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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1248953
審判番号 不服2011-1937  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-26 
確定日 2011-12-09 
事件の表示 特願2005-162200号「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年12月14日出願公開、特開2006-339021号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成17年6月2日の出願であって、平成22年10月21日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、平成23年1月26日に本件審判が請求されるとともに、審判請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 平成23年1月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の【請求項1】は、
「【請求項1】
係止部を有する接続端子と、該接続端子が挿入される挿入部を有するハウジングと、該ハウジングに装着されるリテーナとを備え、
前記接続端子は電線に固定された端子金具を有しており、該端子金具の前端側部分を構成する端子部において前記接続端子の挿入方向後側となる後端縁に前記係止部が形成されており、
前記ハウジングには、前記リテーナを装着するための装着孔を前記接続端子の挿入方向と交差する方向において前記挿入部の内外間を連通するように形成すると共に、前記接続端子の係止部に対して係止可能なランス側係止部を有する片持ち梁状のハウジングランスを、前記挿入部内に前記接続端子が挿入される際には該接続端子に押動されて撓み変形する一方、前記接続端子の挿入方向において該接続端子の係止部が前記ランス側係止部の位置に至った際には弾性復帰して該ランス側係止部が前記接続端子の係止部に係止するように設け、
前記リテーナには、該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記ハウジングランスに対して該ハウジングランスの前記撓み変形を規制する方向から当接するリテーナ当接部と、前記挿入部内に挿入されて前記ハウジングランスのランス側係止部が係止した状態にある前記接続端子の係止部に対して前記ランス側係止部とは別箇所で係止するリテーナ側係止部とを設け、
前記端子部は円筒状をしており、前記係止部は円弧状をなすように形成され、該円弧状をなす係止部に対して前記ランス側係止部及びリテーナ側係止部が各々係止箇所を違えて係止するように構成されており、
前記リテーナ側係止部は、該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記挿入部内において前記ハウジングランスの左右両側に配置されるリテーナ脚部であるコネクタ。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「端子部」に関して、「前記端子部は円筒状をしており、前記係止部は円弧状をなすように形成され、該円弧状をなす係止部に対して前記ランス側係止部及びリテーナ側係止部が各々係止箇所を違えて係止するように構成されており」と限定するものであって、当該補正箇所は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である実願平2-116455号(実開平4-72565号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、コネクタハウジングに関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「接続端子を端子収容孔に収容し、ヒンジを介して開閉する端子抑え板を有する合成樹脂製のコネクタハウジングであって、前記端子収容孔の底部にあって前記接続端子の底部に設けた切込みに係合する爪状の第1の係止部と、前記端子収容孔の前記第1の係止部の反対側にあって前記端子抑え板を介して押圧することにより前記接続端子の一部に係合する弾性を有するリーフ状の第2の係止部と、前記端子抑え板に設け前記接続端子の他の一部に係合する突起状の第3の係止部とを備えたことを特徴とするコネクタハウジング。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「第1図はハウジング本体の縦断面図、第2図は第1図のA-A線に沿った断面図、第3図は接続端子の斜視図であり、合成樹脂材料から成るハウジング本体1の内部には、接続端子2を収容するための端子収容孔3が設けられている。この端子収容孔3の底部には、接続端子2の底部に係合するための爪状の第1の係止部4が設けられ、反対側の上部には弾性を有するリーフ状の第2の係止部5が設けられており、この第2の係止部5はヒンジ6を介して開閉自在にハウジング本体1に一体的に取り付けられた端子抑え板7により抑え込まれることにより、接続端子2に係合するようになっている。8この端子抑え板7の先端には接続端子2を押え込むための平板部8が設けられ、中間部には接続端子2の一部に係合するための突起状の第3の係止部9が設けられており、この第3の係止部9は抑え板7の側部に片寄って設けられている。」(第3頁第19行?第4頁第16行)
(ウ)「第3図に示す接続端子2は、電線を接続する前の状態の斜視図であり、接続端子2の前端部は相手側接続端子と嵌合する接続部2a、後端部は電線を取り付けるための圧着部2bとされ、第1の係合部4と係合するための切込み2c、第2の係止部5と係合するための段部2d、及び第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2eが設けられている。」(第4頁第19行?第5頁第6行)
(エ)「この接続端子2を第4図に示すようにハウジング本体1の後方から端子収容孔3の内部に押し込むと、接続端子2は第2の係止部5を押し上げながら進入し、接続端子2の先端はハウジング本体1の端子収容孔3内の枠部によって前進が停止され、この状態で切込み2cに第1の係止部4が係合し、段部2dに第2の係止部5が係合することになる。ここで、端子抑え板7を閉塞してロックすると、その平板部8によって接続端子2は安定的に端子収容孔3内に抑え付られると共に、第2の係止部5は端子抑え板7の中間部によって押圧されて段部2dとの係合が固定され、更には第3の係止部9が接続端子2の突起部2eに係合することにより、計3個所の係止によって接続端子2はハウジング本体1内に固定されることになる。」(第5頁第7行?第6頁第1行)
(オ)第1、2、4図には、それぞれコネクタハウジングの一実施例の縦断面図、A-A線に沿った断面図、接続端子を収容した状態の縦断面図が記載されている。
そして、それらの図において、ハウジング本体1には、端子抑え板7を装着する開口部が接続端子2の進入方向と交差する方向において端子収容孔3の内外間を連通するように形成されており、第4図においては、ハウジング本体1に端子抑え板7が装着された状態が記載されている。
(カ)第3図には、接続端子の斜視図が記載されている。
そして、その図において、記載事項(ウ)の「接続端子2の前端部」の「相手側接続端子と嵌合する接続部2a」が、中空の角柱体として記載されている。
そして、該接続部2aの後方側端部には、同じく記載事項(ウ)の「第2の係止部5と係合するための段部2d」及び「第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2e」が設けられている。

・記載事項(イ)のハウジング本体1、接続端子2、及び記載事項(ウ)の電線は、一体化されてコネクタとして機能するものであるので、全体としてコネクタといえる。

すると、刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「第1の係止部4と係合するための切込み2c、第2の係止部5と係合するための段部2d、及び第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2eが設けられている接続端子2と、接続端子2を収容するための端子収容孔3が設けられているハウジング本体1と、ハウジング本体1に装着される端子抑え板7とを備え、
接続端子2の前端部は相手側接続端子と嵌合する接続部2a、後端部は電線を取り付けるための圧着部2bとされ、接続部2aの後方側端部には、第2の係止部5と係合するための段部2d、及び第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2eが設けられており、
ハウジング本体1には、
端子抑え板7を装着する開口部を接続端子2の進入方向と交差する方向において端子収容孔3の内外間を連通するように形成すると共に、
接続端子2の段部2dに係合する第2の係止部5を、接続端子2をハウジング本体1の後方から端子収容孔3の内部に押し込むと、接続端子2は第2の係止部5を押し上げながら進入し、接続端子2の先端はハウジング本体1の端子収容孔3内の枠部によって前進が停止され、この状態で切込み2cに第1の係止部4が係合し、段部2dに第2の係止部5が係合するように設け、
端子抑え板7には、
端子抑え板7を閉塞してロックすると、第2の係止部5が押圧されて段部2dとの係合が固定される中間部と、
接続端子2をハウジング本体1の後方から端子収容孔3の内部に押し込み、接続端子2は第2の係止部5を押し上げながら進入し、接続端子2の先端はハウジング本体1の端子収容孔3内の枠部によって前進が停止され、この状態で切込み2cに第1の係止部4が係合し、段部2dに第2の係止部5が係合した時に、端子抑え板7を閉塞してロックすると、接続端子2の突起部2eに係合する第3の係止部9とを設けたコネクタ。」

3. 本願補正発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
(a)引用発明の「第2の係止部5と係合するための段部2d」及び「第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2e」は、本願補正発明の「係止部」に相当する。
また、引用発明の「接続端子2」は、その「後端部は電線を取り付けるための圧着部2b」であって、電線に固定されるものであるので、本願補正発明の「電線に固定された端子金具」に相当する。
そして、引用発明の「電線」及び「第1の係止部4と係合するための切込み2c、第2の係止部5と係合するための段部2d、及び第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2eが設けられている接続端子2」は、両者が一体となって、本願補正発明の「係止部を有する接続端子」に相当する。
(b)引用発明の「接続端子2を収容するための端子収容孔3」は、本願補正発明の「接続端子が挿入される挿入部」に相当し、以下同様に「ハウジング本体1」は「ハウジング」に、「ハウジング本体1に装着される端子抑え板7」は「ハウジングに装着されるリテーナ」に相当する。
(c)引用発明の「接続端子2の前端部」の「相手側接続端子と嵌合する接続部2a」は、本願補正発明の「端子金具の前端側部分を構成する端子部」に相当し、以下同様に「接続部2aの後方側端部」は「端子金具の前端側部分を構成する端子部において前記接続端子の挿入方向後側となる後端縁」に相当する。
そうすると、引用発明の「接続端子2の前端部は相手側接続端子と嵌合する接続部2a、後端部は電線を取り付けるための圧着部2bとされ、接続部2aの後方側端部には、第2の係止部5と係合するための段部2d、及び第3の係止部9と係合するために上方に折り曲げられた突起部2eが設けられ」ていることは、本願補正発明の「接続端子は電線に固定された端子金具を有しており、該端子金具の前端側部分を構成する端子部において前記接続端子の挿入方向後側となる後端縁に前記係止部が形成され」ていることに相当する。
(d)引用発明の「ハウジング本体1には、端子抑え板7を装着する開口部を接続端子2の進入方向と交差する方向において端子収容孔3の内外間を連通するように形成する」構成は、本願補正発明の「ハウジングには、前記リテーナを装着するための装着孔を前記接続端子の挿入方向と交差する方向において前記挿入部の内外間を連通するように形成する」構成に相当する。
(e)引用発明の「接続端子2の段部2dに係合する第2の係止部5」は、本願補正発明の「接続端子の係止部に対して係止可能なランス側係止部を有する片持ち梁状のハウジングランス」に相当し、以下同様に「接続端子2をハウジング本体1の後方から端子収容孔3の内部に押し込むと、接続端子2は第2の係止部5を押し上げながら進入し、接続端子2の先端はハウジング本体1の端子収容孔3内の枠部によって前進が停止され、この状態で切込み2cに第1の係止部4が係合し、段部2dに第2の係止部5が係合する」ことは、「前記挿入部内に前記接続端子が挿入される際には該接続端子に押動されて撓み変形する一方、前記接続端子の挿入方向において該接続端子の係止部が前記ランス側係止部の位置に至った際には弾性復帰して該ランス側係止部が前記接続端子の係止部に係止する」ことに相当する。
そうすると、引用発明の「接続端子2の段部2dに係合する第2の係止部5を、接続端子2をハウジング本体1の後方から端子収容孔3の内部に押し込むと、接続端子2は第2の係止部5を押し上げながら進入し、接続端子2の先端はハウジング本体1の端子収容孔3内の枠部によって前進が停止され、この状態で切込み2cに第1の係止部4が係合し、段部2dに第2の係止部5が係合するように設け」た構成は、本願補正発明の「前記接続端子の係止部に対して係止可能なランス側係止部を有する片持ち梁状のハウジングランスを、前記挿入部内に前記接続端子が挿入される際には該接続端子に押動されて撓み変形する一方、前記接続端子の挿入方向において該接続端子の係止部が前記ランス側係止部の位置に至った際には弾性復帰して該ランス側係止部が前記接続端子の係止部に係止するように設け」た構成に相当する。
(f)引用発明の「端端子抑え板7を閉塞してロックすると、第2の係止部5が押圧されるて段部2dとの係合が固定される中間部」は、本願補正発明の「該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記ハウジングランスに対して該ハウジングランスの前記撓み変形を規制する方向から当接するリテーナ当接部」に相当する。
(g)引用発明の「接続端子2をハウジング本体1の後方から端子収容孔3の内部に押し込み、接続端子2は第2の係止部5を押し上げながら進入し、接続端子2の先端はハウジング本体1の端子収容孔3内の枠部によって前進が停止され、この状態で切込み2cに第1の係止部4が係合し、段部2dに第2の係止部5が係合した時に、端子抑え板7を閉塞してロックすると、接続端子2の突起部2eに係合する第3の係止部9」は、本願補正発明の「前記挿入部内に挿入されて前記ハウジングランスのランス側係止部が係止した状態にある前記接続端子の係止部に対して前記ランス側係止部とは別箇所で係止するリテーナ側係止部」に相当する。

(2)両発明の一致点
「係止部を有する接続端子と、該接続端子が挿入される挿入部を有するハウジングと、該ハウジングに装着されるリテーナとを備え、
前記接続端子は電線に固定された端子金具を有しており、該端子金具の前端側部分を構成する端子部において前記接続端子の挿入方向後側となる後端縁に前記係止部が形成されており、
前記ハウジングには、前記リテーナを装着するための装着孔を前記接続端子の挿入方向と交差する方向において前記挿入部の内外間を連通するように形成すると共に、前記接続端子の係止部に対して係止可能なランス側係止部を有する片持ち梁状のハウジングランスを、前記挿入部内に前記接続端子が挿入される際には該接続端子に押動されて撓み変形する一方、前記接続端子の挿入方向において該接続端子の係止部が前記ランス側係止部の位置に至った際には弾性復帰して該ランス側係止部が前記接続端子の係止部に係止するように設け、
前記リテーナには、該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記ハウジングランスに対して該ハウジングランスの前記撓み変形を規制する方向から当接するリテーナ当接部と、前記挿入部内に挿入されて前記ハウジングランスのランス側係止部が係止した状態にある前記接続端子の係止部に対して前記ランス側係止部とは別箇所で係止するリテーナ側係止部とを設けたコネクタ。」

(3)両発明の相違点
ア.本願補正発明は「端子部は円筒状をしており、前記係止部は円弧状をなすように形成され、該円弧状をなす係止部に対して前記ランス側係止部及びリテーナ側係止部が各々係止箇所を違えて係止するように構成され」たものであるのに対して、引用発明は、そうでない点。
イ.本願補正発明は「リテーナ側係止部は、該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記挿入部内において前記ハウジングランスの左右両側に配置されるリテーナ脚部である」のに対して、引用発明の第3の係止部9は、左右両側に配置されるリテーナ脚部でない点。

4.容易想到性の検討
(1)相違点(ア)について
まず、コネクタのハウジングに挿入される接続端子の形状として、円筒状をなすものは、例えば、特開平2-114473号公報FIG.3、特開2000-58187号公報【図7】、特開2003-297493号公報【0025】【図1】?【図10】、特公平7-114132号公報【図1】に示されているように従来周知慣用のものである。
更に、上記特開2000-58187号公報の【図6】に図示された電気端子10のランスとの係止部や、特公平7-114132号公報の【図6】に図示された筒状雌端子3の抜止当接部14との係止部も、円筒状端子部の円弧状部分をそのまま係止部として用いているように、接続端子の係止部を、引用発明の「上方に折り曲げられた突起部2e」の様に付加的に設けるのではなく、接続端子本来の外形の一部をそのまま用いて構成することも周知の構成であるので、引用発明の接続端子2を、接続端子の形状として周知慣用の円筒状とすると共に、「第2の係止部5と係合する」部分、及び「第3の係止部9と係合する」部分を接続端子の外形の一部をそのまま用いて構成して、相違点(ア)に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点(イ)について
まず、コネクタのハウジングに挿入される接続端子を係止するリテーナとして、左右両側に係止部を配置したものは、例えば、特開平9-73939号公報【0035】、特許第3130224号公報【0017】【図1】?【図6】、特開2003-297493号公報【0053】に示されているように従来周知慣用のものである。
そして、該構成は、例えば、上記特許第3130224号公報【0017】に「両スタビライザ6の当接縁9にそれぞれ係合する係止面18が形成される。これによって、端子金具3はリテーナ8の装着に伴い当接縁9と係止面18と係合することで全体の抜け止めがなされる。」、同【0024】に「スタビライザ6を片側のみに設けたものに適用することも可能である。」と記載されているように、引用発明の端子抑え板7の第3の係止部9の様な、係止を片側のみに設けたものと置換可能な構成と認識されるものであり、また、上記特開2003-297493号公報【0053】に「このような二重係止がコネクタハウジング20のコネクタ収容室24内で対向する位置に設けられている構造なので、このような二重係止が片側にのみある場合よりも引っ張られた時のコネクタハウジング20内での同軸コネクタ10のこじれが規制され破損が防止される。」と記載されているように、機構的に望ましい構成と認識されたものでもあるので、引用発明の端子抑え板7を、上記左右両側に係止部を配置した周知慣用のリテーナを用いて構成して、相違点(イ)に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
なお、相違点(イ)に係る「リテーナ側係止部は、・・・ハウジングランスの左右両側に配置される」ことも、上記特許第3130224号公報(特に【図2】)記載のものもそのような配置となっているように格別想定しえない構成でもない。

(3)そして、本願補正発明の作用効果は、引用発明、及び周知慣用事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、及び周知慣用事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成23年1月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成22年10月1日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
係止部を有する接続端子と、該接続端子が挿入される挿入部を有するハウジングと、該ハウジングに装着されるリテーナとを備え、
前記接続端子は電線に固定された端子金具を有しており、該端子金具の前端側部分を構成する端子部において前記接続端子の挿入方向後側となる後端縁に前記係止部が形成されており、
前記ハウジングには、前記リテーナを装着するための装着孔を前記接続端子の挿入方向と交差する方向において前記挿入部の内外間を連通するように形成すると共に、前記接続端子の係止部に対して係止可能なランス側係止部を有する片持ち梁状のハウジングランスを、前記挿入部内に前記接続端子が挿入される際には該接続端子に押動されて撓み変形する一方、前記接続端子の挿入方向において該接続端子の係止部が前記ランス側係止部の位置に至った際には弾性復帰して該ランス側係止部が前記接続端子の係止部に係止するように設け、
前記リテーナには、該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記ハウジングランスに対して該ハウジングランスの前記撓み変形を規制する方向から当接するリテーナ当接部と、前記挿入部内に挿入されて前記ハウジングランスのランス側係止部が係止した状態にある前記接続端子の係止部に対して前記ランス側係止部とは別箇所で係止するリテーナ側係止部とを設け、
前記リテーナ側係止部は、該リテーナが前記ハウジングの装着孔に装着された際に、前記挿入部内において前記ハウジングランスの左右両側に配置されるリテーナ脚部であるコネクタ。」

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項は、前記の「第2 2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明の構成を全て含むとともに、本願発明の構成に更に限定を付加した本願補正発明が、前記「第2 3.」以下に記載したとおり、引用発明、及び周知慣用事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明を上位概念化した本願発明も本願補正発明と同様の理由により、引用発明、及び周知慣用事項から当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-09-15 
結審通知日 2011-09-27 
審決日 2011-10-19 
出願番号 特願2005-162200(P2005-162200)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 片岡 弘之栗山 卓也  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 稲垣 浩司
中川 真一
発明の名称 コネクタ  
代理人 沼波 知明  

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