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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1248931
審判番号 不服2010-18475  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-17 
確定日 2011-12-15 
事件の表示 特願2006-340189「情報表示装置、情報担体、および処理ユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 6月21日出願公開、特開2007-156499〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願の手続の経緯は、概要次のとおりである。
特許出願 :平成18年12月18日
(特願2003-418404号を原出願とした分割出願)
(原出願の出願日 :平成15年12月16日)
手続補正 :平成19年 1月17日
拒絶理由通知(最初):平成20年 5月30日(起案日)
手続補正 :平成20年 8月 1日
拒絶理由通知(最後):平成21年10月19日(起案日)
手続補正 :平成21年12月25日
補正の却下の決定 :平成22年 5月10日(起案日)
拒絶査定 :平成22年 5月10日(起案日)
拒絶査定不服審判請求:平成22年 8月17日
手続補正 :平成22年 8月17日
審尋 :平成23年 6月30日(起案日)
回答書 :平成23年 8月29日

第2 平成22年8月17日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成22年8月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 平成22年8月17日付け手続補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書を補正するものであって、その補正は、平成20年8月1日付け手続補正により補正された請求項1の、
「【請求項1】
表示データを不揮発的に保持する機能を備えた表示手段を含む情報担体と、
前記情報担体に表示する対象である文書データから、前記表示手段の表示形式である表示データを生成し、前記情報担体の表示データを更新する処理ユニットと、
を分離可能に備え、
前記情報担体と前記処理ユニットとが連携接続手段を介してデータを授受すると共に、前記処理ユニットが、前記情報担体に備えられたNVRAMにワークエリアを形成しつつ処理を行うことにより互いに連携動作可能に構成されることを特徴とする情報表示装置。」
なる記載を、本件補正後の請求項1の、
「【請求項1】
表示データを不揮発的に保持する機能を備えた表示手段を含む情報担体と、
前記情報担体に表示する対象である文書データから、前記表示手段の表示形式である表示データを生成し、前記情報担体の表示データを更新する処理ユニットと、
を分離可能に備え、
前記情報担体と前記処理ユニットとが連携接続手段を介してデータを授受すると共に、前記処理ユニットが、前記情報担体に備えられたNVRAMにワークエリアを形成し、処理の状態を表すデータを当該ワークエリアに記憶しつつ処理を行うことにより互いに連携動作可能に構成され、
前記処理ユニットは、前記連携接続手段を介して前記情報担体と接続された際に、前記スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行うことを特徴とする情報表示装置。」
という記載にすることを含むものである。

2 新規事項の追加について
2-1 本願の願書に最初に添付した明細書等の記載事項
本願の願書に最初に添付した明細書または図面(以下、「当初明細書等」という。)には、発明の詳細な説明において、処理ユニットにおけるスタティックデータに基づく処理機能に関して以下の記載がある。

「【0037】
次に、動作を説明する。
本実施の形態に係る情報表示装置1は、情報担体10の接続部17と処理ユニット20の接続部26とが電磁的に結合されることにより、処理ユニット20から情報担体10に電力が供給されると共に情報の入出力が可能な状態となり、情報表示装置1全体として動作可能となる。
【0038】
そして、処理ユニット20のデータI/F21を介して文書データが入力されると、その文書データが情報担体10のデータ記憶部11に記憶される。なお、データI/F21が記憶メディアのスロットである場合、データ記憶部11にデータを記憶することなく、スロットに差し込まれた記憶メディアから直接データを読み出して利用することとしてもよい。
【0039】
すると、処理ユニット20上に構成された解析・整形部110が、文書データの処理を開始する。即ち、解析・整形部110は、文書データの文書構造を解釈し、その構造に従って、画面表示のためのレイアウト処理を行う。そして、解析・整形部110は、レイアウト処理された文書データを中間形式のデータとしてNVRAM12に記憶する。
なお、このとき、情報担体10のNVRAM12は、スタティックデータ領域(処理中のページ番号等、処理の状態を表すデータを記憶する領域)としても使用される。
【0040】
次に、描画処理部120は、NVRAM12に記憶された中間形式のデータから描画データを生成し、表示駆動部13の描画データ書き込み部13aに書き込む。
すると、表示駆動部13は、描画データ書き込み部13aに書き込まれた描画データに応じて表示パネル14を駆動し、表示パネル14に文書が表示される。
また、処理ユニット20が接続部17から切り離されると、情報担体10には電力が供給されない状態となり、各部の動作が停止する。
【0041】
ただし、表示パネル14は記憶性を有することから、処理ユニット20から電力の供給が停止された後も、引き続き、表示された状態が維持され、同様に、NVRAM12に記憶されたスタティックデータおよび中間形式のデータも、NVRAM12の不揮発性により保持される。さらに、データ記憶部11も不揮発性のメモリであることから、データ記憶部11に記憶された文書データも保持される。
このように、情報担体10は、電力の供給が行われていない状態、即ち、処理ユニット20から切り離され、情報担体10単独の状態でも、情報を表示し続けることが可能であるため、紙と同様の操作性を実現することができる。
【0042】
さらに、一旦切り離された処理ユニット20を、情報担体10に再度接続すると、CPU22は、NVRAM12に記憶されたスタティックデータを確認し、有効なデータであると判定した場合には、文書データの表示処理を、現在の表示状態から継続させる。なお、NVRAM12に記憶されたスタティックデータが有効なものであるか否かは、データ形式が処理ユニット20の処理対象として適合するものかどうかによって判定したり、スタティックデータにチェックサムを付加しておき、そのチェックサムによって判定したりすることが可能である。
【0043】
また、本実施の形態においては、処理ユニット20が情報担体10に対する操作子となっているため、ユーザがページを捲る等の操作を行う場合、上述のように、処理ユニット20が情報担体10から切り離され、再度接続される動作が逐次行われる。即ち、ユーザが操作を行う場合、処理ユニット20を情報担体10に接続することにより、指示入力部15を介してページを捲る旨の指示信号を入力したり、あるいは、処理ユニット20に備えられた不図示の指示ボタン等からページを捲る旨の指示信号を入力したりする。
すると、入力された指示信号は、CPU22に入力され、CPU22が、指示に応じた処理を行う。
【0044】
また、本実施の形態においては、処理ユニット20が情報担体10に対する操作子となっているため、ユーザがページを捲る等の操作を行う場合、上述のように、処理ユニット20が情報担体10から切り離され、再度接続される動作が逐次行われる。即ち、ユーザが操作を行う場合、処理ユニット20を情報担体10に接続することにより、指示入力部15を介してページを捲る旨の指示信号を入力したり、あるいは、処理ユニット20に備えられた不図示の指示ボタン等からページを捲る旨の指示信号を入力したりする。
【0045】
すると、入力された指示信号は、CPU22に入力され、CPU22が、指示に応じた処理を行う。
このように、表示される文書に関連する情報(文書データ、中間形式のデータおよびスタティックデータ)を情報担体10側に記憶しておくことにより、処理ユニット20には、接続された情報担体10と不可分のデータが残されないため、接続する情報担体10を任意のタイミングで異なるものに変更することが可能となる。
【0046】
以上のように、本実施の形態に係る情報表示装置1は、記憶性の表示パネル14を備える情報担体10と、バッテリ27を含む処理ユニット20とを別体の構成としながら、表示パネル14に表示された情報の更新や、表示された情報に対する操作等、処理を行う必要が生じた場合には、処理ユニット20を情報担体10と接続することにより、所望の処理を行うことが可能となる。
【0047】
そのため、「紙」に近い表示装置として本来的に必要な機能である「表示」を維持する以外の構成物を、通常の使用時において、情報表示装置1から切り離すことが可能となる。
したがって、「紙」に近い良好な表示品質と、情報の再利用性(表示された情報を電子データとして取り扱う機能)とを兼ね備えつつ、装置自体を軽装化することができるため、従来の情報表示装置に比べ、操作性を大幅に向上させることが可能となる。
・・・(後略)・・・」

2-2 検討・判断
特許法第17条の2第3項に規定する補正の要件である「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」における「明細書又は図面に記載した事項」とは、「当業者によって,明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり,補正が,このようにして導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができる。」(知財高裁大合議判決、平成18年(行ケ)10563号参照)から、上記の本件補正後の請求項1に係る補正が、これに該当するか否か、以下に検討する。

(1)本件補正後の請求項1から把握される技術的事項
上記「1 平成22年8月17日付け手続補正の内容」のとおり、本件補正後の請求項1は、「処理ユニット」の処理機能に関して、
「処理ユニットが・・・処理の状態を表すデータを当該ワークエリアに記憶」
「前記処理ユニットは、前記連携接続手段を介して前記情報担体と接続された際に、前記スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」
とする補正事項を含むものである。
当該補正事項において、「スタティックデータ」が前出しないにも関わらず、「前記スタティックデータ」とする点は意味が不明りょうであるが、仮に、この点については、「処理の状態を表すデータ」は「処理の状態を表すスタティックデータ」という意味であると解釈すると、
(A)処理ユニットは、処理の状態を表すスタティックデータをワークエリアに記憶し、前記処理ユニットが連携接続手段を介して情報担体と接続された際、前記スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う。
という技術的事項(A)が把握されることとなる。
当然のことながら、当該技術的事項(A)は、以下の2つの技術的事項(A1)、(A2)を包摂するものである。
(A1)処理ユニットは、処理の状態を表すスタティックデータをワークエリアに記憶する。
(A2)処理ユニットは、処理ユニットが連携接続手段を介して情報担体と接続された際、前記スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う。

(2)検討・判断
(2-1)技術的事項(A1)について
技術的事項(A1)は、上記当初明細書等の記載を総合することにより導出可能なものと認められる。
(2-2)技術的事項(A2)について
(2-2a)技術的事項(A2)は、上記摘記した記載を含む当初明細書等の全記載を精査しても、「スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」ことについての直接的な記載は無い。
ここで、関連する記載として、上記段落【0042】において、
「一旦切り離された処理ユニット20を、情報担体10に再度接続すると、CPU22は、NVRAM12に記憶されたスタティックデータを確認し、有効なデータであると判定した場合には、文書データの表示処理を、現在の表示状態から継続させる。」
とある。
しかし、当該記載から、スタティックデータに基づいて「文書データの表示処理を、現在の表示状態から継続させる」という技術的事項を把握することはできるとしても、当該「文書データの表示処理を、現在の表示状態から継続させる」という技術的事項は、上記技術的事項(A2)における「情報担体の表示データの更新を継続する」とは、その技術的意味が異質なものである。
上記段落【0042】の記載から把握される技術的事項の、スタティックデータに基づいて「文書データの表示処理を、現在の表示状態から継続させる」ことは、文書データの内容の更新の有無によらず、スタティックデータが有効なデータであれば、文書データに関する表示処理を現在の表示状態から継続したものとするという技術的意味であるのに対して、技術的事項(A2)における「スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データの更新を継続する」とは、
<い>表示データを更新する処理を途中で中断することがあり、スタティックデータに基づいて、その一旦中断された更新処理を再開して継続処理するかどうかを決定するという意味。
<ろ>スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データを修正、または新規表示データで置き換える処理を現在の状態から続けて行うかどうかを決定するという意味(通常の技術用語の解釈として、データの更新とは、既存のデータを修正、または新規データで置き換える処理を意味する。)。
というように、幾つかの技術的意味で解釈され得る曖昧な記載であるが、前者は、文書データに関する表示処理の継続の可否を判定して対応する処理を実行するのに対して、上記<い>、<ろ>については、表示データの更新処理の継続の可否を判定して対応する処理を決定するものであり、両者は判定内容とそれに応じて実行される処理が異なる。
例えば、前者(段落【0042】の記載から把握される技術的事項)の場合、文書データの内容が更新されていない場合も、スタティックデータが有効であれば、文書データに関する表示処理を現在の状態から継続した処理として実行することになるが、後者(上記<い>、<ろ>)の場合、文書データの内容が更新されていない場合は、「表示データの更新」処理が発生し得ないから、スタティックデータの有効性の有無によらず、「表示データの更新を継続する」処理を実行することはできない。
そうすると、少なくとも、上記<い>、<ろ>のように解釈した場合、本件補正後の請求項1から把握される技術的事項(A)は、上記当初明細書等の記載を総合しても導出可能でない技術的事項(A2)を含むものである。

なお、技術的事項(A2)の意味を、
<は>スタティックデータに基づいて、既に「表示データの更新」が為された状態、すなわち、現在の表示状態を継続するかどうかを決定するという意味。
というように解釈すると、上記段落【0042】の記載から把握される技術的事項と対応するものとなるが、「表示データの更新」を「表示データの更新」が為された状態を意味すると解釈するのは、通常の日本語の解釈としては無理のあるものであり、かつ、当初明細書等のその他の記載を参酌しても、そのように解釈すべき必然性が認められない。
(2-2b)仮に、「表示データの更新」について、表示データの修正や新規表示データの有無によらず、単に「表示データの書き換え」を行うことを意味する、すなわち表示データの内容に変更が無くても、表示データの書き換えがあれば、それは「表示データの更新」処理に該当すると解釈しても、本件補正後の請求項1から把握される技術的事項(A)は、上記当初明細書等の記載を総合しても導出可能でない技術的事項(A2)を含むものであることに変わりはない。
この場合、技術的事項(A2)の実質的な意味内容は、
(A2’)処理ユニットは、処理ユニットが連携接続手段を介して情報担体と接続された際、前記スタティックデータに基づいて、表示データの内容に変更の有無によらず、前記情報担体の表示データの書き換えを継続するか否かの判定を行う。
というものになるが、当該技術的事項(A2’)に対応する技術は、当初明細書等の何処にも記載が無い。少なくとも、当初明細書等には、表示データ(描画データ)の書き換えをどのように行うかについての記載が無く、表示データ(または、その元となる文書データ)の内容に変更があった場合のみ表示データの書き換えを行うのか、あるいは、表示データ(または、その元となる文書データ)の内容に変更が無い場合でも表示データの書き換えを行うのか、そのどちらであるとも記載されておらず、かつ、技術常識を踏まえても、記憶性を有する表示パネルの場合、表示データの内容の変更に応じて表示データを書き換えることと表示データの内容の変更によらず表示データを書き換えることのどちらも有り得ることであるので、当初明細書等に具体的な記載が無くても、表示データの内容の変更によらず表示データを書き換えることが自明であるとはいえない。
そうすると、表示データの内容に変更の有無によらず、表示データの書き換えを行うことを前提とする技術的事項(A2’)は、当初明細書等の記載を総合しても導出可能とはいえない。

(3)まとめ
そうしてみると、本件補正後の請求項1から把握される技術的事項は、本願の当初明細書等の記載事項として明示されている事項でなく、本願出願当時の技術常識等を参酌しても、当初明細書等の記載事項から導出可能なものではない技術的事項を含むものであるから、当初明細書等のすべての記載を総合しても、本件補正が新たな技術的事項を導入しないものであるということはできない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものに該当しない。

以上のとおり、平成22年8月17日付けでした手続補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえないので、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

3 独立特許要件について
上述のとおり、平成22年8月17日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないが、仮に、当該要件を満たすものであった場合、本件補正は、平成20年8月1日付け手続補正により補正された請求項1について、処理ユニットの機能について限定するものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2(以下単に「特許法第17条の2」という。)第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

そこで、本件補正後の請求項1に記載されている発明特定事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かについて、以下に検討する。

〔本件補正発明〕
本件補正発明は、上記「1 平成22年8月17日付け手続補正の内容」で検討した、本件補正後の請求項1に記載のとおりのものである。

3-1 明確性要件(特許法第36条第6項第2号)について
(1)本件補正発明において、「前記スタティックデータ」という発明特定事項があるが、「スタティックデータ」はそれ以前に存在せず、当該「前記スタティックデータ」が意味するものが不明である。

(2)本件補正発明は「処理ユニットは、連携接続手段を介して情報担体と接続された際に、スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」という発明特定事項を有するが、「情報担体の表示データの更新を継続する」とはどのような表示データの処理に関するどのような工程を意味するのかが明確ではない。
「スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」ということは、
<い>表示データを更新する処理を途中で中断することがあり、スタティックデータに基づいて、その一旦中断された更新処理を再開して継続処理するかどうかを決定するという意味。
<ろ>スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データを修正、または新規表示データで置き換える処理を現在の状態から続けて行うかどうかを決定するという意味(通常の技術用語の解釈として、データの更新とは、既存のデータを修正、または新規データで置き換える処理を意味する。)。
というように、文脈次第で様々に解釈し得るが、本願明細書において、そのどれを意味するのか(あるいは、どれでもないのか)が不明である。

よって、本件補正発明は不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-2 サポート要件(特許法第36条第6項第1号)について
上記「2 新規事項の追加について」で検討したように、本件補正発明は発明特定事項として、「処理ユニットは、処理ユニットが連携接続手段を介して情報担体と接続された際、前記スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」という上記技術的事項(A2)を含むが、上記「2 新規事項の追加について」で述べたのと同様の理由で、当該技術的事項(A2)は本願明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
上述のとおり、技術的事項(A2)を上記<い>、<ろ>の意味で解釈した場合、それに対応する記載は発明の詳細な説明に存在していない。

よって、本件補正発明は発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3-3 進歩性について(特許法第29条第2項違反)
〔本件補正発明の解釈について〕
(1)本件補正発明において、「処理の状態を表すデータ」は、「処理の状態を表すスタティックデータ」という意味であると解釈する。したがって、「前記スタティックデータ」は、当該「処理の状態を表すデータ」と同義であると解釈する。
(2)本件補正発明における「スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」という技術的事項について、本願明細書における意味は明確ではないが、ここでは、通常の技術用語の解釈に基づき、スタティックデータに基づいて、情報担体の表示データを修正、または新規表示データで置き換える処理を現在の状態から続けて行うかどうかを決定するという趣旨の意味と解釈する。

3-3-1 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の本願出願前に頒布された刊行物である、特開2001-66999号公報(以下「引用例1」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。

(1a)「【0010】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の情報表示システムの第1の実施の形態を示すブロック構成図である。図中、1は画像入力部、2は情報処理部、3,3-1?Nは表示部、11は信号処理部、12は情報送出部、13はコネクタアレイである。図1に示す例では、本発明の情報表示装置を複写装置として利用する場合の構成を示している。
【0011】画像入力部1は、複写すべき画像を入力する。例えばイメージスキャナやデジタルカメラなどによって構成することができる。CCDイメージセンサなどの受光素子からのアナログ信号をA/D変換し、各種の入力側の画像補正処理などを施して情報処理部2に対して画像信号を送る。
【0012】情報処理部2は、この例では信号処理部11,情報送出部12,コネクタアレイ13を含んでいる。信号処理部11は、画像入力部1で入力された画像に対して所定の処理を施し、表示部3で表示可能な情報(ビットマップ情報など)に変換する。情報送出部12は、接続されている複数の表示部3-1?Nを制御し、信号処理部11で処理した画像を表示部3-1?Nに送出して表示させる。コネクタアレイ13には、表示部3-1?Nが電気的に接続されるN個のコネクタが配列されている。
【0013】表示部3(表示部3-1?N)は、記憶性を有した表示装置である。例えば強誘電体液晶表示装置や、コレステリック液晶表示装置、電気泳動表示装置などを用いることができる。表示部3-1?Nは、それぞれがコネクタアレイ13に対して着脱自在に構成されている。表示部3-1?Nは、単体では表示のための電源を有しておらず、表示する画像情報を書き込む際には、コネクタアレイ13を介して電力が供給される。画像が書き込まれた後は、コネクタアレイ13から取り外されて、電力の供給がなくなっても、画像の表示を維持することができる。
・・・(中略)・・・
【0017】図1に示した構成の動作について、簡単に説明しておく。画像入力部1から取り込まれた画像は、信号処理部11で表示部3への画像の書き込みに都合のよいデータ形式(例えばビットマップ情報)に変換する。さらにその信号は、情報送出部12からコネクタアレイ13を介して、複数の表示部3-1?Nに並列に送られる。このとき、情報送出部12は表示部3-1?Nの書き込み制御も行い、信号処理部11から出力される画像を表示部3-1?Nに書き込む。これによって表示部3-1?Nの表示領域21には、画像入力部1で取り込んだ画像が表示される。
・・・(中略)・・・
【0020】画像を書き込んだ後は、表示部3-1?Nをコネクタアレイ13から取り外し、例えば配布することが可能である。表示部3-1?Nは記憶性を有しているので、コネクタアレイ13から取り外しても表示されている画像はそのまま維持される。そのため、例えば配布を受けた者は、いつでも、どこででも、表示されている画像を参照することができる。
【0021】また、上述のように表示部3-1?Nは電源や回路素子などをほとんど搭載していないため非常に軽量かつ小型であり、可搬性に優れている。また可撓性を有しているので、取り扱いも容易である。このように、表示装置でありながら、紙と同様に扱うことができる。しかも、またコネクタアレイ13に装着して画像を書き込めば、表示画面の更新が容易であり、繰り返し利用することができる。そのため、環境にも優しい媒体である。さらに、上述のように表示中は電力を必要としないため、他の表示装置に比べて省エネルギーの観点からも有利である。
【0022】なお、コネクタアレイ13には、必ずN個の表示部が接続されている必要はなく、必要部数に応じて表示部をコネクタアレイ13に装着すればよい。また、例えばコネクタアレイ13に接続されている表示部のうち、一部のみに表示する画像を送れば、装着されている表示部の個数に限らず、任意の個数の表示部にだけ、画像を表示させることも可能である。このような一部のみに表示させる構成としては、コネクタアレイ13に結線されているデータ線をスイッチング素子などによってON/OFF制御すればよい。あるいは、以下に説明するように、表示部3-1?Nと情報送出部12との間で設定情報などをやりとりして、条件に合う表示部のみが画像を受け取って表示するように構成してもよい。次に示す実現例では、後者の方法を採用した場合について示している。」

(1b)「【0023】図3は、本発明の情報表示システムの第1の実施の形態における実現例を示すブロック構成図である。図中、図1と同様の部分には同じ符号を付してある。31はCPU、32はROM、33はRAM、34は書込制御部、35はID制御部、36はバス、37は電源、38はDC-DCコンバータ、39はA/Dコンバータ、41は表示パネル、42はコモン側駆動素子、43はセグメント側駆動素子、44は温度センサ、45は設定保持部、51はID制御信号、52は駆動信号、53は回路用電源、54は表示用電源、55は温度検出信号である。図3に示す例では、情報処理部2と表示部3との間は、ID制御信号51、駆動信号52、回路用電源53、表示用電源54、温度検出信号55などで接続されている。なお、ID制御信号51および温度検出信号55は、各表示部ごとに設けられ、他の信号線および電源線は共通に設けることができる。
【0024】この例では情報処理部2は、CPU31,ROM32,RAM33,書込制御部34,ID制御部35などがバス36に接続され、構成されている。また、画像入力部1もバス36に接続されている。さらに、電源37が各部に電力を供給するとともに、表示部3に対して回路用電源53と、DC-DCコンバータ38を介して表示用電源54を供給している。
【0025】CPU31は、例えばROM32に格納されているプログラムに従い、RAM33を用いながら、情報処理部2全体を制御する。特に図1に示した信号処理部11および情報送出部12の機能を実行する。ROM32は、CPU31が動作するためのプログラムを格納しているほか、固定的に用いられるデータなどを格納している。RAM33は、CPU31の作業領域として用いるほか、画像入力部1で取り込んだ画像を蓄積したり、その画像をCPU31で処理した後の画像を蓄積するなど、画像メモリとしても利用される。
【0026】書込制御部34は、表示部3に表示させる画像情報を、駆動信号52として表示部3に送出する。駆動信号52は、画像情報の他、フレーム信号、表示信号、同期クロック、ライン周期クロック、交流化信号などから構成されている。また、書込制御部34は、表示部3の温度を示す温度検出信号55をA/Dコンバータ39でデジタル信号として受け取り、表示部3の温度を監視している。そして、検出した温度に従って、表示部3の駆動エネルギー(書込パルス幅)を変化させ、安定した画像の書き込みを行っている。
【0027】ID制御部35は、表示部3の設定保持部45に保持されている設定情報を読み出し、読み出した設定情報に従って、表示させる情報を書き込む表示部を選択する。設定情報の読み出しおよび書込を指示するために、ID制御信号51として、表示部の選択信号や、書込/読出切換信号、クロック信号、データ信号などの各信号線を有している。
【0028】表示部3は、表示パネル41、コモン側駆動素子42、セグメント側駆動素子43、温度センサ44、設定保持部45などにより構成されている。表示パネル41は、実際に情報を表示する画素が2次元状に配置されている。例えば強誘電体液晶パネルであれば、平行電極が形成された2枚の基板を、平行電極が直交するように対向させ、その間に強誘電体液晶を挟み込んで構成される。平行電極の交点がそれぞれの画素となる。それぞれの基板に形成された平行電極は、一方はセグメント側駆動素子43に、他方はコモン側駆動素子42に接続される。セグメント側駆動素子43およびコモン側駆動素子42は、それぞれ対応する平行電極のうちの1本の電極を駆動する。これにより、駆動した電極の交点の画素に情報を書き込み、表示させることができる。なお、表示パネル41を駆動する際の電力は表示用電源54から供給される。また、セグメント側駆動素子43およびコモン側駆動素子42の電力は、回路用電源53から供給される。もちろん、記憶性を有する他の表示方式であってもよく、用いる表示方式に応じた駆動方式を採用すればよい。
【0029】温度センサ44は、例えばサーミスタなどで構成され、表示パネル41の温度に対応する電圧値(アナログ値)を温度検出信号55として出力する。なお、この温度センサ44を有しない構成も可能である。
【0030】設定保持部45は、例えば表示部としてのIDや表示パネル41の大きさなどの情報を保持する。IDは、例えば表示部の固有製造番号を用いたり、あるいは情報処理部2のID制御部35から与えられてもよい。表示パネル41の大きさとしては、例えばB5、A4などといった用紙サイズや、13インチ、15インチといった画面サイズなどのサイズ情報を設定しておくことができる。このほかにも、各種の表示部固有の情報を設定しておくことができる。さらに、例えば表示されている情報に関する各種の情報を保持しておくこともできる。例えば、文書名、書込日時、機密情報、リンク情報などを設定保持部45に書き込んでおくことができる。なお、この設定保持部45としては、電源を切断しても設定されている情報が消去されない不揮発性の記憶素子、例えばSRAMやEEPROMなどを用いることができる。
【0031】さらに設定保持部45は、情報処理部2からの選択信号に応じて、コモン側駆動素子42およびセグメント側駆動素子43の両方あるいは一方の動作を制御する。すなわち、ID制御信号51によって選択する旨の信号が入力されている場合、表示パネル41への情報の書込も許可する。逆に選択する旨の信号が入力されていない場合には、駆動信号52が入力されても表示パネル41への書込は行われない。同様に設定保持部45に対する設定情報の読み書きも行われない。
【0032】なお、図3に示した例では表示部3を1つしか示していないが、同様の構成の表示部3が、複数、情報処理部2に対して接続されることになる。
【0033】上述の図3に示した構成における動作の一例を簡単に説明する。表示部3が情報処理部2に対して接続された後、表示すべき情報を書き込む前に、情報処理部2のID制御部35は、各表示部3の設定保持部45からID制御信号51により設定情報を読み込む。すなわち、表示部3を選択する信号とともに、設定情報を読み出す信号をID制御信号51として表示部3に送る。これにより表示部3の設定保持部45が設定情報を情報処理部2に送る。これによって、例えば接続されているどの表示部3がどのような大きさであるか等をCPU31により検出することができる。
【0034】画像入力部1で画像が読み込まれると、CPU31は読み込まれた画像に対して所定の処理を施す。そして、その画像を表示すべき表示部3を選択し、選択した表示部3に対して、ID制御部35からID制御信号51で選択する旨を伝えるとともに、書込制御部34は、駆動信号52により表示すべき画像を表示部3に送る。表示部3では、書込制御部34による制御に従ってコモン側駆動素子42およびセグメント側駆動素子43が表示パネル41の画素ごとに駆動して、情報を書き込んでゆく。このようにして、接続されている多数の表示部3のうちから選択的に情報を書き込み、表示させることができる。もちろん、選択する表示部3は複数であってもよく、その場合には並列的に画像の書込および表示が行われることになる。
【0035】なお、表示部3への画像の書込の前、あるいは後、あるいは画像の書込と並行して、例えば画像の名称や書込日時などの付加情報を設定情報として設定保持部45に設定する動作を行うこともできる。すなわち、表示部3を選択する信号とともに、設定情報を書き込む信号をID制御信号51として表示部3に送り、さらに設定情報を表示部3に送る。これにより表示部3の設定保持部45に、送られてきた設定情報が保持される。」

(1c)図1

(1d)図3

〔引用例1に記載された発明〕
これらの記載事項及び認定事項からして、引用例1には、
「記憶性を有した表示パネルを備えた表示部と、
画像入力部から取り込まれた画像の画像信号を表示部への画像の書き込みに都合のよいデータ形式(例えばビットマップ情報)に変換する信号処理部を含む情報処理部とを備え、
表示部は、情報処理部のコネクタアレイに対して着脱自在に構成されており、
表示部と情報処理部との間では、設定情報や表示すべき情報が送信または受信され、
情報処理部は、表示部への画像の書き込みと並行して、表示部に備えられた、電源を切断しても設定されている情報が消去されない不揮発性の記憶素子であるSRAMからなる設定保持部に表示部固有の設定情報を設定しておくことができ、設定情報として、表示部に表示されている情報に関する各種の情報(文書名、書込日時、機密情報、リンク情報等)を書き込んでおくことができ、
表示部が情報処理部に対して接続された後、表示すべき情報を書き込む前に、情報処理部のID制御部は表示部の設定保持部から設定情報を読み込み、例えば接続されているどの表示部がどのような大きさであるか等を検出することができる情報表示システム。」
という発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の原出願の本願出願前に頒布された刊行物である、特開2002-287690号公報(以下「引用例2」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。

(2a)「【0109】 ・・・(中略)・・・
(実施の形態3)本実施の形態では、図9に示すように、上記本体102と物理的に接続されていない電子ペーパ101に、ユーザが希望する表示用データを表示する場合について説明する。
【0110】まず、ユーザが上記本体102の電源を投入すると、この本体102にある電子ペーパ検知手段109は、自動的に或いはユーザの指示に基づいて、遠隔操作が可能な通信ソースに基づく信号(電波や超音波等)を出力できるようになっている。一方、各電子ペーパ101側も、上記本体102側からの指示に応じて或いは自らの状態に応じて、必要な信号を本体102に返すことができるようになっている。
【0111】また、特定の本体102とそれに使用する電子ペーパ101との関連付けが、上記第一の記憶手段105と、各電子ペーパ101b・c・d側の第二の記憶手段105b・c・dとに予め書き込まれているものとする。この関連付けは、例えば、本体側102及び各電子ペーパ101b・c・dに識別番号(ID)を付すことによってなされるものとする。
【0112】なお、上記識別番号は、上記接続端子識別番号であってもよいし、あるいは、電子ペーパ101がROMを備える場合は当該ROMに記憶された製造番号であってもよい。このように関連付けするのは、ある本体102との関連で使用される電子ペーパ101が他の本体102から発せられる電波等に無差別に反応しないようにするためである。
【0113】以下の説明では、電子ペーパファイル100の電源がONになってから或いは電源がONになる前に、各電子ペーパ101b・c・dが本体102のコネクタから外されている場合を想定し、また、通信ソースとして電波を使用する場合を例示する。なお、ここで使用される電波は、例えばBluethooth等の規格に沿った電波を用いることができる。
【0114】まず、電子ペーパファイル100の電源が投入されると、または、いずれかの電子ペーパ101が本体102から外され或いは本体102に装着されると、本体102は、上記関連付けに基づいて各電子ペーパ101の識別番号を取得する。尚、ここでは、上記電子ペーパ検知手段109は3枚の電子ペーパ101b・c・dの識別番号を検知できたものとする。
【0115】次に、番号付与手段110は、上記電子ペーパ検知手段109が検知した識別番号に基づいて、電子ペーパ番号150(EP1からEP3)を電子ペーパ101b・c・dに割り当てる。なお、この電子ペーパ番号150(EP)を割り当てる方法としては、例えば、上記識別番号の文字コードの小さい順に、電子ペーパ番号150を1から順に割り当てるようにする方法がある。もちろん、ここでいう識別番号に上記接続端子識別番号を採用した場合、ここでいう電子ペーパ番号150には上記接続順序識別番号を採用することもできる。
【0116】そして、上記本体102と上記電子ペーパ101b・c・dとが電気的に接続された状態になると、上記電子ペーパ検知手段109は、3枚の電子ペーパを検知したことを上記第一の表示制御手段106に通知する。これによって、第一の表示制御手段106は、例えば最初から3ページ分の所定の表示用データを上記第一の記憶手段105から取得するようになっている。
【0117】続いて、本実施の形態における第一の表示制御手段106は、上記のように取得した表示用データのうち最初のページにあたる表示用データを、上記電子ペーパ番号150(EP1)の電子ペーパ101(ここでは、電子ペーパ101bとする)に上記本体信号授受手段104を介して送信するようになっている。即ち、ここでは、1ページ目の表示用データが送信されることになる。
【0118】以下同様に、上記第一の表示制御手段106は、上記電子ペーパ番号150(EP2,3)の電子ペーパ101に、2ページ目・3ページ目の表示用データを送信するようにする。尚、上記本体102と物理的に接続されていない所望の電子ペーパ101に、本体102にある表示用データを転送するには、例えば以下のようにする。
【0119】即ち、上記のように関連付けられた各電子ペーパ101の識別番号(ID)を上記本体102のページ指定手段108に予め記憶させて、当該IDが記憶された電子ペーパ101の中から所望の転送先をボタン等で選定するという方法がある。
【0120】次いで、上記第一の表示制御手段106から送信された1ページ目の所定の表示用データは、電子ペーパ101bにある本体信号授受手段104bによって受信される。これによって、本体信号授受手段104bによって受信された1ページ目の表示用データは、電子ペーパ101bにある第二の記憶手段105bに記憶されるとともに、電子ペーパ101bにある第二の表示制御手段106bに読み出される。そして、第二の表示制御手段106bは、1ページ目の所定の表示用データを必要に応じてドット形式に変換し、電子ペーパ101bの表示部121bに表示する。同様に、2ページ目・3ページ目の表示用データは、上記第一の表示制御手段106から電子ペーパ101c・dに送信され、この電子ペーパ101c・dの表示部121c・dに表示されるようになる。
【0121】また、ユーザが、実施の形態1又は2に記載したページ指定手段108に含まれる改ページボタン302等を用いることで、4ページ以上からなる表示用データの中からユーザが表示を希望する表示用データを上記3枚の電子ペーパ101b・c・dに表示することができるようになる。
【0122】例えば、上記3枚の電子ペーパ101b・c・dに1?3ページ目までの表示用データが表示されている状況下、この電子ペーパ101b・c・dに2?4ページまでの表示用データを表示させたい場合について説明する。
【0123】まず、ユーザが上記改ページボタン302aを押下したのち転送ボタン310を押下すると、実施の形態1に記載のように、上記第一の表示制御手段106は、第一の記憶手段105から2から4ページ目までの表示用データを取得する。そして、第一の表示制御手段106は、先頭のページにあたる表示用データ(ここでは、2ページ目の表示用データ)を電子ペーパ101bに送信するとともに、3ページ目・4ページ目の表示用データを電子ペーパ101c・dに送信する。
【0124】上記においては表示用データの内容は考慮されていないが、上記電子ペーパ101の識別番号(ID)または上記電子ペーパ101に表示されている表示用データの内容を特定する文章ID(上記表示用データのファイル名やページ数等)に基づいて、表示用データを転送するようにしてもよい。例えば、文章IDが電子図書の種類を表す場合、本体102は、上記第一の記憶手段105に記憶されている電子図書と異なる種類の電子図書が表示されている電子ペーパ101には、当該表示用データを送信しないようにする。
【0125】また、上記第二の記憶手段105b・c・dを上記第一の記憶手段105の拡張メモリとして使用することもできる。例えば、記録媒体やインターネット等から大容量の表示用データを取得した場合、この表示用データを上記第一の記憶手段105に格納できない場合がある。この場合は、当該第一の記憶手段105に格納できないデータを上記第二の記憶手段105b・c・dに格納するようにしてもよい。
【0126】更に、上記のように記録媒体やインターネット等から上記表示用データを取得する際に、上記第一の記憶手段105又は第二記憶手段105b?dのいずれの記憶手段に当該表示用データを格納するかは、ユーザが選択できるようにしてもよい。また、ユーザの選択によって、当該表示用データを複数の記憶手段に記憶させるようにしてもよい。」

(2b)「【0127】 ・・・(中略)・・・
(実施の形態4)ところで、上記電子ペーパファイルは、ディスプレイに代表される従来の表示装置とは異なり、携帯可能かつノート状の構成を成す。このため、閲覧又は編集を目的とする文書の使用態様は、例えばパーソナルコンピュータにて当該文書を表示・編集し、一旦紙に出力(印刷)してから該印刷物を携帯するといった従来の使用態様ではなく、上記目的とする文書を電子ペーパファイルに保存し、この電子ペーパファイル自体を携帯するといった使用態様となることが予想できる。
【0128】このような使用態様では、紙製のノート(以下、単に「ノート」という場合は紙製のノートをいう)への書き込み(編集)と同様の編集方法が求められる。ここでいう編集方法とは、文字データに対する振り仮名や注釈の書き込み、さらには、文字コードでは管理できない図柄の挿入(上書き)や移動等の方法をいう。
【0129】しかしながら、例えば文字と振り仮名とが密接に関連しているように、上記文字データと書き込みデータとは密接に関連している。このため、上記編集時(特に移動時)には、上記文字データと書き込みデータ(画像データ)とを同時に処理する必要がある。
【0130】さらに、上記電子ペーパファイルは、複数の電子ペーパを備えているため、ある電子ペーパに表示されているデータを編集した場合は、その編集内容と関連性の強いデータを表示している他の電子ペーパにも、当該編集内容を同時に反映させる必要がある。
【0131】そこで、本実施の形態では、所定の編集を複数のページに渡って反映可能とし、また、関連性の強い文字データ及び画像データを同時に編集でき、さらに、各ページ間の編集作業を容易にした電子ペーパファイルを提供するために、以下の手段を採用している。
【0132】すなわち、図29に示すように、本実施の形態における電子ペーパファイル100は、本体信号授受手段104及び表示発光制御手段23を背板103に備えた本体102と、表示駆動部12及び表示部121を備えた電子ペーパ101とが、物理的・電気的に接続されて構成される。ここでいう表示発光制御手段23とは、上記本体信号授受手段104より受信した表示用データを所定ビットのデータとして当該電子ペーパ101に転送すると共に、上記発光シートBの発光制御をも行う手段をいう。なお、その他の構成要素については、上記実施の形態1から3と同じであるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0133】次に、図25を用いて、表示用データが表示部121に表示される仕組みを説明する。 まず、表示用データが格納されたメモリカード41が本体信号授受手段104に接続されると、当該表示用データは本体信号授受手段104によって読みだされ、表示発光制御手段23に送信される。これによって、表示発光制御手段23は、上記表示用データを文字データと画像データとに分別し、一旦、表示駆動部12を構成する文字記憶手段42と画像記憶手段43とに記憶する。
【0134】なお、上記文字データは、例えばASCIIコード等の文字コードであり、また、上記画像データは、例えばビットマップのデータである。この文字データと画像データの分別方法は、上記表示用データの型式によって異なるため、ここでは説明を省略する。
【0135】続いて、上記表示発光制御手段23は、上記文字記憶手段42に格納されている文字データを画素データに変換し、さらに位置データを付加して表示用ビットデータとし、電子ペーパ101を構成する表示用ドライバ122に送信する。
【0136】なお、上記画素データは、表示部121を構成する各画素に対応する色データや濃度データで構成される。また、上記位置データは、上記表示部121を構成する各画素のアドレス、例えばx座標(L1行配線)及びy座標(L2列配線)で表される。
【0137】さて、上記表示用ドライバ122は、上記表示用ビットデータを受信すると、この表示用ビットデータより画素データ及び位置データをデコードすることによって、当該表示用ビットデータの画素情報と、当該画素の位置とを認識する。続いて、表示用ドライバ122は、このように認識した画素の位置に対応する列配線L2及び行配線L1に、当該デコードされた画素データに対応した電圧を出力することで、表示部121の所定の位置に上記文字データを表示する。
【0138】また、上記表示発光制御手段23は、上記画像記憶手段43に記憶されている画像データも同様に画素データに変換して位置データを付加し、電子ペーパ101を構成する表示用ドライバ122に送信することで、上記文字データと同様、画像データを表示する。
【0139】このように、電子ペーパ101の表示駆動部12に上記文字記憶手段42及び画像記憶手段43を設ければ、当該電子ペーパ101を本体102より取り外した場合でも、上記文字データ及び画像データを電子ペーパ101上で独立して管理することが可能である。ただし、上記文字記憶手段42及び画像記憶手段43は、必ずしも上記電子ペーパ101上に設ける必要はなく、本体102上に設けてもよい。又、上記文字記憶手段42及び画像記憶手段43への入力(編集)の反映を上記メモリカード41に対しても行うことで、元となる表示用データを編集することも可能である。
【0140】続いて、上記電子ペーパ101上での文字データ及び画像データの入力(編集)処理について説明する。
【0141】まず、上記電子ペーパ101に表示されている内容を編集するための一態様としては、図30に示すように、透明シート44を用いた態様が考えられる。この透明シート44は、タブレット・デジタイザ・タッチパネル等で使用されている電磁誘導方式や静電結合方式等による座標検出手段である。
【0142】すなわち、図30に示す電子ペーパ101では、デジタイザ機能を備えた透明シート44(即ち、筆記具が接触した位置を検出可能である機能を備えた透明シート44)を表示部121の上面に備える。これによって、ユーザの希望する文字又は図柄を当該透明シート44の上に筆記具(例えばペンのように先端部の尖った物)で描くと、この筆記具と透明シート44との接触点の位置を当該透明シート44がデジタイザ機能を用いて検出し、表示発光制御手段23に送信するようになっている。
【0143】但し、上記と同様の位置指定が可能であれば、必ずしもデジタイザ機能を用いる必要はない。例えば、マウスに代表されるポインティングデバイス等を用いて上記位置指定をしても同様の効果が得られる。
【0144】そして、上記表示発光制御手段23は、編集内容に対応する色データや濃度データと、上記接触点の位置に対応する画素の位置データとを基に、上記画像記憶手段43に記憶されている画像データを更新する。なお、ここでいう編集内容とは、ユーザが書き込みを行う場合に予め設定した色・濃度・表現方法(表現方法とは、例えば、ブラシや筆等での書き込みをイメージさせるための方法)等の内容をいう。
【0145】以降は、上記本体信号授受手段104から画像データを受信した場合と同様である。
【0146】以上のような入力処理により、上記画像記憶手段43に格納されている画像データと、表示部121の表示とを更新することができる。
【0147】又、文字データを入力する場合には、予めユーザが入力を希望する位置を上記筆記具等を用いて指定する。このように指定された位置は、上記同様、透明シート44から表示発光制御手段23に送信されるようになっている。
【0148】続いて、ユーザがソフトウェアキーボード又は別途接続したキーボードを用いて所定の文字を入力すると、表示発光制御手段23は、この入力文字を文字データとして受信する。そして、このように受信した文字データを、上記のように指定された位置の情報を用いて、文字記憶手段42に記憶されている文字データに挿入する。
【0149】以後、上記本体信号授受手段104から画像データを受信した場合と同様に、上記電子ペーパ101の表示を更新する。尚、上記画像データ及び文字データを各記憶手段へ反映する処理は、記憶手段の制御に関する処理であり本発明とは直接関連しない処理であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
【0150】以上により、上記電子ペーパ101上にて直接表示内容を編集することが可能である。また、上記文字記憶手段及び画像記憶手段を電子ペーパ101に設けることにより、上記電子ペーパ101を取り外した場合でも、文字データ及び画像データを独立した電子データとして保持することが可能となる。
【0151】続いて、図25、図26(a)、図26(b)を参照しながら、上記電子ペーパ101上での文字データ及び画像データの削除(編集)処理について説明する。
【0152】図26(a)は、上記電子ペーパファイル100を簡易的に表したものであり、この電子ペーパファイル100は、3枚の上記電子ペーパ54?56を備えている。尚、当該電子ペーパ54?56は、図25に示した電子ペーパ101と同一の機能を有する。また、各電子ペーパ54?56には、それぞれ文字記憶手段54-2、55-2、56-2及び画像記憶手段54-3、55-3、56-3が設けられ、さらに連続したページに対応する文字データ及び画像データがそれぞれの表示部に表示されているものとする。尚、図26(b)は、図26(a)における文字記憶手段55-2の内部のイメージ図である。
【0153】まずユーザは、以下に説明するように、文字データを削除しようとする領域60を指定する。すなわち、電子ペーパ55における領域60を指定する場合、まず当該領域60の左上の端点61を上記筆記具14を用いて押下する。続いて透明シート44を押圧した状態で当該領域60の右下の端点62まで筆記具14を用いてなぞると、上記端点61と端点62とを結ぶ線を対角線とする矩形領域60が表示部121に現れる。上記端点62から筆記具14を離すと領域60が確定し、端点61と端点62の画素の位置データが表示発光制御手段23に送信される。なお、以下の説明では、上記領域60を指定した後の当該領域60の上部に位置する領域を「領域70」といい、下部に位置する領域を「領域71」という。
【0154】さて、上記表示発光制御手段23は、上記領域60を認識すると、当該領域60に対応する文字記憶手段55-2を参照し、上記領域60に含まれる文字データを得る。
【0155】続いて、ユーザが例えば上記電子ペーパ55上に表示される編集メニューより「削除」を選択すると、上記表示発光制御手段23を構成する編集手段は、当該領域60に対応する文字データ(図26(b)の領域M60)を上記文字記憶手段55-2より削除する。
【0156】以上により、文字記憶手段55-2内の所定のデータは削除されるが、当該削除後に以下の処理を実行するようにしてもよい。
【0157】即ち、削除した領域60を空白のままにする場合、上記編集手段65は、上記記憶手段55-2に記憶されている、領域70に対応する文字データの後部に、上記削除した領域60に対応する行数だけ改行コードを挿入する。また、上記記憶手段55-3に記憶されている、領域70に対応する画像データの後部に、上記削除した領域60に対応する範囲の空白データを挿入する。ここで空白データとは、何も表示を行わない場合に挿入されているデータであり、画像データの形式によっては、データを挿入する必要がない場合もある。
【0158】以上により、上記領域60を削除した場合には、当該領域60は何も表示されていない状態となる。この機能は、所定の電子ペーパを取り外して他のユーザに渡す場合に有効である。
【0159】次に、削除した領域60に後続の文字データを移動する場合、上記編集手段65は、上記記憶手段55-2に記憶されている、領域70に対応する文字データ(図26(b)の領域M70)の後部に、領域71に対応する文字データ(図26(b)の領域M71)を配置する。これによって、文字記憶手段55-2内で、領域71に対応する文字データ(図26(b)の領域M71)が上部に移動することになる。
【0160】続いて、上記編集手段65は、上記電子ペーパ56の文字記憶手段56-2の先頭部分から、上記削除された領域60に対応する文字データと同量の文字データをコピー(削除)し、上記電子ペーパ55の文字記憶手段55-2に記憶されている文字データの後部(図26(b)の領域M72)に追加する。
【0161】以上により、上記電子ペーパ55の文字記憶手段55-2では、上記領域60に対応する文字データ(図26(b)の領域M60)が削除され、連続する文字データ(図26(b)の領域M72)が他の電子ペーパより追加される。
【0162】上記電子ペーパ56における文字記憶手段56-2でも、削除された領域(図26(b)の領域M72)に対して上記と同様の処理が行われ、複数の電子ペーパ上の文字記憶手段が更新されることになる。さらに、上記画像データについても同様の処理を行うことで画像データを移動することが可能である。
【0163】上記各々の文字記憶手段42及び画像記憶手段43の内容が更新されると、上記表示発光制御手段23は、当該文字記憶手段の内容を表示に反映させるため、上述した表示用ドライバ122にそれぞれの文字記憶手段42及び画像記憶手段43の内容を位置データと共に送信する。
・・・(中略)・・・
【0167】続いて、図25、図27(a)、図27(b)、図28(a)、図28(b)を参照しながら、上記電子ペーパ101上での文字データ及び画像データの移動(編集)処理について説明する。
【0168】図27(a)も、上記電子ペーパファイル100を簡易的に表したものであり、この電子ペーパファイル100も、3枚の上記電子ペーパ54?56を備えている。また、ここでも、上記削除処理の場合と同様、連続したページに対応する文字データ及び画像データがそれぞれの表示部に表示されているものとする。さらに、電子ペーパ55の最後尾には、文字データ及び画像データについてのページめくりを示す改ページコード79が挿入されているものとする。尚、図27(b)は、図27(a)における文字記憶手段56-2の内部のイメージ図である。
【0169】まずユーザは、文字データを移動しようとする領域80を指定する。この指定は、上記削除処理の場合と同様、当該領域80の左上の端点81と領域80の右下の端点82とを押下することで行われ、これによって、上記端点81及び端点82の画素の位置データが表示発光制御手段23に送信されるようになっている。
【0170】さて、上記表示発光制御手段23は、上記領域80を認識すると、当該領域80に対応する文字記憶手段55-2を参照することによって、上記領域80に含まれる文字データを得る。
【0171】続いて、ユーザが例えば上記電子ペーパ55上に表示される編集メニューより「移動」を選択すると、上記表示発光制御手段23を構成する編集手段65は、当該領域80に対応する文字データを上記文字記憶手段55-2より削除する。但し、この文字データは、上記文字記憶手段55-2からは削除されるが、図示しない作業メモリに一旦保存される。この作業メモリとしては、例えば本体102や電子ペーパ101に設けられたものを用いてもよいし、上記文字記憶手段54-2?56-2や画像記憶手段54-3?56-3内で空いている領域を選択して使用してもよい。
【0172】以上により、文字記憶手段55-2内の領域80に対応する文字データは削除されるが、この削除後に、削除した領域80を空白のままにする場合と、削除した領域80に後続の文字データ及び画像データを移動する場合とがあるのは上述した削除処理と同様である。ここでは、ユーザが上記2つの場合を選択可能とし、当該選択された内容に従って、上述した削除処理と同様の処理を行う。
【0173】以上により、上記領域80に対応する文字データは文字記憶手段55-2より削除され、作業メモリに一旦保存される。
【0174】続いて、ユーザが希望する移動先の位置を上記筆記具等を用いて指定する。このように指定された位置は、上記同様透明シート44より表示発光制御手段23に送信されるようになっている。
【0175】次に、ユーザが例えばメニューから「貼り付け」を選択すると、上記編集手段65は、上記作業メモリに保存されている上記領域80に対応する文字データを読み出し、上記筆記具等を用いて指定された位置(領域)に対応する文字記憶手段(ここでは56-2とする)に張り付ける。この張り付け時の文字記憶手段56-2のイメージ図が図27(b)である。
【0176】張り付け前の、所定の領域に対応する文字データM72及びM73に対して、当該領域80に対応する文字データM80が当該文字記憶手段56-2の先頭部に挿入された場合、上記文字データM72の上部に上記文字データM80が挿入され、これによって、上記文字データM72は上記文字データM80の下部に位置する。また、上記文字データ80と等量である文字データM73は、文字記憶手段56-2から削除される。但し、例えば続きのページを表示する電子ペーパが有れば、上記同様、当該電子ペーパの文字記憶領域の先頭部に上記文字データM73を移動させることになる。
【0177】上記文字データに対応する処理と同様の処理が画像データに対しても行われ、文字データ及び画像データの各記憶手段上での移動の処理が完了する。そして、このように各記憶手段上での移動の処理が完了すると、上記編集手段65はその旨を上記表示発光制御手段23に送信する。
【0178】続いて、上記表示発光制御手段23は、当該各記憶手段に記憶されている表示用データに所定の処理を行い、上述したように表示用ビットデータとして表示用ドライバ122に送信する。以後、上記本体信号授受手段104から画像データを受信した場合と同様に電子ペーパ上に表示を行う。但し、上記削除処理や移動処理をメモリカード41に反映させるか否かはユーザが決定できるものとする。
・・・(中略)・・・
【0183】以上のように、本実施の形態によると、所定の電子ペーパ上の表示内容に対して直接入力・削除・移動等の編集をすることが可能となり、さらに、この編集に基づいて別ページの内容も自動的に変更することが可能になる。これによって、ノートに書き込むという慣れ親しんだ視覚及び感覚を保ったままの編集が可能となるのはいうまでもない。」

(2c)図9

(2d)図25

3-3-2 本件補正発明と引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。

<対応関係A>
引用発明の「記憶性を有した表示パネル」、「表示部」、「情報処理部」、「コネクタアレイ」、「情報」及び「情報表示システム」は、それぞれ本件補正発明の「表示データを不揮発的に保持する機能を備えた表示手段」、「情報担体」、「処理ユニット」、「連携接続手段」、「データ」、及び「情報表示装置」に相当する。

<対応関係B>
引用発明の「文書名」を持つ「表示すべき情報」に対応する「画像信号」は、表示すべき文書に関する画像情報の信号で構成されたデータであるから、本件補正発明の「情報担体に表示する対象である文書データ」に相当する。
そして、引用発明の「情報処理部」は、「画像信号を表示部への画像の書き込みに都合のよいデータ形式(例えばビットマップ情報)に変換する」ことにより「文書名」を有する「表示すべき情報」を得る機能を有するから、本件補正発明の「情報担体に表示する対象である文書データから、表示手段の表示形式である表示データを生成し、前記情報担体の表示データを更新する処理ユニット」に相当する。
さらに、引用発明の「表示部は、情報処理部のコネクタアレイに対して着脱自在に構成されて」いることは、本件補正発明の「・・・情報担体と・・・処理ユニット」とを「分離可能に備え」ることに相当する。

<対応関係C>
引用発明の「表示部と情報処理部との間では、設定情報や表示すべき情報が送信または受信され」ることは、本件補正発明の「情報担体と前記処理ユニットとが連携接続手段を介してデータを授受する」ことに相当する。

<対応関係D>
引用発明の「表示部に表示されている情報に関する各種の情報(文書名、書込日時、機密情報、リンク情報等)」とは、情報処理部が表示のための処理の際、「表示部への画像の書き込みと並行して」書き込んでおくものであり、何の情報が表示処理の対象となっているのかを示す「文書名」や当該情報の表示処理を何時行っているのかを示す「書込日時」等、処理の状態を含むデータであるから、本件補正発明の「処理の状態を表すデータ」に相当する。
そうすると、引用発明の「情報処理部は、表示部への画像の書き込みと並行して、表示部に備えられた、電源を切断しても設定されている情報が消去されない不揮発性の記憶素子であるSRAMからなる設定保持部に表示部固有の設定情報を設定しておくことができ、設定情報として、表示部に表示されている情報に関する各種の情報(文書名、書込日時、機密情報、リンク情報等)を書き込んでおくことができ」ることと、本件補正発明の「処理ユニットが、情報担体に備えられたNVRAMにワークエリアを形成し、処理の状態を表すデータを当該ワークエリアに記憶」することとは、「処理ユニットが、情報担体に備えられた不揮発性の記憶素子に処理の状態を表すデータを記憶」する点で共通する。

<対応関係E>
上述のとおり、本件補正発明における「前記スタティックデータ」は、「ワークエリア」に記憶される「処理の状態を表すデータ」と同義であるから、引用発明の「表示部が情報処理部に対して接続された後、表示すべき情報を書き込む前に、情報処理部のID制御部は表示部の設定保持部から設定情報を読み込み、例えば接続されているどの表示部がどのような大きさであるか等を検出する」ことと、本件補正発明の「処理ユニットは、連携接続手段を介して情報担体と接続された際に、スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」こととは、「処理ユニットは、連携接続手段を介して情報担体と接続された際に、情報担体に備えられた不揮発性の記憶素子に記憶されたデータに基づいて、所定の処理を行う」点で共通する。

以上の対応関係からして、本件補正発明と引用発明とは、
「表示データを不揮発的に保持する機能を備えた表示手段を含む情報担体と、
前記情報担体に表示する対象である文書データから、前記表示手段の表示形式である表示データを生成し、前記情報担体の表示データを更新する処理ユニットと、
を分離可能に備え、
前記情報担体と前記処理ユニットとが連携接続手段を介してデータを授受すると共に、前記処理ユニットが、前記情報担体に備えられた不揮発性の記憶素子に処理の状態を表すデータを記憶しつつ処理を行うことにより互いに連携動作可能に構成され、
前記処理ユニットは、前記連携接続手段を介して前記情報担体と接続された際に、前記情報担体に備えられた前記不揮発性の記憶素子に記憶されたデータに基づいて、所定の処理を行う情報表示装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「不揮発性の記憶素子」に関して、本件補正発明は「NVRAM」に限定し、かつ、当該「NVRAM」に「ワークエリアを形成」しているのに対して、引用発明は「電源を切断しても設定されている情報が消去されない不揮発性の記憶素子であるSRAM」であって、当該「SRAM」にワークエリアを形成するとはしていない点。

(相違点2)
「処理ユニット」が「情報担体」と接続された際の処理に関して、本件補正発明は「スタティックデータに基づいて、前記情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定を行う」のに対して、引用発明は設定情報を読み込んで表示部の大きさ等を検出しており、それに応じた処理をしているものと認められるが、「情報担体の表示データの更新を継続するか否かの判定」処理は行っていない点。

3-3-3 検討・判断
上記相違点1?3について検討する。

(1)相違点1について
(1-1)「NVRAM」を用いる点について
引用発明において、「電源を切断しても設定されている情報が消去されない不揮発性の記憶素子であるSRAM」としているが、技術常識を踏まえると、「SRAM」それ自体は不揮発性の記憶素子ではないから、当該発明特定事項は、SRAMに小さな電池を内蔵あるいは外部に配置することで、主電源が供給されない間も記憶情報を保持する仕組みを付与したもの、すなわち「NVRAM」を意味することは当業者にとって自明である。
そうすると、この点は実質的な相違点ではない。少なくとも、引用発明において、SRAMを不揮発性の記憶素子とするために必要な構成として、SRAMに小さな電池を内蔵あるいは外部に配置することで、主電源が供給されない間も記憶情報を保持する周知の仕組みを付与することは、当業者にとって格別の創意を必要とすることではない。
(1-2)「NVRAM」に「ワークエリアを形成」する点について
(1-2a)引用例2の段落【0171】に、表示部(電子ペーパ)に設けられた各種のメモリを作業メモリとして用いる技術が記載されている。
ここで、引用発明と引用例2に記載された当該技術は、共に、表示部にメモリを設ける情報表示システムに関する技術として共通する。
そうすると、引用発明に当該引用例2に記載の技術を採用して、表示部に設けるSRAM(設定保持部)の空き領域を作業メモリとして活用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
(1-2b)引用例2の段落【0111】、【0120】、【0124】、【0133】、【0139】の記載によれば、引用例2には、表示部(電子ペーパ)を情報処理機能を有する本体から取り外した場合でも、表示データを表示部上で独立して管理できるようにするために、表示部に表示データを記憶するメモリを設けるとともに、当該メモリに表示部の識別番号や電子ペーパに表示されている表示用データの内容を特定する文章ID(表示用データのファイル名やページ数等)等の設定用のデータも格納する技術が記載されており、かつ、段落【0171】において、当該メモリを作業メモリとして用いる技術が記載されている。この場合の表示部に設けるメモリは、本体から取り外しても独立に表示データを管理できるものであるから、不揮発性の記憶素子であることは明らかであり、そのような不揮発性の記憶素子として、主電源が供給されない間も記憶情報を保持する仕組みが付与されたSRAM、すなわち、周知の「NVRAM」を採用することは格別のことではない。。
ここで、引用発明と引用例2に記載された当該技術は、共に、表示部にメモリを設ける情報表示システムに関する技術として共通する。
そうすると、引用発明に引用例2に記載のそれらの技術を採用して、表示部に表示データを記憶するメモリを設けるとともに、当該メモリに設定情報を格納し、かつ、当該メモリの空き領域を作業メモリとして活用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
(1-2c)小括
上記「(1-2a)」、「(1-2b)」の何れにしても、引用発明に引用例2に記載の技術を採用し、表示部のメモリを作業メモリとして利用することは、当業者であれば容易になし得ることである。
(1-3)相違点1についてのまとめ
上述のとおり、引用発明のSRAMを「NVRAM」とすることは、当業者にとって格別の創意を必要することではなく、かつ、引用発明に引用例2に記載の技術を採用することで、当該SRAMを作業メモリとして活用することは、当業者であれば容易に想到することである。
または、引用発明に引用例2に記載の技術を採用し、表示部に表示データを記憶する不揮発性の記憶素子として周知の「NVRAM」を設けて、当該メモリに設定情報を格納するとともに、当該メモリの空き領域を作業メモリとして活用することは、当業者であれば容易に想到することである。
よって、引用発明に引用例2に記載された技術を採用することで、相違点1に係る本件補正発明の構成を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(2)相違点2について
引用例2の段落【0114】?【0124】の記載(特に、段落【0124】)によれば、表示部(電子ペーパ)の表示用データを更新する際に、表示部に既に表示されている表示用データの内容を特定する文章ID(表示用データのファイル名やページ数)に基づいて、すなわち、各表示部に対する現在の処理の状態(何を表示処理の対象としているかという状態)に基づいて、更新しようとする表示用データの種類と表示部に既に表示されている表示用のデータの種類とが異なる場合には、当該表示部には更新しようとする表示用データを送信しない、すなわち、当該表示部の表示データは更新しない(置き換えない)ようにする技術が記載されている。
引用発明と引用例2に記載された当該技術は、共に、複数の表示部を有する情報表示システムに関する技術として共通する。
そうすると、引用発明に引用例2に記載の技術を採用して、設定保持部に設定される、表示部に表示されている情報に関する各種の情報(上記「<対応関係D>」及び上記「<対応関係E>」で述べたように、本件補正発明の「ワークエリア」に記憶される「処理の状態を表すデータ」に相当し、本件補正発明の「スタティックデータ」に対応する情報。)に基づいて、更新しようとする表示用データの種類と表示部に既に表示されている表示用のデータの種類とが異なる場合には、当該表示部の表示データは更新しないようにすることで、相違点2に係る本件補正発明の構成を得ることは、当業者であれば容易になし得ることである。

(4)作用効果についての検討
本件補正発明が奏する作用効果は、引用発明及び引用例2に記載された技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は請求の理由や回答書で、本件補正発明に関して、処理ユニットと情報担体とを再接続した際に、引き続く処理を実行することができるという趣旨の主張をしているが、上記「2 新規事項の追加について」でも述べたように、当該作用効果は当初明細書等に記載されたものではなく、本件補正発明の作用効果とは認められない。少なくとも、段落【0042】の「・・・NVRAM12に記憶されたスタティックデータを確認し、友好なデータであると判定した場合には、文書データの表示処理を、現在の表示状態から継続させる。」とは、現在の文書データに基づく中間形式のデータ等の有効性に問題がなければ、現在の表示状態を継続するという程度の意味であり、本件補正発明の「表示データの更新を継続するか否か」という事項とは直接対応しない。
仮に、本件補正発明が、処理ユニットと情報担体とを再接続した際に、引き続く処理を実行することができるという作用効果を有していたとしても、引用発明に引用例2に記載の技術を採用すれば、再接続前の表示処理の状態に応じて、引き続く表示処理が実行される(既に表示されている情報の種類に応じて、更新処理の有無が制御される)ことになるから、実質的な作用効果の相違は認められない。

(5)まとめ
よって、本件補正発明は、当業者が引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて容易に発明をすることができたものである。

4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
仮に、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものであったとしても、本件補正発明は、特許法第36条第6項第1?2号の規定に違反するものであるから特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、また、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成22年8月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年8月1日付け手続補正により補正された請求項1の、
「【請求項1】
表示データを不揮発的に保持する機能を備えた表示手段を含む情報担体と、
前記情報担体に表示する対象である文書データから、前記表示手段の表示形式である表示データを生成し、前記情報担体の表示データを更新する処理ユニットと、
を分離可能に備え、
前記情報担体と前記処理ユニットとが連携接続手段を介してデータを授受すると共に、前記処理ユニットが、前記情報担体に備えられたNVRAMにワークエリアを形成しつつ処理を行うことにより互いに連携動作可能に構成されることを特徴とする情報表示装置。」
である。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2」「〔理由〕」「3-3-1 引用例」に記載したとおりである。

3 本願発明と引用発明との対比、検討・判断
本願発明は、前記「第2」「〔理由〕」「3 独立特許要件について」で検討した本件補正発明の発明特定事項において、平成22年8月17日付け手続補正により請求項1に導入された処理ユニットの機能に関する発明特定事項を省いたものに相当する。
そして、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を追加したものに相当する本件補正発明は、上記「第2」「〔理由〕」「3-3-3 検討・判断」に記載したとおり、当業者が引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて容易に発明をすることができたものである。
してみると、本願発明は同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本願発明は、当業者が引用発明及び引用例2に記載された技術に基いて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-10-07 
結審通知日 2011-10-11 
審決日 2011-10-24 
出願番号 特願2006-340189(P2006-340189)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09F)
P 1 8・ 561- Z (G09F)
P 1 8・ 575- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福村 拓鳥居 祐樹  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 橋本 直明
森林 克郎
発明の名称 情報表示装置、情報担体、および処理ユニット  
代理人 坊野 康博  
代理人 森 哲也  

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