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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F |
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管理番号 | 1248958 |
審判番号 | 不服2011-8815 |
総通号数 | 146 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-02-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2011-04-25 |
確定日 | 2011-12-15 |
事件の表示 | 特願2001-153644号「露点温度制御方法及びこれを用いた外調機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月4日出願公開、特開2002-349901号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成13年5月23日の出願であって、平成23年1月19日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月25日)、これに対し、同年4月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年9月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 水と空気が接触する充填材部と、該充填材部の上方に設けた散水ノズルとからなる水/空気直接接触型熱交換器を本体内に設け、 該本体内であって、該水/空気直接接触型熱交換器の下方に設けた温度制御可能な水槽の水を前記散水ノズルに送って上方から散水し、外部から該本体内に取り入れた空気を下方から上昇させて前記充填材部内を通し、該空気と前記散水された水及び充填材部の充填材を伝わって落下する水とを相対向して接触させて熱交換を行い、 前記散水する水の温度を制御することによって、所望の露点温度状態の空気を得ることを特徴とする露点温度制御方法。 【請求項2】 処理すべき空気より低温の水を散水して冷房用空気を得ることを特徴とする請求項1に記載の露点温度制御方法。」 3.刊行物について (1)原査定の拒絶の理由において提示された刊行物である特開平5-118596号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a)「【産業上の利用分野】本発明は、氷蓄熱槽で作り出された冷水を用いて空調空気を冷却する空調機および熱交換器に関する。」(段落【0001】) b)「ここに、本願出願人は、近年様々な分野での導入が懸案されている氷蓄熱システムを利用して熱交換器、ひいては空調機を構成することに着目し、これにより上記問題点を一挙に解決しようとするものである。 本発明は上記課題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、構造が簡単で、安価に製作することができると共に、冷媒等の循環ポンプの能力の省力化を確保できて消費電力の削減を達成でき、且つ経年劣化の防止やメンテナンスの省力化、並びに空調機設置空間の空間利用率の向上に寄与することができる空調器および熱交換器を提供することにある。」(段落【0007】?【0008】) c)「【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて詳細に説明する。図1から図3は本発明にかかる空調機10の一実施例を示し、図1は空調機10の全体を示す概略構成図、図2は熱交換器20を構成するケーシング24の斜視図、図3はケーシング24に収容される充填材26の斜視図である。 即ち、本実施例の空調機10は氷蓄熱槽12を備え、この氷蓄熱槽12で作り出される冷水14を熱交換器20に単に流下させて散水すると共に、この熱交換器20に空調空気を通過させて熱交換するようになっている。 前記氷蓄熱槽12には水14が蓄えられており、この水中には冷凍機16に接続された製氷コイル18が配設され、この製氷コイル18を介して前記水14が冷却される。 前記氷蓄熱槽10の水面上方には、空調空気を流通させると共に、熱交換器20を配設するのに十分な空間部22が区画形成される。熱交換器20は図2に示すように、外気等を流入させ空調空気として流出させることができるように、例えば多数の孔部を有するケーシング24内に、充填材26を収容して構成される。前記充填材26は本実施例では図3に示したように合成樹脂性のフィン状単体を多数用い、ポーラス様の多数の空隙が形成されるようになっている。そして、前記熱交換器20は氷蓄熱槽10の内側に固定して前記空間部22の略中央部分に配置される。 前記空間部22の図中左右両端部には、氷蓄熱槽10の側壁を貫通して空気導入口28および空気流出口30が形成される。そして、送風機32を介して空気導入口28から外気等が空間部22内に導入され、この導入された空気は前記熱交換器20を通過した後、空気流出口30から空調空気として図外の室内に吹出される。 一方、前記氷蓄熱槽12の水14が蓄えられた底部には、冷水供給系を構成する冷水配管33が連通され、この冷水配管33は循環ポンプ34を介して前記熱交換器20の上方に配管される。また、冷水配管33が熱交換器20の上方に配置される部分には、パンチングプレート状の散水用穴開きパン36が設けられ、冷水配管33から順次流れ出る冷水14を受けて、ケーシング24全域に亘って散水するようになっている。従って、前記氷蓄熱槽12で作り出された冷水14は、前記循環ポンプ34を介して揚水され、穴開きパン36から熱交換器20の上方に流下され散水されるようになっている。 以上の構成により本実施例の空調機10にあっては、氷蓄熱槽12に設けた空間部22に熱交換器20を配置し、この熱交換器20によって温度調和しようとする空気が冷却される。前記熱交換器20は冷媒としての冷水14が充填材26の上方から散水されようになっており、この散水された冷水14は充填材26の表面を伝って氷蓄熱槽12内に落下される。そして、送風機32で圧送された外気等がこの充填材26の空隙部分を通過することにより、この空気と前記充填材26の表面を流下する冷水14との間で直接接触式の熱交換が行われる。そして、冷水14との間で熱交換された空調空気が空気流出口30から室内に供給されることにより、室内の冷房を行うことができる。 尚、前記熱交換器20で空気が冷却される際、この空気が充填材26表面において、露点温度以下の冷水14に直接に接触されるため、空気中の水蒸気は結露して除湿される。このため熱交換器20を通過した直後の空調空気の相対湿度は100%に近い状態となるが、絶対湿度では熱交換器20通過前よりも除湿されて低湿度となる。従って、室内の空気を前記熱交換器20に循環させた場合は、室内の除湿を行うことができ、室内湿度は通常の空調機以下に保たれることになる。」(段落【0018】?【0025】。下線は当審にて付与。以下同様。) d)「尚、本実施例では上記熱交換器20に冷水14を散水するが、この冷水14としては不凍液を混合したものでも良く、また氷点以下の過冷却水およびシャーベット状の冷水を含むものとする。シャーベット状の冷水でも良いのは、冷水供給系の圧力損失が小さいことと、熱交換器20内部で冷水14が部分凍結を起こしても熱交換を阻害しないことによる。」(段落【0031】) 上記a?dの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。 「多数の孔部を有するケーシング24内に、充填材26を収容して構成される熱交換器20と、熱交換器20の上方にパンチングプレート状の散水用穴開きパン36とを設けた空調機10を備え、 熱交換器20の下方に設けた氷蓄熱槽10で作り出される、露点温度以下の冷水14を散水用穴開きパン36で受けて、散水用穴開きパン36から熱交換器20の上方に流下され散水され、 送風機32を介して空気導入口28から導入された空気を熱交換器20の充填材26の空隙部分を通過させ、この空気と充填材26の表面を流下する冷水14との間で直接接触式の熱交換が行われ、 温度調和され、露点温度以下の冷水14に直接接触されることにより、空気中の水蒸気は結露して除湿される、相対湿度100%に近い状態の室内の冷房に用いる空調空気を得る空調方法。」 (2)原査定の拒絶の理由において提示された刊行物である特開平5-302735号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 a)「以上の構成において調温装置8により適温に調整した水を湿式熱交換部eの上部チャンバー2内に送れば、水は小孔6から落下して含水材1の両面を濡らして下部チャンバー3に溜り、下部チャンバー3内の水はポンプ9により上部チャンバー2に循環する。従って空調設備のファンdの駆動により室a内よりの還気はフィルタcを経て湿式熱交換部eの前記含水材1の濡れ面に沿って通過させることにより調温装置8で調整した水温に応じて所定温度の調和空気としてダクトfを経て室a内に吹込まれて室a内の空調が行われ、かつ濡れ面との接触によって室内還気および外気取入口gからの外気中フィルタcで排除し得ない微小粉塵および悪臭ガス分子は濡れ水によって取除かれ清浄空気として室a内に循環させ得るもので、また水が含水材1面に沿って流下するとき微小な水が飛沫となるが、この飛沫は負に帯電するので、体に良いマイナスイオンの発生に寄与し得る。」(段落【0012】) b)「本装置において室内に吹出される空気は相当の湿気を有するものと考えれるが、熱交換部eに供給される水は、冷房時には通過する空気の露点温度以下または露点温度付近にコントロールすることにより、蒸発して空気を加温することなく、反って除湿するもので、また暖房時には水温を上げ過ぎた場合は加湿過多となる可能性があり、従って室内の加湿に必要な量の水分が蒸発する温度、例えば25℃程度に水温をコントロールする。そして暖房負荷に足りない分の熱量は、前記熱交換部eの2次側に設けた補助ヒータhで加熱するものである。」(段落【0016】) 上記a?bの記載事項及び図面の図示内容を総合勘案すると刊行物2には、次の発明が記載されていると認められる。 「所定温度の調和空気を得るために、室a内よりの還気を含水材1の濡れ面に沿って通過させ、濡れ面と接触させることにより熱交換を行う湿式熱交換部eを設け、冷房時には、湿式熱交換部eに供給される水の水温を調温装置8で、通過する空気の露点温度以下または露点温度付近にコントロールし、室a内の空調を行う空調方法。」 4.対比 本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1に記載された発明の「多数の孔部を有するケーシング24内に、充填材26を収容して構成される熱交換器20と、熱交換器20の上方にパンチングプレート状の散水用穴開きパン36とを設けた空調機10」と、本願発明の「水と空気が接触する充填材部と、該充填材部の上方に設けた散水ノズルとからなる水/空気直接接触型熱交換器を本体内に設け」ることとは、前者において、熱交換器20には、充填材26が収容され、熱交換器20の上方に散水用穴開きパン36が設けられており、また、熱交換器20により、空気と水との直接接触式の熱交換が行われるものであるから、両者は、「水と空気が接触する充填材部と、該充填材部の上方に設けた散水孔とからなる水/空気直接接触型熱交換器を本体内に設け」ることで共通し、以下同様に、 刊行物1に記載された発明の「熱交換器20の下方に設けた氷蓄熱槽10で作り出される、露点温度以下の冷水14を散水用穴開きパン36で受けて、散水用穴空きパン36から熱交換器20の上方に流下され散水」されることと、本願発明の「本体内であって、該水/空気直接接触型熱交換器の下方に設けた温度制御可能な水槽の水を散水孔ノズルに送って上方から散水」することとは、「本体内であって、該水/空気直接接触型熱交換器の下方に設けた水槽の水を散水孔に送って上方から散水」することで、 刊行物1に記載された発明の「送風機32を介して空気導入口28から導入された空気を熱交換器20の充填材26の空隙部分を通過させ、この空気と充填材26の表面を流下する冷水14との間で直接接触式の熱交換が行われ」ることと、本願発明の「外部から該本体内に取り入れた空気を下方から上昇させて充填材部内を通し、該空気と散水された水及び充填材部の充填材を伝わって落下する水とを相対向して接触させて熱交換を行」うこととは、前者において、冷水14は、散水用穴空きパン36から熱交換器20の上方に流下され散水されることから、冷水14には、充填材26の表面を流下するもの以外にも、直接、氷蓄熱槽10に落下するものが存在することは明らかであるから、両者は、「外部から該本体内に取り入れた空気を充填材部内を通し、該空気と散水された水及び充填材部の充填材を伝わって落下する水とを直接接触させて熱交換を行」うことで、 それぞれ共通する。 ここで、刊行物1に記載された発明の「温度調和され、露点温度以下の冷水14に直接接触されることにより、空気中の水蒸気は結露して除湿される、相対湿度100%に近い状態の室内の冷房に用いる空調空気を得る」ことと、本願発明の「散水する水の温度を制御することによって、所望の露点温度状態の空気を得る」こと、及び、「処理すべき空気より低温の水を散水して冷房用空気を得る」こととを対比する。 前者において、空気は、露点温度以下の所定温度の冷水14に直接接触され、相対湿度100%に近い状態、すなわち、露点状態となるものであるから、両者は、「散水する水の温度を、所定温度とすることによって、所望の露点温度状態の空気を得る」ことで共通する。また、前者は、冷房に用いる空調空気を得るために、空気を露点温度以下の冷水14に直接接触させるものであるから、後者の「処理すべき空気より低温の水を散水して冷房用空気を得る」ことに相当する。 そして、刊行物1に記載された発明の「空気調和方法」は、相対湿度100%に近い状態、すなわち、露点温度状態の室内の冷房に用いる空調空気を得るものであるから、「露点温度制御方法」に相当する。 したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「水と空気が接触する充填材部と、該充填材部の上方に設けた散水孔とからなる水/空気直接接触型熱交換器を本体内に設け、 該本体内であって、該水/空気直接接触型熱交換器の下方に設けた水槽の水を前記散水孔に送って上方から散水し、外部から該本体内に取り入れた空気を前記充填材部内を通し、該空気と前記散水された水及び充填材部の充填材を伝わって落下する水とを直接接触させて熱交換を行い、 前記散水する水の温度を、所定温度とすることによって、所望の露点温度状態の空気を得る露点温度制御方法。 上記露点温度制御方法において、処理すべき空気より低温の水を散水して冷房用空気を得ること。」 [相違点1] 散水孔が、本願発明では、散水ノズルであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、パンチングプレート状の散水用穴である点。 [相違点2] 本願発明では、水槽の水が温度制御可能であり、散水する水の温度を制御するものであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、氷蓄熱槽10で作り出される冷水14が露点温度以下であり、冷水14の温度も露点温度以下である点。 [相違点3] 熱交換が、本願発明では、下方から上昇させた空気と、散水あるいは落下された水とを相対向して接触させるのに対して、刊行物1に記載された発明では、空気導入口28から導入された空気を熱交換器20の充填材26の空隙部分を通過させ、この空気と充填材26の表面を流下する冷水14との間で熱交換させる点。 5.当審による判断 (1)上記相違点1及び3について 散水式熱交換器の技術分野において、空気の温度及び湿度条件をより正確にコントロールするために、散水をノズルから行うとともに、散水された水と下方から上昇させた気体とを相対向して直接接触させて熱交換を行うことは、本願出願前に周知の技術事項である(例えば、特開平9-236280号公報、段落【0016】?【0017】、【0024】、【図1】の散水ノズル7を具備する散水式熱交換器8や、特開昭59-200719号公報、第3ページ左上欄第14行?同右上欄第11行のノズル10を具備する加湿塔5を参照。)。 そして、刊行物1に記載された発明と上記周知の技術事項とは、散水式熱交換器を具備する点で共通の技術分野に属するものである。 してみると、刊行物1に記載された発明に、空気の温度及び湿度をより正確にコントロールするために上記周知の技術事項を適用して、パンチングプレート状の散水用穴を散水ノズルに換えるとともに、熱交換器20に導入される空気を下方から上昇させ、空気と冷水14とを相対向して接触させることは当業者が容易になし得たものである。 (2)上記相違点2について 刊行物2には、水と空気との接触により熱交換を行う熱交換器を設け、所定温度の調和空気を得るために空気と接触させる水の水温を所定温度に調整した発明が記載されている。 そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、水と空気との接触により熱交換を行う熱交換器を備えた空調方法という共通の技術分野に属する発明である。 また、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とは、所定温度の調和空気を得るという共通の課題を解決するものである。 さらに、刊行物1に記載された発明は、冷水14として、温度が露点温度以下のものを使用するものであるから、冷水14の温度を温度制御して、より正確な空気温度の制御を行うことは、当業者が通常行っている技術事項といえる。 してみると、刊行物1に記載された発明に、所定温度の調和空気を得るための手段として、に刊行物2に記載された発明を適用して、氷蓄熱槽10で作り出される冷水14の温度を温度制御可能とすることにより、散水する水の温度を制御することは、当業者が容易になし得たものである。 (3)小括 本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1?2に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-10-12 |
結審通知日 | 2011-10-18 |
審決日 | 2011-10-31 |
出願番号 | 特願2001-153644(P2001-153644) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F24F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤原 直欣 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
長浜 義憲 長崎 洋一 |
発明の名称 | 露点温度制御方法及びこれを用いた外調機 |
代理人 | 藤沢 則昭 |
代理人 | 藤沢 則昭 |
代理人 | 藤沢 則昭 |
代理人 | 藤沢 昭太郎 |
代理人 | 藤沢 昭太郎 |
代理人 | 藤沢 昭太郎 |