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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1248706
審判番号 不服2010-5480  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-11 
確定日 2011-12-07 
事件の表示 特願2009-169570「画像処理装置及びその制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年10月15日出願公開、特開2009-239973〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年7月17日に出願された特願2000-216263号(国内優先権主張 平成11年7月26日)の一部を平成21年7月17日に新たな特許出願としたものであって、平成21年12月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月11日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされ、さらに、平成23年7月12日付けで当審により拒絶理由が通知され、平成23年9月8日付けで意見書が提出されたものである。

第2.本願発明について
1.本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成22年3月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりのものである。

「ネットワークを介してサーバと通信することが可能な画像処理装置であって、
原稿を読み取って画像データを生成する読み取り手段と、
用紙の上に印刷を行う印刷手段と、
ユーザを特定するユーザ情報の入力を受け付けるユーザ情報の入力手段と、
前記ユーザ情報の入力手段が受け付けたユーザ情報に基づいて前記画像処理装置を使用するユーザの認証に関する処理を行うユーザ認証手段と、
前記認証されたユーザからの操作の指示を受け付ける操作部と、
前記操作部が前記指示として受け付けた設定情報に従って、前記読み取り手段が生成した画像データを前記印刷手段が印刷するコピージョブを実行するコピージョブの実行手段と、
前記コピージョブの実行手段が実行したコピージョブの実行を指示するための操作を行ったユーザのユーザ情報と、前記操作部が受け付けた前記コピージョブを実行するための設定情報と、前記コピージョブにおいて前記読み取り手段が生成した画像データとを、前記コピージョブ実行手段による前記コピージョブの実行の結果が正常の場合にも異常の場合にも前記ネットワークを介して前記サーバへ送信する送信手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。」

2.刊行物の記載事項
これに対し、当審により通知された拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平7-321982号公報(以下、「刊行物1」という)には、図面とともに次の(1)ないし(6)の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スキャナから画像データを入力し、複写やファクシミリ送信などの画像処理を行う画像処理装置や、フロッピーディスク等の記憶媒体から画像データを読み出して入力し、これをプリント出力するなどの画像処理を行う画像処理装置に関する。」

(2)「【0009】上記従来技術の問題に顧みて、本発明は、スキャナにより画像データを入力し、複写やファクシミリ送信などの画像処理を行う画像処理装置や、フロッピーディスク等の記憶媒体から画像データを入力し、プリント出力を行う画像処理装置など、オフラインでジョブを依頼する画像処理装置において、ジョブの進行状況を、画像処理装置から通信路を介して遠隔地に設置されたワークステーションなどの外部機器から問い合わせることを可能にすることを目的とする。」

(3)「【0017】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。全図面を通じて同じ部品には、同じ番号を付している。図1は、本発明の実施例の画像処理システムの構成を示す図である。図1において、100はコピー、ファクシミリ、オフラインプリンタ、オンラインプリンタの各機能を有するマルチファンクション画像処理装置である。101はファクシミリ通信回線、102はLAN(Local Area Network)である。画像処理装置100はLAN102を介し、ワークステーション103、104からのリモートプリントサービス要求を受け付ける。
【0018】図2は、画像処理装置100の内部構成を示すブロック図である。201は自動原稿搬送装置であり、原稿をスキャナの画像読み取り位置まで自動搬送する。202はCCDセンサを用いたラインイメージセンサによって画像を読み取るスキャナ、203はスキャナ202で読み取った画像データに含まれるバーコードを解読するバーコード解読部である。204は符号化/復号化部であり、符号化手法としては例えばMH方式が用いられる。205はページバッファであり、数ページ分の画像データを記憶する容量を有し、ハードディスク部206に対する読み書きデータや、ドットデータに展開されたプリント印字データの一時的格納に用いられる。206はハードディスク部であり、入力した画像データを記憶する大容量画像メモリである。207はフロッピーディスク部であり、フロッピーディスク208へのデータ書き込みやフロッピーディスク208からのデータ読み出しを行う。フロッピーディスク部207は主にオフラインでのプリントデータの入力に使用されるが、その目的からして、カートリッジテープ、光磁気ディスクなど他の記憶媒体を使用してもよい。209は画像データを記録するプリンタであり、例えばレーザープリンタが用いられる。210はLAN102に接続された他の外部機器との通信を行うLAN送受信部である。211はユーザーインターフェース制御部であり、キーボード212からの入力制御やディスプレイ213への表示制御を行う。ディスプレイ213には公知の透明タッチパネルが備えられており、ディスプレイ表示させた各種操作キーの画像に対し、光学方式や圧力センサ方式によりオペレータの指等による入力を検出する機構を有する。このタッチパネルにより各種操作キーなどを実現し、操作情報の入力を行う。キーボード212は後述する識別子の入力に用いる他、テンキーによる出力部数などの入力も行う。ユーザーインターフェース制御部211、キーボード212、ディスプレイ213からユーザーインターフェースが構成される。220はICカードリーダであり、予め後述する識別子を記憶したICカード221から識別子を入力するのに用いられる。214は文字/図形展開部であり、コード化されたプリントデータを文字あるいは図形に展開する。215はシステム制御部であり、画像処理装置100内の各モジュールを制御する。216はシステムメモリであり、後述するプリントキューやファクシミリ送信キューなどを記憶する。217はファクシミリ送受信部であり、回線101を介してファクシミリデータの送受信を行う。218は時計部であり、ファクシミリにおける指定時刻通信などに用いられる。219はシステムバスであり、制御データ及び画像データが伝送される。」

(4)「【0024】次に画像処理装置100のジョブ管理方法について説明する。画像処理装置100は大容量の画像メモリであるハードディスクを備えるため、プリンタ209が使用中であったり、ファクシミリ送受信部217が使用中であってもジョブ要求を受け付け、画像データを取り込むことが可能である。図4は、コピー、ファクシミリ、オフラインプリンタ、オンラインプリンタの各ジョブの受け付けと、受け付けたジョブを順に実行していく過程を説明した図である。
【0025】プリンタを使用するジョブには、コピージョブ、オフラインプリントジョブ、オンラインプリントジョブ、ファクシミリ受信出力ジョブがある。これらのジョブを受け付けると、その内容をプリントジョブノード400と呼ばれる管理領域に書き込む。プリントジョブノード400は、図5(a)に示すように、ジョブの種別、出力用紙サイズなどの動作指令パラメータの他、ハードディスク部206に記憶された複数の画像データファイルを識別するファイル名、ジョブ依頼者を識別するオペレータID、ジョブを識別するジョブIDが記載されている。作成されたプリントジョブノード400は、ジョブが発生した時刻順にプリンタ209の待ち行列であるプリントキュー401にキューイングされる。プリントキュー401の先頭からプリントジョブノード400がひとつずつプリント実行ジョブ記憶部408に移され、ジョブが実行される。実行が終了すると、図5(b)に示すような、ジョブの内容とその実行結果を示すプリントログノード402が作成され、プリントジョブ履歴記憶部403に記憶される。」

(5)「【0029】前述したプリントキュー401、プリント実行ジョブ記憶部408、プリントジョブ履歴記憶部403、ファクシミリ送信キュー405、ファクシミリ送信実行ジョブ記憶部409、ファクシミリ送信ジョブ履歴記憶部407は、システムメモリ216内に存在する。
【0030】本実施例では、前述したオペレータIDは、ネットワークにおいてユーザーを識別するユーザー名を使用するが、オペレータを識別できるものであれば、これに限らない。ジョブIDはオペレータが自由に付けることが可能なジョブの名前であり、アルファベット、漢字等の文字で作成される。例えば「出勤簿」など、文書の名前をジョブIDとして使用することができる。オペレータID及びジョブIDはジョブ受付時にキーボード212から入力する。」

(6)「【0035】図8は、ワークステーション103、104から画像処理装置100ヘジョブの進行状況を問い合わせる場合、両者の間で取り交わされるデータの内容を説明した図である。
【0036】図8(a)は、ワークステーション103、104から画像処理装置100へ送出される問い合わせデータの構成図である。間い合わせデータ800において、801は問い合わせ先アドレスであり、ジョブを依頼した画像処理装置100のLAN102上のアドレスが記入される。802は問い合わせ元アドレスであり、問い合わせがワークステーション103から発せられたものであれば、ワークステーション103のLAN上のアドレスが記入される。803、804はそれぞれ前述したオペレータID、ジョブIDである。オペレータID803とジョブID804は、両者の指定を省略あるいはジョブIDのみを省略することにより、問い合わせ対象のジョブの様々な指定が実現される。オペレータID803、ジョブID804の組み合せを表1に示す。
【0037】805は問い合わせジョブ種別指定フラグであり、特定の種別のジョブの進行状況を問い合わせたい場合、例えば依頼した複数種のジョブのうち、コピージョブの進行状況のみを知りたいときなどに用いられる。ジョブ種別指定フラグ805は、コピー、ファクシミリ送信、ファクシミリ受信、オンラインプリント、オフラインプリントの5つがあり、各フラグは1がセットされるとその種別のジョブの状態問い合わせを要求することを意味し,0がセットされるとその種別のジョブの状態情報は不要であることを示す。フラグはOR条件で組み合せることができる。オペレータID803及びジョブID804と、ジョブ種別指定フラグ805を組み合せることにより、問い合わせ対象のジョブを指定する方法に自由度が増す。
【0038】図8(b)は、画像処理装置100からワークステーション103、104へ送出される返答データの構成図である。返答データ806において807は返答先アドレスであり、例えば画像処理装置100に問い合わせを行ったワークステーション103のLAN上のアドレスが記入される。808は返答元アドレスであり、返答を発信した画像処理装置100のLAN上のアドレスが記入される。809、810はそれぞれ前述したオペレータID、ジョブIDである。811はジョブの状態であり、オペレータID809、ジョブID810で指定されたジョブの状態が記入される。812はジョブ種別表示フラグであり、オペレータID809、ジョブID810で指定されたジョブの種別を示す。例えばコピージョブであればコピーフラグのみ1がセットされる。ひとつの問い合わせデータ800により、複数のジョブの状態の問い合わせが行われた場合、返答データ806には、オペレータID809、ジョブID810、状態811、ジョブ種別表示フラグ812が複数セット存在することになる。
【0039】画像処理装置100は、LAN102を介してワークステーション103あるいは104から送出された問い合わせデータ800を受け取ると、その内容を解読し、間い合わせ指定のあったジョブの状態を調べる。既に述べたように、実行待ちジョブはプリントキュー401あるいはファクシミリ送信キュー405にその情報が存在し、実行中のジョブはプリント実行ジョブ記憶部408あるいはファクシミリ送信実行ジョブ記憶部409にその情報が存在し、実行済のジョブはプリントジョブ履歴記憶部403あるいはファクシミリ送信ジョブ履歴記憶部407にその情報が存在する。これらの各要素には、ジョブ種別、オペレータID、ジョブIDが記述されているので、これらを検索することにより、所望のジョブの状態を知ることができる。検索された結果は返答データ806にセットされ、問い合わせ元へ返送される。
【0040】図9は、ワークステーション103、104の問い合わせ画面の例を示した図である。この例では、問い合わせ条件としてオペレータIDを指定、ジョブIDは指定なし、ジョブ種別指定は全て1(Yes)としたので、オペレータIDで特定されるオペレータが依頼した全ての種別のジョブの状態が表示されている。」

以上の記載から、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されている。

「LANを介して通信することが可能な画像処理装置であって、
原稿の画像を読み取るスキャナと、
画像データを記録するプリンタと、
オペレータIDや出力部数などを入力するユーザーインターフェースと、
前記ユーザーインターフェースで入力した出力部数などに従って、前記スキャナで読み取った画像データを前記プリンタが印刷するコピージョブを実行するシステム制御部と、を備え、
前記システム制御部は、前記コピージョブの実行が終了すると、ジョブ種別、出力用紙サイズ、出力部数、倍率、実行結果、オペレータID、ジョブIDなどを示すプリントログノードを作成し、システムメモリ内のプリントジョブ履歴記憶部に記憶する画像処理装置。」

また、当審により通知された拒絶理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平11-146166号公報(以下、「刊行物2」という)には、図面ともに、次の(7)、(8)の事項が記載されている。

(7)「【0025】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の形態例によるファクシミリ装置の概略構成を示すブロック図である。
【0026】図1において、10はファクシミリ装置全体を制御する制御部であり、マイクロプロセッサ11、ROM12、RAM13、時計IC14、DMAコントローラ15、タイマー16等により構成されるマイクロコンピュータ回路となっており、マイクロコンピュータのソフトウェア制御により装置全休の動作制御、ワンタッチダイアル情報や発信人名称などの各種データの管理等を行う。なお、ROM12には、所定のメインプログラム(図示省略)の他に、図2、図3に示したフローチャートに対応するプログラムも格納されている。
【0027】20は操作部であり、各種キー21、液晶表示部22等により構成され、オペレータのキー入力の受付けや各種情報の表示を行う。30は通信制御部であり、回線インターフェイス31、電話回路32等により構成され、画像データ、及び通信制御データの送受信制御、電話の発着呼制御等を行う。
【0028】40は読取部(スキャナ)であり、CCD41、A/D変換回路42、画像処理回路43等により構成され、CCD41にて光電変換されたデータをA/D変換回路42によりA/D変換し、画像処理回路43により画像補正処理、2値化処理等の画像処理を行う。50は印字部(プリンタ)であり、レーザ・ビーム・プリンタ、インクジェットプリンタ等により構成されている。60は一般的な外部情報機器であるパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)70とデータの送受信を行うためのインターフェイス部であり、セントロニクス、SCSI等のインターフェイスが用いられている。なお、パソコン70は、図4に示したフローチャートに対応するプログラムを記憶するROM(図記省略)等の記憶媒体を有している。」

(8)「【0030】まず、図2を用いて、パソコン70への画像データ等の転送処理を説明する。ファクシミリ装置のマイクロプロセッサ11は、送信操作を検知すると(ステップS1)、読取部40による原稿画像の読取りを開始する(ステップS2)。そして、パソコン70に対して送信画像データのアップロード要求、すなわちパソコン70に対して転送すべきデータがあることを知らせる(ステップS3)。
【0031】次に、パソコン70からアップロードの許可信号を受信したか否かを判別し(ステップS4)、許可信号を受信しなかった場合は、メインプログラムにリターンする。一方、許可信号を受信した場合は、送信信相手先、送信開始時刻(年月日を含む)、通信管理番号、読取った画像データ(読取った画像データの紙サイズ、符号化方式等を含む)をパソコン70に転送する(ステップS5)。そして、画像読取りの終了を検知すると(ステップS6)、データの転送終了を確認して(ステップS7)、メインプログラムにリターンする。」

3.対比
本願発明と刊行物1発明とを対比する。

刊行物1発明におけるLANはネットワークであるから、本願発明と刊行物1発明とは「ネットワークを介して通信することが可能な画像処理装置」である点で共通する。

刊行物1発明の「原稿の画像を読み取るスキャナ」、「画像データを記録するプリンタ」は、それぞれ、本願発明の「原稿を読み取って画像データを生成する読み取り手段」、「用紙の上に印刷を行う印刷手段」に相当する。

刊行物1発明の「オペレータIDや出力部数などを入力するユーザーインターフェース」は、本願発明の「ユーザを特定するユーザ情報の入力を受け付けるユーザ情報の入力手段」、及び、「ユーザからの操作の指示を受け付ける操作部」に相当する。

刊行物1発明の「前記ユーザーインターフェースで入力した出力部数などに従って、前記スキャナで読み取った画像データを前記プリンタが印刷するコピージョブを実行するシステム制御部」は、本願発明の「前記操作部が前記指示として受け付けた設定情報に従って、前記読み取り手段が生成した画像データを前記印刷手段が印刷するコピージョブを実行するコピージョブの実行手段」に相当する。

刊行物1発明の、「オペレータID」、「出力部数」は、それぞれ、本願発明の「前記コピージョブの実行手段が実行したコピージョブの実行を指示するための操作を行ったユーザのユーザ情報」、「前記操作部が受け付けた前記コピージョブを実行するための設定情報」に相当し、また、これらの情報をシステムメモリ内のプリントジョブ履歴記憶部に記憶することは、これらの情報をプリントジョブ履歴記憶部に送信することともいえるから、本願発明と刊行物1発明とは、「前記コピージョブの実行手段が実行したコピージョブの実行を指示するための操作を行ったユーザのユーザ情報と、前記操作部が受け付けた前記コピージョブを実行するための設定情報とを送信する送信手段」を備える点で共通している。

したがって、本願発明と刊行物1発明の一致点、相違点は次のとおりである。

[一致点]
ネットワークを介して通信することが可能な画像処理装置であって、
原稿を読み取って画像データを生成する読み取り手段と、
用紙の上に印刷を行う印刷手段と、
ユーザを特定するユーザ情報の入力を受け付けるユーザ情報の入力手段と、
ユーザからの操作の指示を受け付ける操作部と、
前記操作部が前記指示として受け付けた設定情報に従って、前記読み取り手段が生成した画像データを前記印刷手段が印刷するコピージョブを実行するコピージョブの実行手段と、
前記コピージョブの実行手段が実行したコピージョブの実行を指示するための操作を行ったユーザのユーザ情報と、前記操作部が受け付けた前記コピージョブを実行するための設定情報とを送信する送信手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。

[相違点]
(1)本願発明は、「前記ユーザ情報の入力手段が受け付けたユーザ情報に基づいて前記画像処理装置を使用するユーザの認証に関する処理を行うユーザ認証手段」を備え、「前記認証されたユーザからの操作の指示を受け付ける」のに対し、刊行物1発明は、操作の指示をするユーザのユーザ認証を行うか否か明らかではない点。
(2)送信手段により送信される情報が、本願発明では、ユーザ情報と設定情報に加えて「前記コピージョブにおいて前記読み取り手段が生成した画像データ」も送信されるのに対し、刊行物1発明では、画像データは送信されない点。
(3)送信手段は、本願発明では、「前記コピージョブ実行手段による前記コピージョブの実行の結果が正常の場合にも異常の場合にも」情報を送信するのに対し、刊行物1発明では、コピージョブの実行の結果が異常の場合に情報を送信するのか否か明らかではない点。
(4)本願発明では、情報の送信先が、ネットワークを介したサーバであるのに対し、刊行物1発明では、画像処理装置のシステムメモリである点。

4.当審の判断
上記各相違点について検討する。

(1)について
画像処理装置において、入力手段が受け付けたユーザ情報に基づいて画像処理装置を使用するユーザの認証に関する処理を行うことは、例を挙げるまでもなく画像処理装置における周知の技術であるから、刊行物1発明において、そのような認証処理を行うユーザ認証手段を備えることは必要に応じて当業者が適宜なし得る事項にすぎない。

(2)について
画像処理装置において、画像処理対象の画像データを履歴情報として保存管理することは、画像処理装置の技術分野において周知の技術である。例えば、刊行物2には、画像処理装置であるファクシミリ装置において、読み取った画像データをインターフェース部を介して接続されたパソコンに転送して保存管理する技術が記載されている。
刊行物1において、プリントジョブ履歴記憶部に記憶される内容は、図5(b)に記載されているように、問い合わせに対する返答に必要な、オペレータID、ジョブID、ジョブ種別、実行結果など以外にも、出力用紙サイズ、出力部数、倍率などのコピージョブの内容を示す情報も含まれている。これらのプリントジョブ履歴記憶部に記憶される情報は、ジョブの履歴情報として記憶されるものである。また、上記周知技術において、保存管理される画像データも同様に履歴情報といえるものである。
したがって、刊行物1発明の画像処理装置において、上記周知技術のように、コピージョブにおいて読み取り手段が生成した画像データを送信して履歴情報として保存管理することは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、請求人は、この点に関して、意見書により次のように主張している。
『刊行物1は、「オフラインでジョブを依頼する画像処理装置では、オペレータは問い合わせのために何度も画像処理装置へ出向かねばならず、オペレータの負担が大きいという問題があった」(段落0007)ということを課題とし、「オフラインでジョブを依頼する画像処理装置において、ジョブの進行状況を、画像処理装置から通信路を介して遠隔地に設置されたワークステーションなどの外部機器から問い合わせることを可能にする」(段落0009)ことを目的とする発明に係る特許文献です。
一方、刊行物2は、「スキャナにより読取ってファクシミリ送信した原稿に関する情報を簡単に、かつ一括して保存管理できるようにする」(段落0006)ことを目的とした特許文献です。
刊行物2における画像データは「スキャナにより読取ってファクシミリ送信した原稿」の画像データであり、刊行物1における「ジョブの進行状況」を表すことはできません。従いまして、刊行物2が公知であるとしても、当業者は、刊行物2の画像データを、刊行物1におけるジョブの進行状況を示すログとして記憶しようとは思わないはずです。』

しかしながら、上述したように、刊行物1発明は、進行状況の問い合わせに対する返答に必要な、オペレータID、ジョブID、ジョブ種別、実行結果など以外にも、出力用紙サイズ、出力部数、倍率などのコピージョブの内容を示す情報、すなわち、ジョブの履歴情報を記憶するものであるから、そのようなジョブの履歴情報として、刊行物2に記載された周知技術のような画像データを記憶することを妨げる理由はない。

(3)について
刊行物1には、「ジョブが実行される。実行が終了すると、図5(b)に示すような、ジョブの内容とその実行結果を示すプリントログノード402が作成され、プリントジョブ履歴記憶部403に記憶される。」(上記2.(4))と記載され、図5(b)には、実行結果として「正常終了」が記憶されることが示されている。
刊行物1にはジョブの実行結果が異常の場合については明記はされていないが、画像処理装置において、ジョブの実行結果が正常の場合又は異常の場合の何れかの場合しかないことは自明であるから、刊行物1発明では実行結果が異常の場合にも何らかの実行結果は記憶されると考えられるのは、実行結果の履歴を敢えて残す理由を勘案するとごく自然なことである。また、コピージョブが紙詰まりなどにより異常終了した場合に、その結果を記憶しておくこと自体は一般的な画像処理装置においては普通に行われていることである。
したがって、刊行物1発明において、コピージョブの実行の結果が正常の場合にも異常の場合にも情報を送信し、結果を記憶しておくことは、当業者が容易に想到し得ることである。

(4)について
画像処理装置において、履歴情報を外部のサーバに送信して保存管理することは、画像処理装置の技術分野において周知の技術である。例えば、上述したように刊行物2には、画像処理装置であるファクシミリ装置において、読み取った画像データ(履歴情報といえる)をインターフェース部を介して接続されたパソコン(本願発明の「サーバ」に相当)に転送して保存管理する技術が記載されている。
したがって、刊行物1発明の画像処理装置において、上記周知技術のように、履歴情報をネットワークを介してサーバへ送信し保存管理することは、当業者が容易に想到し得ることである。

なお、請求人は、この点に関して、意見書により次のように主張している。
『また、刊行物1の画像処理装置は、上述しましたように、「オフラインでジョブを依頼する画像処理装置において、ジョブの進行状況を、画像処理装置から通信路を介して遠隔地に設置されたワークステーションなどの外部機器から問い合わせることを可能にする」ために、画像処理装置がオフラインで実行するジョブのログを記憶しています。従いまして、これらのログを画像処理装置が記憶せずに、刊行物2のようにパソコンのような外部の装置にアップロードしてしまったら、刊行物1の画像処理装置は外部機器からの問い合わせに応えることができなくなってしまい、その目的を達成することができません。従いまして、刊行物2が公知だとしても、刊行物1記載のログを外部装置にアップロードしようとは思わないはずです。』

しかしながら、外部機器からの問い合わせに対する返答に必要な情報がネットワーク上のどこに記憶されていたとしても、記憶されている場所から情報を取得して返答を行うことができるのは当業者には明らかであり、請求人の主張するように外部機器からの問い合わせに応えることができなくなってしまうということはない。

よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-07 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-24 
出願番号 特願2009-169570(P2009-169570)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 淳一  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 溝本 安展
千葉 輝久
発明の名称 画像処理装置及びその制御方法  
代理人 高柳 司郎  
代理人 下山 治  
代理人 大塚 康弘  
代理人 永川 行光  
代理人 大塚 康徳  
代理人 木村 秀二  

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