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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1249060
審判番号 不服2009-15161  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-20 
確定日 2011-12-21 
事件の表示 特願2002-552378号「パケージ集積回路およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月27日国際公開、WO02/51217、平成16年11月11日国内公表、特表2004-534375号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年12月19日(優先権主張外国庁受理 平成12年12月21日 イスラエル国、平成13年1月11日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成21年4月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に明細書の特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたものである。

第2 原査定
原査定における拒絶の理由は、以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特表平9-511097号公報
2.特開平10-50887号公報
3.特開平11-354669号公報
4.特開平11-168150号公報」

第3 平成21年8月20日付けの手続補正の却下
[補正却下の決定の結論]
平成21年8月20日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正後の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「基板の平面に置かれ、該基板上に電気回路を有する集積回路基板と、
前記集積回路基板を封入し前記基板の平面に全体として平行な第1と第2の平らな表面を規定するパッケージであって、第1の露出した外側の縁表面は前記第1の平らな表面から離れて延び、第2の露出した外側の平らな表面は前記第2の平らな表面から離れて延びるパッケージと、
各々が前記基板の平面で前記電気回路に接続する複数の第1電気接点および第2電気接点であって、前記複数の第1電気接点は前記第1の露出した外側の縁表面に沿って前記第1の平らな表面上へ延びるが前記第2の平らな表面上へは延びず、前記複数の第2電気接点は前記第2の平らな表面上へ延びる、複数の第1電気接点および第2電気接点と、
を備え、
前記パッケージが少なくとも可視光線または赤外線光線の一方に対し少なくとも部分的に透明な少なくとも一部分を有する、
ことを特徴とするパケージ集積回路。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物
(1)本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特表平9-511097号公報(以下「引用例1」という。)には、集積回路素子の製造方法および製造装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「本発明のさらに別の好適実施例による集積回路素子を製造する装置は、それぞれが多数のパッド部を備える複数の集積回路を、対向する平坦面を有するウェファ上に形成する装置と、前記のウェファの両平坦面に外装保護材の層をウェファ方向に着合する装置と、予め外装処理された複数の集積回路素子の輪郭線に沿った切込み部を形成するため、前記の着合された保護材とウェファとを部分的に切刻する部分切刻装置と、前記の外装処理された複数の集積回路素子がウェファ上で互いに結合している状態で、少なくともその一部分が前記切込み部まで伸長するような金属接触端子を前記の複数の集積回路素子上に形成する金属被膜装置と、前記の外装された複数の集積回路素子を切断して個々の素子に分断する分断装置とから成る。」(第8頁第26行?第9頁第6行)

イ 「図1においては、本発明の好適実施例による集積回路素子の1つが図示されており、比較的薄くて小型の外面的に保護され物理的に強化された集積回路外装体10は、その端面14に形成された多数の電気接触端子12を備えている。本発明の好適実施例では、接触端子12は外装体の端面から平坦面16上まで伸びている。」(第11頁第10?14行)

ウ 「本発明の好適実施例では、図2と4Aに示されているように、従来の技法により形成された複数の既製ダイ22を有する全体のシリコンウェファ20は、その作用面24が層状エポキシ28にて絶縁保護板26に接着されている。一般的に絶縁保護板26は、ガラス、アルミナ、ベリリア、サファイア、あるいは、適当な絶縁材で形成されている。
前記の保護板26は透明で、光学的または赤外線処理に有効な特定の波長域の照射を透過できる。」(第11頁第20?26行)

エ 図1の記載より、集積回路外装体10の端面14が平坦面16から離れて延びる態様が看取できる。

オ 図7の記載より、集積回路外装体10上の電気接続端子12がウェファ上の集積回路のパッド部34に接続していることが看取できる。また、集積回路外装体10の外郭部分に相当する絶縁保護板26がウェファの平坦面に全体として平行な平坦面16を有していることが看取できる。

上記各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には次の発明が記載されているといえる(以下「引用発明」という。)。

「その平坦面上に形成された集積回路素子を有するウェファ20と、
該ウェファ20を外面的に保護するとともに、ウェファの平坦面に全体として平行な平坦面16を有し、端面14が該平坦面16から離れて延びる集積回路外装体10と、
ウェファの平坦面上でパッド部34を介して集積回路素子に接続され、該集積回路外装体10の端面14に沿って平坦面16上へ延びる複数の電気接続端子12と、
を備え、
集積回路外装体10を構成する絶縁保護板26は光学的または赤外線処理に有効な特定の波長域の照射を透過できる透明部分を有している、
集積回路。」

(2)同じく本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平10-50887号公報(以下「引用例2」という。)には、半導体パッケージング装置及び方法に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

カ 「【0018】上記デバイスは、カバー基板360の外面及びデバイス基板330上にバンプ接点を有する。図14に示されたタイプの複数のデバイスは、相互連結部がバンプパッド333及び334を通り、上面及び底面の両方を介して形成されるモジュールを設けるため積層され、これにより、複数の半導体装置を含む小型モジュールが与えられる。」

(3)同じく本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-354669号公報(以下「引用例3」という。)には、ボールグリッドアレイ型半導体パッケージ及びその製造方法に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

キ 「【0023】図3に、本発明の第1の実施の形態を利用して製造した積層BGA 半導体パッケージを示す。図3において、最下層(第1層)のBGA 半導体パッケージ100の上面に複数の導電ボール108aが接着形成され、該各導電ボール108aは第2層のBGA 半導体パッケージ110の下部の接続部24bにそれぞれ連結され、前記第2層のBGA 半導体パッケージ110の上面に形成された複数の導電ボール118aは第3層のBGA 半導体パッケージ120の下部の接続部24bにそれぞれ連結され、前記第3層のBGA 半導体パッケージ120の上面に形成された複数の導電ボール128aは第4層のBGA 半導体パッケージ130の下部の接続部24bにそれぞれ連結されている。
【0024】ここで、図3には、4つのBGA 半導体パッケージを積層した場合の積層半導体パッケージが表示されているが、積層数はシステム設計者の意図に応じて自由に調節することができる。」

(4)同じく本願の優先日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-168150号公報(以下「引用例4」という。)には、半導体集積回路装置に関し、図面とともに次の事項が記載されている。

ク 「【0036】実施の形態4.図9、図10、図11、図12、図13はそれぞれ本願の実施の形態4であるモジュール構造の半導体集積回路装置を示し、具体的には両面接続構造の半導体集積回路装置17および片面接続構造の半導体集積回路装置12およびプリント配線板13を組み合わせて構成したモジュール構造の半導体集積回路装置を示す。
【0037】図9はプリント配線板13上に本願の両面接続構造の半導体集積回路装置17を二個積み重ね、その上に片面接続構造の半導体集積回路装置12を重ねて構成したモジュール構造の半導体集積回路装置を示す。
【0038】図10はプリント配線板13上に両面接続構造の半導体集積回路装置17を三個積み重ね、その上にさらにプリント配線板13を重ねて構成したモジュール構造の半導体集積回路装置である。この例において、プリント配線板13の一部をフレキシブル配線板で構成させてもよく、その構成を図13に示す。図13においては、両面接続構造の半導体集積回路装置17を一個で構成したものを示している。ここで13aはフレキシブルプリント配線板である。
【0039】図11は図9と同様にプリント配線板13上に両面接続構造の半導体集積回路装置17を二個積み重ね、その上に片面接続構造の半導体集積回路装置12を重ねて構成したモジュール構造の半導体集積回路装置を示す。ただし図11においては両面接続構造の半導体集積回路装置17に設けられる外部接続パッド6および外部接続端子11の配置が上下面において異なっている。このように隣接する他の両面接続構造の半導体集積回路装置17の外部接続パッド6および外部接続端子11との配置と対応がとれていれば、外部接続端子11の配置が上下面において異なった構成でもよい。
【0040】図12は両面接続構造の半導体集積回路装置17の上に他の両面接続構造の半導体集積回路装置17と片面接続構造の半導体集積回路装置12を重ねて構成したモジュール構造の半導体集積回路装置であり、このように一つの半導体集積回路装置17の上に異なった形状の他の半導体集積回路装置17および12を複数個接続してモジュール構造の半導体集積回路装置を構成することもできる。」

3 対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「集積回路素子」は本願補正発明の「電気回路」に相当し、以下同様に、「その平坦面上に形成された集積回路素子を有するウェファ20」は「基板の平面に置かれ、該基板上に電気回路を有する集積回路基板」に、「端面14」は「第1の露出した外側の縁表面」に、「平坦面16」は「第1の平らな表面」に、「集積回路外装体10」は「パッケージ」に、「電気接続端子12」は「第1電気接点」に、「集積回路」は「パケージ集積回路」にそれぞれ相当する。
引用発明の「集積回路外装体10」が「ウェファ20を外面的に保護する」ことは、本願補正発明において「パッケージ」が「集積回路基板を封入し」ていることに相当する。
そして、引用発明の「複数の電気接続端子14」が「ウェファの平坦面上でパッド部34を介して集積回路に接続され」ることは、本願補正発明において「複数の第1電気接点」が「基板の平面で前記電気回路に接続する」ことに相当する。
さらに、引用発明の「集積回路外装体10を構成する絶縁保護板26」が「光学的または赤外線処理に有効な特定の波長域の照射を透過できる透明部分を有している」ことは、本願補正発明の「パッケージ」が「少なくとも可視光線または赤外線光線の一方に対し少なくとも部分的に透明な少なくとも一部分を有する」ことに相当する。
また、引用発明の「複数の電気接続端子14」は、集積回路外装体10における、平坦面16と対向する平らな表面上へは延びていない(引用例1の図1参照)から、引用発明は、本願補正発明の「複数の第1電気接点は」「第2の平らな表面上へは延びず」との要件を備える。

したがって、本願補正発明と引用発明は、
「基板の平面に置かれ、該基板上に電気回路を有する集積回路基板と、前記集積回路基板を封入し前記基板の平面に全体として平行な第1の平らな表面を規定するパッケージであって、第1の露出した外側の縁表面は前記第1の平らな表面から離れて延びるパッケージと、前記基板の平面で前記電気回路に接続する複数の第1電気接点であって、前記複数の第1電気接点は前記第1の露出した外側の縁表面に沿って前記第1の平らな表面上へ延びるが前記第2の平らな表面上へは延びない複数の第1電気接点と、を備え、前記パッケージが少なくとも可視光線または赤外線光線の一方に対し少なくとも部分的に透明な少なくとも一部分を有する、パケージ集積回路」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明は、パッケージの第2の露出した外側の平らな表面が第2の平らな表面から離れて延びており、また、第2の平らな表面上へ延びて基板の平面で電気回路に接続する第2電気接点を有するのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。

上記相違点について検討する。
例えば引用例2?4に記載されているように(上記カ?ク参照)、電気回路が形成された集積回路基板を封入したパッケージ構造において、集積回路基板と平行な、パッケージの上面と下面から電極を取り出したパッケージ構造とすることによって集積度を向上させることは、この技術分野における常套手段と認められる。そうすると、下面にも電気接点を形成する上記手段を引用発明に適用し、端面14に沿い平坦面16上へ延びるように形成される第1電気接点と同様の電気接点を集積回路外装体10の下側の平坦面上にも施すことによって、本願補正発明における上記相違点に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得たことといえる。
そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明及び引用例2?4の記載事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用例2?4の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第4 本願発明
平成21年8月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年5月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「基板の平面に置かれ、該基板上に電気回路を有する集積回路基板と、
前記集積回路基板を封入し前記基板の平面に全体として平行な第1と第2の平らな表面を規定するパッケージと、
各々が前記基板の平面で前記電気回路に接続する複数の第1電気接点および第2電気接点であって、前記複数の第1電気接点は前記第1の平らな表面上に延びるが前記第2の平らな表面上にはなく、前記複数の第2電気接点は前記第2の平らな表面上に延びる、複数の第1電気接点および第2電気接点と、
を備え、
前記パッケージが少なくとも可視光線または赤外線光線の一方に対し少なくとも部分的に透明な少なくとも一部分を有する、
ことを特徴とするパケージ集積回路。」

第5 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は、前記第2の2に記載したとおりである。

第6 対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記限定事項を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の3に記載したとおり、引用発明及び引用例2?4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例2?4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-07-22 
結審通知日 2011-07-26 
審決日 2011-08-08 
出願番号 特願2002-552378(P2002-552378)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日比野 隆治菅野 智子  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 栗山 卓也
川向 和実
発明の名称 パケージ集積回路およびその製造方法  
代理人 南山 知広  
代理人 河合 章  
代理人 鶴田 準一  
代理人 森 啓  
代理人 青木 篤  

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