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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1249092
審判番号 不服2009-22002  
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-11 
確定日 2011-12-26 
事件の表示 特願2000-155626「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月15日出願公開、特開2002- 11143〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,特許法41条に基づく優先権主張を伴う出願であって,その手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成12年 5月26日 出願(優先日:平成12年4月26日)
平成14年 2月15日 手続補正
平成21年 4月 1日 拒絶理由通知
平成21年 6月 8日 手続補正
平成21年 8月10日 拒絶査定
平成21年11月11日 拒絶査定不服審判請求,手続補正
平成22年 4月26日 審尋
平成22年11月 9日 拒絶理由通知
平成23年 1月17日 手続補正

2.本願発明
平成23年1月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に基づけば,本願の請求項1に記載された発明は以下のとおりのものと認められる。
「メインCPUと,サブ制御基板に各種信号を送信するサブ制御部通信ポートと,乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,1遊技用監視用タイマと,を備えたメイン制御基板と,
サブCPUと,前記メイン制御基板からの信号を受信するメイン制御部通信ポートと,前記メイン制御基板からの指示にしたがい操作音又は所定の遊技状態に応じた効果音を出力する出音手段と,この出音手段の音量を制御する出音制御手段と,所定のタイミングからの経過時間を計時する非遊技状態監視用タイマと,を備えたサブ制御基板とを具備する遊技機において,
前記出音手段は,遊技状態が一般遊技状態と比べて高い確率で入賞態様が決定される特定の入賞態様にあるときに前記メイン制御基板からの指示にしたがい継続的な効果音を出音し,
前記サブCPUは,前記メイン制御基板から前記所定のタイミングに対応する信号を受信すると,前記非遊技状態監視用タイマをセットし,前記所定のタイミングからの経過時間を計時し,
前記サブ制御基板に備えられた前記出音制御手段は,遊技状態が前記特定の入賞態様にある場合において,前記非遊技状態監視用タイマが非遊技状態を所定時間計時したときに,前記継続的な効果音の音量を下げるか又は消音することを特徴とする遊技機。」(以下,「本願発明」という。)

平成23年1月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には「・・を備えたサブ制御基板とを具備するスロットマシンにおいて,・・・ことを特徴とする遊技機。」と記載されており,請求項1に係る発明が「スロットマシン」に関するものか「遊技機」に関するものか一見不明確である。
しかし,請求項1の末尾は「遊技機」となっており,また発明の名称が「遊技機」となっていることから,請求項1に係る発明が「遊技機」に関するものであることは明らかである。また,このことは,平成21年6月8日付け意見書(5頁下から2?1行)における「本願請求項1の発明が本質とする構成,すなわち,遊技機がメイン制御基板と非遊技状態監視用タイマを備えたサブ制御基板からなり,」との主張,審判請求書(9頁18行)における「本願請求項1の発明に係る遊技機は」との主張等と整合している。
したがって,上記記載における「スロットマシン」が「遊技機」の誤記であることは明白であるので,上記のように本願発明を認定した。

3.引用発明
当審の拒絶の理由に引用した特開平11-178990号公報(以下,「引用文献1」という。)には,以下の記載がある。
(a)「上下方向中央部のやや上方には,・・・3つのシンボル表示窓12が設けられ,スロットマシン内部における各対応位置に,3つのリール14が水平方向回転軸線を中心として互いに独立的に回転自在に支持されている。各リール14の外周面には,多種のシンボル・・・が周方向における一定距離毎に順に表示され,そのうち周方向に連続する任意の3つのシンボルが,各リール14の停止時に,シンボル表示窓12における上中下の各位置にリール14毎に表示される。・・・各リール14は,それぞれ別々のステッピングモータ・・・によって,回転駆動され,また停止保持される。」(段落【0059】)
(b)「シンボル表示窓12には,3つのリール14それぞれが停止状態で表示する3つのシンボルに関し,入賞判定において,払い込まれたメダルの枚数(1乃至3枚)に応じて有効とされる整列位置を示すライン16(線)が5本描かれている。・・・遊技者は,有効ラインランプ18によって示された有効ライン16上に,各リール14におけるどのようなシンボルが位置しているかを見てゲームの結果・・・を知ることができる。ゲームの結果は,ヒットランプ10の点灯若しくは点滅等やスピーカ20からの音声出力などによっても知らされる。」(段落【0060】)
(c)「メダルを払い込むには,上下中央部の右方部に設けられたメダル投入口22からメダルを投入するか,スロットマシンに保留されているメダルがある場合は,BETボタン24を押して必要枚数を払い込む。BETボタン24はメダル投入口22の左方に設けられている。」(段落【0061】)
(d)「有効ラインランプ18の下方に,リール14の回転開始が可能であることを示すために点灯するスタートランプ26(START)が設けられ,BETボタン24の下方に,3つのリール14の回転を一斉に開始させるためのスタートレバー28が設けられている。」(段落【0062】)
(e)「各リール14の下方には,それぞれのリール14が回転中であり,その回転をストップボタン30の押圧により停止させることが可能であることを示すために点灯する3つのストップランプ32(STOP)が設けられている。・・・」(段落【0063】)
(f)「下端部にはメダル受皿部42が設けられ,その中央部の上側にメダル払出口44が設けられ,その右側にスピーカ20が設けられている。・・・」(段落【0065】)
(g)「制御部50は,ゲームの実行や周辺機器等の制御及び各種データの読み書きなどの処理を行うCPU(中央処理装置),RAM,ゲームの実行や周辺機器等の制御などのためのプログラム及び各種データが書き込まれたROM,並びに周辺機器等との接続のための入出力インターフェイスなど・・・からなり,必要に応じ周辺機器等と連携して,上記表示内容検知手段,入賞適合判定手段,固定表示制御手段,引き込み手段,特定賞設定手段,所定賞選択手段,表示手段,表示固定手段等の機能を実現する。」(段落【0066】)
(h)「スタートレバー28は,リール14の回転開始が可能な状態において3つのリール14の回転を一斉に開始させる場合に,押下することにより回転開始信号を制御部50に出力する。」(段落【0071】)
(i)「ストップボタン30(停止ボタン)は,回転中のリール14を停止させる場合に各リール14毎に押圧するものであり,各ストップボタン30の押圧により,対応するリール14を停止させるための信号を制御部50に出力する。」(段落【0073】)
(j)「音声出力部52は,制御部50から出力される音声出力信号に応じ,スピーカ20から音声を出力する。」(段落【0077】)
(k)「メダル払出部44aは,ゲームの結果に応じ制御部50において計算されたメダル払出数に応じて制御部50から出力される払出信号に従って,その枚数に応じたメダルをメダル払出口44から払い出す。」(段落【0080】)
(l)「スタートレバー28を押下すると,ステップS3はYとなり,制御部50は,スタートランプ26を消灯し(S4),3つのリール14を一斉に回転させる(S5)。」(段落【0084】)
(m)「次のステップS6では,BB(ビッグボーナス),RB(レギュラーボーナス),及びSB(シングルボーナス),並びにその他の遊技者にとって比較的利益の小さい賞(小物)・・・について,制御部50において,内部当りか否かの抽選を行う。抽選は,乱数サンプリングを実行し,得られたサンプリング値をROMに書き込まれているデータに照らして,当選か否か,及びその賞の種類等を判定することにより行う。・・・」(段落【0085】)
(n)「抽選により何れかの賞の内部当りとなった場合,その賞に対応するフラグがセットされる。BB(ビッグボーナス)に当選した場合,すなわち所謂BBの内部当りの場合(S7-Y),制御部50においてBBフラグがセットされる(S8)。・・・」(段落【0086】)
(o)「BBに当選しなかった場合(S7-N)において,RB(レギュラーボーナス),SB(シングルボーナス),再遊技(リプレイ),・・・の何れかに当選した場合は(S11-Y),制御部50においてそれらの賞にそれぞれ対応するフラグが制御部50にセットされる(S12)。何れにも当選しなかった場合は(S11-N),外れフラグがセットされる(S13)。」(段落【0087】)
(p)「次いで,制御部50が全てのストップランプ32を点灯させる。その後,遊技者が適宜のタイミングで各ストップボタン30を押圧することにより・・・,制御部50は,対応するリール14のステッピングモータを停止させる。」(段落【0088】)
(q)「何れかの賞について内部当りを示すフラグがセットされている場合は,制御部50は,ストップボタン30の押圧等による停止信号を受けた時点から内部当り状態となっている賞への入賞に必要なシンボルが入賞に必要な位置に達するまでの差が規定停止時間内であるときは,そのシンボルが当該入賞に必要位置に表示されるようにリール14を停止させる。すなわち,そのシンボルをシンボル表示窓12の必要位置に引込む。・・・入賞した場合,各賞に応じた処理が行われる。」(段落【0090】)
(r)「BB(ビッグボーナス)フラグがセットされていて有効ラインランプ18によって示される有効ライン16上に各リール14におけるシンボルが「赤7-赤7-赤7」又は「青7-青7-青7」と揃うと,制御部50は,メダル払出部44aに指示してメダル払出口44から15枚のメダルをメダル受皿部42に払出させると共に,払出枚数表示部40aに指示して払出されたメダル枚数を払出枚数表示器40に表示させる。更に,制御部50は,ヒットランプ部10a及び音声出力部52に指示してヒットランプ10を点滅させると共にスピーカ20からBBの効果音を発生させ,BBゲームをスタートさせる。BB中は,メダル払込み,スタートレバー28押下,リール14回転,各ストップボタン30押圧,及びリール14停止等を繰り返す。」(段落【0091】)
(s)「制御部50は,所定の遊技回数を消化すると,ヒットランプ10を消灯させ,スピーカ20のBB効果音を停止させ,BBを終了する。」(段落【0092】)

これら(a)?(s)の記載及び図面の記載並びに当業者の技術常識により,そして,BB効果音が現在の遊技状態としてのBBゲームに応じたものであることが明らかであることを考慮すると,引用文献1には,以下の発明が記載されているものと認められる。
「CPUを有し,乱数サンプリングを実行し得られたサンプリング値をROMに書き込まれているデータに照らして当選か否か及びその賞の種類等を判定することにより内部当りか否かの抽選を行うとともに,BB(ビッグボーナス。以下同様。)ゲームであるとき,音声出力部52に指示してスピーカ20からBB効果音を発生させて現在の遊技状態がBBゲームであることを遊技者に報知する制御部50を備えて構成されるスロットマシンにおいて,
制御部50は,BBフラグがセットされ有効ライン16上に各リール14におけるシンボルが「赤7-赤7-赤7」又は「青7-青7-青7」と揃うと,音声出力部52に指示してスピーカ20からBB効果音を発生させてBBゲームをスタートさせ,BBゲーム中は,メダル払込み,スタートレバー28押下,リール14回転,各ストップボタン30押圧,リール14停止等を繰り返し,所定の遊技回数を消化すると,スピーカ20からのBB効果音の発生を停止させてBBゲームを終了させるものであるスロットマシン。」(以下,「引用発明」という。)

4.対比
本願発明は,「遊技状態が一般遊技状態と比べて高い確率で入賞態様が決定される特定の入賞態様にあるときに」(以下,「記載A」という。)及び「遊技状態が前記特定の入賞態様にある場合において,」(以下,「記載B」という。)との構成を具備するが,この構成中の「特定の入賞態様」の技術的意義について先ず検討する。スロットマシンを含む遊技機において「入賞態様」とは「入賞する際の様子」等に解するのが普通であって,具体的例としては,予め定められた特定の図柄が揃って停止すると入賞するものであって,その特定の図柄が停止表示される様子を挙げることができ,上記記載Aのうち「高い確率で入賞態様が決定される」の「入賞態様」は「入賞する際の様子」等の意味で用いられている。しかしながら,「特定の入賞態様」の「入賞態様」が「入賞する際の様子」等の意味と解すると,上記記載Aにおける「入賞態様が決定される特定の入賞態様」及び上記記載Bにおける「遊技状態が前記特定の入賞態様にある」は意味が不明である。
一方,上記記載A,Bの補正の根拠(平成21年6月8日付け意見書2頁下から8?1行)とされた段落【0052】には「遊技音を継続的に出音して現在の遊技状態が入賞決定手段によって決定されたボーナス入賞態様に応じた遊技状態であることを遊技者に報知する出音手段を構成している。また,これと共に,前記の状態検出手段によって遊技がされていない状態が検出されたときに,この出音手段による継続的な出音の音量を下げるか,または消音させる出音制御手段をも構成している。」と記載され,段落【0092】には「現在の遊技状態がRB遊技状態である場合には,スピーカ96から遊技開始音およびRB遊技演出の効果音群を出音させる・・・また,現在の遊技状態がBB遊技状態である場合には,スピーカ96から遊技開始音およびBB遊技演出の効果音群を出音させる」と記載されているから,上記記載A,Bにおける「特定の入賞態様」は「特定の入賞態様に応じた遊技状態」という技術的意義を有することは明らかである。
そして,以下においては,本願発明の「特定の入賞態様」は「特定の入賞態様に応じた遊技状態」という技術的意義を有するということを前提として検討を行う。

本願発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「BBゲームであるとき」,「スピーカ20」は,本願発明の「特定の入賞態様」,「出音手段」に,それぞれ相当する。
引用発明の「制御部50」が制御基板上に形成されることは当業者にとって自明なことであり,メインとサブに分かれているかどうかは別として,引用発明と本願発明はCPUを有する制御基板を具備する点で共通している。
引用発明の「制御部50」は,「乱数サンプリングを実行し得られたサンプリング値をROMに書き込まれているデータに照らして当選か否か及びその賞の種類等を判定することにより内部当りか否かの抽選を行う」ものであるから,本願発明の「乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段」に相当する。また,引用発明の「制御部50」は,「音声出力部52に指示してスピーカ20からBB効果音を発生させ」るものであって出音を制御するものであるから,本願発明の「出音手段を制御する出音制御手段」に相当する。そして,その出音はBBゲーム中にされるから,引用発明は「遊技状態が前記特定の入賞態様にある場合において,効果音を制御する」点で本願発明と共通している。
引用発明において,「BBゲームであるとき,音声出力部52に指示してスピーカ20からBB効果音を発生させて現在の遊技状態がBBゲームであることを遊技者に報知する」ものであるから,「BB効果音」は「所定の遊技状態に応じた効果音」ということができ,また,BBゲーム中は「一般遊技状態と比べて高い確率で入賞態様が決定される」ことは当業者にとって常識であるから,引用発明は,本願発明の「前記出音手段は,遊技状態が一般遊技状態と比べて高い確率で入賞態様が決定される特定の入賞態様にあるときに指示にしたがい効果音を出音し,」に相当する構成を実質的に具備する。
そうすると,本願発明と引用発明は,
「CPUを有し,乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,所定の遊技状態に応じた効果音を出力する出音手段と,この出音手段を制御する出音制御手段とからなる制御基板を具備する遊技機において,
前記出音手段は,遊技状態が一般遊技状態と比べて高い確率で入賞態様が決定される特定の入賞態様にあるときに指示にしたがい効果音を出音し,
前記出音制御手段は遊技状態が前記特定の入賞態様にある場合において,効果音を制御する遊技機。」の点で一致し,以下の点で相違する。

<相違点1>
遊技制御基板が,本願発明では,「メインCPUと,サブ制御基板に各種信号を送信するサブ制御部通信ポートと,乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,1遊技用監視用タイマと,を備えたメイン制御基板と,サブCPUと,前記メイン制御基板からの信号を受信するメイン制御部通信ポートと,前記メイン制御基板からの指示にしたがい操作音又は所定の遊技状態に応じた効果音を出力する出音手段と,この出音手段の音量を制御する出音制御手段と,を備えたサブ制御基板」とから構成されるのに対し,引用発明では「CPUを有し,乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と,所定の遊技状態に応じた効果音を出力する出音手段と,この出音手段の出音の音量を制御する出音制御手段とからなる遊技制御基板」である点。
<相違点2>
特定の入賞態様にあるとき出音される効果音は,本願発明ではメイン制御基板からの指示にしたがったもので,「継続的な」ものであるのに対し,引用発明ではメイン制御基板からの指示にしたがったものではなく,「継続的な」ものか明確でない点。
<相違点3>
本願発明では,所定のタイミングからの経過時間を計時する非遊技状態監視用タイマをサブ制御基板に設けるとともに,サブCPUは,前記メイン制御基板から前記所定のタイミングに対応する信号を受信すると,前記非遊技状態監視用タイマをセットし,前記所定のタイミングからの経過時間を計時するのに対し,引用発明は非遊技状態監視用タイマを有していない点。
<相違点4>
遊技状態が特定の入賞態様にある場合において,出音制御手段は,本願発明では,「前記非遊技状態監視用タイマが非遊技状態を所定時間計時したときに,前記継続的な効果音の音量を下げるか又は消音する」のに対し,引用発明ではそのような構成を有していない点。

5.判断
(1)相違点1について
従来,遊技機において制御装置を,メインCPUと乱数抽選によって入賞態様を決定する入賞態様決定手段と備えたメイン制御基板と,サブCPUとメイン制御基板からの指示にしたがい操作音又は所定の遊技状態に応じた効果音を出力する出音手段とこの出音手段を制御する出音制御手段とを備えたサブ制御基板から構成することは,特開平9-299548号公報(以下,「引用文献2」という。),特開2000-116845号公報(以下,「引用文献3」という。)に例示されるように従来周知技術である。また,制御基板に当該基板外とデータを送受信するポートを必要に応じて設けることは常識であって,例えば引用文献2(図3,4参照)のI/Oポートは本願発明の通信ポートに相当する。更に,出音するに際して音量を制御することは技術常識であるから,出音手段を制御する出音制御手段が音量を制御することは当然のことである。
一方,ゲーム間を4.1秒以上にすることは遊技規則によって定められていることであって,1遊技用監視タイマを設けることは慣用技術であり,特開平11-342238号公報(段落【0017】,【0021】参照。以下,「引用文献4」という。),特開平11-216224号公報(段落【0051】,【0052】参照。以下,「引用文献5」という。)にも記載されている。
そうすると,引用発明において,上記周知技術及び上記慣用技術を適用し,相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって想到容易である。なお,上記適用において1遊技用監視タイマを設ける場所は,メイン制御基板とサブ制御基板の何れかとなるが,1遊技用監視タイマは4.1秒経過しないと次のゲームを開始させないという,ゲームの進行に関係するものであるから,ゲーム全体の制御を司っているメイン制御基板に設けることは当業者なら当然行うことに過ぎない。
したがって,相違点1に係る本願発明の構成は,引用発明,及び,遊技機の技術分野における周知慣用の技術に基づいて,当業者が容易に想到することができたものといわざるを得ない。

(2)相違点2について
引用発明は,「制御部50は,BBフラグがセットされ有効ライン16上に各リール14におけるシンボルが「赤7-赤7-赤7」又は「青7-青7-青7」と揃うと,音声出力部52に指示してスピーカ20からBB効果音を発生させてBBゲームをスタートさせ,BBゲーム中は,メダル払込み,スタートレバー28押下,リール14回転,各ストップボタン30押圧,リール14停止等を繰り返し,所定の遊技回数を消化すると,スピーカ20からのBB効果音の発生を停止させてBBゲームを終了させる」ものである。
このような技術事項によれば,引用発明は「BB効果音を発生させてBBゲームをスタートさせ」るとともに,「スピーカ20からのBB効果音の発生を停止させてBBゲームを終了させる」ものであるから,BB効果音(特別の遊技音)の出音は,BBゲームがスタートしてから,BBゲーム中における所定の遊技回数を消化することを経て,BBゲームが終了するまでの一連の過程の中において継続的になされているものと思料される
したがって,引用発明の「BB効果音」は,本願発明における「特別の遊技音」と同様に「継続的に出音」するものであるということができ,相違点2として摘記した本願発明の構成の点において,引用発明と本願発明との間に実質的な差異はないものというべきである。

仮に,上記のように,直ちに,認定できないとしても,特開平7-112051号公報(段落【0021】?【0025】。以下,「引用文献6」という。)には,ボーナスゲーム中ではないものの,高確率判定信号が効果音発生手段58に入力されると,スピーカ31から継続して効果音が出力され続けるようにしたスロットマシンが記載され,引用文献2(段落【0021】)には,S・B高確率ゲーム状態の際にこの状態を報知するためのデモンストレーションとして表示ランプの点滅動作を繰り返し,S・B高確率ゲーム状態終了の際に表示ランプを消灯するようにしたスロットマシンが記載され,特開平5-7642号公報(段落【0029】。以下,「引用文献7」という。)には,ボーナスゲームの発生時にはボーナスゲームの発生音が発せられ,ボーナスゲーム中にはボーナスゲーム中であることを知らせるボーナスゲーム音が発せられるようにしたスロットマシン(ボーナスゲーム中であることを知らせるボーナスゲーム音はボーナスゲーム中に継続的に発せられるものと解するのが至当である。)が記載され,特開平9-253274号公報(段落【0027】,【0031】。以下,「引用文献8」という。)には,レギュラーボーナス(ビッグボーナス中の3回のレギュラーボーナスを含む。)が開始すると,音声報知手段により,レギュラーボーナス中である旨を表す特別遊技中音を発生するようにしたスロットマシン(特別遊技中音は特別遊技中に継続的に発生するものと解するのが至当である。)が記載され,特開平7-328179号公報(段落【0022】,【0024】。以下,「引用文献9」という。)には,ビッグボーナスやボーナスゲームが開始してから終了するまで遊技の状況を表示するようにしたスロットマシンが記載され,特開平9-192296号公報(段落【0002】?【0006】,【0018】。以下,「引用文献10」という。)には,複数種類の遊技状態を発生可能なスロットマシーンなどが含まれる遊技機において,パチンコ遊技機の例ではあるが,大当りの遊技中には大当りの遊技状態を盛り上げる大当りの効果音を発生させるようにした遊技機(大当りの効果音は大当りの遊技中に継続的に発生するものと解するのが至当である。)が記載されている。
しかも,本件特許明細書中には,BBゲームやRBゲーム時に遊技音を継続的に出音するスロットマシンが本件特許発明における課題解決のための対象となる従来例として開示されているのであるから,これら引用文献2,6?10及び本件特許明細書の記載によれば,スロットマシンを含む遊技機の技術分野において,スロットマシンにおけるBBゲーム,RBゲーム状態やS・B高確率ゲーム状態のとき,或いは,パチンコ遊技機における大当りの遊技状態のとき等,遊技者に対して高配当・高確率等の期待を抱かせる遊技状態になったときに,そのような遊技状態であることを,それに応じた継続的な遊技音の出音や表示等,何らかの形で継続的に遊技者に報知することが周知の技術にすぎないものということができる。
また,遊技機において制御装置をメイン制御基板と出音手段及び出音制御手段とを備えたサブ制御基板とから構成することが従来周知技術であることは相違点1の検討において既述のとおりであるが,そのようなサブ基板の出音をメイン制御基板からの指示にしたがい行うことも従来周知技術である。
したがって,引用発明における「BB効果音」について,遊技者に対して高確率・高配当等の期待を抱かせる遊技状態になったときに,そのような遊技状態であることを,それに応じた継続的な遊技音の出音や表示等,何らかの形で継続的に遊技者に報知するという引用文献2,6?10及び本件特許明細書に記載されたような遊技機の技術分野における周知の技術,及びサブ基板の出音をメイン制御基板からの指示にしたがい行うという周知の技術を適用して,相違点2として摘記した本願発明の構成を想起する点に,格別の困難性は認められないというべきであり,
そして,引用発明に,上記のような遊技機の技術分野における周知の技術を適用することについては,何らの阻害要因も認めることができない。
したがって,相違点2として摘記した本願発明の構成は,引用発明,及び,遊技機の技術分野における周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到することができたものといわざるを得ない。

(3)相違点3,4について
相違点3,4は関連しているのであわせて検討する。
特開平7-51442号公報(以下,「引用文献11」という。)には,遊戯者による遊戯操作の有無を操作ハンドル10への触手の有無としてこれをタッチスイッチ17により検知し,操作ハンドル10への触手がなくタッチスイッチ17がオンすると,タイマーを介して,その一定時間経過後に,遊戯場内の騒音を増大しないようスピーカー26から発生する音声の音量を小さくしたりスピーカー26を動作しないようにすることが好ましいデモンストレーションを実行させるようにした制御手段を備えたパチンコ機が記載されている。ここで,「一定時間経過後に」とは操作ハンドル10への触手がない状態が一定時間続いていることを意味し,操作ハンドル10への触手がないことは遊戯者が遊戯していない状態であるから,非遊戯状態が所定時間計時されたということができる。
これによれば,当該パチンコ機は,少なくとも,所定のタイミング(操作ハンドル10への触手がなくタッチスイッチ17がオン)からの経過時間を計時する非遊戯状態監視用タイマ(タイマー)を備え,非遊戯状態監視用タイマが非遊戯状態を所定時間計時したとき(一定時間経過後)に音量を下げるか消音する(スピーカーを動作しないようにする)ものである。
ところで,引用発明がスロットマシンに関する発明であり,引用文献11に記載された発明がパチンコ機に関する発明であるとしても,スロットマシンの発明である引用発明における遊技音について,遊技がなされていない状態において出音されている場合に,パチンコ機の発明である引用文献11に記載された発明の構成を適用して,遊技中ではないスロットマシンについて,遊技場内の騒音を増大しないようにその音量を小さくすることは,本願発明の出願当時において,当業者が容易に想到しえたことといわざるをえない。
そして,相違点4として摘記した本願発明の構成は,「遊技状態が前記特定の入賞態様にある場合において」のものであるが,引用発明は,特別の遊技が行われる際にそれに応じた遊技音の出音を制御する出音制御手段を備えたスロットマシンである点で本願発明と一致し,入賞の態様に対応して音声を発生する遊技機である点において,引用文献11に開示された技術と共通するものであるから,引用発明において特別の遊技が行われる際についても,遊技操作のない状態,すなわち,遊技がされていない状態が検出されたときに,遊技場内の騒音を増大しないようにするため,特別の遊技状態に応じた遊技音の音量を下げることは,引用文献11に開示された技術に基づいて,当業者が容易になし得る程度のことである。

仮に,上記のように,直ちに,認定できないとしても,特開平8-796号公報(以下,「引用文献12」という。)には,遊技開始条件成立前であると稼働状態判断手段143が判断した場合に,即ち,遊技に供するためのメダルが投入されていなかったり,クレジットメダルが残っていないと判断した場合には,所定時間経過後に画像表示装置40にインストラクション画像が表示され,メダルを投入して遊技開始条件が成立したことを稼働状態判断手段143が判断した場合には画像表示装置40に表示されていたインストラクション画像が遊技画像に切り替わるスロットマシン10において,稼働状態判断手段143において上記遊技中でないと判断される状態は,遊技開始条件成立前の状態か,あるいは,遊技開始条件成立後に,遊技者がスタートスイッチ80を操作することにより遊技が開始し,遊技者がストップスイッチ90を操作することにより図柄列表示部41における図柄変換が停止し,図柄の停止態様を判断して,賞態様が成立している場合には賞メダルを払い出した後,または賞態様が成立していない場合には入賞の判断が終了した後の状態であるスロットマシン10が記載されており,これによれば,当該スロットマシンは,遊技媒体(メダル)が投入されていない遊技開始条件成立前であることを状態検出手段(稼働状態判断手段)が判断するタイミングを,前回遊技における所定のタイミング(遊技開始条件成立後に,スタートスイッチ操作による遊技の開始,ストップスイッチ操作による図柄列表示部における図柄変換の停止,図柄の停止態様を判断して賞態様が成立している場合の賞メダルの払い出し後)としているものと認められる。
特開平10-305130号公報(以下,「引用文献13」という。)には,ゲームの開始を監視し,オフプレー状態が一定時間以上連続するか否かを判定し,オフプレー状態が一定時間以上連続してゲームが開始されないことを検出した時にオフプレー検出信号を出力するオフプレー検出手段25が設けられ,表示制御手段30がこのオフプレー検出信号を入力すると,予め定められ任意に設定されたモードに従って表示手段10を作動させて,周囲の人をゲームに誘う表示をするようにした回胴式遊技機が記載されており,これによれば,当該回胴式遊技機は,遊技がされていない状態(オフプレー状態)が所定時間(一定時間)以上継続してゲームが開始されないことを検出する状態検出手段(オフプレー検出手段)を備えているものと認められる。
引用文献3には,主制御基板30から与えられるメッセージ信号の種類に応じて,それがBB信号であればBB入賞の効果音を,RB信号であればその効果音を,SB信号であればその効果音を,デモンストレーション信号であればデモンストレーションの効果音を,スピーカ24からそれぞれ発生させるように制御する音声制御基板34を設け,遊技者が遊技をしていないいわゆる空き台である状態が一定時間以上継続した場合に,主制御基板30からデモンストレーション信号が出力されるようになっているスロットマシン10が記載されており,これによれば,当該スロットマシンは,遊技がされていない状態(遊技者が遊技をしていない空き台である状態)が所定時間(一定時間)以上継続していることを検出する手段を備えているものと認められる。
特開平5-305173号公報(以下,「引用文献14」という。)には,スロットマシンなどが含まれる遊技機において,パチンコ遊技機の例ではあるが,所定時間経過しても始動入賞がない場合には,その遊技機で遊技している遊技者が存在していないと考えられるために,予め定められたアニメーションからなるデモ表示が開始されるようにした遊技機が記載されており,これによれば,当該遊技機は,遊技がされていない(始動入賞がない)状態が所定時間経過したことを検出する手段を備えているものと認められる。
特開平8-187316号公報(以下,「引用文献15」という。)には,直前まで遊技が行われていた場合には,制御部6は発射ダイヤル30が操作されていたか否かを示すフラグである変数Iを0にし,内蔵するタイマをリセットした後スタートするが,以前から既に遊技が行われていなかった場合には,スタートされたタイマに基づいて遊技が行われなくなってからの経過時間を確認し,その結果,予め定められた時間が経過していた場合には,制御部6は,変動表示部21を用いたデモンストレーション処理を起動するようにしたパチンコ装置が記載されており,これによれば,当該パチンコ装置は,前回遊技における所定のタイミング(直前以前)から所定時間(予め定められた時間)が経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段(タイマ)を備えているものと認められる。
以上述べたような種々の技術事項からみて,引用発明における特別の遊技音を制御することについて,遊技されていない状態が状態検出手段によって検出されたとき,音量を下げた出音態様を実行するという引用文献11に記載された発明の技術を適用し,その際に,遊技媒体が投入されていない遊技開始条件成立前であることを状態検出手段が判断するタイミングを,前回遊技における所定のタイミングとするという引用文献12に記載されたスロットマシンの技術,遊技がされていない状態が所定時間以上継続してゲームが開始されないことを検出する状態検出手段を備えるという引用文献13に記載された回胴式遊技機の技術,遊技がされていない状態が所定時間以上継続していることを検出する手段を備えるという引用文献3に記載されたスロットマシンの技術,遊技がされていない状態が所定時間経過したことを検出する手段を備えるという引用文献14に記載された遊技機の技術,及び,前回遊技における所定のタイミングから所定時間が経過したときに遊技がされていない状態を検出する状態検出手段を備えるという引用文献15に記載されたパチンコ装置の技術を適用して,相違点4として摘記した本願発明の構成を想起する点に,格別の困難性は認められないというべきであり,
そして,引用発明に,引用文献11に記載された発明の技術を適用すること,また,その際に,引用文献3,12?15に記載されたスロットマシン等の遊技機の技術を適用することについては,何らの阻害要因も認めることができないものであるから,相違点4として摘記した本願発明の構成は,引用発明,引用文献11に記載された発明の技術,及び,引用文献3,12?15に記載されたスロットマシン等の遊技機の技術に基づいて,当業者が容易に想到することができたものといわざるを得ない。

一方,引用発明において周知技術を適用して,制御基板をメイン制御基板とサブ制御基板とした際には,非遊技状態監視用タイマは,メイン制御基板,出音手段及び出音制御手段を備えたサブ制御基板のいずれかに設けることとなる。そして,どちらに設けるかは単なる設計事項に過ぎないものであるが,非遊技状態監視用タイマは,音に関連するもの(音を下げる又は消音するための構成の1つ)であり,メイン制御基板が司る主たるゲームフローに影響を与えるものではないから,非遊技状態監視用タイマを出音手段及び出音制御手段を備えたサブ制御基板に設けることは当業者であれば容易に想起することである。
更に,メイン制御基板からサブ基板にコマンドを送信することは従来周知の技術手段であること,メイン制御基板がゲームの進行を司るものであるということが技術常識であることを考慮すると,非遊技状態監視タイマのセットをメイン制御基板からの信号に基づいて行うようにすることは当業者であれば容易に想起することである。
そうすると,相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者であれば容易に想到することである。

(4)小括り
以上により,本願発明は,引用発明,引用文献2?15に記載された技術事項,周知慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして,本願発明の効果は,引用発明,引用文献2?15に記載された技術事項,周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6. むすび
以上のとおり,本願発明は,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-01 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-31 
出願番号 特願2000-155626(P2000-155626)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 吉村 尚
井上 昌宏
発明の名称 遊技機  
代理人 鹿股 俊雄  

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