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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B09B
管理番号 1248899
審判番号 不服2009-22199  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-13 
確定日 2011-12-15 
事件の表示 特願2003-386225「土壌中の砒素及び鉛の不溶化処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年6月9日出願公開、特開2005-144341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成15年11月17日の出願であって、平成21年1月19日付け拒絶理由通知に対し、同年3月9日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされたが、同年8月12日付けで拒絶査定されたので、これに対して、同年11月13日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2 本願発明
本願発明は、平成21年3月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「土壌中に不溶化剤として噴出年代が約1万年前?30万年の火山からの噴出物であり、火山ガラスの風化によりAl、Fe、Siより成る非晶質鉱物を含み、鉄含有量が10%以上である鉄質風化火山灰を土壌に対して重量比で2?15%混合することを特徴とする土壌中の砒素及び鉛の不溶化処理方法。」

3 刊行物に記載された発明
(1)引用例1の記載事項
これに対し、本願出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由で引用された特開2001-225053号公報(以下「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。
(ア)「汚染土壌に、粘性土、陽イオン交換体及びカルシウム化合物を混合して土壌を改質することを特徴とする汚染土壌の改質方法。」【特許請求の範囲】の【請求項1】
(イ)「本発明は汚染土壌の改質方法及び汚泥の改質方法に関し、詳しくは、鉱物類を使用してイオン交換を行い、併せて新結晶相の発生による土壌中の有害成分(土壌中に汚染物質として含まれる有害重金属類や砒素等)の吸着・固定化反応を進行させて水に対する不溶化を図り、汚染土壌の無害化を図る汚染土壌の改質方法、建設汚泥等の無機汚泥を改質したりあるいはその後固化する汚泥の改質方法に関する。」【0001】
(ウ)「・・・本発明において、汚染土壌とは、環境上有害な物質を含む土壌で、例えばCd、Pb、・・・等の重金属類が金属陽イオンとして存在している場合、これらの重金属が酸化物(複合酸化物を含む)あるいは亜酸化物として存在している場合、砒素(As)等の有害元素が酸化物あるいは亜酸化物として存在している場合などが挙げられる。」【0020】
(エ)「本発明に用いる粘性土は、重金属類や有害元素との化学反応性が良好で、更にそれらを吸着保持し、長期間の時間経過後に新しく形成された結晶相(人工鉱物)中に終極的には微量成分などとして固定することが出来るものが好ましい。汚染土壌中に含まれる重金属類や有害元素を長期間に亘って自然環境に順応する状態を保って存在させることができるからである。」【0040】
(オ)「このような粘性土としては、火山性放出物の風化作用による生成物としての火山性ローム(例えば関東ローム)、花崗岩風化物であるまさ土等を用いることができる。」【0042】
(カ)「かかる粘性土は、そこに含まれる珪酸及び鉄、アルミナ等の含水性低結晶物質、及び低結晶性の粘土鉱物がより高度に結晶化するに伴って、前述のゼオライト類やカルシウム化合物等によって吸着された汚染土壌中の重金属類や有害元素を微量成分として取り込むように機能する。最終的には最も安定的な珪酸塩鉱物相の中に微量成分として地化学的に安定化され、水による溶出等を起こさないように長期的に安定した人工地層を形成する。」【0043】
(キ)「本発明において、汚染土壌や汚泥の改質に際し、添加される改質材の添加量は、粘性土とゼオライト類とカルシウム化合物を添加する場合、上記汚染土壌及び汚泥100重量部に対して、粘性土5?30重量部、・・・の範囲であることが好ましい。」【0045】

(2)引用例1に記載された発明
記載事項(ア)(イ)より、引用例1には、汚染土壌に粘性土、陽イオン交換体及びカルシウム化合物を混合することにより、そこに含まれる有害成分を不溶化して改質することからなる汚染土壌の改質法が記載されている。
そして、同(ウ)によれば、処理対象の有害物質として、砒素及び鉛が含まれている。また、同(エ)(オ)によれば、当該改質方法で使用する粘性土としては、火山性放出物の風化作用による生成物としての火山性ローム(例えば関東ローム)が例示されており、同(キ)によれば、その添加量は、汚染土壌及び汚泥100重量部に対して5?30重量部であることが好ましいとされる。
また、同(カ)によれば、当該粘性土は、汚染土壌に混合された陽イオン交換体(典型的にはゼオライト)とカルシウム化合物によって吸着された汚染土壌中の重金属や有害金属を、微量成分として取り込んで、最終的には珪酸塩鉱物中の微量成分として固定し、水による溶出を起こさない人工地層を形成する機能を有する。このため、引用例1に記載された発明は、汚染土壌に粘性土、陽イオン交換体及びカルシウム化合物を混合するものであるが、当該粘性土は、重金属や有害金属を固定し水による溶出を起こさなくするという、他の混合成分とは独立した機能を有するといえる。このため、引用例1には、汚染土壌に粘性土を混合する発明が記載されていると捉えることができる。
したがって、粘性土の具体例として関東ロームが挙げられているので、引用例1には次の発明(以下「引用例1発明」という)が記載されている。
「汚染土壌に、関東ロームを、汚染土壌100重量部に対して5?30重量部を混合し、土壌中の砒素及び亜鉛を不溶化処理することからなる汚染土壌の改質方法。」

4 対比・判断
(1)対比
引用例1発明における汚染土壌の改質方法は、土壌中の砒素及び亜鉛を不溶化処理しているので、本願発明における不溶化処理方法と同じ処理をおこなうものである。また、引用例1発明における不溶化剤としての粘性土の添加は、土壌100重量部に対して5?30重量部であるので、重量%に換算すると4.8?23.1%になり、これは、本願発明における不溶化剤の添加量の重量比において4.8?15%の範囲で重複する。
したがって、引用例1発明は、本願発明と次の一致点において一致し、相違点において一応相違する。
ア 一致点
「土壌中に、不溶化剤を土壌に対して重量比で4.8?15%混合することを特徴とする土壌中の砒素及び鉛の不溶化処理方法。」
イ 相違点
本願発明で使用する不溶化剤が、「噴出年代が約1万年前?30万年の火山からの噴出物であり、火山ガラスの風化によりAl、Fe、Siより成る非晶質鉱物を含み、鉄含有量が10%以上である鉄質風化火山灰」であるのに対し、引用例1発明では関東ロームである点
(2)判断
そこで、以下では、本願発明で使用する特定の鉄質風化火山灰と引用例1発明で使用する関東ロームの同一性を検討する。
ア 引用例1に記載された不溶化剤としての関東ローム
引用例1発明では不溶化剤として粘性土を使用することとしており、記載事項(カ)によれば、珪酸、鉄及びアルミナ等の含水性低結晶物質と低結晶性の粘土鉱物を含有する。ここで、低結晶物質は非晶質物質と同義であるので、当該粘性土は、Al、Fe、Si等の非晶質鉱物を含む。そして、同(オ)によれば、そのような機能を有する粘性土として、火山性放出物の風化作用による生成物としての関東ロームが記載されている。
したがって、引用例1で使用する不溶化剤は、「火山性放出物の風化作用生成物であり、Al、Fe、Si等の非晶質鉱物を含む関東ローム」である。
イ 関東ロームについての技術事項
(i)噴出年代
拒絶査定で引用された公知刊行物1(貝塚爽平、鈴木毅彦「1.関東の地形と地質<地盤の生い立ち> 1.2関東ロームと富士山」土と基礎、40-3(1992年3月)、P.9-14)の「図-2 関東ロームと地形面・地層の編年図」には、関東ロームを構成する各火山灰について、その噴出時期が記載されている。これによれば、関東ロームのうち、立川ローム、武蔵野ローム及び下末吉ロームは、1?13万年前に噴出したものであり、本願発明の特定事項である1?30万年前の噴出物の要件を満たす。
(ii)非晶質鉱物であること
同じく公知刊行物2(特開昭61-44714号公報)には、次の記載がある。
「アロフェンは粘土鉱物の中で唯一の無定形構造のものであって、火山灰土壌の主体をなすものである。・・・降下年代の新しい火山灰層はアロフェンにとみ、古いものは中間段階を経てハロイサイトに変化することを明らかにしている。関東ローム層では立川ローム層がアロフェン、武蔵野ローム層はアロフェンとハロイサイト、下末吉ローム層・多摩ローム層はハロイサイトをそれぞれ主成分とすることがわかっている。」(第3頁右下欄下から5行?第4頁左上欄8行)
このため、立川ロームと武蔵野ロームは、非晶質鉱物のアロフェンを含有するので非晶質である。
(iii)Si、Fe、Alを含むこと
同じく公知刊行物2には、次の記載がある。
「SiO_(2)/Al_(2)O_(3)の低い非晶質アルミノケイ酸塩(アロフェン)を生成している。」(第4頁右上欄6?8行)
「代表的アロフェンの化学分析値範囲は強熱減量14?18%、SiO_(2 )35?42%、Fe_(2)O_(3 )2?6%又は15?17%、CaO 0.7?2.3%、MgO 1?1.4%、アルカリ(Na_(2)O、K_(2)O)1?2%である。」(第4頁右上欄下から2行?同頁左下欄3行)
このため、立川ロームや武蔵野ロームに含まれるアロフェンは、Si、Fe、Alを含むものである。

ウ 関東ロームの「鉄質風化火山灰」該当性
上記した関東ロームについての技術事項を考慮すれば、引用例1発明で使用する関東ロームのうち、立川ロームと武蔵野ロームについては、「噴出年代が約1万年前?30万年の火山からの噴出物であり、火山ガラスの風化によりAl、Fe、Si等の非晶質鉱物を含む」物質であるといえる。
そこで、立川ロームと武蔵野ロームは、鉄含有量が10%以上であるといえれば、本願発明で不溶化剤として使用する特定の「鉄質風化火山灰」に該当することになる。

エ 「鉄含有量が10%以上」の技術的意義
上記「イ 関東ロームについての技術事項」の(iii)で摘記した公知刊行物2の記載によれば、アロフェンに含まれるFe成分は、Fe_(2)O_(3 )2?6%又は15?17%とされており、関東ロームの鉄含有量は10%以上には限られない。
また、請求人が提示する公知刊行物5(金井豊他「関東平野北東部における第四紀後期テフラの主成分及び微量成分組成」、地質調査所月報、第39巻、第12号、p.783-797、1988)の「第2表 テフラ層の主成分化学組成」(786頁)、公知刊行物7(小坂丈予他「東京軽石層の風化変質による組成変化」、粘土科学、第23巻、第3号、p.106-118、1983)の「Table.2 Chemical analyses of bulk samples」(113頁)を参照しても、請求人が主張するとおり、関東ロームのFe含有量は、10%未満の数%から10%を越えるものまで多岐にわたる。
そこで、本願発明において、鉄含有量を10%以上とすることの選択性が問題となる。なぜなら、鉄含有量の数値範囲を特定の範囲で選択したことにより、本願発明が特異あるいは顕著な効果を達成するのであれば、選択発明として特許性を有することになるからである。
これに関して、本願発明の出願当初の明細書の記載からは、鉄含有量の数値範囲を設定したことについて、次の理由から、その技術的意義を見いだすことはできない。
すなわち、本願明細書の発明の詳細な説明において鉄の含有量が記載されているのは、【0007】段落のみで、「鉄質風化火山灰とは、・・・鉄含有量が10%以上であることを特徴とする。」と記載するにとどまる。このため、鉄がどのような形態で含まれるかのみならず、鉄含有量が10%以上であることにより、どのような機構でどのような作用効果を達成するのかが明らかにされていない。また、実施例で使用する不溶化剤について、実施例1?3を通じて、単に鉄質風化火山灰と表示するのみで、具体的にどのような火山灰を使用したかが不明であるばかりでなく、その鉄含有量さえも明らかにされていない。さらに鉄含有量が10%未満の火山灰を使用した比較例も示されていない。
このため、本願発明において、鉄含有量を10%以上とすることに、格別の技術的意義があるとすることはできない。したがって、本願発明においては鉄含有量についての数値範囲の特定は、技術的に意味のある特定事項ではない。

オ まとめ
したがって、本願発明で使用する特定の「鉄質火山灰」は、引用例1発明で使用する立川ローム及び武蔵野ロームとしての関東ロームを包含するものであり、その包含する部分で、本願発明と引用例1発明とは同一である。

5 結論
以上のとおりであるので、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-04 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-11-02 
出願番号 特願2003-386225(P2003-386225)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (B09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 真々田 忠博
特許庁審判官
小川 慶子
深草 祐一
発明の名称 土壌中の砒素及び鉛の不溶化処理方法  
代理人 福田 伸一  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 賢三  
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