当業者であれば、同じ材料同士の接着なので、両面にプライマー層を設けることを自然に理解します。
すなわち、刊行物1では、ガイドから粘着剤に移動する低分子成分の影響を防止すべく、ガイドと粘着層の間にプライマー層を設けているのであるから、刊行物2に接した当業者が刊行物1の粘着層の両面にわざわざプライマー層を設けようとは致しません。さらに、プライマー層の厚みを「0.01?10μm」にすることについても、なんら開示も示唆もない刊行物1および2から、この点を容易に導くことは困難であります。
また、刊行物3は、そもそも建材同士の接着で両方固着面にプライマー処理を記載しているのであって、エンドレスベルトと蛇行防止ガイド部材の接着に関する技術ではなく、プライマー層の厚みをエンドレスベルトとガイド部材との貼り付けに適した「0.01?10μm」にすることについても開示も示唆もしておりません。」

そこで、検討すると、刊行物1には、「【0025】また、弾性体と粘着剤の間には、弾性と粘着剤の接着性の向上および、弾性体からの低分子成分の移行を抑制するために、プライマー層を設けることが好ましく、例えば反応硬化性のポリウレタンプライマー、ウレタン系レジン等を該弾性体表面へ塗布、あるいは接着剤に混入し、接着層とすることにより、弾性体と接着層との接着性は完全なものとなり好ましく、特にプライマーとしてウレタン-塩化ビニル共重合レジンは粘着剤及び弾性体ともに接着が完全であり、弾性体からの低分子成分の移行を抑制する効果が高く大変好ましい。」と記載されている。
この記載には、プライマー層を設ける目的としては、請求人が強調する、経時的な「弾性体からの低分子成分の移行を抑制する」だけでなく、「弾性(当審注:弾性体の誤記)と粘着剤の接着性の向上」もあげられている。
そして、刊行物1記載の発明では、弾性体(蛇行防止ガイド部材)と粘着剤層との間にプライマー層を設けたことにより、エンドレスベルトと粘着剤層の間には、弾性体からの低分子成分の移行は通常おこらないといえるけれども、当業者が、弾性体からの低分子成分の移行とは異なる観点として、エンドレスベルトと粘着剤層の間の接着性を向上させることを発想して、この間にもプライマー層を設けることに困難性はなく、その発想を阻害するような要因は刊行物1に記載されていない。

また、周知の例示文献としてあげた刊行物2の発明の実施形態では、フィルム2の一面2aに、印刷インキとの親和性を高めるためコロナ放電処理を行い、フィルム2の他面2bは、コロナ放電処理を行わないか、あるいはフィルムロールとして巻き取った際に重なり合う面同士がブロッキングを起こさない程度に弱くコロナ放電処理を行うことに留めたうえで、フィルム2の両面2a,2bの端部5,6にプライマー7を塗布したものが示されている。そして、【0035】では、この実施形態は最も好ましい態様を示したと説明され、さらに、「プライマー7は、フィルム2の他面2bの端部6のみに塗布してもよく、又、接着剤3の接着力が十分に得られる場合には、フィルム2にプライマー7を塗布しなくてもよい。」とも記載されている。つまり、刊行物2には、印刷インキとの親和性を高めるためコロナ放電処理を行ったフィルム2の一面2aは、接着剤に対する親和性も高く、コロナ放電処理がないか弱いフィルム2の他面2bは、接着剤に対する親和性が低いところ、接着強度がより高まるプライマー処理を、接着剤に対する親和性が低い面2bだけでなく、接着剤に対する親和性が高い面2aにも行うことが好ましい旨が記載されているのである。
さらに、刊行物2の技術は、ポリエチレン系フィルムを筒状にして接着剤にて接着されて構成されたチューブ体の製造に関するものであり、蛇行防止ガイド付エンドレスベルトとは異なるが、本願の場合、当業者として、蛇行防止ガイド付エンドレスベルトや画像形成装置の技術に通じるだけでなく、2つの部材を粘着層または接着層により接着する技術にも通じた者が想定される。
してみると、刊行物1記載の発明において、刊行物2に示される技術知識を参考にして、弾性体からの低分子成分の移行が通常おこらない(したがって当該移行に伴う接着力の低下がおこらないであろう)、エンドレスベルトと粘着剤層の間についても、接着性を向上させることとし、プライマー層を設けることは、当業者であれば適宜なし得ることである。

また、刊行物3は、確かに、請求人が主張するように「建材同士の接着で両方固着面にプライマー処理を記載しているのであって、エンドレスベルトと蛇行防止ガイド部材の接着に関する技術ではない」が、刊行物2についてした上記議論と同様、本願で想定される当業者であれば、刊行物3の技術を参考にすることができる。

プライマー層の厚みについては、上記(相違点2について)で検討したとおりである。

よって、請求人の主張を採用することができない。

(まとめ)
したがって、本願発明1は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-14 
結審通知日 2011-10-18 
審決日 2011-11-04 
出願番号 特願2005-88051(P2005-88051)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大森 伸一  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 立澤 正樹
住田 秀弘
発明の名称 蛇行防止ガイド付エンドレスベルト  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  

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