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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1248911
審判番号 不服2010-5819  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-17 
確定日 2011-12-14 
事件の表示 特願2000- 22316「キーボード」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月10日出願公開、特開2001-216070〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月31日の出願であって、平成20年12月25日付けで拒絶理由通知がなされ、平成21年3月5日に手続補正がなされたが、平成21年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年3月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、手続補正がなされたものである。

2.平成22年3月17日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「データキーとその周囲に制御・ファンクションキーを配し、それぞれ押圧することによりスイッチオンするキースイッチを構成するキーボードにおいて、
少なくもデータキーを親指、人差し指および中指で操作される第1グループと薬指および小指で操作される第2グループとに分け、
前記第1グループと第2グループの間でキーの押圧荷重のピークを異ならせ、第2グループのキーの押圧荷重のピークを第1グループのキーの押圧荷重のピークよりも低く設定し、かつ第2グループのキーの押圧荷重のピークを30gを中心とするプラスマイナス各10g内とし、押圧荷重のピークは、それぞれのキースイッチがスイッチオン領域に入る前となるように構成され、それぞれ前記押圧荷重のピークを過ぎたあと再び押圧荷重が増加するまでの間がスイッチオン領域となるように構成されていることを特徴とするキーボード。」
と補正された(下線は、審判請求人が補正箇所を示すために付与したものである)。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第2グループのキーの押圧荷重」について「かつ第2グループのキーの押圧荷重のピークを30gを中心とするプラスマイナス各10g内とし、」との限定を付加するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭59-197689号(実開昭61-115238号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「(1)複数個のキートップを押圧操作することにより、複数個のキースイッチを作動させるキーボードにおいて、
前記複数個のキースイッチを使用する指に対応させて作動力を異ならせたことを特徴とするキーボード。
(2)複数個のキースイッチを人差指及び中指で操作される第1群のキースイッチと、小指及び薬指で操作される第2群のキースイッチとに分け、該第2群のキースイッチを前記第1群のキースイッチよりも小さい作動力で操作されるようにしたことを特徴とする実用新案登録請求の範囲第1項記載のキーボード。」(実用新案登録請求の範囲)

・「第1図において、符号20はキーボードであり、21はキーボード20に設置される第1群のキースイッチである。このキースイッチ21は図示を省略したキートップに対応して設置されるとともに、人差し指及び中指の押圧力が約60gf?70gf程度で作動するように設定されている。」(第5ページ第7行?第12行)

・「この第1群のキースイッチ21の左右側には、斜線を施して示した第2群のキースイッチ26が設置されている。キースイッチ26はキートップに対応して設置されていて、小指及び薬指の押圧力約40gf?50gfで作動するように設定されている。」(第6ページ第2行?第6行)

・「以上、説明したように、この考案は複数個のキートップを押圧操作することにより、複数個のキースイッチを作動させるキーボードにおいて、前記複数個のキースイッチを、使用する指に対応させて作動力を異ならせたことを特徴としているので、人差指及び中指よりも小さい押圧力の小指及び薬指で操作されるキースイッチは、これに対応する小さい作動力で作動させることができる。従って、小指及び薬指には余分な負担が掛からないので操作速度を速くすることができる。しかも、小指及び薬指には疲労が蓄積されない。このため、長時間操作が可能となるばかりでなく、誤操作も減少するようになる。」(第7ページ8?20行目)

また第2図を見れば、キーボードが、データキーとその周囲に制御・ファンクションキーを配したものからなることが示されている。また、第2図には、各キーと各指との関係が示され、人さし指と中指はデータキーを操作する指といえる。
そして、上記記載によれば、これらのキーは、それぞれ押圧することによりスイッチオンするキースイッチを構成するものであるといえる。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献1には、次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「データキーとその周囲に制御・ファンクションキーを配し、それぞれ押圧することによりスイッチオンするキースイッチを構成するキーボードにおいて、
少なくもデータキーを人差し指および中指で操作される第1群のキースイッチと薬指および小指で操作される第2群のキースイッチとに分け、
該第2群のキースイッチを前記第1群のキースイッチよりも小さい作動力で操作されるようにし、
小指及び薬指の押圧力約40gf?50gfで作動するように設定されている
キーボード。」

(2-2)原査定において周知技術として例示された実願昭57-190693号(実開昭59-095533号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「ところで、押しボタン6を押し下げる場合には復帰用コイルばね7の弾性抵抗、釣鐘形コイルばね10の弾性抵抗および弾性被覆体11の弾性抵抗を受ける。しかしながら弾性被覆体11にはくびれ部14を形成したので、このくびれ部14は被覆体を円滑に撓ませるばかりでなく、被覆体11の上向きの弾性力を、所定撓み量以上になると第4図のごとき下向きの弾性力に反転させる。このため、押しボタン6を所定ストロークまで押すと、弾性被覆体11の抵抗が無くなり、むしろ弾性被覆体11は下向きの力を生じるので、復帰用コイルばね7の復帰力と釣鐘形コイルばね10の復帰力の一部と相殺し、押しボタン6の押圧力を軽くする。つまり押しボタン6を押してゆくと所定のストロークで押圧力が軽くなる部分を生じる。この押圧力が軽くなる部分でスイッチがオン作動となるように設定しておけば、オペレータ接触感によりスイッチオンが判る。スイッチオンのとき抵抗が大きくなるようにすると操作の疲労感を与えるが、上記のごとくスイッチオンのとき抵抗が小さくなるようにすれば長時間の操作でも疲労を小さくすることができる。」(第10ページ第15行?第11ページ第17行)

また、上記記載と、第4図の弾性被覆体の特性及び第8図のばねAの特性をみれば、弾性被覆体11と釣鐘形コイルばね10とを組み合わせた場合のスイッチオン領域が押圧加重のピークより後の押圧加重が軽い領域であって再び押圧加重が増加する前に設定されることが疲労を小さくするためには望ましいことが示されているといえる。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「人差し指および中指」と前者の「親指、人差し指および中指」は、薬指や小指と比べて押す力の強い指ということができ、「比較的押す力の強い指」との概念で共通する。
そして、後者の「第1群のキースイッチ」は、その機能・作用からみて、前者の「第1グループ」に相当し、以下同様に後者の「第2群のキースイッチ」は、前者の「第2グループ」に相当する。
また、キースイッチの押圧荷重は押圧の位置によって変化するものであるから、後者の「作動力」は、「(位置によって変化する)押圧荷重の(うちの)ピーク」を示すものと認められるので、後者の「第2群のキースイッチを第1群のキースイッチよりも小さい作動力で操作されるようにし」は、前者の「第1グループと第2グループの間でキーの押圧荷重のピークを異ならせ、第2グループのキーの押圧荷重のピークを第1グループのキーの押圧荷重のピークよりも低く設定し」に相当するといえる。
さらに、後者の「小指及び薬指の押圧力約40gf?50gfで作動するように設定されている」と前者の「第2グループのキーの押圧荷重のピークを30gを中心とするプラスマイナス各10g内とし」とは、「第2グループのキーの押圧荷重のピークを所定の範囲とし」との概念で共通する。

したがって両者は、
[一致点]
「データキーとその周囲に制御・ファンクションキーを配し、それぞれ押圧することによりスイッチオンするキースイッチを構成するキーボードにおいて、
少なくもデータキーを比較的押す力の強い指で操作される第1グループと薬指および小指で操作される第2グループとに分け、
前記第1グループと第2グループの間でキーの押圧荷重のピークを異ならせ、第2グループのキーの押圧荷重のピークを第1グループのキーの押圧荷重のピークよりも低く設定し、
第2グループのキーの押圧荷重のピークを所定の範囲とした、
キーボード。」である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「比較的押す力の強い指」に関して、本件補正発明では、「親指、人差し指および中指」であるのに対して、引用発明では、「人差し指および中指」である点。

[相違点2]
第2グループのキーの押圧荷重のピークの「所定の範囲」に関して、本件補正発明では、「30gを中心とするプラスマイナス各10g内」としているのに対して、引用発明では、「約40gf?50gf」である点。(なお、単位に関しては、荷重であるから本件補正発明における「g」と引用発明の「gf」とは同じ単位を示すものと認められる。)

[相違点3]
「押圧荷重のピーク」と「スイッチオン領域」に関して、本件補正発明では、「押圧荷重のピークは、それぞれのキースイッチがスイッチオン領域に入る前となるように構成され、それぞれ前記押圧荷重のピークを過ぎたあと再び押圧荷重が増加するまでの間」と特定しているのに対し、引用発明では、そのような特定をしていない点。

(4)相違点に対する判断
相違点1について
本願明細書の段落【0001】の記載によれば、「本発明は、コンピュータ……などの入力装置としてのキーボードに関する。」というものであるから、キーボードの種類によっては親指も用いられることは当該分野の技術常識といえるところ、親指が薬指、小指に比べて押圧力が強いことも周知の事項であるから、この点の相違は必要に応じて適宜設計し得る事項と認められる。

相違点2について
本件補正発明において「30gを中心とするプラスマイナス各10g内」としたことの技術的意義は本願明細書の段落【0006】の「そしてとくに、第1グループのキーの押圧荷重のピークを45gを中心とする値とし、第2グループのキーの押圧荷重のピークを30gを中心とする値に設定するのが好ましい。これにより、比較的押す力の弱い薬指あるいは小指で操作されるグループのデータキーが軽く操作でき、速いキー操作を長時間続けたときでも疲労が防止される。」、及び段落【0018】の「ピーク荷重の許容範囲は±5g程度が望ましく、10gを越えて例えば薬指、小指操作のグループのピーク荷重が20g以下になると少し触れただけでスイッチオンするおそれが生じ、安定感を損なう。」との記載からみて第2グループのキーの押圧荷重に関して、ピーク荷重が20g以下にならないように設定すべきことであり、望ましい範囲は30g±5g程度であると認められ、本願明細書に「30gを中心とするプラスマイナス各10g内」が好ましいとの記載はない。
さらに、上記のように、第2グループのキーの押圧荷重のピークに関して、「ピークを30gを中心とする値に設定する」ことに関して、単に「第1グループのキーの押圧荷重のピークを45gを中心とする値とし、第2グループのキーの押圧荷重のピークを30gを中心とする値に設定するのが好ましい。」と記載されているだけであって、そのような数値としたことは「これにより、比較的押す力の弱い薬指あるいは小指で操作されるグループのデータキーが軽く操作でき、速いキー操作を長時間続けたときでも疲労が防止される。」との記載があるだけであり、「30gを中心とするプラスマイナス各10g内」という数値範囲に関して何ら根拠が示されていないものといわざるを得ない。
そして、押圧荷重のピークが軽い方が負担が少ないこと、軽すぎると誤操作が起きやすいことは当該分野の技術常識といえる。
そうすると、この数値範囲は、押圧荷重のピークを軽くしつつ、誤操作が起きない範囲で、当業者が必要に応じて適宜設計し得る事項というべきである。

相違点3について
疲労を小さくするために「押圧荷重のピークを過ぎたあと再び押圧荷重が増加するまでの間にスイッチオン領域となる」ようにしたキースイッチは、引用文献2に記載されている。
引用発明は、疲労が蓄積されないようにして、長時間操作が可能となるばかりでなく、誤操作も減少することを課題とするものであるから、第1グループと第2グループの間でキーの押圧荷重のピークを異ならせ、第2グループのキーの押圧荷重のピークを第1グループのキーの押圧荷重のピークよりも低く設定する手段に加え、さらに疲労を小さくするために引用文献2に記載された上記構成を付加することで相違点3に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になしえたことと認められる。

また、本件補正発明の全体構成により奏される効果は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記各技術常識から予測し得る程度のものと認められる。
したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された発明及び上記当該分野の各技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成21年3月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「データキーとその周囲に制御・ファンクションキーを配し、それぞれ押圧することによりスイッチオンするキースイッチを構成するキーボードにおいて、
少なくもデータキーを親指、人差し指および中指で操作される第1グループと薬指および小指で操作される第2グループとに分け、
前記第1グループと第2グループの間でキーの押圧荷重のピークを異ならせ、第2グループのキーの押圧荷重のピークを第1グループのキーの押圧荷重のピークよりも低く設定し、
押圧荷重のピークは、それぞれのキースイッチがスイッチオン領域に入る前となるように構成され、それぞれ前記押圧荷重のピークを過ぎたあと再び押圧荷重が増加するまでの間がスイッチオン領域となるように構成されていることを特徴とするキーボード。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された文献、原査定において周知技術として例示された文献、及び、それらの記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から「第2グループのキーの押圧荷重」について「かつ第2グループのキーの押圧荷重のピークを30gを中心とするプラスマイナス各10g内とし、」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明と引用発明とを対比した際の相違点は、前記「2.(3)」で挙げた相違点のうち、[相違点1]及び[相違点3]のみとなる。
したがって、前記「2.(4)」での検討内容を踏まえれば、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された周知技術及び上記当該分野の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された周知技術及び上記当該分野の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-05 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-24 
出願番号 特願2000-22316(P2000-22316)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 円子 英紀  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 松尾 俊介
井上 信一
発明の名称 キーボード  
代理人 菊谷 公男  

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